帝国海軍潜水戦隊 参
「では、そろそろ開戦時の話に移りましょう。」
「開戦時と言うと・・・真珠湾か?」
「そうです。南雲機動部隊がハワイオアフ島への攻撃に向かっている頃、
帝国海軍の潜水艦隊である第六艦隊所属の潜水艦もハワイへと進出していました。」
「南雲さんかぁ。なんか久しぶりだね〜。」
「まぁな。南雲機動部隊とやらが最後に話に出たのは南太平洋海戦の時だったか。」
「で、その潜水艦がどーしたのよ?前に真珠湾の話をしてた時にはちっとも触れてなかったじゃない。」
「・・・一応、少しは話したと思いますが。特殊潜航艇の話は覚えていますか?」
「なんだっけ?」
「二人乗りの小型潜水艇の話だ。確か5隻出撃して戦果は無し、全機未帰還だったはずだが。」
「あ〜、そうそう。無謀な特攻隊の話よね。」
「・・・特攻隊とは違います。帰ってこられないから特攻隊というのは短絡的過ぎると思いますが。」
「危険を承知で出撃させてんでしょうが。特攻と似たようなモンじゃない。」
「・・・ふぅ。」
「ムカつくわね〜!いちいちため息つくんじゃないわよ!
言いたい事があるならはっきり言いなさいって言ってるでしょうが!」
「・・・もういいです。」
「諦めキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━
!!!」
「うるっさいわね〜!」
「・・・ところで、特殊潜航艇ってのはなんだ?潜水艦か?」
「・・・魚雷2本を装備した小型潜水艦です。これも条約により潜水艦の保有数を制限された日本軍の苦肉の策と言えます。」
「なにそれ?」
「・・・ワシントン海軍軍縮条約では主力艦の制限のみでしたが、
後年にはロンドン軍縮条約も締結され、巡洋艦や駆逐艦、潜水艦に至るまで保有数が制限されてしまったのです。
当然の事ながら、帝国海軍の保有数は米英に比べて少なく抑えられている為、やはり不利は否めない状況でした。」
「あらら、全部抑えられちまったんじゃ完全に不利だわな。」
「・・・まぁ、潜水艦に関しては保有制限は英米と対等だったのですが、巡洋艦や駆逐艦は低く抑えられてしまっています。
もっとも、保有数の制限が無ければさらに不利になってしまう可能性もありましたし
考え方次第とも言えますが、やはり現実問題として日本が不利である事に変わりはありません。
そこで、条約の対象外である小型の潜水艦を多数建造し、数の不利を補おうとしたのです。」
「そんな話ばっかね。」
「・・・他に方法など無いのですから仕方ありません。
しかし、開戦前に期待が寄せられた特殊潜航艇ですが戦果は芳しくありませんでした。」
「そうなんだっけ?」
「前にも説明を聞いたが、さっき私が言っただろう。戦果は無く投入された5隻が全て未帰還だったと。」
「・・・駄目じゃないか。いくらなんでも全滅じゃどうしようも無い。」
「そうよねぇ〜。私もそう思うんだけどファーストが意固地になって認めないのよ〜。」
「アスカさん、良かったですねぇ。」
「は?」
「ほら、いままで孤軍奮闘だったのがプルツーさんのおかげで味方が増えたじゃないですか。」
「ワケわかんないっての。」
「・・・なんの話だ?」
「いえいえ、お気になさらずに。プルツーさん、アスカさんを見捨てないようにお願いしますね♪」
「何を話しているんだ、お前は・・・?」
「・・・帝国海軍の潜水戦隊は事前の訓練で、良好な成績を収めていました。
高い練度を誇り目標艦に肉薄し攻撃を成功させるなど、高い評価を得ていたのですが・・・実戦は訓練どおりにいかなかったのです。」
「なんでんなアホな事してんのよ。訓練が役に立ってないんじゃ何の意味も無いじゃない。」
「・・・そんな事を言われても困ります。
そもそも、日本とアメリカではソナーの性能に大きな差があり、日本軍では探知出来なくてもアメリカ軍では探知可能という状況なのです。
事前の訓練での好成績もあくまで日本軍の艦船を相手にしての話ですから、敵の哨戒能力が高ければ当然の事ながら話は変わります。
やはり、アメリカ軍の哨戒能力の高さは日本軍にとって大きな誤算だったと言っても過言では無いでしょう。
その影響かどうかは不確かですが、ハワイ近辺に多数配置された日本軍の他の潜水艦もそれほどの戦果を得ていませんし・・・。」
「そーなんだ・・・。」
「・・・戦果を得ていないと言っても、
ハワイの島々を小規模に砲撃したりとかはしていますし、補足できた輸送船を沈めたりという事はちゃんとやってますけどね。
また、昭和17年1月12日には伊6潜水艦がアメリカ軍の正規空母サラトガを捕捉、見事魚雷を命中させています。」
「サラトガか・・・。確か幾度も損傷した悪運の強い空母だったな。」
「魚雷一発で沈んだどっかの装甲空母に比べりゃマシでしょうが。」
「なんの話だ?」
「そーいう間の抜けた空母がどっかの国にあったのよ。ね〜、ファースト?」
「・・・・・。」
「しつこい性格してますねぇ。そんなアスカさんにはグラボイズの二つ名を進呈しましょう。」
「なにそれ?」
「トレマーズって映画に出てくる地中に蠢く化け物の事でつ。しつこいアスカさんにピッタリ♪」
「ワケ分かんないっての!大体、使徒のアンタにそんな事言われたくないわよ!」
「低予算でも良い映画が作れるっていう好例だよな、アレ。」
「パニックホラーなのに、なんか明るいという話でしたからねぇ。
登場人物も少ないからギャラも少なくて済みますし話が横道に逸れる事もありません。いい事づくめでつね♪」
「ふ〜ん、なんか面白そーだね♪」
「何の話をしているのだ・・・?」
「・・・話を続けますよ?
特殊潜航艇もそうなのですが、帝国海軍の想定していた潜水艦の使用は不可能に近くなってしまいました。
これは、想定外の事態と言っても言いすぎではありません。」
「そうなのか?」
「以前話した様に、潜水艦を敵艦隊の漸減に使用しようにも日本軍が想定していたのは旧式戦艦を基幹とする艦隊です。
旧式戦艦なら巡航速度は15ノット程度ですから問題ありませんが、
戦争が始まってからの艦隊は空母を中心とした機動部隊となり、巡航速度も25ノット以上にまで上昇してしまいました。
水上速力を重視したとは言っても全力23ノット程度の潜水艦ではどうにもなりません。」
「なんで駄目なの?」
「帝国海軍が考えていた潜水艦の使い方の概要は次の通りです。」
敵を発見する。
↓
敵を追跡し必要に応じて攻撃を敢行。
↓
上記の行動を決戦までに出来るだけ行い敵を漸減する。
「それで?」
「敵の発見については偵察機を搭載した潜水艦もあるとは言え目視が基本ですから、ここは問題ありません。
しかし、次の段階の実行が戦前の想定と大きく異なり困難となってしまったのです。」
「だから、なんでなのよ?」
「敵への攻撃を行うにあたり、潜水艦は敵を攻撃するに最適な射点に付かなければなりません。
そこで問題となってくるのが彼我の速力差です。」
「速力ってスピード?」
「そうです。先ほども申しました通り、有効な射点を取ることが重要です。
そして、潜水艦の場合は基本的に水中から攻撃するという前提がありますので接敵した時点で優位な位置を取らなければなりません。
口で説明するだけでは解りにくいと思うので、簡単に図で表してみましょうか。」
○ ×
「青が自軍潜水艦、赤は敵艦と見て下さい。
左は敵が潜水艦に向かっていく様を表し、右はその逆で遠ざかっている図です。
すでに○×は付けていますから、どちらが有利かは言うまでもないかと思いますが・・・その理由の説明は必要ですか?」
「そんな事まで説明する必要は無いだろ。誰でも解る話だ。」
「解らないんだけど・・・」
「お前ら・・・」
「単純な話ですよ。お互いが近づいていけば距離が詰まり自ずと雷撃の成功率が上がります。
逆に敵が遠ざかろうとすれば速度の遅い潜水艦は距離を開けられ魚雷の命中率が下がる・・・それだけの話です。」
「な〜んだ。そんなの誰だって解りそうなもんじゃん♪」
「そうですねぇ。私達を無知だと言う人がいますけど、彼らはその事実を甘く見ていまつ♪」
「おいおい・・・」
「なんでブッシュが出てくんのよ・・・。」
「だが、なぜここで速度が関係してくるのだ?」
「首尾よく接敵出来て攻撃体制に移れるのなら速度は問題となりません。
ですが、敵艦が遠ざかっていく場合となると話は完全に変わってくるのです。」
「なんでまた?」
「射点に付けず振り切られてしまった場合、必ずではありませんが追撃の必要も出てきます。
戦前から想定されていた巡航速度15ノット程度の旧式戦艦相手なら追跡次第で再び攻撃の機会もおとずれるでしょうが
最大約30ノットの速力が出せる機動部隊相手では、例え敵が巡航速度で離脱したとしても追いつく事が難しくなります。
また、潜水艦も23ノットほどの速力が出せるとは言え最大速力で延々と航行できるわけではありません。
つまり・・・構想そのものが破綻してしまっていると言っても言いすぎでは無いでしょう。」
「何やってんだか・・・。」
「・・・想定外の出来事なのですからどうしようもありません。」
「では、今後はどうするのだ?
本来の使い道が不可能となってしまったのでは他に利点を見出す以外には無いだろうが・・・。」
「それなら、通商破壊でもやれば良いんじゃないか?。ドイツだってやってたんだろ?」
「帝国海軍の石頭にそんな発想あるわけないでしょ。どーせ、艦隊決戦しか思いつかないんだから。」
「・・・帝国海軍も緒戦では潜水艦による通商破壊を行っていますよ。」
「え?」
「(・∀・)ニヤニヤ」
「あんたは引っ込んでなさいよ!」
「まさか、イメージだけで話していたなんて事はありませんよね?」
「え?いや、そんなワケじゃない・・・けど・・・」
「歯切れ悪いでつねぇ♪」
「うるさい!」
「日本軍の緒戦の勢いは以前に話したので今更説明する必要は無いと思いますが・・・
帝国海軍が通商破壊を行っていたのもちょうどその時期になります。相手は主にイギリスやオランダ、オーストラリアの輸送船でしたけどね。」
「よく解らないが・・・輸送船を沈めて良い事でもあるのか?」
「と、言いますと?」
「輸送船なんか沈めたって戦いには勝てないだろう。私たちだって叩くのはいつも敵の主力じゃないか。」
「そりゃそーだが、ロンド・ベルが輸送艦襲撃してどーすんだよ。話的に激しく地味じゃねーか。」
「まぁ・・・確かにな。鶏を割くのに牛刀を用いる様なものだ。」
「そういう事だ。最終的には敵の主力を壊滅させない限りいつまでたっても同じ事だと思うんだが。」
「も〜、プルツーったら素人さんだなぁ♪輸送船を沈めるのって、ものすごく重要なんだよ?」
「・・・知るか。大体、輸送船の何が重要なんだ?」
「え〜とねぇ・・・なんで?」
「私に聞いているんですか?」
「だって、レイなら知ってるでしょ?」
「・・・ちょっと待て。もしかして、お前もよく知らないのか?」
「え〜、知ってるよ?輸送船攻撃はとっても大事って。」
「だから、なんで大事なのかは知らないんだろ?」
「うん♪」
「うん♪じゃない!お前に真面目に質問した私が馬鹿みたいじゃないか!」
「みたいじゃない人ならここに居ますけどね♪」
「ちょっと!それどーいう意味よ!」
「ゴルイルア゙タイスヅヨ、スギッデゴドゥザァ。」
「やかましい!日本語でしゃべりなさいって言ってるでしょ!」
「アスカさんへの愛の告白を皆さんの前で暴露するなんて・・・はずかちぃ〜!」
「気色悪い!あんたに愛なんて語られたくないわよ!大体、脈絡が無いでしょうが脈絡が!」
「(´・ω・`)ショボーン」
「ところで、さっきなんて喋ってたんだ?」
「好意に値するよ(ゴルイルア゙タイスヅヨ)、好きって事さ(スギッデゴドゥザァ)。でつ♪いや〜ん(*/ω\)」
「うるさいって言ってるでしょうが!一々、解説すんじゃないわよ!」
「・・・そろそろ良いでしょうか?輸送船の話に移りたいのですが。」
「ああ、頼む。本当に解らないんだ・・・。」
「・・・輸送船が重要である理由の根幹は、継戦能力の保持という点に尽きます。
前線で自給自足の体制が執られているなら話は別ですが、そんな事はまずありえないのでそういった要素は考慮しなくて良いでしょう。
戦闘を継続する以上食料はもちろんの事、燃料や武器弾薬の補充も必要になります。
また、前線の兵器性能を維持する為のメンテナンスに必要なパーツ等も要ります。でなければ戦力の低下に繋がりますからね。
それに、戦いを継続する以上欠員が出ますから補充人員が来なければ戦争継続も難しくなります。
つまり・・・補給とは主力部隊の充実と同等に戦争を支える重要な要素の一つなのです。」
「あ〜、そういえばマチルダさんもそんな事言ってたっけ♪」
「マッチルッダさぁ〜ん♪」
「言うと思った・・・。」
「でもさ、マチルダさんも出てくる時はちゃんと指示して欲しいよね。」
「まぁ・・・やらんで良い反撃してダメージ食らうからなぁ。」
「救援に向かうこっちの身にもなって欲しいでつ♪」
「なんの話よ・・・。」
「・・・輸送船ってのがそこまで重要だとは思わなかった。」
「まぁ、あまり表には出てこない話だからな。」
「・・・補給は地味ですがとても重要なんです。
実際、第二次大戦ではドイツのUボートによる通商破壊戦により、一時的とは言えイギリスが危機的状況に陥ってしまいましたからね。」
「イギリスってなんだっけ?」
「ヨーロッパの目立たない島国だろ。そんなに重要な事なのか?」
「・・・第二次大戦当時は植民地を数多く持つ大国だったんですよ。
日本が大戦に突入したときはドイツが快進撃・・・モスクワ攻略は失敗していましたが、それでも勢いがありました。
ですが、ドイツの主力は陸軍であり、海軍は潜水艦が主体という日本とは全く異なる軍隊でした。」
「でも、ドイツ軍はすごく合理的だったって言うじゃん。
潜水艦だって、種類を絞って造ってたから効率が良かったって聞くわよ。」
「・・・それが何か?」
「だ〜か〜ら、日本もドイツを真似てれば良かったんじゃないの?
役に立たない巨大戦艦なんか造るよりはよっぽどマシだと思うんだけど。」
「巨大戦艦?」
「・・・何度も説明したのですが、まだ理解していただけてないんですか?」
「まぁ、ニワトリでつから♪」
「誰がニワトリよ!大体、ファーストの説明なんかで納得できるわけがないでしょ!」
「・・・また、一から説明した方がよろしいですか?」
「いやいや、綾波さんが説明する必要ないですよ。それこそニワトリを割くのに牛刀を用いるようなものでつ♪」
「だから、誰がニワトリなのよ!」
「・・・アメリカが新型戦艦を建造する可能性がある以上、日本も新型が必要なのです。
サウスダコタやアイオワのみならずモンタナという大型戦艦まで計画していたんですよ?大和を建造した海軍の判断に間違いはありません。」
「あ〜、惜しい〜!」
「は?何が惜しいんだ?」
「だって、モンタナってプルツーさんのあだ名と一字違いじゃないですか♪」
「ね〜♪」
「な!何かと思えば・・・!いい加減に止めろと言っただろう!」
「エヘへ・・・、よかったねプルツー♪」
「何が良いんだ!」
「だって、前より明るくなってきてるじゃん。おねーさんとしてはとっても嬉しいなぁ♪」
「え・・・?」
「そうですねぇ。最初はなんか近寄りがたい雰囲気があったんですけど・・・話してみると可愛い人じゃないですか。」
「・・・・・。」
「つーかひし形、あんたは近寄って欲しくない部類の存在でしょうが。
あんたにそんな事言われたくないってプルツーだって思ってるわよ。きっと。」
「ヽ( `Д´)ノ=3」
「ま、俺ら一応使徒だからな。」
「いや、そういう意味じゃ無いんだけどさ・・・」
「まぁ、昨日の敵は今日の友と言うだろう?今は共に轡を並べ闘う者同士・・・互いに親睦を深めるというのは良い事だ。
そういった意味では、座学という点以外でもこの講義は役に立っているのかもしれん。」
「・・・皆さんのお役に立てれば幸いです。」
「つーか、講義の内容がもう少し役に立つ話なら、もうちょっとマシになると思うんだけどね〜。」
「アスカさん。」
「何よ?」
「嫌味ばかり言ってて自己嫌悪に陥ったりしないんでつか?」
「何がよ!嫌味なんてそんなに言ってないでしょうが!ひし形の分際で生意気なのよ、あんたは〜!」
「イタタタ!暴力反対〜!手を離して下さい、苦しい〜!」
「・・・・・。」
「どしたの?ずっと、黙っちゃって・・・」
「いや、なんでもない・・・。」
「・・・しかし、なんの話の途中なのかわからなくなってしまったな。」
「・・・ドイツの通商破壊戦の途中でしたが、長くなってしまいそうなので一度区切ります。」