台湾沖航空戦

 

 

 

 

「アメリカ軍に大打撃って、どうやってよ?」

「それについてはまた後ほど・・・それでは次に移りたいと思います。」

「次はなんだ?」

「・・・次は、台湾沖航空戦の説明になります。
しかし、マリアナ沖海戦から少し間があるので、他の戦線についても簡単に説明していきます。」

「他の戦線って・・・どこ?」

「中国大陸なんじゃないですか?ほら、陸軍が大陸打通作戦かなんかやってたでしょ?」

「太平洋方面がピンチだってのに陸軍は何やってんのよ・・・。」

「・・・仕方ありません。中国方面を放っておくのも、日本にとっては脅威ですから。」

「へ?中国軍って弱いんじゃなかったの?」

「確かに中国軍が強いってイメージは無いわな。」

「なんてことを言うんですか!中国は眠れる獅子と呼ばれる大国だったんですよ!
そんな宗主国様になんと恐れ多い事を・・・ああ、恐ろしや恐ろしや。」

「一体、いつの時代の話よ・・・。」

「・・・少し語弊がありましたね。中国方面と言うより、中国に進出した連合軍が脅威だったと言ったほうが正解でした。」

「連合軍?」

「アメリカ・イギリスなどだろう。考えてみれば、戦前からアメリカは中国に兵を送っていたからな。」

「そういえば、そんなこともあったような無かったような・・・」

「フライングタイガースだっけ?」

「空とぶ虎ですね。妙なネーミングセンスでつ、ハイ。」

「んな事にツッコミ入れてどうすんのよ・・・。」

「・・・マリアナ沖海戦が起きる直前の6月16日、内地がB-29爆撃機による空襲を受けたのです。
爆撃を受けたのは九州の八幡製鉄所付近です。」

「はい?B-29の爆撃って・・・どこから飛んで来たのよ?」

「んだな。6月じゃ、マリアナ諸島もまだ陥落してねーだろうし。」

「・・・当時のアメリカ軍の飛行場は中国四川省の成都にあったそうです。
この頃、B-29は中国大陸にも進出していたようですね。
まぁ、陸軍についての説明は気が向いたら行う事にして・・・先に進めたいと思います。」

「やる気無さ過ぎだってば。」

「そんな事を言われても困ります。だって、陸軍には戦艦が無いじゃないですか。」

「は?」

「・・・やはり、燃えを感じる事が興味に繋がり、学習意欲へと繋がっていくのです。
個人的な意見を言わせていただくなら、陸軍には燃える兵器が少ないので、少々気が乗らないのです。
決して陸軍が嫌いと言う訳ではありませんが・・・」

「∩( ・ω・)∩ チハタンばんじゃーい」

「∩( ・ω・)∩ 飛燕タンばんじゃーい」

「あんたら・・・」

「チハタン嫌いなの?」

「飛燕タン嫌いなの?」

「・・・嫌いとかそういう問題ではないのです。
私が陸軍についての説明を控えているのは単純に知識が欠落しているからに他なりません。
それに加えて、現在の講義の趣旨から考えてあまりにも離れすぎるからという点も挙げられます。」

「結局やる気無いだけじゃん。」

「・・・少しくらいなら説明してもいいですよ。
彗星艦爆の説明はしたのに、同タイプのエンジンを積んだ飛燕の説明をしないというのは不公平ですからね。」

「飛燕キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」

「なんでそっち方向に話が進むのよ。そもそも飛燕って何?」

「こちらが飛燕です。」

 


三式戦闘機・飛燕
陸軍に採用された、日本軍唯一の水冷エンジン採用戦闘機。
機体設計はすばらしく、急降下速度に制限が設けられない程(実際は850km)に頑丈な機体だった。
武装・20mm機銃×2 13mm機銃×2他
長所・機体の基本性能の高さ
短所・発動機不調が多かった事

 

「で、なんでヲタな話を長々としてんのよ?」

「・・・飛燕が何かと聞いたのはアスカですよ?」

「私はそこまで詳しく聞く気は無いわよ!戦闘機なら戦闘機って一言で終わらせておけば良いじゃない!」

「自分で話を振っておいて、そのリアクションはどうかと思いまつよ?」

「るさい!」

「それにしても・・・、この飛燕とやらも弱点がエンジン不調か。」

「・・・エンジンの調子が良い時はアメリカ軍のF6F戦闘機とも互角以上に戦えたそうです。
もちろん、パイロットの腕によるところも大きいとは思いますが。」

「その、肝心のエンジンがヘタレじゃどーしようもないじゃん。」

「・・・その辺りは仕方ありません。
当時の日本には水冷エンジンを運用する力が無かったとしか言い様がありませんからね。
ちなみに、彗星と飛燕のエンジンには互換性が無かった様です。」

「互換性って?」

「互換とは取替えが利く事を指す。さしずめ、パーツの流用が出来なかったのだろう。」

「・・・そんなところです。」

「ただでさえ、国力が低いってのにそんな非合理的な事やってて・・・何がしたいのよ?」

「・・・仕方ありません。当時の日本は航空機メーカーが多数あったのですから。
戦時中とは言え、日本国内では平時同様に各社が競争していたのです。」

「戦争中なのに?」

「戦争中と言っても、内地が直接空襲されなければ一般の方にはピンとこないと思いますよ。
散々話に出した前線基地のトラック環礁ですら、直接空襲を受けるまで実にのんびりとした雰囲気だったそうですから。」

「おいおい・・・」

「・・・話が逸れてしまいましたね。そろそろ本筋に戻します。
サイパン島陥落後、テニアン島なども次々と陥落していきました。
そして、9月になるとアメリカ軍はパラオ諸島にも上陸を開始したのです。」

「パラオってどこだっけ?」

「以前、話に出ただろう?一時期連合艦隊の根拠地ともなっていた区域だ。」

「確か、親日国だったよな。」

「パラオ諸島での戦いで有名なのはぺリリュー島での激戦が挙げられます。
制空海権をアメリカ軍に取られながら日本軍守備隊は2ヶ月以上にも亘って奮戦を続けたのです。」

「その制なんとか権が無いとダメなの?」

「・・・制空権が無ければ陸上部隊は不利な状況に追い込まれます。また、制海権が無ければ支援や補給もままなりません。」

「結局、何が言いたいのよ?」

「つまり、守備隊はもう助かりません。」

ジョジョネタキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!

シィィィザァァァ━━━(゚Д゚)━━━!!!!

「別にそのつもりはありませんが・・・」

「何やってんのよ、あんたら・・・」

「ところで、ぺリリュー島とやらの戦いはそれほどまでに激戦だったのか?」

「・・・ぺリリュー島での戦いは日本軍にとっても激戦でしたが、アメリカ軍にとっても希に見る苦戦だったと言えます。」

「日本びいきのあんたの言う事だから、半分くらい誇張されてんでしょ?」

「・・・さぁ?」

「さぁって何よ?ハッキリ言いなさいよ、ハッキリ!」

「十倍以上の兵力を有しながら
2ヶ月以上にも亘ってぺリリュー島を制圧出来なかったのですから・・・
私はアメリカ軍が苦戦したと思っています。」

「だからそれはあんたの主観でしょって。」

「ちなみに、アメリカ軍は2〜3日で制圧出来ると考えていたそうです。
アメリカ軍の当初の予定が狂ったという点については概ねあっていると思いますが・・・」

「2〜3日の予定が2ヶ月か・・・。アメリカ軍とやらの見積もりもあまり正確では無いのだな。」

「・・・結局は制圧出来たものの、アメリカ軍の損耗率は4割程との事ですからね。
通常、4〜5割の損害を受ければ敗北と同義です。いかに日本軍が頑強に抵抗したかが分かるかと思います。」

「4割の損害って・・・なら、日本軍はどのくらいの被害受けてたのよ?」

「ほぼ全滅ですがそれが何か?」

「何かじゃないでしょ!アメリカ軍の損害が4割しかないのに、なんで全滅した日本軍の事ばっかリ褒めんのよ!」

「ふぅ・・・。」

「そのため息止めなさいよ!ムカつくっての!」

「少しは考えてみろ。そうだな・・・10対1でケンカしたらどちらが勝つかは分かるな?小学生でも分かる単純な問題だ。」

「そりゃ10人の方が勝つに決まってるでしょうが。」

「え〜?分かりませんよぉ?例えば、その1人の人がスタンド使いだったらどうするんですか?」

貧弱貧弱ゥ〜!ちょい(中略)マヌケがァ〜!

「あんたらは黙ってなさいよ・・・。」

「・・・まぁ、いいとしよう。では、その1人の者はどれだけ善戦出来ると思う?」

「善戦もへったくれも無いでしょ。大勢相手に抵抗できる訳無いじゃない。」

「そりゃそうだ。ボコられて終わりだわな。」

「え〜、もし波紋使いだったら・・・」

「るさい!」

「・・・軍隊の話もケンカと基本は同じだ。自軍を上回る数の相手に自軍以上の損害を与えるなど並大抵の事ではないのだ。」

「む・・・」

「最近、玉砕ばかりですね。支援射撃しましょうか?」

メーディーック!

「別に期待してないわよ・・・。」

「二ミッツ提督の有名な回想録にも記されていたはずです。
なぜ、優勢な自軍がこれほどの損害を受けたのか分からないと。
確かに分からないと思います。アメリカ軍の戦術をみても、特に間違った事はしていないのですから。」

「そうなのか?」

「・・・アメリカ軍は優勢な航空隊を使い空爆を行い、戦艦部隊を用いて艦砲射撃を行っています。
上陸部隊も日本軍の十数倍とも言える数を上陸させています。有能なアメリカ軍ですから、それほど大きなミスはしませんよ。」

「それでも被害が大きかったんでしょ?」

「・・・そうです。日本軍にとって唯一利点があったとすれば地の利でしょう。
日本軍は複雑なぺリリュー島の地形を最大限に生かし、持久戦術を執っていたのです。
救援の見込みが無いとは言え・・・日本軍の方々は必死に戦っていたのです。」

「ふ〜ん、なんかよく分かんないけどスゴイね。」

「・・・ぺリリュー島の激戦が有名な理由はまだあります。
ぺリリュー島では戦いが始まる前に、住民を全て別の島へ避難させる事が出来ていたという点です。
そのおかげで、無意味に民間人を戦闘に巻き込むという事態を避けることが出来ました。」

「有名なの、それ?」

「私は聞いた事無かったけど・・・」

「では、覚えておいて下さい。日本軍は決して民間人の命を軽視していた訳では無いという事を。
よく悪質な印象操作がいたるところで行われていますが、懸命な皆さんならその様なプロパガンダには騙されないと思います。」

「印象操作とは?」

「旧日本軍は極悪非道の集団だったとする、極端な思考をもった方々の行う情報戦です。
マリアナ沖海戦の時に少し話しましたが、そのプロパガンダで最たるものは沖縄戦です。
沖縄において民間人が犠牲になったのは疑う余地も無い出来事ですが、その悲劇を利用する集団が存在するのです。」

「許さないぞ、BF団!」

「それ違う・・・。」

「じゃあ恐竜帝国とか?」

「それも違うから・・・。」

「沖縄戦についてはまた後ほど。
ぺリリュー島の日本軍は確かに善戦しましたが多勢に無勢。補給すらない状況では敗北も時間の問題だったのです。
ぺリリュー島において最期の日本兵が投降に応じたのは戦後になってから・・・。
昭和19年の11月頃にはほぼ制圧されてしまいましたが、極僅かな日本兵は最後の最後まで持久戦を行っていたのです。」

「諦めが悪いだけじゃないの?」

「任務に忠実と言って下さい。
彼らはアメリカ軍の物資を奪いながら長期持久戦を行っていたのですから・・・その行為は称えられて然るべきだと思います。」

「ふ〜ん・・・。」

「後、説明する事があるとすればぺリリュー島の後日談くらいでしょうか。」

「後日談?まだ何かあんのか?」

「・・・戦後、島に帰ってきた島民の方々が目にしたのは大勢の兵士の亡き骸でした。」

「そりゃ戦場だったんだから、当たり前と言えば当たり前でしょ。」

「・・・戦後、パラオ諸島はアメリカの統治下に置かれました。
アメリカ軍はアメリカ兵の遺体は収容しましたが、日本兵の遺体はそのまま放っておいたのです。」

酷っ!アメリカ人って血も涙も無い冷血人間なんですねぇ!」

「・・・なんで私の方を見ながら言うのよ。」

「・・・そんな状況を見て、現地住民の方々が日本兵の亡き骸を手厚く葬って下さったのです。
言葉で言えば一言ですが、日本兵の数を考えれば大変な作業だったであろう事は容易に推察出来ます。

一説によれば、ぺリリュー島に住んでいた現地住民の方々は日本軍と一緒に戦う決意までしていたそうです。」

「・・・それホント?」

「戦後のパラオが親日国であるという点を考えても、十分信憑性のある話です。
結局は前述の通り、住民全てを避難させることになるのですが・・・。」

「協力してくれるって言ってるのに、避難させちゃうの?」

「・・・気持ちはありがたいのだろうが、近代戦というのは素人の出る幕は無い。
戦術的に考えるならマイナスになる可能性すらあるからな。」

「・・・当時、パラオを守備していたのは関東軍の中でも最強とされた部隊です。
ある程度の準備が整っている以上、住民の方々を危険に晒してまで戦争に巻き込む理由はありません。

パラオでの有名な話を紹介しましょう。」

 

 

遠い南の島に、日本の歌を歌う老人がいた。

「あそこでみんな死んでいったんだ・・・」

沖に浮かぶ島を指差しながら、老人はつぶやいた。

太平洋戦争のとき、その島には日本軍が進駐し陣地が作られた。老人は村の若者達と共にその作業に参加した。

日本兵とは仲良くなって、日本の歌を一緒に歌ったりしたという。

やがて戦況は日本に不利となり、いつ米軍が上陸してもおかしくない状況になった。

仲間達と話し合った彼は代表数人と共に日本の守備隊長のもとを訪れた。自分達も一緒に戦わせて欲しい、と。

 

 

「ふ〜ん、そんな事があったんだ。」

「ファーストの事だから、話を脚色しててもおかしくない気がするけど・・・」

「人聞きの悪い事を言わないで下さい。文章そのものに手は加えてませんよ。」

「その引用した先の内容が実際にあった話だってどうして分かるのよ?
もしかしたら、極右的な考えの人が作った創作かもしれないじゃない。」

オッス!オラ、極右!

「先日、孫がビデオを見ているととんでもない言葉に耳を疑いました。

主人公は異星人との紛争を暴力によって解決しようとするもので

とても、 子どもには見せられる内容ではありません。

また主人公がピンチになると金髪で青い目に変身します。 (元々の主人公は黒髪で黒い目をしています)

時代遅れの脱亜入欧的表現に笑ってしまいましたが、

こういう所から同じアジアの同胞への差別が始まるのかと思うと薄ら寒い気がします。

そして、最後の必殺技は、全ての人々から元気を少しかけてもらい巨大なエネルギーにするというものなのですが、
その表現が更に恐ろしい。全ての人々が両手を天に上げる、そう万歳なのです。

万歳をした人から力を奪い取り、敵を撃つという図式は戦中の構図そのものでその衝撃にへたりこんでしまいました。

このような番組を見て育つ子どもの将来が非常に心配です。 この国はいったい何処に進んでいくのでしょうか。(某掲示板より引用)」

るさい!脈絡無く脱線するんじゃないわよ!」

「え〜!面白いのに〜!」

「お前達・・・少しは静かにしろ。」

「話を戻すが・・・そんな事言い出したらキリが無いんじゃないか?」

「うるさい!戦史の説明してるって時に、脈絡無くお涙頂戴話を混ぜてくるって時点で十分姑息よ!」

「うんうん、確かにそーだよね。ナッパさんが死ぬトコとか♪」

「確かに・・・あれほどまでにインパクトのある方はそうそう居ませんです、ハイ。」

「だから、何の話してんのよ!あんたらは!」

「話は終わっていないので、もう少しお待ちください。批判はその後で受け付けます。」

「そういう事だ、もう少し辛抱しておけ。」

「は〜い♪」

「・・・・・」

「では、続きをどうぞ。」

 

 

それを聞くなり隊長は激高し叫んだという。

「帝国軍人が貴様ら土人と一緒に戦えるか!」

日本人は仲間だと思っていたのに…みせかけだったのか

裏切られた想いで、みな悔し涙を流した…

船に乗って島を去る日 日本兵は誰一人見送りに来ない。村の若者達は、悄然と船に乗り込んだ。

しかし船が島を離れた瞬間、日本兵全員が浜に走り出てきた。

そして一緒に歌った日本の歌を歌いながら、手を振って彼らを見送った。

先頭には笑顔で手を振るあの隊長が。


その瞬間、彼は悟ったという。あの言葉は、自分達を救うためのものだったのだと・・・。

 

 

 

「へぇ〜、良い話じゃん♪」

「ふむ、軍人とはかくありたいものだ。」

「で、この話が実際にあったって証拠は?」

「空気の読めない人ですねぇ。皆さんが感動していると言うのに水を注すんですか、あなたは?」

うるっさいわね〜!話が終わったんだから質問するくらい良いでしょうが!」

「・・・この話は拾い物ですし、ぺリリュー島の話かどうかは分かりません。」

「をい!」

「ですが、ぺリリュー島の住民のほぼ全員が避難していた事、
日本兵の亡き骸を埋葬してくださった事、戦後、パラオが親日国である事・・・これらは他の情報源から情報を得ています。
この話は、あながち間違いでは無いと思われます。」

「結局、推測交じりじゃない。」

「やれやれ、いい加減空気を読んで欲しいんですけどねぇ。」

「うるさいっつってるでしょ!さっきも言ったけど私はファーストの根性が気に入らないだけよ!」

「何かご不満ですか?」

「あったりまえでしょ!いかにも感動するような話をもってきて人の感情に訴えるなんて・・・そんなやり方反吐が出るわよ!」

「・・・いわれ無い中傷で先人たちを咎めるよりはよほど良い事だと思います。
パラオが戦後も親日国である理由は紛れも無く先人達の行為の正当性の表れなのですから。
西欧諸国に比べれば日本の統治は称えられて然るべきかと・・・」

「あんた、そればっかね。」

「アスカさんだって自爆ばかりじゃないですか♪」

「るさい!」

「さて、そろそろ本題に入ります。完全制圧はしていないとは言え、アメリカ軍はパラオ諸島を徐々に掌握し始めました。
また、艦隊の根拠地となりえるパラオ諸島の北方に位置するウルシー環礁の制圧にも成功。
アメリカ軍は徐々に日本本土に近付いていました。」

 

 

「って言うと・・・もうすぐ終戦だな。」

「まぁ・・・あと一年くらいは持ちこたえるんですけどね。」

「持ちこたえてるんじゃなくて、諦めが悪いだけでしょうが。」

「・・・納得できる条件で降伏出来るのならそうしてますよ。さて、アメリカの次の目標となるのがフィリピンです。」

「フィリピンってどれ?」

「・・・よく探せ。地図の中央に上下に連なる島々があるだろう?その一帯の地域だ。」

「ま、ちゃんとフィリピンって書いてあるけどな。」

「次はフィリピンの戦いなの?」

「今回説明する戦いはその前の準備に過ぎません。
フィリピン攻略を円滑に進めるため、アメリカ軍は機動部隊を用いてある場所を襲ったのです。」

「ある場所って?」

「ファースト、勿体つけてないでさっさと言いなさいよ。」

「・・・昭和19年10月10日早朝、沖縄本島の北飛行場が突然空襲されました。
攻撃を加えたのはウィリアム・F・ハルゼー大将率いる機動部隊です。
沖縄では完全に虚を突かれた格好となり、アメリカ軍が第一激を加えた後に空襲警報が出されるという有様でした。」

「・・・いつもの事だけどね。」

「度重なる空襲により那覇市内は壊滅的打撃を受けました。
そして2日後の10月12日、今度は台湾がアメリカ軍機動部隊の攻撃を受けたのです。」

「なんつーか、良い様に攻撃されっぱなしだな。」

「仕方あるまい。日本軍が頼るべき機動部隊はもう壊滅してしまっているのだ。」

「・・・その台詞、ファーストがそのまま言いそうね。」

「・・・仕方ありません。日本軍の機動部隊はすでに壊滅しているのですから。
また、日本軍に早期警戒を求めるのは酷と言うものです。」

「・・・ホントにそのまま言うんじゃないわよ。」

「日本軍、最近本当にダメダメだね。」

「ホントホント。ショッカーも真っ青なほど、やられ役街道まっしぐらじゃないですか。」

「・・・以前に少し話しましたが、アメリカ相手に長期戦で勝てる見込みなど最初からありませんでした。
避けなければならない消耗戦に突入してしまっては、帝国海軍にはどうしようもないのです。」

「で、また言い訳を始めるわけね。」

「事実を述べているだけですが何か?」

「利いた風な事を言うんじゃ無いって言ってるでしょうが。そうやって言い訳ばかりしてたんじゃ、何の反省にもなんないでしょ。」

「・・・持たざる者の運命とでも言うべきでしょうか。多少の小細工で戦局が好転するのなら、それほど楽な事はありません。」

「人の話を聞きなさいよ。」

「十中八九自爆する人の意見を聞いてどうしろと?」

「うるさいって言ってるでしょ!」

「・・・で、攻撃を受けた日本軍は何をしていたのだ?追撃なりなんなり行動を起こすのが普通だと思うが。」

「もちろんです。日本軍は内地にあった基地航空部隊のほとんどを沖縄、台湾方面に進出させました。」

「ほとんどねぇ・・・、日本軍もずいぶん気合入れてんだな。」

「ほとんどって何機くらいよ?」

「日本軍は貧乏ですから、100機くらいじゃないんですかね。」

「・・・それはあまりにも過小評価し過ぎです。
10月12日から16日まで行われた攻撃に使用された機体数はおおよそ600〜700くらいの数は準備できたはずです。
正確な数字が分からないのでそのあたりはご了承下さい。」

「いい加減過ぎるってば・・・」

「だが、少なく見ても600機は準備できていたという事だろう。いつの間にそれほどまでの大部隊を準備していたのだ?」

「そうそう。確かマリアナ沖海戦の時に飛行機って随分やられちゃったんじゃなかったっけ?」

「完膚なきまでにね。」

「・・・マリアナ沖で壊滅したのは空母所属の航空隊です。飛行機は飛行機でも機種や用途が違いますから。」

「え、違うよ。前の戦いの時に壊滅しちゃった航空隊ってあったじゃん。アレ・・・何だっけ?」

「・・・1600機を有していたとされる、角田中将率いる基地航空部隊の第一航空艦隊の事ですか?」

「あ、そうそう!それそれ♪」

「プル・・・お前、よく覚えていたな。」

「あ〜、マシュマー様ひっど〜い!あたしだってちゃんと覚えてるもん!」

「これは明確な女性蔑視ニダ!マシュマーさんには謝罪と賠償を請求するニダ!」

「そのネタはやめなさいって・・・」

「それで・・・第一航空艦隊がどうかしましたか?」

「だからさ、前の戦いで基地の飛行機もほとんど全滅しちゃったんでしょ?それなのに、いつの間に復活してたの?」

「どっかの寺院にでもつれてったんじゃねぇのか?」

「運が悪いと灰になっちゃいますけどね♪」

(壁の中よりは運が良いのかな・・・?)

「ヒカリ、どしたの?」

「え、ううん・・・なんでもない。」

「一体、何の話なのやら・・・」

「・・・内地の日本軍も遊んでいる訳ではありません。
主要なドックでは海戦で傷付いた艦船の保守整備、基地航空隊は練成に明け暮れ・・・
無論、航空機の生産や搭乗員の訓練も行われていました。」

「ふ〜ん、そうなんだ。」

「なんか、日本って大鑑巨砲主義にいつまでもこだわってて、ほとんど何もしてなかったってイメージがありますけどねぇ。」

「イメージで語られても困りますが・・・まぁ、良いです。
とりあえず、敵機動部隊攻撃の為のある程度の航空機は確保出来たという事だけ覚えておいて下さい。」

「日本軍のパイロットってヘボい上に数が足りてないんじゃなかっけ?」

「・・・どこをどうすればそんな意見が出てくるのか、理解に苦しみます。」

「だって、あんた搭乗員が足りない足りないって、散々泣き言を言ってたじゃない。」

「・・・練成に時間がかかり、絶対的に不足しているのは母艦機搭乗員です。陸上機の搭乗員と一緒にされても困ります。」

「何が違うのかイマイチ分からないんだけど・・・」

「母艦機搭乗員については、以前説明したような気がしますが・・・」

「エヘへ、忘れちゃった〜♪」

「同じく〜♪」

「まぁ・・・、スーパーロボット系のパイロットがMSに乗り換えられないのと同義だと思って下さい。」

「何よ、その投げやりな説明は・・・」

「だが、その説明でも概ね当たりだろう。要は畑違いと言う事だ。」

「・・・陸上機の搭乗員の練成は母艦機ほどの手間ではありません。
マリアナでの戦いで大打撃を受けたにもかかわらず、国力で劣る日本でもこれだけの数を集結させられたのもそういった理由です。」

「ふ〜ん。」

「あからさまにやる気の無い声してますねぇ。」

「んなのどうだって良いでしょ。むしろ、ファーストがどうしてそんなにやる気になってんのかの方が、よっぽど分からないわよ。」

「それもそうだな。お前さん、何時間ぶっ続けで喋ってんだ?」

「途中で休憩も入っていますし・・・大した時間ではありませんよ。」

「ま、どうでも良い事だけどね〜♪」

「まぁな。非常召集がかからない限りは問題無いだろう。」

「・・・説明を続けます。10月12〜16日にアメリカ軍機動部隊に対する夜間攻撃が行われました。戦果の発表は次の通りです。」


轟撃沈
空母×11、戦艦×2、巡洋艦×3、駆逐艦×1
撃破
空母×8、戦艦×2、巡洋艦×4、駆逐艦×1、艦種不明×13
損傷
艦種不明×12
航空機撃墜×112

日本軍未帰還機×312

 

「へ〜、凄いじゃん♪」

「プル、少しは疑問に思いなさいよ。」

「え、何が?」

「空母の撃沈が11隻なんて・・・どう考えてもおかしいでしょうが。どーせ大本営発表でしょ。」

「その通りですが、それが何か?」

「あんた、しょーもない説明してんじゃないわよ!んな妄言を撒き散らしたって意味無いでしょ!」

「・・・後々重要になる部分です。ここで説明しておかなければ話が繋がりませんから。」

「フン、どーだか。」

「実際の戦果は次の通りです。」

 

空母・フランクリン(損傷)
空母・ハンコック(損傷)
他5隻に損傷

 

「え、こんだけなの?」

「・・・そうです。」

「損傷って事は・・・沈没したのは?」

「・・・残念ながらありません。」

「何やってんだか・・・」

「・・・以前のマリアナ沖海戦に比べれば多少は良い戦果と思ってしまうのは私だけでしょうか。」

「・・・そりゃそうだけど、アレと比べてどうすんのよ。」

「あそこまで長々とマリアナ沖の説明しといてアレ扱いかい。」

「小沢中将さんも手も足も出ませんでしたからねぇ♪」

「・・・暴言は謹んで下さい。あの戦いは、元々の戦力差は言うに及ばず運に見放されていた点が非常に大きいのです。」

「情報タダ漏れだったじゃん。」

「・・・それは閣下の責任ではありません。そんな筋違いな事を言われても困ります。」

「筋違いと言われても・・・同じ海軍じゃないですか。」

「・・・一緒くたにしないで下さい。海軍と言っても十人十色。それは陸軍も同様ですし、日本全てを見ても同様です。」

「どゆこと?」

「だからな。海軍陸軍云々というレッテル貼りは意味が無いという事だ。
どのような組織でも様々な人間がいる。〜だから良い悪いと言うのは意味が無いという事だ。」

「じゃ、アカとかは?」

「いきなり何を言い出すのかと思えば・・・」

「・・・そういった問題はまた別です。同列に語る事は出来ません。」

「あんた、難しい説明が出来ないだけじゃないの?」

「・・・難しい説明をしてどうするのですか?説明は分かりやすくが基本なんですよ?」

「そういう意味じゃないっての!つまんない言い訳すんじゃないわよ!」

「つまらない自爆に比べればよほど良いかと思いますが・・・」

「るさい!」

「・・・単純な二元論が危険だと言ったはずです。時と場合、相手によっては単純に分けなければならない時もあるのです。」

「言い訳にしか聞こえないんだけど。」

「これを言い訳と取るのならそれでもかまいません。
敵味方を明確に分けなければならない時というのがあるのですから・・・例えば戦争状態の時などが挙げられますね。
当時の日本で言えば鬼畜米英等の印象操作、あれは敵味方を明確に分け、国民を団結させる為に行われた手段の一つです。」

「あんた、自分で鬼畜米英とは思ってないって言ってたじゃない。」

「・・・個人の感情とは別です。敵は敵と認識しておかなければなりません。」

「よく分からないんだけど・・・」

「・・・戦争を遂行するには民意がとても重要であると、以前に話したはずです。
団結しなければならない時に敵にも良い人間はいるなどと言いだす人がいたら、一体どういう事になると思いますか?」

「・・・話にならん。必ず反戦的な気運が起きるはずだ。」

「戦争止めようって話になるんなら、良い事だと思うんだけど。」

良い事じゃないか!とても良い事じゃないか!

「馬鹿シンジの真似は止めなさいよ・・・。」

「・・・では、その反戦気運が何者かによって仕組まれたものだとしたら?
反戦を唱える事で軍の士気を落とし、戦意を喪失させる謀略だとしたらどうします?」

「な、なんだってー!」

「MMRネタは止めなさいって。」

「反戦が必ずしも平和に繋がる訳ではありません。むしろ、新たな争いの火種になる可能性すら出てくるのです。」

「だから、妄想だけで喋るの止めなさいよ。」

「・・・妄想ではありません。日露戦争後のロシアがその良い例です。」

「日露戦争、何それ?」

「詳しい話は他の場所で行われているので、ここでは省略しますが
ロシアの継戦能力を奪ったのはアカの扇動であった事は明白です。
内部抗争が存在せず、当時のロシア軍が皇帝の下で一致団結していれば、おそらく日本は滅亡していた事でしょう。」

「滅亡ってをい。」

「・・・戦争中、必要であれば敵味方のみで世界を分けてしまうというのも分からない話では無いのです。
重要なのは敵味方を的確に理解する事、どのような思惑で国々が動いているのかを知る事・・・
戦争反対を語りたいのなら話はそれからです。

・・・正直なところ、私も平和主義者なのですから。」

「どの口でほざくのよ。あんた、どう見ても好戦派じゃない。」

「・・・まさか。戦争は国力を疲弊させますから下策と言っていいでしょう。
戦争せずに目的を果たせるのなら、それに越した事はありません。」

「結局どういう事なの?」

「・・・話が脱線しすぎましたね。
私の意見を一言で言うなら歴史に興味を持ちましょうと・・・まぁ、こんな感じでしょうか。
まずは知識を蓄える事・・・そうすれば、敵味方で判断する必要がある時がどういう時かが分かりますから。

台湾沖航空戦の話に戻します。
発表が真実なら、真珠湾奇襲を遥かに上回る大戦果でしたが現実であるはずもありません。
日本軍の中には疑問の声も上がりましたが、検討され直す事は無かったそうです。」

「だが、これほど誇大な戦果を真に受ける者がいるとは思えん。誇張するにしても、あまりに出来すぎだろう。」

「・・・そうでもありません。台湾沖航空戦の勝利をうけ、時の首相が勝利は今や我が頭上にありと言ったほどです。
主要都市では戦勝祝賀大会が行われるという状態で・・・何と言ったら良いのか分かりません。」

「ただのアホじゃないの?幻の勝利に酔いしれてどうすんのよ。」

「まぁ・・・ある意味、均一なるマトリックスの裂け目の向こうに行ってしまったのでしょう。」

「あんた、その台詞ちゃんと分かって使ってんの?」

「・・・残念ながら、誇大な戦果を信じていたのは事実な様です。
日本軍が幻の戦果に歓喜しているという報告を受けたハルゼー大将は一計を施しました。
損傷した巡洋艦と多少の艦艇を敗残部隊として残し、残りの部隊を後退させたのです。
平たく言うなら、日本軍を誘い出し完全に撃滅するための罠ですね。」

「まさか、ノコノコ出て行ったなんて事は無いでしょうね。そこまで能天気だったら、もうどうしようもないわよ。」

「一方の連合艦隊では、残敵掃討を第5艦隊に命じました。
巡洋艦4隻と駆逐艦7隻、フィリピンからの航空機107機も用いて索敵を開始したのです。」

「残敵掃討って、をい。」

「残敵どころかほとんど無傷なんでしょう?」

「・・・索敵機が発見したのは、多数の艦艇からなる無傷の機動部隊でした。
連合艦隊でもこの時、台湾沖航空戦の戦果が幻である事を悟ったのです。」

「ようやく我に返ったか・・・。」

「しかし、海軍は台湾沖航空戦の戦果誤認を陸軍に伝えませんでした。これは、今後の戦略に大きな影響を与えたのです。」

「何かあったのか?」

「・・・フィリピンの防衛に関してです。元々、陸軍ではルソン島での持久戦を意図していました。
しかし、台湾沖航空戦の戦果誤認によりレイテ島での決戦に踏み切ってしまったのです。」

「何かダメなの?」

「防衛に持久戦が有効であることは、ペリリュー島での戦いで証明されています。
後々戦いの舞台となるであろうルソン島でも、着々と準備が行われていました。
しかし、台湾沖航空戦で敵機動部隊が壊滅したと思い込んだ大本営では、
海空の援護の無いまま上陸したアメリカ軍に対し敵を撃滅する好機と判断
地上決戦の準備もままならないレイテ島での決戦に踏み切ってしまったのです。」

「敵を撃滅する好機って・・・好機どころか敵は無傷でしょうが。」

「話についていけませ〜ん♪」

「あたしも〜。」

「陣地の構築すら出来ていないようなレイテ島で戦うよりは、準備の整ったルソン島で戦ったほうがはるかに有利です。
全ては台湾沖航空戦での戦果誤認が招いた悲劇と言えるでしょう。」

「海軍は何やってんのよ・・・。」

「・・・これは反省しなければならないですね。どう考えても海軍上層部の過失は明白です。」

「あら、あんたが海軍擁護しないなんて珍しい。」

「・・・擁護のしようもありませんから。
せめて、台湾沖航空戦の戦果を正確に掴んだ上での宣伝工作だったと言うのなら、
私の中での評価は180度変わるのですが・・・陸軍の動きを見る限り、戦果誤認なんでしょうね。」

 

 

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