「さて、次はこちらの法律について説明したいと思います。」
「今度は何よ・・・。」
人権擁護委員法
「これってさっき説明してたヤツじゃないの?」
「いいえ、この人権擁護委員法は現在すでに施行されている法律です。
先程説明した人権擁護法案成立の暁にはこちらの法律は廃止される事になります。」
「名前が似てるから?」
「まぁ、法律の内容がかぶってしまうからです。」
「なんでまた、そんな説明すんの?」
「こちらの法律がまともだからです。
人権擁護委員法と人権擁護法案の違いを知ることでその意図は見えてくるものと思います。」
「何がなんだか分からないけど。」
「まぁ、適当に始めてみましょう。まずは人権擁護委員の選出基準からです。」
人権擁護委員法(施行済み)での委員選出基準
第六条
人権擁護委員は、法務大臣が委嘱する。
2.前項の法務大臣の委嘱は、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が推薦したものの中から、
当該市町村を包括する都道府県の区域(北海道にあっては、第十六条第二項
ただし書の規定により法務大臣が定めたる区域とする。以下第五項において同じ。)
内の弁護士及びと同権人権擁護委員連合会の意見を聞いて行わなければならない。
3.市町村長は、法務大臣に対し、当該市町村の議会の議員の選挙権を有する住民で、
人格見識高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護についての理解のある社会実業家、教育者、
報道新聞の業務に携わる者等及び、弁護士会その他婦人、労働者、青年等の団体であって
直接間接に人権の擁護を目的とし、またはこれを支持する団体の中から、その市町村の議会の意見を聞いて、
人権擁護委員の候補者を推薦しなければならない。
4.法務大臣は、市町村長が推薦した候補者が、人権擁護委員として適当でないと認めるときは、
市町村長に対し、相当の期間を定めて、さらに他の候補者を推薦すべきことを求めることができる。
5.前項の場合において、市町村長が、同項の期間内に他の候補者を推薦しないときは、
法務大臣は、第二項の規定にかかわらず、第三項に規定する者の中から、当該市町村を包括する
都道府県の区域内の弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いて、人権擁護委員を委嘱することができる。
6.人権擁護委員の推薦及び委嘱に当つては、すべての国民は、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分、
門地又は第七条第一項第四号に規定する場合を除く外、
政治的意見若しくは政治的所属関係によつて差別されてはならない。
7.法務大臣は、人権擁護委員を委嘱したときは、当該人権擁護委員の氏名と職務をその関係住民に周知せしめるよう、
適当な措置を採らなければならない。
8.市町村長は、法務大臣から求められたときは、前項の措置に協力しなければならない。
第七条
左の各号のいずれかに該当する者は、人権擁護委員になることはできない。
一.禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
二.前号に該当する者を除くほか、人権の侵犯に当たる犯罪行為のあった者
三.日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を
暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
2.人権擁護委員が、前項各号の一に該当するに至ったときは、当然失職する。
「何がなんだか分からないんだけど・・・」
「後で説明します。次は今回提出されている人権擁護法案です。」
人権擁護法案での委員選出基準
2 前項の人権委員会の委嘱は、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が推薦した者のうちから、
当該市町村(特別区を含む。以下同じ。)を包括する都道府県の区域(北海道にあっては、
第三十二条第二項ただし書の規定により人権委員会が定める区域とする。第五項及び次条において同じ。)
内の弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いて、行わなければならない。
3 市町村長は、人権委員会に対し、当該市町村の住民で、
人格が高潔であって人権に関して高い識見を有する者及び弁護士会その他人権の擁護を目的とし、
又はこれを支持する団体の構成員のうちから、当該市町村の議会の意見を聴いて、
人権擁護委員の候補者を推薦しなければならない。
4 人権委員会は、市町村長が推薦した候補者が人権擁護委員として適当でないと認めるときは、
当該市町村長に対し、相当の期間を定めて、更に他の候補者を推薦すべきことを求めることができる。
5 前項の場合において、市町村長が同項の期間内に他の候補者を推薦しないときは、
人権委員会は、第二項の規定にかかわらず、第三項に規定する者のうちから、
当該市町村を包括する都道府県の区域内の弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いて、
人権擁護委員を委嘱することができる。
6 人権委員会は、人権擁護委員を委嘱したときは、
当該人権擁護委員の氏名及び職務をその関係住民に周知させるため、適当な措置を講ずるものとする。
7 市町村長は、人権委員会から求められたときは、前項の措置に協力しなければならない。
「どうです?見事に重要な部分が抜け落ちているとは思いませんか?」
「思いませんかって言われても・・・」
「現行の人権擁護委員法では国籍の規定があります。
当該市町村の議会の議員の選挙権を有する者・・・つまり日本国籍を持つ者ですね。
また、人権擁護委員法の第七条には人権委員の選出にも規定があり、犯罪者や危険な政治団体に属する者
人権侵害行為を行ったものは委員になれず、任期中にどれかの項目に当てはまれば失職します。
逆に今回の人権擁護法案では規定はありませんから国籍は関係ありません。
ですから、法律上は誰でも人権擁護委員になれるという事になってしまうのです。」
「でも、人権擁護法ってのにも第七条みたいなのもあるんでしょ?」
「なに寝言を言っているんですか?
そんなもの完全に消し去っているに決まってるじゃないですか。」
「消してあるって・・・じゃあ、犯罪者でも人権擁護委員になれるっての?」
「今回の人権擁護法案には、そういった事は何も書いてありませんからね。
人権擁護委員になれたとしても不思議は無いでしょうね。」
「不思議は無いって、をい。」
「人権擁護委員法を見てみれば分かりますが、
今回の人権擁護法案は人権擁護委員法の焼き直し・・・劣化コピーと言ったところですね。
肝心な部分は削ぎ落とされているにも関わらず、要らない部分がアホみたいに増加しています。例えば・・・」
人権擁護法案
(今回提出された法案)
第四十四条
人権委員会は、第四十二条第一項第一号から第三号までに規定する人権侵害
(同項第一号中第三条第一項第一号ハに規定する不当な差別的取扱い
及び第四十二条第一項第二号中労働者に対する職場における不当な差別的言動等を除く。)
又は前条に規定する行為(以下この項において「当該人権侵害等」という。)に係る事件について
必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 事件の関係者に出頭を求め、質問すること。
二 当該人権侵害等に関係のある文書その他の物件の所持人に対し、
その提出を求め、又は提出された文書その他の物件を留め置くこと。
三 当該人権侵害等が現に行われ、又は行われた疑いがあると認める場所に立ち入り、
文書その他の物件を検査し、又は関係者に質問すること。
2 人権委員会は、委員又は事務局の職員に、前項の処分を行わせることができる。
3 前項の規定により人権委員会の委員又は事務局の職員に立入検査をさせる場合においては、
当該委員又は職員に身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。
4 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
「この人権擁護法案による特別調査は、今回の法律で追加された部分です。
人権擁護法案には訴訟の援助等による規定もありますが、笑える事にそれも追加条項です。」
「笑えるって・・・笑い事じゃないだろ。」
「いいえ。呆れた笑いですよ。
焼き直しの劣化コピー法案でここまで酷く出来るんですから呆れてモノも言えません。
よくもまぁ、そこまで狡猾になれるものです。
しかし、こうして並べてみると今回の人権擁護法案の意図はバレバレですよね。
外国人や犯罪者、挙句は危険な団体のメンバーですら人権委員や人権擁護委員になれるのですから。」
「まぁねぇ・・・。」
「また、人権擁護法案では人権擁護委員は再選も可能となっています。
つまり、その気になればいつまでも人権擁護委員を続ける事が出来るということです。」
「今の法律だと違うの?」
「現行の人権擁護委員法ですと原則として任期は三年。
ただ、後任がみつかるまでは人権擁護委員を続ける事になっています。人権擁護法案とでは雲泥の差ですね。」
「で、話はこれで終わり?」
「はい。ですがこれで分かったかと思います。
人権擁護法案が劣化コピーの上に狡猾に練られた法律だと。
今回の説明としてはこんなところでしょうか。」
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ここもリンクフリーだったりします。