アッツ島沖海戦他
「次は、昭和18年に起きた海戦についてまとめて説明します。まずはアッツ島沖海戦についてです。」
「アッツ島?」
「ミッドウェー海戦の時にダッジハーバーを空襲した際、
日本軍はアリューシャン諸島のアッツ島・キスカ島を占領しているのです。」
「ダッジハーバー・・・北の方だったか?」
「はい。昭和17年の中ごろに両島を占領してから昭和18年の始めごろまで、
アメリカ軍による大規模な攻勢はありませんでした。
昭和17年の中盤は南方のガダルカナル島で日米ともに死力を尽くしていましたからね。」
「アメリカも大してやる気ないのかしら。そこって一応アメリカの領土でしょ?」
「そういえばそうですねぇ。某漫画にもそんな事書いてありましたし。」
「・・・アッツ・キスカ、どちらの島も戦略的にはあまり重要ではありませんからね。優先順位の問題でしょう。」
「なら、なんで占領してんのよ?」
「アリューシャン諸島の占領はミッドウェーの陽動に過ぎません。
大本の作戦が失敗しているのだから、今さらこの二島に戦略的な価値を見出せと言われても無理です。
穏やかに年を越したアッツ・キスカ両島ですが、
ガダルカナルでの明るい見通しが得られたアメリカ軍は昭和18年初頭からアリューシャン方面の奪回を計画。
1月にはアリューシャン諸島の東に位置するアムチトカ島に4000名の兵を上陸させ、同時に飛行場の整備も行わせています。」
「ようやく奪回しようと言う訳か。しかし・・・腑に落ちんな。」
「何がです?」
「ガダルカナル方面の見通しが立ったとは言え、アメリカ軍の海上兵力はまだ十分とは言えんだろう。
戦略的に優先すべき区域は他にまだあるのではないか?」
「言われてみれば・・・確かにそうかもね。ま、アメリカの事だから余裕があるんじゃないの?」
「・・・余裕が出てくるのはあと数ヶ月先かと思われます。
奪回の為の準備を始めたとは言え、実際の上陸作戦を行うのはまだまだ先・・・、今はまだ準備段階に過ぎません。
もっとも、アッツ・キスカ両島は紛れも無いアメリカ領土なので戦意高揚・威信回復の為に奪還を計画した受け取る事も出来ます。
あの大統領の考えそうな事ですね。」
「また、そういう穿った見方を・・・」
「・・・大して戦略的価値の無い島を攻略するのはそれなりの理由があります。的外れとは思えません。」
「そーじゃなくて、私が言ってるのは大統領に対するあんたの見方。どー見ても偏見入りまくってんじゃん。」
「・・・実際に会った事はありませんから多少の偏りは仕方ありません。
ただ、彼の主張を見ている限り・・・とても褒められた人物とは思えませんが。」
「だから、そういう事を平然と言うから・・・」
「・・・アメリカ軍の動きを察知した日本軍はアッツ・キスカの防備強化を図ろうとしました。
飛行場の建設も計画され、その為の資材を満載した輸送船をアリューシャン諸島に次々と送り出していたのです。しかし・・・」
「なんかあったの?」
「単船でアッツ島に入港しようとした輸送船が一隻、アメリカ艦隊の攻撃を受け撃沈されてしまったのです。」
「何やってんのよ。」
「・・・この事態を受け、日本軍は今後集団輸送の方式を執るようになりました。
船団の護衛には北方警備の任に就いていた第五艦隊が当たる事になったのです。」
「南の方と話が同じになってきたな。」
「・・・北でも南でもやる事は変わりませんからね。
アッツ島沖海戦は、輸送船団を警護していた第五艦隊とアメリカ軍の間に起きた戦闘なのです。一応、地図を出しておきましょうか。」
「西方にソ連、東方にアラスカがあるものと思ってください。
両島はツンドラの気候であり北方ですから海も荒れる事が多いので・・・少なくともすごしやすい環境ではありません。」
「ますます何の為に占領してんのか分からなくなってくるわね。」
「3月27日、アッツ島への輸送船団を護衛中、第五艦隊はアメリカ艦隊と遭遇しました。」
日本軍
重巡×2、軽巡×2、駆逐艦×4
アメリカ軍
重巡×1、軽巡×1、駆逐艦×4
「・・・兵力的には日本軍のほうが有利。砲塔の数も魚雷発射管の数もアメリカ軍は及びません。」
「ふ〜ん、なら後は攻撃するだけだね。」
「・・・敵艦隊発見と同時に戦闘態勢に移行。
重巡からは着弾観測の為の偵察機も飛ばし、万全とも言える体制で戦いに臨みました。
しかし、結論から言ってしまえば・・・この戦いは日本軍の負けとなってしまったのです。」
「なんでまた?また例によって運とかの問題か?」
「いえ・・・、確かに運的な要素はありましたがさほど重要ではありません。
このアッツ島沖海戦はアメリカ軍が早々に退避の体勢に入ってしまい、日本軍は逃げるアメリカ軍を追撃するという格好でした。
南西に退避したアメリカ軍の退路を経つ為、日本艦隊は北東に位置。
20kmの遠距離の為か双方とも中々命中弾を与える事が出来なかったのです。」
「遠距離って・・・距離詰めればいいじゃん。」
「全力で逃げる相手ですから、距離を詰めるのも大変なんです。
追いつくには、なんとかして相手に損傷を与えるなり何なりしなければなりませんから。」
「・・・船の速度に大きな差が無ければそうなるのも当然か。」
「この戦いで、日本軍の重巡2隻が放った主砲弾は約1600発。その中で敵艦に命中したのはわずか6発。
敵重巡ソルトレークシティを航行不能にまで追い込んだものの、結果的には取り逃がしてしまっています。」
「駄目駄目じゃん。何やってんだか。」
「・・・アメリカ艦隊を取り逃がしたばかりではなく
第五艦隊は本来の目的である輸送船団の護衛すら果たせなくなってしまいました。
日本軍は資材の輸送を諦め帰還するより他ありませんでした。」
「・・・ホント駄目じゃない。何の目的も達成してないじゃん。」
「そうだな。こればかりは・・・弁護のしようはあるまい。」
「・・・この戦いの直後、第五艦隊司令長官の細萱戊子郎中将は更迭、予備役へと編入されました。
また、この戦い以降アリューシャン諸島への船団輸送は行われず駆逐艦や潜水艦による小規模輸送に頼らざるを得なくなりました。
この戦いばかりは・・・何も言う事は出来ません。」
「おや、いつも日本軍を弁護する綾波さんが珍しいですねぇ。クスクス。」
「・・・あえて言うなら、命中弾が少なかったのは20kmという遠距離が原因。
砲撃そのものは手を抜いていた訳ではありません・・・。それくらいです、私が言えるのは・・・。」
「アスカさん、チャ〜ンスですよ!」
「はぁ?何がよ。」
「お得意の勝利宣言。」
「知らないわよ!どこぞの民族じゃあるまいし!」
「・・・アッツ・キスカ両島はその後、5月にアメリカ軍の強襲を受けました。
キスカ島守備隊は奇跡的に撤収作戦が成功していますが、アッツ島守備隊は全滅しました。」
「ホント、何やってんのよ。」
「・・・日本軍の方針としては両島の防備を固め、飛行場を建設するという方向で進んでいました。
そんな最中に受けたアメリカ軍の強襲、アッツ島への上陸は予想外だったと言えるででしょう。」
「・・・地図を見てもらえれば分かると思うのですが、アメリカ軍は日本に近いアッツ島の攻略を優先させました。
日本軍もキスカ島の防備に重点を置いていた為、虚を付かれた格好になってしまったのです。」
「・・・敵の退路を断つという意味でも、その戦略は妥当なところだろうな。」
「・・・しかし、アメリカ軍にとって予想外な出来事があったとすれば日本軍の抵抗でしょうね。
アッツ島に上陸した兵力は約10000名、対するアッツ島守備隊は約2600名。
装備の面でもどちらが有利かは説明するまでも無いでしょう。」
「それはそうだけど・・・それがどうしたの?」
「・・・上陸早々、アメリカ軍の師団長ブラウン少将が解任されています。
原因は援軍要請をしたという事らしいのですが・・・少数の日本軍に対し苦戦を強いられていると言う証左の一つにはなるかと思います。」
「ふ〜ん・・・。」
「・・・しかし、援軍が無ければ善戦しようともいつかは力尽きます。
5月29日、敵上陸から18日・・・一角に追い込まれたアッツ島守備隊は機密文書を処分。
万歳三唱の後、突撃・自決し部隊は全滅したのです。」
「なんで降伏しないのよ。アメリカ軍って言ったって鬼じゃないんだから・・・」
「・・・その判断は保留させていただきます。アメリカ軍の捕虜の扱いは場所次第、気分次第と言えますからね。
ちゃんとした捕虜の扱いを受けた人もいれば、虐待され死んでしまった人もいます。
当時は、人種差別が横行していた時代ですから・・・日本人の感覚としては突撃・自決したとしても不思議は無いのです。」
「鬼〜鬼〜♪」
「るさいっ!なんで私に言うのよ!」
「ほら、アスカさんはアメリカ国籍でしょ?やはり西洋人の野蛮な血を引いているのではないかと・・・」
「うるさいってば!大体、このご時世に人種差別なんて時代錯誤な事を言ってんじゃないわよ!」
「・・・宇宙世紀では、アースノイドとスペースノイドでいがみ合ってますからね。今も昔も大して変わりませんよ。」
「珍しい・・・、あんたが脱線に食いついてくるなんて。」
「・・・当時の日本人の考え方を難しく考える必要はありませんよ。
北○鮮が攻めてきたら投降するか?という仮定で考えてみれば、答えは考えるまでも無いと思いますが。」
「ありえない例えをすんじゃないわよ・・・。」
「なら、ロシアでもソ連でも中国でもどこでもかまいません。」
「私はそういう事を言ってんじゃないの!ヘンに猜疑心を煽るような事を言うのは良くないって事よ!」
「・・・ご安心下さい。日本人がどう考えていようと中国と朝鮮半島は日本を敵と見なしていますから。
むしろ、敵を敵と判断出来ていない事の方が危険かと思います。」
「ねぇ、なに話してんのか分からないんだけど・・・どゆ事?」
「私に聞くな・・・、分かる訳がないだろう。」
「・・・まぁ、そういった話についてはこの辺で止めておきます。
とりあえず、当時の日本ではそういった考え方が大多数を占めていたと考えてもらえれば問題はありまえん。
話が随分逸れてしまいましたが、アッツ・キスカについては以上です。何か質問はありますか?」
「いや、これと言って何も無いが・・・。」
「ちょっと良い?」
「またイチャモンでつか?」
「うるさいっ!あんたには聞いてないわよ!」
「・・・で、何か?」
「・・・・・。」
「どうしたの?」
「なに話そうとしたのか忘れちゃった・・・。」
「やれやれ、場の読めない人はこれだから困ります。」
「あんたがしょーもないツッコミ入れるからよ!」
「言い訳キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」
「るさいっ!」
「え〜と・・・、質問は無いようなので次に移ります。次の舞台は再び南太平洋になります。」
「北に南に忙しいねぇ。」
「・・・昭和18年6月30日、小康状態を保っていたソロモン諸島においてアメリカ軍が侵攻を開始しました。
アメリカ軍の戦略はソロモン諸島の日本軍基地を一つ一つ潰していくというものでした。
最初に攻撃目標となったのは中部ソロモンのレンドバ島です。」
「えへへ・・・」
「地図はこちらになっています。」
「あら、随分と用意が良いわね。」
「で、アメリカ軍が攻めてきたのってどこだっけ?」
「・・・レンドバ島です。同島の対岸には日本軍の中部ソロモンの拠点ムンダ航空基地があり、
アメリカ軍を放っておけば脅威となるのは確実。日本軍は直ちに航空攻撃を開始しました。」
「まぁ、この地図をアテにするならホントに目と鼻の先だものね。攻撃しない方がおかしいと思うけど。」
「・・・3回行われた航空攻撃ですが、アメリカ軍の迎撃機や対空砲の影響で損害が増えるばかり。
陸海共同で行われた作戦も大した損害を与える事は出来ませんでした。」
「最近そんな事ばかりですね。」
「・・・アメリカ軍艦艇はこの頃になると10kmの距離からの精密なレーダー射撃が行えるようになってきているのです。
一方の日本軍は目視が基本。技術格差というのは恐ろしいものです。」
「あんなデカブツ造ってるからよ。」
「まぁ、良いではないか。大は小を兼ねると言うだろう?」
「兼ねるかっ!」
「・・・話は飛びますが戦艦陸奥が爆沈したのもこの時期でしたね。敵と戦う事も出来ずに沈んでしまうなんて・・・悲しい事です。」
「いや、ほんとに話が飛びすぎだから・・・。」
「それって確か瀬戸内海での話しでしたっけ?三式弾の影響で爆発したとか・・・」
「・・・爆沈の原因については分からないので保留にしておきます。
もっとも、陸奥の沈没寸前に目撃された煙の色から沈没の原因は三式弾ではなく通常弾だったという話がありますが・・・」
「そうでしたっけ?」
「・・・分からないので保留です。
さて、アメリカ軍の脅威にさらされている日本軍ですが黙ってみている訳にもいきません。
日本軍はムンダ飛行場防備の為に駆逐艦による増援輸送を計画しました。」
「この前のアッツとかの話と一緒っぽいね・・・。」
「アメリカ軍は当然、日本軍の増援を阻止しようとしてきます。そんな状況で始まったのがクラ湾夜戦と呼ばれる海戦です。」
「やってる事・・・ほんと一緒ね。」
「・・・日本軍が投入した戦力は駆逐艦10隻。
もっとも、10隻のうち7隻は輸送任務に従事する事になるので、戦闘に使える艦は3隻という事になります。」
「だいじょぶだいじょぶ。日本軍の駆逐艦って鬼なんでしょ?これまでも活躍しまくってたじゃん。」
「鬼〜鬼〜♪」
「・・・確かに、日本軍の水雷戦隊の実力はかなりのものです。
しかし、技術的な差というのはそれすら帳消しに出来る可能性を秘めているのです。こればかりは・・・どうにもなりません。」
「物量の次は技術の差?あんたって何が何でも日本軍を擁護すんのね〜。」
「そういうアスカさんだって何が何でも日本を咎めたいんでしょ?」
「誰がよ!私はそこまで偏ってないわよ!」
「・・・戦いとは情報が全てです。
レーダーによって、遠距離から敵の位置・動きを察知出来るアメリカ軍に対し日本軍はほぼ目視なのです。
以前は優位に戦う事が出来ましたが・・・今は互角に戦うのが精一杯くらいでしょう。」
「・・・防御兵器とか言って、レーダー開発を怠ってたからそういう事になるのよ。自業自得じゃない。」
「・・・ふぅ。」
「ムカつくわね!何なのよ、そのため息は!」
「仮にレーダー開発を優先させ成功していたとして
逆に武装が貧弱では兵器としては何の役にも立たないでしょう?あちらを立てればこちらが立たず・・・
アスカの意見は完全な後知恵です。」
「後知恵乙であります(`・ω・´)ゝ」
「るさいっ!」
「一応、この海戦では日本軍も最新鋭の駆逐艦を投入しています。」
「これまでのものと何か違うのか?」
「どーせ、ファーストのことだもの。前も似たような話があったじゃない。まったく・・・日本軍をヨイショしすぎなのよ。」
「この秋月型駆逐艦は防空駆逐艦とされ、敵航空機から空母を護る事を目的として建造されました。
特に九八式10cm65口径連装高角砲は、初速・発射速度・旋回速度など優れた性能を発揮したそうです。」
「ほう・・・最新鋭と言うのも伊達じゃないみたいだな。」
「秋月型駆逐艦は伊達じゃない!」
「いいから・・・。」
「また、クラ湾夜戦で投入された秋月型駆逐艦新月には逆探が搭載されていました。」
「逆探?」
「敵の放ったレーダー波を捕え、位置を割り出す機器の事です。
クラ湾夜戦で使用された時、新月の逆探は5kmの距離でレーダー波を感知しています。」
「開発が遅れていたわりには頑張ってるじゃないですか。誰です?秋月型駆逐艦を前のと一緒だなんて言ったのは?」
「うるっさいわね〜!そんなのどうでも良いでしょ!」
「どうでもよくありませんよ、ちゃんと負けは認めないと♪」
「しつこい!」
「・・・このように日本軍の駆逐艦は優秀な艦が多いのです。
先の逆探はドイツから技術を輸入されたなんて話を聞いた事もありますが・・・本当かどうかはよく解りません。
とにかく、旧海軍はよく言われるような大艦巨砲主義万歳だけの軍隊ではないのです。
まぁ、当然の話なんですけどね。大艦巨砲主義だけで海軍が成り立つわけはありませんから。」
「そう?ちょっと調べてみたんだけど・・・その秋月ってのは防空駆逐艦なのに魚雷発射管積んでるじゃん。」
「エヘへ・・・、どういう事なのかわからないんだけど。」
「だから、本来の役目からかけ離れてる兵器を積んでるって事。
対空攻撃が基本の船になんで魚雷発射管があるのよ?」
「いけませんか?」
「当たり前でしょ!そんなのラーカイラムにビームサーベル付いてる様なモンよ。
余計な装備を搭載すればそれだけ余計に人も増えるんだから。無駄が多すぎるのよ無駄が!」
「無駄無駄無駄無駄無駄!」
「オラオラオラオラオラ!」
「ジョジョ好きなのか?お前ら。」
「魚雷発射管の一つや二つ良いじゃないですか。細かい事は気にしないで下さい。」
「をい!」
「・・・魚雷発射管を搭載したのは、建造の為の予算を通しやすくする為だったという話があります。
日本はアメリカと違って余裕が無いので、ある方面のみに特化した機体というのは了承されにくかったのです。
特に、日本軍は新兵器に多くの性能を求める傾向が強かったので・・・」
「だからって使えない兵器じゃしょうがないでしょ。」
「何が使えないんですか?」
「その防空駆逐艦。魚雷はともかくアメリカみたいな信管が無いんじゃ使えるわけ無いでしょ。」
「その意見を肯定すると、日本の兵器全てが使えないという事になりますよ?それは暴論というものです。」
「む・・・」
「もっとも、九八式10cm65口径連装高角砲は高性能でしたが複雑さゆえに量産が難しく
大量生産には向かなかったという話もありますが・・・まぁ、お茶目さんという事で良しとしておきます。」
「お茶目さんじゃないっ!」
「・・・さて、実戦投入された新月ですがその生涯は不幸でした。
逆探で敵を察知したものの、アメリカ軍の待ち伏せを受け沈没してしまっているのです。」
「意外とあっけないんだね・・・。」
「しかし、日本軍も負けてはいません。後続の駆逐艦が魚雷を放ち軽巡ヘレナを葬り去る事に成功しています。
完全ではありませんが増援部隊は無事目的地に到達し、補給物資の揚陸もある程度は成功しています。
一応、戦略目標である前線への補給は果たしているので作戦は成功と言えるでしょう。」
「どーせ、あんたのいう事だから、かなり贔屓目で見てるんでしょうけど。」
「ところで、今回の海戦での損害は双方とも一隻ずつなのか?」
「いえ、違います。」
日本軍
駆逐艦・新月(沈没)
駆逐艦・長月(沈没)
アメリカ軍
軽巡洋艦・ヘレナ(沈没)
「ほら、やっぱり。ちゃっかり2隻も沈んでんじゃん。」
「つーか、いつ沈んだんだ?」
「揚陸地点に向かう途中で座礁してしまったそうです。翌日米軍機に発見され・・・爆撃を受けて沈んでしまいました。」
「乗組員は?」
「・・・分かりません。救助されていれば良いなぁとは思いたいですが、確定した情報が無いので保留としておきます。」
「をいをい・・・願望混ぜてどうすんのよ。」
「・・・クラ湾夜戦については以上です。何か質問はありますか?」
「質問ってほどじゃないんだけど・・・」
「どうしました?」
「日本もだんだんと負けが多くなってきてるんだね。」
「仕方あるまい・・・。劣勢の兵力では、いずれ負けてゆくのが必定だからな。」
「でもさ、そういう時に隠していた新兵器を投入して一気に挽回って・・・そういうパターンあるじゃん。
そういう話があっても良いと思うんだけど。」
「待て待て、それでは仮想戦記になってしまうだろう。現実に劣勢な日本軍がそんな兵器を開発出来るはずも無い。」
「え〜、ちょっとくらいありそうなモンじゃん。」
「アメリカ軍の想像を超えた新兵器ならありますが、
少数で劣勢を跳ね返すような連邦の白いMSの様な機体は存在しません。
戦争において必要なのは少数の特機ではなく多数の量産機ですから。もちろん、多少の例外はありますが。」
「あんた、言ってる事に一貫性が無くない?」
「何がですか?」
「だ〜か〜ら!あのデカブツよ!
たくさんの量産機のほうが使えるってんなら、大和を造るんじゃなくて他の兵器を造った方が使えるって事でしょ?」
「・・・つながりの無い話を、一つにまとめて話されても困ります。」
「何がよ!十分筋が通ってるでしょうが!」
「・・・日本軍が大和の建造を行ったのは、条約により軍艦の保有量が決められてしまっていたからです。
量で上回る事が出来ないのなら質を求めるしかない・・・至極当然の話だと思いますが?」
「なら、さっき話してた量産機どうたらって話は何なのよ?」
「それはそれ、これはこれ・・・です。二つの話に繋がりは見出せません。」
「あんたは〜!分からない女ね〜!」
「台詞に昼ドラの匂いがプンプンしてますねぇ〜。」
「昼ドラかぁ・・・、あんま見たこと無いからわかんないけど・・・」
「そのうち、アスカさんがこの泥棒ネコ!とか言って綾波さんに掴みかかりますから♪」
「さっぱり話が見えてこんが・・・」
「・・・アスカ、日本語でお願いします。何を言おうとしているのかわかりません。」
「ちょっと!人をおちょくるのもいい加減にしなさいよ!あんたが妙な事を口走っているのが原因でしょ!」
「どうやら話は平行線・・・か?」
「そうみたい・・・。」
「・・・わかりました。では、簡単な例え話で説明しましょう。これなら私の真意は分かっていただけるはずです。
私が量産機のほうが良いと言ったのは、
例えて言うならゲルググ×1とザクU×10、選ぶのならザクUの方が良い
と、私の意見はこういった意味合いです。
小規模な戦いなら個々の性能の高さでカバー出来るでしょうが
大局的に見るのなら多少の性能を犠牲にしてでも数を集めた方が有利・・・そういう事を言いたかったのです。」
「分かったような分からないような・・・」
「難しく考えるな。所詮、戦いは数だという基本に過ぎん。」
「だから、その話をそのまま使うと大和一隻より駆逐艦十隻の方が使えるって事になるでしょ?」
「なりません。」
「な、なんでよ!」
「比較する対象が違うからです。
アスカは、用途の違う兵器を一まとめに話しているからワケが解らなくなっているのです。
戦艦と駆逐艦を同列に語るのは誤解の元ですよ。」
「ふむ、確かに。」
「一理ありまつね。」
「無いっての!勝手に話を作るんじゃないわよ!」
「・・・戦艦と駆逐艦では、設計思想や運用などに大きな隔たりがあるのが当然。
それらを無視して話を進められても困ります。
もし、比較するなら大和×1と扶桑×5どちらを選ぶかといった例えの方が、まだ筋が通っていると思いますよ?」
「む・・・」
「分かってもらえましたか?」
「クスクス、玉砕したばかりか敵に塩まで送られているのでは・・・恥ずかしくて表を歩けなくなってしまうんじゃないですかねぇ。」
「うるさいわね!少しは黙ってなさいよ!」
「アスカ、落ち着いて・・・」
「・・・話がずいぶん横道に逸れてしまいました。そろそろ次の海戦に移りたいと思います。」
「やれやれ・・・、やっと話が進むか。」
「ま、いつも通りっちゃいつも通りだがな。」
「・・・次は7月12日に行われたコロンバンガラ島沖夜戦です。
日本軍のおかれた状況は前回とほぼ同じ。日本軍の作戦目的もムンダ飛行場維持の為の物資補給任務でした。
しかし、複数の艦艇で実行する輸送任務がアメリカに秘匿できるはずもありません。
・・・コロンバンガラ島についてはこちらの地図でご確認をお願いします。」
「やってる事、全然変わんないんだね〜。」
「仕方あるまい・・・。前線基地を維持するには、補給はどうしても必要だからな。」
「でも、これまでの事から考えたらどんなに補給しても無駄な気がするんだけど。」
「どういうこった?」
「だってそうじゃない。ちょこちょこ補給したって・・・アメリカ軍の物量相手に勝てるわけないでしょうに。」
「・・・では、補給もせずに前線の将兵を見捨てろと?」
「そうは言ってないわよ。
ただ、どのみちそのなんとかって飛行場も落とされるんだから
さっさと撤退なり何なりさせて防衛線を引き下げちゃった方が良いって事よ。」
「・・・なるほど、そういう事ですか。」
「そ。どーせ、日本の事だから防衛陣地築くのだって時間かかるんでしょ?
何もガダルカナルに近いところで張り合わなくたって良いじゃん。」
「また、分からないんだけど・・・」
「例の漫画の受け売りでつか?」
「違うわよ!」
「アスカの意見は確かに一理ありますが・・・そのプランはすでに検討されてましたよ。」
「なぬ?」
「ガダルカナル島からの撤退作戦が終わった昭和18年2月・・・次の防衛線はどこに敷くか
陸軍と海軍で意見が分かれた時期があるのです。」
陸軍・ニューブリテン島付近
海軍・中部ソロモン死守
「と・・・まぁ、こんな感じで。ニューブリテン島とはラバウルの周辺の事で、もし実行するなら大幅な後退になります。」
「7月の時点で中部ソロモンに兵がいるのだから・・・結局、海軍の意見が通ったという事か。」
「ちょっと!せっかくそんな良い方法考えてたならなんで実行しないのよ!」
「自分で良い方法って言うかね、普通。」
「るさいっ!」
「・・・ラバウルまで下がると言う事は、当然ラバウルそのものが敵の攻撃にさらされる事になります。」
「だから?」
「以前にも説明しましたが、ラバウルが落ちれば次は連合艦隊根拠地のトラック環礁が攻撃圏内に入り
同基地の保持が困難になります。海軍にとっての前線基地であるソロモン諸島の維持
これはどうしても譲れない要素だったのです。」
「だからって、むやみに戦線を広げても意味無いでしょうが!今だって補給が一杯一杯のくせに!」
「正直、どちらの選択肢も一長一短なのですが・・・
結局、陸軍と海軍の主張を足して2で割った様なプランが採用される事になりました。」
「そんなの微妙スギ〜♪」
「そのネタ古くない?」
「良いものは受け継がれてゆくのです。先人達の業績は後世に伝えなければなりません。ウンウン。」
「何の話なのよ・・・。」
「それは良いとして・・・さっきから話がチンプンカンプンなんだよね〜。」
「どこでアメリカ軍を迎え撃った方が良いのかって話で・・・まぁ、結局はどっちもどっちだったって事さ。」
「ふ〜ん・・・。」
「本当に分かったのか?」
「全然♪」
「やはりか。少しは真面目に聞け。」
「え〜、ちゃんと聞いてもわからないんだからしょーがないじゃん。」
「・・・では、次からはもう少し分かりやすく説明しましょう。コロンバンガラ島沖夜戦での戦力差は次の通りです。」
日本軍
軽巡洋艦×1、駆逐艦×9
アメリカ軍(連合軍)
巡洋艦×3、駆逐艦×10
「連合軍?」
「この戦いにはニュージーランドの巡洋艦も参加しているようなので・・・
もっとも、主力はアメリカ軍ですからおまけみたいなものなのですが。」
「酷い言われ様だな、ニュージーランドも。」
「・・・7月12日23:00頃、コロンバンガラ島沖で敵艦隊と遭遇した日本軍は、まず輸送隊の駆逐艦4隻を退避させました。」
「輸送隊って?普通の駆逐艦と何か違うの?」
「日本軍は輸送任務に駆逐艦を使用していたというのは前々から話に出ていただろう?
補給物資や人員を満載した輸送任務中の駆逐艦では戦闘は難しい。だから、退避させざるをえなかったのだ。」
「ふ〜ん・・・。」
「理解したのか?」
「ん〜・・・、なんとなく。」
「・・・まぁいいだろう。」
「・・・一方、接近を続ける敵を迎撃する為
警戒隊の巡洋艦神通が先頭に立ち、警戒隊の駆逐艦5隻を率いて突撃していきました。」
「突撃って言うと・・・ウラーって言うアレですか?」
「アレはアレ、こっちはこっち・・・一緒にされても困ります。」
「でも、突撃なんでしょ?」
「・・・なら、前進という事にしておきます。」
「くぉら!日本語すり替えてどうすんのよ!」
「・・・巡洋艦・駆逐艦の編成で的確に相手を葬り去るには接近戦が最善です。
その過程を一言で表現するなら突撃という表現が適切かと・・・
しかし突撃=愚策というような誤ったプロパガンダを利用する方々がいるので・・・あえて表現を変えてみただけの話です。」
「なんで、私の方を見ながら言うのよ?」
「・・・・・。」
「ムカつく〜!言いたい事があるなら黙ってないでハッキリ言いなさいよ!」
「二軍さん♪」
「うるさい!あんたには言ってないわよ!」
「ねぇ、二軍じゃ駄目なの?」
「駄目と言う事は無かろう。二軍とは言え、後方に無傷の兵を配置しておけばそれは有効な予備隊となる。
戦局如何で投入できる予備隊は重要な要素の一つだ。」
「あんたも余計な事解説してんじゃないわよ!そんなのどうだって良いでしょ!」
「フォローしてやったというのに・・・何がそんなに気に入らないのだ?」
「・・・さて、単縦陣で前進していた日本軍ですが、アメリカ軍もまた単縦陣で接近していました。
アメリカ軍もほぼ同時刻に日本軍をレーダーで捉えています。
日米の戦力差を比較してみると・・・数においては日本軍の劣勢は免れません。」
「駄目じゃん。」
「しかし、帝国海軍の駆逐艦には一撃必殺の切り札・・・
言わば魂×ツインレーザーソード(フル改造)に匹敵する九三式酸素魚雷の存在があります。
戦いは基本的に数ですが、決してそれだけではないのが奥の深いところです。」
「ん〜・・・まぁ、そうかもな。」
「ところでそのツインなんたらって何よ?」
「・・・今回、参入したドラグナーの最強兵装です。終盤戦は随分お世話になりました。」
「何の話だ・・・?」
「マシュマー様が知らないのはしょーがないって。出番無いんじゃね〜。」
「そうです。所詮この世は弱肉強食です。」
「つーか、ひし形。あんたはただのおまけでしょうに。」
「おまけでも出られればいいんです。後半お約束の様に戦列から離れる二軍さんは黙っててください♪」
「うるさいって言ってるでしょ!」
「・・・ギガノスの蒼き鷹はビルバインの再来。
精神コマンド無しで敵の攻撃をさけまくる時点で、スーパーロボット系の出番は自ずと無くなります。
もっとも、これはあくまで個人的な意見ですが。」
「あんたも・・・なに脱線させてんのよ。話をさっさと戻しなさいよ。」
「ドラグナー系は基本的にそこそこの能力ですが、蒼き鷹の機体だけは別格です。
マジンガーやゲッターと違い、実弾兵装とEN兵装のバランスが良く補給を必要とする機会がほとんど無いと言う事・・・。
弾が尽きENが切れる頃にはすでに敵は残っていませんからね。」
「だから戻しなさいって言ってるでしょ!いつまで脱線する気なのよ、あんたは!」
「・・・グレートブースターやゲッターシャイン1〜2回で弾切れエネルギー切れになる機体の方が良いですか?
壁にするにも毎回毎回ほぼ確実にダメージを負う機体がそれほど良いと?」
「聞きなさいよ!人の話を!大体、なんでまたスパロボを例えに出すのよ!」
「・・・分かりやすいと思って。」
「ま、あたしの場合はプルツーとのツインファンネルがあるから十分使えると思うけどね〜♪」
「そんな事言ったら、私だってユニゾンキックがあるわよ。あの馬鹿シンジと一緒ってのが嫌なんけどね。」
「対空攻撃出来ないじゃないですか。」
「うるっさいわね〜!ミノフスキークラフト付ければ十分でしょ!つまんない揚げ足取りすんじゃないわよ!」
「なんかこう・・・話についていけねぇな。」
「・・・うむ。」
「・・・そろそろ話を戻します。日米双方とも前進を続けていたので、距離は確実に縮まっていました。
その時、軽巡神通がある行動をとったのです。」
「いきなり話が戻ったわね。」
「ところである行動って?」
「・・・探照灯を敵艦隊に向けて照射したのです。
海上を照らし出し敵艦隊の姿が明確になりました。これにより、後続の駆逐艦はより的確な攻撃が行えるようになったのです。」
「だが・・・、灯かりで敵を照らすというのは危険ではないか?逆から考えれば自艦の位置を敵に教える事になる。」
「・・・そうです。探照灯で照射したのは一時ですが、神通はアメリカ艦隊から猛烈な射撃を浴びてしまったのです。」
「それ・・・十分予想できる話でしょ?何わざわざ危ない事してんのよ。」
「・・・日本軍の傾向として戦闘の時、旗艦が先陣を切るのが慣例となっていた様なのです。
以前話したルンガ沖夜戦の際、後方に位置しながら臨機応変な指揮で敵艦隊を打ち破った田中少将が批判を受けた様に・・・
これは良かれ悪かれ日本の伝統ですから。」
「だから、伝統で済ませるんじゃないわよ。」
「・・・砲撃を受け、神通の主要幹部は全員戦死。
幹部が失われてしまった為、総員退去命令も出せないまま乗組員は必死に応戦しつつも艦と運命をともにしていったのです。」
「・・・なんか悲惨過ぎないか、それ。」
「つーか救助はどうしたのよ、救助は。」
「・・・魚雷の再装填のため、
一時戦場を離脱した日本軍の駆逐艦が再び戻ってきた時、海域に神通や敵艦の姿はありませんでした。」
「姿が無いって・・・」
「・・・言葉の通りです。装填作業を終えた駆逐艦が戦闘海域に帰ってきた時、神通は沈没。
また、月明かりも消えてしまい追撃も不可能・・・。コロンバンガラ島沖夜戦はこの時点で終了しました。」
日本軍
巡洋艦・神通(沈没)
アメリカ軍(連合軍)
駆逐艦・グゥイン(沈没)
軽巡洋艦・ホノルル(大破)
軽巡洋艦・セントルイス(大破)
軽巡洋艦・リアンダー(大破)
駆逐艦・ウッドルース(大破)
駆逐艦・ブキャナン(大破)
「・・・これが、双方の戦果なのか?」
「・・・そうです。」
「いつの間に、そんな大打撃与えてたんだ?」
「・・・神通が敵艦を照らした後の一度目の攻撃の時です。
結果的に見れば、神通の身を挺した行動があって初めて得られた勝利と言えるのかもしれません。」
「その言い方、美化してるようでなんか嫌だけど・・・」
「・・・それは見解の相違ですね。
大破した駆逐艦2隻については魚雷を回避しようとして衝突したとの事ですが・・・
結果的に損傷を与える事が出来たので良しとします。」
「まぁな。贅沢を言うなら、魚雷を当てる事が出来た方が良かったのだろうが・・・」
「また、当初の目的である輸送任務にも成功しています。
今回のコロンバンガラ島沖夜戦は日本軍の勝利と位置づけても問題は無いと思います。」
「異議な〜し♪」
「我が同志エルピー・プルがそう仰るのなら私も異論はありません。」
「・・・・・。」
「何か不服そうだな。」
「勝利勝利って言ったって全体的に見たら小さなモンでしょ?そんなに持ち上げる内容じゃないでしょうに。」
「・・・戦局に大きな影響を与える事は出来ませんでした。
しかし、それでもムンダ飛行場が約1ヵ月に亘って持ちこたえる事が出来たのも、このような小さな勝利があってこその事です。
その意義は決して小さなものではありません。」
「よ〜く考えよ〜♪」
「補給は大事だよ〜♪」
「・・・・・。」
「しかし、昭和18年8月3日・・・ムンダ飛行場はアメリカ軍に占領されてしまいました。」
「あ、やっぱり占領されちゃったんだ・・・。」
「言わんこっちゃない。」
「・・・しかし、連合軍側から見てもムンダ飛行場の占領は楽な仕事ではありませんでした。
四個師団(40000人)を投入してようやく占領・・・というのが正直なところですから。」
「日本軍の頑強な抵抗はよく聞く話だが・・・間違いでは無いようだな。」
「・・・この日本軍の抵抗に嫌気がさした連合軍は
日本軍の陣地を地道に占領していくという当初の方針を変更する事にしたのです。」
「変更って言うと・・・どんなだ?」
「こちらの地図をご覧下さい。」
「・・・日本軍はムンダの後方に位置するコロンバンガラ島の防備を固めていました。
アメリカ軍の侵攻が当然来るものとして。しかし、8月15日。アメリカ軍はコロンバンガラ島を無視し
ベララベラ島へ上陸を開始したのです。この想定外の行動に日本軍はかなり動揺しました。」
「そのくらいの事、予想出来ても良いんじゃないの?」
「それは、結果が分かっているからこそ言える話・・・このアメリカ軍の行動に、日本軍は完全に裏をかかれたと言えます。
これにより、日本軍の計画は根底から覆されました。
コロンバンガラ島への補給路を抑えられた事により、同島は放置していてもいずれ絶ち枯れてしまいます。」
「確かにな。」
「ベララベラ島へ援軍を送ろうにも、中途半端な戦力ではガダルカナル島の二の舞になります。
それに、部隊を抽出するにしても現状ではラバウル守備隊から引き抜かなければならない状況であり・・・状況は芳しくありませんでした。」
「なんか・・・ダメダメじゃん。」
「・・・結局はベララベラ島への積極的な増援は控え、既存のホラニウ守備隊基地を増強する方針に決まりました。」
「ふ〜ん、何がなんだか分からないけど・・・」
「・・・次の問題はコロンバンガラ島に残る将兵約12000名の処遇でした。
陸海軍の協議の結果、コロンバンバンガラ島から兵員をすべて撤収させ、ブーゲンビル島の防衛に回す事に決まったのです。」
「そんなうまくいくものなんですか?孤立した敵陣でしょ、そこ。」
「・・・9月から10月にかけて行われた撤収作戦により、コロンバンガラ島の将兵は撤退することが出来ました。
多少の犠牲はあったようですが・・・正確な数字は分かりません。」
「分からないって・・・ちゃんと調べなさいよ。」
「記録が見つからないのでは仕方ありません。適当な事を言う訳にはいきませんし・・・。」
「どう聞いても言い訳にしか聞こえないんだけど・・・」
「・・・その後、中部ソロモンに残った将兵を撤退させるための計画が遂行されました。
そして、それを阻止するべく迎撃に向かったアメリカ軍との間で起きた海戦が第二次ベララベラ海戦です。
この戦いで、日本軍は駆逐艦夕雲を失いましたが、敵駆逐艦シェバリエを撃沈。セルブリッジとオバノンを大破させています。」
「へ〜、結構やるじゃん♪」
「あの・・・第二次って事は、第一次ベララベラ海戦もあったんですか?」
「話してませんでしたっけ?」
「・・・忘れてんじゃないわよ。豪快に抜けてるじゃない。」
「同じ様な話が多いので・・・すみません。
第一次ベララベラ海戦とは、おなじみとなった日本の輸送作戦中に発生した遭遇戦です。
あまり大規模な戦いではないので、説明は省略します。
さて、中部ソロモンからの日本軍の撤退作戦も無事終了。今後、戦場はラバウル方面に移っていく事になります。」
「それにしても、ずいぶん長いな。このまま一気に昭和19年にまでいっちまうのか?」
「・・・いえ、それは無理です。昭和18年に起きた大規模な海戦が残っています。次はそのあたりの話です。」
「つーかちょっといい?」
「なんです?」
「あんた、故意に説明してない話があるでしょ。」
「そうなの?」
「そ。ベラ湾夜戦ってのを抜かしてるのよ。」
「ベラ湾夜戦・・・どんな戦いだ?」
「輸送任務についていた日本軍の駆逐艦が、
アメリカ軍に一方的に沈められた戦いがあるの。聞いた事無いでしょ?」
「うん。」
「聞いたでしょ?ファースト、どう言い訳するつもり?」
「・・・故意に説明を省いたつもりはありません。指摘があれば説明しましたよ?」
「なに寝ぼけた事言ってんのよ!日本軍が負けた情報を流さないなんて・・・大本営にも程があるでしょ!」
「・・・情報操作といった点で見ればまだ可愛いものです。大した事はありませんよ。」
「そういう問題じゃないわよ!
あんたの性根が気に入らないっつってんの!」
「・・・次はブーゲンビル島沖海戦になります。」
「無視すんじゃないわよ!」