漢たちの早期マリアナ決戦案
「次はこちらです。」
南方方面の概略図
「これ、なんだ?兵器じゃねーだろ。」
「え〜と・・・、意外と兵器についてって語られてる感が多いので今回はちょっと趣向を変えてみました。」
「趣向を変えたって?」
「ほら、巷だと色々言われてるじゃないですか。
日本の海軍は攻勢限界点を越えて進攻したから駄目だったって。
で、その対案でよく出てくるのが防衛線を押し下げて早期にマリアナで決戦しようって話です。
今回はそういう事について話してみようかと思いまして。」
「で、アンタはファーストみたいに日本を擁護するワケ?」
「そんな事はしませんよ。でも、そのマリアナ決戦案も無茶がありますからね。
もし、当時の日本を非難するならそのあたりも理解した上で非難した方が良いと思うんです。」
「よく分からないんだけど。」
「ですからね。あらかじめ綾波さんに反撃を受けそうな部分を知っておけば
アスカさんの玉砕確率は大幅に下げられるんですよ。ぶっちゃけアスカさんのお手伝いをしてみようかと思って♪」
「余計なお世話よ!」
「でも、常敗無勝じゃ面白くないでしょう?一度くらいギャフンといわせたいと思いませんか?」
「そりゃ・・・、やられっぱなしはシャクだけどさ。」
「つか、常敗無勝ってなんだよ。そんな日本語聞いた事ねぇよ。」
「で、今度綾波さんが来た時に、
こちらからマリアナ決戦案を提示して、綾波さんが反論してきたところをさらに反論する・・・これで完璧ですよ?」
「マッチポンプみてーなモンか?」
「まぁ、そんなところです。」
「私ら興味無いんだけど。」
「そうよ。いきなりそんな事話されてもワケわかんないし〜。」
「じゃ、適当にファミコンで遊んでても良いですよ。」
「今時、ファミコンかよ・・・。」
「そ。じゃ、そうさせてもらうわ。」
「今度はテトリスで勝負よ。」
「ゼルエル様も早くぅ〜♪」
「え?え?」
「ほら、早く♪」
「あぁ〜」
「拉致られちゃったね。」
「アレのどこが最強の使徒なのか分からなくなってくるわね。」
「イロウル!あんたも来るのよ!」
「あぁ〜」
「イロウルも拉致られちまったか。」
「では、とりあえずよく言われているマリアナ決戦案の概要をお話しましょうか。」
「概要ってどんなだ?」
「大体、こんな感じですね。」
よく言われてるマリアナ決戦案
ガダルカナルは遠すぎるので決戦地に向いてない。
↓
戦うだけ無駄なので早めに前線を下げる。
↓
前線を下げる事で、その分の人材・資材をマリアナに回し防備を固める。
↓
南方で戦力をすり減らさないので、戦力(特に航空戦力)を温存出来る。
↓
それらをマリアナに集中させてアメリカ軍を待ち受ける。
↓
そうやってアメリカと決戦を行えば、地の利も生かせるので史実よりは有利に戦えるだろう。
↓
なんだ、史実より良いじゃないか。
「・・・あの娘がいたら、即座にツッコミを入れているだろうな。」
「なんで駄目なの?」
「こんなものは完全な後知恵だろう?史実があるからこそ出てくる対案だ。」
「それにこれ、なんかの漫画の受け売りだろ?」
「そうですね。多分そうだと思います。」
「・・・漫画ネタかよ。」
「でも結構有名みたいですけどね。
それでは一つ一つ、この案の穴を検証していきましょう。」
「お前が講師なんて、全然慣れないんだが。」
「いい加減に慣れてください♪
さて、一番最初のガダルカナルが日本にとっての決戦地としては不適切というのは、確かにその通りです。
遠すぎれば補給線が伸び伸びなので、補給効率が悪くなってしまいますから。」
「じゃあ、なんであんなトコで張り合ってたんだか。」
「日本としてはそこが決戦どころと見たんでしょうね。
連合艦隊だけなら、史実でもがっぷり四つに組んで決戦しちゃってますから。」
「結局、その決戦が勝ちにつながらなかったって事か。」
「ま、そんなトコですね。
でも、前線が遠いっていうのは、それだけ敵を遠くに抑えておけるという利点もあります。
まぁ、ケースバイケースって事なんですが、それに対する対案がこちらです。」
戦うだけ無駄なので早めに前線を下げる。
「なんだ、これ?」
「ガダルカナルとその周辺での戦いは確かに戦果もあげましたが、やっぱり戦力の消耗が大きかったんですよ。
ですから、そんな事をするくらいなら早めに前線を下げちゃおうって趣旨だと思います。」
「一口に前線を下げると言うが・・・どこを最前線にするつもりだ?」
「分かりません♪」
「おい。自分で言っといてそれはなんだ。」
「だって、私が主張したわけじゃありませんもん。あくまでこういう意見があるってだけですから。
皆さんはどこが良いと思いますか?」
「なんで私らに聞くのよ。」
「正直、思いつかないんですよ。どうか知恵を貸してください。」
「その時事ネタ古すぎだろ。いつの話だよ。」
「さ、地図を見て考えてちゃってください♪」
「なんかメンドーだからマリアナまで一気に下がっちゃえば良いんじゃないの?」
「それは無理だろう。少しは考えろ。」
「考えても分かんないんだけど。」
「お前、ちっとも考えてないだろ。」
「同志エルピー・プル(さん)。それはちょっと無理なんです。」
「なんで?」
「前線から兵や資材を引き揚げるのには時間がかかりますし、
もし撤退作戦中に敵に攻められたら被害が甚大になってしまうからです。」
「そうなの?」
「まぁ、軍隊が撤退する場合、殿がもっとも危険を負うからな。」
「それと、南方に展開した日本軍は広範囲に散らばってますからね。
それら全てを一斉に撤退させるっていうのは現実的じゃないんですよ。」
「なら、最初から南方に行かなきゃ良かったんじゃないの?」
「南方資源の確保が目的の日本にそれはどうかと思いますよ?」
「あ・・・!」
「で、いつ前線を下げる決定を下すかにもよるんですけど、
日本軍が連勝している時期に進攻を止めるって発想はさすがに無理があると思うんですよね。
ですから、ガダルカナルに米軍が攻めてきたあたりから考えてみるのが良いと思います。」
「ま、あの漫画でもそんな感じだからな。」
「で、どうやって下げんのよ。」
「そういうのって何も考えてないんじゃないですか?
撤退させる兵士を乗せる船をどこでどのように調達するかなんて考えてないと思いますよ。
ハッキリ言って私も分かりませんもん。」
「おいおい。」
「それに、日本軍が撤退しているという事実をアメリカが知れば
絶対に攻撃を仕掛けてくると思うんですけどね。ですから、日本側としてはそれを迎え撃つ部隊が必要になってくると思うんです。」
「そういうのをうまくいかせるプランとかってあんのか?」
「無いと思います。だから、そういった主張の穴が問題なんですよ。
でも、そのあたりは良いんじゃないですか?適当で。」
「適当であの娘に勝てるのか?」
「さぁ?」
「さぁ?って・・・をい。」
「そういう時はほら、
南方で餓死させるくらいなら撤退させた方がマシだって感情に訴えれば良いんですよ♪」
「頭が痛くなってきた・・・。」
「では、次です。」
前線を下げる事で、その分の資材をマリアナに回し防備を固める。
「これは問題無いでしょう。本来南方で使われるべき資材をマリアナに使うんですから。
少なくとも史実よりは頑強な要塞に出来ると思います。」
「そんな単純な話なのか?」
「そこは大丈夫でしょう。史実に無い兵器を開発するとかいう話ではありませんから。
他への資材をマリアナに集める・・・それだけの話ですからね。」
「そんなんで大丈夫なのか?んな極端な事してたら他が手薄になるだろ?」
「だから撤退させるんですよ♪」
「撤退と簡単に言うが・・・、
史実では連合艦隊がガダルカナルとやらで抑えていたからアメリカ軍もそこに戦力を集中させていたが
その連合艦隊が抑えなければアメリカ軍は当然攻めて来るだろう?それへの対処はどうするつもりだ?」
「う〜ん・・・さぁ?」
「またかよ。」
「撤退させるなら安全を確保しなければならないと思うんですが・・・多分、考えてないと思いますよ。
戦争には多少の犠牲はつきものです。とか、史実よりはマシとか言えば大丈夫ですよ。きっと♪」
「大丈夫なのか?そんなんで・・・。」
「それじゃ、サクサクと次に逝ってみましょう♪」
南方で戦力をすり減らさないので、戦力(特に航空戦力)を温存出来る。
「これもそうでしょうね。ラバウルでの航空戦力の消耗は甚大でしたから。
そのラバウル付近での戦闘を控えれば、やっぱり戦力は温存出来ると思います。
それらの戦闘で失われた航空機は5ケタいっちゃってますからね。これはかなりの戦力ですよ。」
「5ケタってどんくらい?」
「10000機近くは失われたとかなんとか。自分で数えたわけじゃないのでホントかどうかは知りませんけど。
もちろん海軍機だけじゃなく陸軍機も含めた数でしょうし。」
「いい加減過ぎる・・・。」
「それに、それらの航空機に乗る搭乗員も失わずに済みますからね。良い事ずくめなんじゃないですか?ねぇ?」
「なんで私らに同意を求めてんのよ。」
「なんか、ラバウル航空隊はアメリカ軍から恐れられてたって話もあるんですけど
そういう事を言ってると綾波さんみたいになるので、そのへんの細かい話は省略という事で。」
それらをマリアナに集中させてアメリカ軍を待ち受ける。
「なぁ、ちょっと良いか?」
「はい、なんですか?」
「さっきからマリアナマリアナって言ってるが・・・なんでマリアナにアメリカが来るって分かるんだ?」
「さっきからマリアナマリアナってお前らはマリアナ村の村人かーっ!」
「いや、そのネタ古いから。」
「で、なんでマリアナなんだ?」
「さぁ?」
「お前、真面目にやれ!聞いてるこっちが馬鹿らしくなってくるだろ!」
「だって私に聞かれても分かりませんし・・・」
「でも、実際に来たんならやっぱりマリアナってトコに来るんじゃないの?」
「そういう意味ではなくてな、なぜ日本がマリアナを決戦地と決めるのか・・・という話だ。
つまり、アメリカがマリアナに攻めてくるという事をどうやって知るのか?が、問題なのだ。」
「う〜ん・・・、やっぱりピキーン!て、ひらめくしかないんじゃない?」
「・・・お前に聞くだけ無駄だな。」
「B−29の航続距離からアメリカ軍がマリアナに来るだろうって事は予想できるとかって話ですけどね。
当時の日本でもB−29の情報はある程度つかんでいたみたいですから。」
「でも、マリアナで固定なんだろ?
さっきの地図だと下の方から回れそうだけどな。ビアクとかから島伝いにフィリピン取られたらどうすんだ?
肝心の南方の補給路が抑えられちまうじゃねぇか。」
「さぁ?」
「ちょっと待て!考えてないのか!?」
「なんか・・・、そういう人達の中ではマリアナで確定みたいですよ?」
「前提が崩れてるな。アメリカ軍がマリアナに来なかったらどうするつもりだ?」
「来るように努力するんじゃないですかね。」
「なんだ、そのなげやりな答えは。」
「それで、温存した戦力でアメリカ軍と決戦すれば史実よりは良いんじゃないかなぁ〜って話ですよ♪」
「だから、マリアナに敵が来なかったらどうすんだ?って。史実だとトラックとかラバウルは空襲で無力化されただけだろ?
連中がマリアナを避けちまったらどうすんだよ?」
「知りませんよ、そんな事。マリアナで決戦するのが第一みたいですから、出来なかったらそれで試合終了なんですよ。」
「お前・・・、真面目に考えるのを諦めたか?」
「はい。どう考えても・・・無理がありすぎて駄目でした。」
「だからってブン投げんじゃないわよ!これでどうやってファーストに勝てっていうのよ!」
「え〜と・・・、負けずには済みますよ。」
「は?」
「ですからね。アスカさんがどっかから早期マリアナ決戦なんて情報を仕入れてきて
与太話を披露して玉砕するっていうパターンを回避できます。」
「与太話だったのか・・・。」
「なんで私がそんなアホな役回りをしなきゃなんないのよ!」
「だって、色々前例がありますよね。アスカさんって。」
「るさい!」
「で、早期にマリアナ決戦って実際出来んのか?」
「さぁ・・・、分かりません。
私としてはマリアナで決戦する前にどこかでガダルカナルみたいな消耗戦が展開されていたと思いますけどね。
それに、マリアナで決戦するって事はトラックの放棄も前提にしなければなりません。
現実的に考えたらトラック放棄って無理な気がしますしね。」
「なんで?」
「トラックは海軍の根拠地、一大拠点だったんですよ、同志エルピー・プル(さん)。
あんな広くて根拠地に適した場所なんてそうそうありませんから。」
「でも、実際に放棄しちゃってるじゃん。」
「それはほら、手放す手放さないって言ってる状況じゃなくなっちゃったからです。
アメリカ軍の攻撃で基地の機能もほとんど失っちゃいましたし。
それに、綾波さんも言っていたかもしれませんけど、ラバウルもトラックも放棄はしてませんよ。戦力外になってしまっただけで。」
「でも、結局無駄だったんでしょ?なんで無意味なトラックなんかにこだわったのか分からないんだけど。」
「トラックは海軍の根拠地、そこから東のギルバート諸島とかに哨戒網を築いてアメリカ軍の進攻を察知、
アメリカ軍が攻めてきたら連合艦隊で迎撃するというのが基本的なプランだったんですよ。」
「でも、史実じゃやってなかったじゃん。そういうの。」
「古賀長官が連合艦隊を率いて出撃した事はありますよ。その時は接敵出来なかっただけです。」
「む・・・」
「アスカさん?」
「なによ?」
「なんで私に玉砕してるんです?相手が違うと思うんですけど。」
「う、うるさい!」
「で、マリアナに戦力を集中させてもトラックと同じ結末になるんじゃないかっていうのが
私の考えです。」
「なんでそうなるって分かるんだ?」
「当時のアメリカ軍は日本軍の強固な防衛拠点は避ける傾向がありましたから。
比較的手薄な場所を攻めて、頑強な場所は空襲と海上補給路遮断で無力化させていたんです。」
「頑強な場所・・・、それがトラックやラバウルというわけか。」
「はい。マリアナに来るって主張されてる方の根拠は
主にマリアナがB−29の基地になるからって点くらいですから。
でも、航空基地なら台湾や沖縄でも大丈夫な気がしますし、アメリカ軍としては急いで進攻する必要もありませんからね。
じっくり日本軍の手薄な場所を攻めていくんじゃないかと思いますよ。」
「アンタ、どっちの味方なのよ。」
「それに、マリアナに戦力を集中させれば他が手薄になりますから。
マリアナが堅固な要塞だという事をアメリカが知れば当然戦略を変えたでしょうからね。
多分、早期マリアナ決戦も絵に描いた餅になるんじゃないかと♪それに、この早期マリアナ決戦案には重大な欠陥があるんです。」
「欠陥ってのは?」
「アメリカ軍が早期にマリアナに攻めてくる根拠が全く無いんですよ。
マリアナに攻めてくるかどうかも分からないのに、アメリカが戦力を整えて押し寄せてきたら
いくら戦力を温存しようと日本側に打つ手はありませんよ?
1944年の中頃になると、海軍の彼我兵力差だけでもガダルカナルで戦った方が良いくらいに戦力に開きが出来てしまいますからね。」
「戦力を整えて・・・ああ、戦争後期のエセックスとかか。」
「週刊護衛空母なんてのもあったな。」
「ですから、早期にアメリカ軍をマリアナにおびき寄せなければ意味が無いんですが・・・まぁ、無理ですよね。
相手がこちらの思惑通りに動いてくれるのなら何の苦労もありませんから。それともう一つ。」
「まだあんの?」
「さっきの話とも関連しますが、マリアナに戦力を集中させたとしても、
空襲や補給路の遮断をされてしまったら、決戦前にマリアナの戦力が弱体化してしまうという事です。
人間ならともかく、航空機は消耗品の塊、定期的なメンテナンスが無ければ満足に戦えません。」
「補給か・・・。確かに問題だな。」
「史実でもアメリカ軍は入念な偵察や事前の空襲など、それらの下準備を終えた上でマリアナに進攻してますから。
ですから、日本側としてはいざ決戦という時に全力発揮が難しくなるのではないかと。」
「じゃあ、これまでの説明は何の意味があるんだ・・・?」
「アスカさんの玉砕阻止♪」
「するか!余計なお世話だっての!」