漢たちの雲龍
「次はこちらです。」
帝国海軍 航空母艦・葛城(雲龍型)
「次のお題は雲龍なんだろ?なんで画像が葛城なんだ?」
「適当なのが見つからなかっただけです。細かい事は言いっこなしですよ。」
「適当過ぎるな。」
「あ、マシュマーさん、お久しぶりです♪」
「そうか?前の講義から大した時間は経ってないはずだが。」
「で、なんでまた空母の話なワケ?」
「綾波さんが集めた資料が空母に関するものだらけだからですよ。あの人、空母最強厨ですから。」
「そうだっけ?どっちかって言うと戦艦厨だった気がするけど。」
「酷い言われようだな。」
「まぁまぁ。とにかくこの雲龍さんって大きさのワリに影が薄いんですよ。ですから、色々な人に知ってもらおうと思って。
皆さん、授業の準備は良いですか?」
「は〜い♪」
「ちょ・・・、なんでゼルエルまでここにいるわけ?」
「失礼ね。私達も居るわよ。」
「そ〜よそ〜よ!」
「なんでアンタらまで居んのよ・・・。」
「すみません・・・。」
「いや、別にあんたは良いけどさ。」
「こいつらはひし形の仲間か?」
「アンタも失礼ね!あんなひし形と一緒にしないでちょうだい!」
「そうですよ。私は別ですからね。」
「・・・あの、始めますよ?」
「そういえば、雲龍についての説明はあまり無かったな。」
「そうだっけ?」
「様々な戦訓が取り入れられた空母という話は聞いたが、それ以外の事はあまり説明されていないはずだ。」
「それを補完するのがこの講義の主旨です。では、さっそく逝ってみましょう♪」
帝国海軍 航空母艦・葛城(雲龍型)
基本設計は飛龍の流用との事
「雲龍はマル急計画という計画の中で建造が決められた航空母艦なんです。
姉妹艦に天城と葛城が完成、他3隻は未完のまま終戦となっていますが、計画上それらの艦との細かい差異がある点は省略という事で。
空母としての形は大体一緒のはずですから。」
「適当過ぎる・・・。」
「で、こちらの雲龍が連合艦隊に編入されたのは・・・えーと・・・
いつからかは分かりませんね。」
「おいおい・・・。」
「でも、昭和19年の8月15日には第3艦隊に入れられてますから、多分その時期なんだと思います。」
「昭和19年の8月と言うと・・・比島沖海戦の前だな。
その時期に編入されていたのに何故海戦に投入されなかったのだ?」
「艦載機の用意が出来なかったからでしょうね。
あの海戦だと、実際に投入された空母ですら定数まで艦載機を積んでませんでしたから。」
「ああ、日本軍が末期だった頃の話よね。」
「で、そんな雲龍さんに任務が与えられたのが12月、南方への輸送作戦です。
要は雲龍さんを輸送船代わりに使おうという事ですね。」
「せっかくの空母なのに?」
「その頃の日本軍はカツカツだったんですよ。同志エルピー・プルさん。
それに、普通の輸送船を使うよりは空母は優速ですから、一応利点もあるんですよ。」
「サムラァーイ♪」
「サムラァ〜イ♪」
「ブシドゥー!」
「何よ、いきなり。」
「いえ、TVでプレジデントマンがやってたので・・・つい。」
「知らないわよ!いきなり何事かと思うでしょ!」
「それで、話の続きなんですけど、
雲龍さんが呉を出発したのが12月17日、正確な航路は分かりませんが、大体こんな感じで南に向かってたそうです。」
「なんで遠回りしてんだ?」
「その時期ですと、アメリカ軍の潜水艦が跳梁跋扈していた頃ですから。
素直に南に向かったら簡単に沈められちゃうでしょうからね。」
「しかし輸送作戦とは言え・・・空母単艦でか?」
「いえ、護衛の駆逐艦が3隻いたそうですよ。
え〜と・・・、時雨、檜、樅という名前ですが、これらの艦の詳しい説明は省略と言う事で。」
「お前、本当にやる気あるのか?」
「もちろん。それでですね、マニラに向かっていた雲龍さんだったんですが
翌日の18日、水中聴音機によって敵潜水艦の存在を察知する事になりました。
それにより、航路を変更しつつ警戒を厳にしつつ航行を続けたそうです。」
「アンタが講師役だなんて、妙な話よね。」
「意外な一面って感じでしょ?」
「意外って言うか、似合ってないって言うか。」
「さて、状況がさらに変化するのが翌日の19日です。
09:00に艦内哨戒第三配備(水中聴音第二配備)が命じられ、一斉回頭之字運動U法が開始されたそうです。」
「アンタ、自分で何を話してるか分かってる?」
「全然分かりません♪」
「・・・頭が痛くなってきた。」
「当時の天候は視界不良に加えて波浪もあり、警戒する側としては不利な状況だった様ですね。
状況が一変したのが16:35、見張り員が右三十度、雷跡近い!と報告。
同時に、水中聴音員からも右三十度、魚雷音!と報じられました。」
「まさか、当たったりとかしてないでしょうね。」
「先ほどの報告を受け、直ちに面舵一杯、前進一杯が命じられました。」
「面舵ってどっち?」
「右方向ですよ。つまり、魚雷の方向に艦首を向ける事になりますね。」
「なんで?当たりにいっちゃうの?」
「簡単に図解すると当時の状況はこんな感じなワケです。」
「気分的には左の方向に行きたいよね。」
「でも、左に舵を切ってしまうとこんな感じになってしまうんです。」
「これだと、魚雷に対し被弾する可能性のある面積が増えてしまって逆によろしくないんですよ。」
「あ、そーなんだ。」
「それでですね。一見、危険に見えるかもしれない右方向への舵を切ると・・・」
「こんな感じになりますから、結果的に被弾確率を減らす事が出来るんです。
つまり、雷跡と艦を平行にする事が魚雷回避のコツということになるわけです。もちろんケースバイケースなんですけど。」
「へぇ〜。」
「でも、結局は当たったんでしょ?」
「はい。3本の魚雷は回避出来た様なのですが、1本が右舷・・・丁度艦橋の下の箇所に命中してしまったのだそうです。」
「まさか、たった1本の魚雷で沈んだなんて言わないでしょうね。」
「え〜と・・・、当たったところが主管制盤室というところで、魚雷命中の影響で浸水と火災が発生、
それにより艦内の電源が停止して艦内が暗闇となってしまったらしいですね。」
「正・副・予備の3系統、それらの電源が同時に落ちるなんて考えられないわ。」
「やはり電源は落ちたというより、故意に落とされたとみるべきね。」
「いや、故意に落とされたとみるべきとかじゃなくて魚雷命中だから。あからさまに故意だから。」
「一方、被雷の影響で第一第二缶室が使用不能。蒸気管も破損して蒸気が全て逃げてしまって圧力が無くなってしまったらしいです。
これにより、機関が停止してしまいました。」
「缶室とか機関とかワケわかんないんだけど。」
「そのあたりは過去ログ参照という事で。
とりあえず缶と機関がワンセットで当時のエンジンなんだって思っておいて下さい。」
「なんか、状況最悪じゃないか?艦が動かなくなっちまったんだろ?」
「一応、乗組員の皆さんは配置について砲術科では対潜射撃を開始してますね。
それに機関科でも生き残った缶と蒸気管を用いて、缶の再点火を試みています。
この時点で1〜8缶のうち火が残っていたのは、被雷箇所から最も離れた第八缶室のみらしいですけど。」
「それで、直ったのか?」
「それが・・・16:45に別の雷跡を発見、航行不能に陥っていた雲龍さんはなす術も無く当たってしまったんです。
しかも、運悪くその魚雷爆発の影響で下部の格納庫に搭載していた輸送物資が誘爆、
ものの数分で前部への大傾斜が始まってしまいました。」
「輸送物資?」
「桜花だそうです。ただでさえ爆弾の塊の様な兵器ですから・・・」
「駄目なのね・・・もう。」
「この後、16:57に雲龍さんは艦尾を上にして海中に没していってしまいました。」
「駄目じゃん。」
「それでも乗組員の皆さんは頑張っていたんですよ。
対潜射撃のみならず、艦の傾斜を抑えるために飛行甲板に乗せていたトラックとかの海中投棄もしてますし。
ただ沈んだだけじゃなく、皆さん一生懸命だったんですよ。」
「でも、沈んじゃったら意味ないでしょ。」
「・・・それは、そうですけど。
ちなみに生存者は雲龍の乗員が89名、便乗していた方々が57名ほどだそうです。
1000人以上の乗組員の方々は雲龍と運命を共にしていってしまいました。」
「生存者はそれだけか?」
「総員退去命令は出ていたのですが・・・あまり時間が無かったようです。
結局は輸送作戦失敗、虎の子の空母も失う結果となってしまいました。」
「フフン。結局駄目だったんでしょうに。海上護衛を軽視してたんじゃしょーがないわよねぇ〜。」
「一応、いっておきますけど、私は綾波さんじゃないのでそんな挑発されても困りますよ。」
「あ・・・。」
「それにしても、アスカさんって綾波さんが居ないと生き生きしてますね。玉砕の心配が無いからですか?」
「るさいっ!」
「とりあえず雲龍さんについてはこんなところですね。
この時期の内地と南方の行き来がどれほど危険かは分かっていただけたかと思います。」