萌えよ!空母学校 一時限目
「それじゃ、授業を始めま〜す♪
日本における空母の始まりは・・・・え〜と・・・・」
「どうした?」
「ねぇ、これなんて読むの?」
「・・・第一次世界大戦のドイツ領青島(チンタオ)要塞攻略戦ですね。」
「あ、そーなんだ。結構難しい漢字ばかりで困っちゃうよね。」
「( ・ω・)σ)ω`)∩ ドンマイ♪」
「で、第一次世界大戦がどうしたって?」
「あ、はいはい。ではまず、こちらの地図をご覧下さい。」
ドイツ領青島の大まかな位置
「地図でしるしを付けといた部分が、え〜と・・・ドイツが・・・う〜・・・」
「租借ですか?」
「そうそう、それそれ♪」
「なんか・・・ファーストの説明とは違った意味で疲れそうな講義になりそうね。」
「・・・こうなってくると授業以前の問題だな。」
「プル、お前まだ講師役を続けるつもりか?」
「む〜、あたしじゃ役不足とか思ってるんでしょ!」
「・・・使い古しのネタだけど、プルの言いたい事と役不足ってのは意味が違うわよ。」
「そなの?」
「そーよ。役不足ってのは、与えられた役目がその人に対して不相応に軽い事をいうんだもの。」
「そーなんだ。じゃあ、役不足で良いじゃん♪」
「役不足∩( ・ω・)∩ばんじゃーい!」
「いや、別に良いってワケじゃないような・・・」
「・・・で、青島や租借がどうした?」
「その時、その青島ってトコにはドイツ軍が居たんだって。
で、第一次世界大戦で連合国って方で戦争に参加した日本はドイツ軍の居る青島に攻撃したってワケ。」
「日本とドイツの心温まる友好についてはこちらでお願いします。」
「それで、その話と空母と何の関係があるのだ?」
「も〜、マシュマー様ったらせっかちだなぁ。そんなんじゃハマーン様に嫌われちゃうよ?」
「な・・・!脈絡の無いことを言うな!」
「まぁ、いいや。それでその青島ってトコでの戦いで日本の空母が戦闘に参加したんだってさ。」
「第一次世界大戦で空母が使われたの?」
「そうみたいだよ?」
「・・・当時使用された航空母艦と航空機はこちらです。」
航空母艦・若宮丸
モーリス・ファルマン水上機
「これが空母なのか?」
「・・・当時の空母はまだ後年の様なものではなく、どちらかと言うと水上機母艦と言った方がしっくりくるでしょうね。
発艦着艦も当時はまだ無理でしたから、水上機をクレーンで水の上に下ろし発進、収容は着水した水上機をクレーンで引き上げて回収
・・・といった感じで手間のかかる作業だったようです。また、天候にも左右されますからね。」
「それじゃ空母じゃないじゃん。」
「でも、その時は普通の空母って無かったみたいだし
よく分かんないけど、さっきの船も航空母艦って呼ばれてたんだって。」
「へぇ。」
「( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー」
「・・・そんな小ムキになってヘェする話か?」
「でもさ、そこまで水上機を使うのが大変なら陸上機だけでも良いんじゃないの。どーせ偵察くらいにしか使えないんでしょ?」
「あ、それもそーだね。」
「・・・陸上機を運用するには飛行場を建設する必要があります。
飛行場と言っても、後年のアメリカ軍みたいに一朝一夕に作れるわけではないので、建設するのにも時間がかかります。
即応性といった点で考えると、今回の若宮丸の様な空母や後の日本軍が活用した水上機母艦にも利点はあるわけです。」
「あ、それもそっか。」
「・・・プル。お前、本当に先生役を務める気があるのか?」
「うん、一応・・・」
「しかし、船も船なら航空機も航空機だな。あれでは本当にさっきのライトフライヤーと変わらん。」
「・・・そうかな?」
「ライトフライヤーの初飛行から10年近く経過していますから、性能的には格段に飛躍していますよ。
少なくともライトフライヤーの様に数十mしか飛べないという事はありませんし、操縦形態もちゃんと確立され始めていましたから。」
「む・・・、そうか。外見的にはさほど変わっていない様に見えたのでな。」
「人を外見で判断してちゃハマーン様に嫌われちゃうよ?」
「黙れ!あれは人ではなく飛行機だ!」
「そういえば他の国はどうしたの?」
「他の国って?」
「アメリカとかイギリスとか、別に日本だけが空母造ってたってワケじゃないでしょ?」
「イギリスはさっきみたいな船を造って使ってたみたいだけど、アメリカはよく分かんないや。」
「分からないって、をい。」
「・・・だが解せんな。一体どこから水上機母艦から後の空母へと繋がる発想が生まれたのだ?」
「・・・その点については、こちらの写真を見ていただければ解るかと思います。」
モーリス・ファルマン水上機
「これってさっきの飛行機でしょ?」
「当時、飛行機は水上機だけではなく陸上機も運用されていました。ですが、水上機と陸上機を比べてみると
航空機としては明らかに邪魔なものが水上機には付いている訳ですが・・・それは何だと思いますか?」
「あ〜!それあたしの台詞〜!」
「・・・すみません、つい。」
「で、何がどうした?」
「んーとね。ぶっちゃけ水上機ってのにはいらないのがついてんだけどそれが何か?って話。」
「機体下部に設置されているフロートだろう?あれは飛行機としては邪魔以外の何物でもない。」
「も〜!そんなにあっさり答え出たんじゃつまらないじゃん!」
「まったくです!これじゃ放送事故一歩手前ですよ、番組の事をちゃんと考えて下さい!」
「番組って何よ、番組って。」
「フロートってそんなに邪魔なのか?」
「・・・空を飛ぶという行為に関しては何の役にも立ちませんからね。
重量もかさみますし空気抵抗にもなります。無くせるものなら無くした方が良いでしょう。」
「・・・フロートってのがそんなに邪魔なら飛び立った後でパージすれば良いんじゃないか?」
「それじゃ空母に帰れなくなっちゃうじゃん。」
「あ・・・そうか。」
「意外と短絡的なプルツーさん萌え〜♪」
「萌え〜♪」
「黙れ!」
「フッ・・・なるほど、そういう事か。」
「アンタ、何1人で納得してんのよ?」
「航空機を兵器として運用するとして、水上機ではどうしてもフロートが邪魔になる。
ならば、フロート無しの通常の航空機を母艦で運用できるようにすれば全ての問題が解決する
・・・後の空母が生まれたのは、さしずめそういった理由だろう。違うか?」
「・・・正解です。空母で普通の飛行機が運用できるならその方が良いですからね。」
「そんなもんなのかね。」
「そういうものなのです。ですが、全通式の飛行甲板を持つ空母が造られるのは第一次世界大戦終盤になります。
ちなみに、全通式飛行甲板を持つ空母が登場する時期と前後して、イギリスでこのような空母が造られていたりもします。」
イギリス空母・フューリアス
「・・・なにコレ?」
「巡洋艦を改造して作った空母との事です。
今から考えると無茶な造りをしていますが、当時としては普通の飛行機を発艦させるという偉業を達成した立派な艦なんですよ。」
「艦橋と煙突があからさまに邪魔だな。」
「ま、しょーがないよ。そういう船なんだし。」
「ちなみに、このフューリアスはずっとこの形状だった訳ではなく、後に多段式甲板へと変更されています。」
「ところで、普通の空母はまだ出てこないのか?」
「普通の空母?はいコレ。」
帝国海軍 空母・鳳翔
「なんで日本の空母を出すのよ?」
「一応、世界初の新造空母ですからね。最初から空母として造られ一番最初に竣工したのがこの鳳翔だったのです。
それ以前に空母と呼ばれたものは従来艦の改造空母が全てだったわけですし。」
「そんなに日本に先進性があったってアピールしたいワケ?」
「人聞きの悪いことを言わないで下さい。私は事実を述べているだけです。
当時はまだまだ大艦巨砲主義の時代ですし、日本のみが空母を建造していたワケでもありません。
現に全通式の飛行甲板を持った最初の空母はイギリスのアーガスですし、新造空母の起工という点での世界初もイギリスのハーミスです。」
イギリス空母・アーガス
「アーガスって着艦不可能なシューティングゲームの?」
「そりゃアーガス違いだろ。」
「ところで、全通式ってのは?」
「飛行甲板が艦首から艦尾まで繋がり甲板上に障害物の無い形状の事です。当時はまだ、そういった艦が珍しい時代ですからね。」
「それにしても、鳳翔とやらもアーガスとやらも古風な感じの船だな。」
「だって、ホントに古いんだもん。しょーがないじゃん。」
「そういえば、日本・イギリスと空母が出てきましたけど、アメリカさんは何をしてるんでつか?」
「え〜と・・・アメリカの空母はこれね。」
アメリカ空母・ラングレー(初代)
「ラングレー・・・」
「何よ?」
「やけに小さく見えるが・・・」
「・・・全長158mと小型ですからね。
ラングレーは空母とは言っても元々が給炭艦で、実験艦と言った意味合いの方が大きかったみたいです。
給炭艦の上に飛行甲板を載せるという、比較的簡単な改造で済まされていますから。」
「そんなやっつけ仕事みたいなので良いんですか?」
「やっつけ仕事言うな!」
「・・・建造方法はともかくとして、データ取りとしては十二分に活用されています。
本来の目的は果たしたと見て良いのでは無いかと思いますよ。」
「・・・なるほど、後の空母建造の参考になったのなら、その役目は大きかったと言えるだろうな。」
「それにしても、チハたんみたいにちっちゃくてカワイイ空母でつね。誰かさんと違って♪」
「るさいわよ!私には何の関係も無いでしょ!」
「そうですね。誰かさんはラングレーたんと違って可愛くありませんし♪」
「るさいっつってるでしょうが!」
「ちなみに、ラングレーは後に水上機母艦に改造されて太平洋戦線に投入されています。」
ラングレー(改装後)
「格下げですか?」
「格下げとか言うんじゃないわよ!必要に応じて改造されたんでしょうが!」
「まぁ、ラングレーを空母として使うには性能的に問題があったのでしょうね。
複葉機の時代ならいざ知らず、太平洋戦線は全金属の重い機体が主流でしたから
速力の遅いラングレーでは、カタパルトでも無ければまともに航空機を運用する事すら出来なかったでしょうし・・・」
「あんたもあんたよ!どーでも良い事を長々と説明するんじゃない!」
「あ〜、レイったら、またあたしの説明台詞とった〜!」
「・・・す、すみません。つい。」
「そういえば、ラングレーは戦争中に沈められたんだったか。」
「日本軍機の攻撃でな。」
「あんたらも余計な会話をしてんじゃないわよ!そんなのどーだって良いでしょ!」
「あれ?ラングレーの最後ってそうなんだっけ?」
「・・・陸攻9機の水平爆撃で命中弾5発、大破したラングレーは味方に処分されたそうです。」
「水平爆撃は確か命中率がさほどでは無かったはずだが・・・」
「ラングレーたんテラカワイソス(´・ω・`)」
「るさい!」
「で、日本・イギリス・アメリカと来たわけだが・・・他の国は空母は造らなかったのか?」
「んーとね。そのあたりはあんまり有名じゃないから省略しちゃって良いんじゃないかなって思うんだけど・・・どう?」
「・・・手を抜くのも程々にしろ。」
「だって、他の国の空母って建造途中で終わっちゃったり、輸送用で終わっちゃったりしてて面白くないんだもん。」
「も〜ん♪」
「そうなのか?」
「ワシントンで行われた軍縮会議では戦艦だけではなく、空母の保有数も取り決められました。
その時対象となったのは、主に日本・イギリス・アメリカの三国ですが、他にフランス・イタリアも入っています。
ですが、その二国は先程プルさんも言われた通り、建造途中か輸送用で終わってしまいましたからね。
第二次大戦後となると少しは話も変わってきますが・・・」
「フランスとイタリアじゃなぁ・・・」
「・・・空母が本格的に戦闘に使われるようになったのは第二次世界大戦からですが
当時、空母を戦力として運用していたのは日本・イギリス・アメリカの三国と見て間違い無いでしょう。
航空機輸送に使ったというだけでは、空母に限らず輸送船でも可能ですし
また、空母を建造したからと言って必ずしも戦力として運用出来るというわけでもありませんからね。」
「結局、空母があってもちゃんとした中の人が居ないと駄目って事だよね。」
「中の人って・・・まぁ、間違ってはいないだろうけど。」
「話をまとめると、この頃になるととりあえず空母の形が決まってきたってワケ。」
「・・・お前がまとめるのか。大体、なんで先生役なんかやりたくなったんだ?」
「だって、学校とかそーいうのに行けなかったんだもん。ちょっとくらい憧れたって良いじゃん。」
「そうなの?」
「そーだよ。あたし、こう見えても薄幸なんだから。
普通に学校とか行って、運動会とか文化祭とか学芸会とかやってみたいもん。」
「文化祭・・・あんまり良い思い出は無いわね。」
「劇が大ウケだったのにですか?」
「白雪姫はウケる為の劇じゃないでしょ。あそこで馬鹿シンジがとちらなければ良かったのに・・・」
「そんな事があったのか?」
「第三新東京市で学校に通ってた頃の話よ。」
「でもさ、どーせやるなら現代風にアレンジしてみたいよね。」
「・・・現代風とは?」
「例えばさ、こんな感じで・・・」
「ちょっとまて、なんで私に近寄ってくるんだ?」
「だって、実演した方がわかりやすいじゃん。あたし王子だから、プルツー白雪姫役でお願いね。」
「そういう問題じゃ・・・」
「おお、なんと美しい姫だろう!こんなに綺麗な女性は見た事が無い!」
「・・・・・。」
「もう役に入ってんのか。」
「君・・・・・もうキスはしたのかい?
まだだよなァ、初めての相手は魔女でも小人でもない、この王子だッ!」
ズギュウウウン!!
「DIO様キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」
「何か変だと思ったらネタがやりたかっただけじゃないか!妙な事に人を巻き込むな!」
「あ〜、駄目だよ。そこはちゃんと泥で口を洗ってくれないと〜!」
「は?」
「こっ!この白雪姫!どけぃ!わざと泥で洗って自分の意思を示すかッ!
そんなのはつまらんプライドだァ!・・・って台詞が使えなくなっちゃうじゃん。」
「どんな白雪姫よ。」
「でもさ、よくよく考えたら本人の意識が無いのにキスするのって最悪だよね。王子って言っても見ず知らずの人でしょ?」
「・・・童話に一々ツッコミを入れてどうする。」
「あの・・・」
「あ、ゴメン。脱線しちゃった♪」
「脱線したんじゃなく、させたんだろ。」
「話を戻すが・・・、旧式とは言え、第二次世界大戦前には一応空母の形態としては確立した様だな。」
「・・・一応は確立したものの、兵器である以上相手より優れたものを造らなければなりません。
そこで、少しでも相手より優位に立とうと空母建造においても様々な工夫が成されるようになります。」
「例えば?」
「・・・先程も話に出ましたが多段式の飛行甲板が挙げられます。」
加賀(改装前)
「通常の全通式飛行甲板では発艦と着艦は同時に行えず、時間的なロスにも繋がります。
そこで、飛行甲板を多段式にする事でそれらの問題を解消しようとしたのです。
これなら着艦、発艦を別甲板で行えるから混雑も起こりませんし、作戦行動がスムーズになると考えられました。」
「良い事ずくめに思えるが・・・」
「ちなみに、赤城・加賀は三段空母と言っても中部甲板は艦橋を設置したので飛行甲板としては使えず
下部・上部の甲板で航空機の運用がなされていました。」
「でも、止めちゃったんだよね。」
「なんでまた?」
「飛行機の性能の問題です。これも、複葉機全盛の時代ならそれほど問題はありませんでしたが、
艦載機の高速化・重量増加に伴い発艦に必要とする滑走距離が足らなくなってしまったからです。
これにより、多段式飛行甲板のデメリットが目立つようになり・・・多段式空母は必然的に廃れていきました。」
「駄目じゃん。」
「当時、空母は試行錯誤の状態です。
航空機の性能も大きく変わる時代に最初から正解を見通す事など困難です。」
「レイ〜!それ、あたしの台詞〜!」
「あ・・・」
「綾波さん、貴方は喋りすぎです!これからはお口にチャックでお願いします!」
「・・・・・。」
「ところで、他に試行錯誤した点とかは無かったのか?掘り下げればまだ出てきそうな気がするが・・・」
「んーとね。艦橋とか煙突とかも結構色々大変だったみたい。」
「お前に聞くのもアレだが・・・大変って、具体的にはどう大変だったんだ?」
「え〜と・・・」
「・・・説明しましょうか?」
「う〜・・・」
「同志エルピー・プルの窮地である。一時的に発言を許可する。」
「・・・では、まずこちらをご覧下さい。」
帝国海軍 空母・鳳翔
「これってさっきのヤツか?」
「そうです。空母・鳳翔では航空機の発艦・着艦テストが行われ、様々な問題点に関する情報が得られました。
そのうちの一つが甲板上の艦橋についてです。」
「何が問題なの?」
「平たく言ってしまえば、甲板上にある艦橋が艦載機の離発着の障害となってしまうのです。
先程のフューリアスの様にあからさまな障害ではありませんが、脇の方に寄せてあるとは言えやはり邪魔だったみたいですね。」
「そんなモンなのかね。」
「では、こちらの図をご覧下さい。」
艦橋有り 艦橋無し
「空母への着艦を想像して図にしてみましたが・・・
実際に着艦を行うとして、着艦しやすいのはどちらかなんて説明するまでも無いでしょう?」
「そりゃそうだけど・・・でも、右みたいな形の空母なんてあったっけ?」
「甲板上に艦橋の無い平甲板の空母を造ったのは帝国海軍くらいのものです。
先程の鳳翔でのテストで甲板上には障害物が無い事が望ましいという結論は出たものの、
操艦や指揮と言った点では通常の配置・・・甲板上に艦橋を持つ形状を島型(アイランド型)と呼ぶようですが、そちらの方が優れています。
最終的には艦橋は島型とし、それを艦の外側にまで極力寄せるような形で落ち着いていきました。
もっとも、第二次大戦後は第二次大戦後で、また話は変わってくるんですけどね。」
「ふ〜ん・・・」
「・・・お前、もうやる気ないだろ。」
「艦橋については解ったが、煙突についての問題は何だ?」
「当時の艦船は重油・・・初期は石炭との混合缶もありましたが基本的には可燃物を燃焼させる事で推進力を得ていました。
そのため、煙突から排出される排煙への対処策も考えなければなりませんでした。」
「煙突作って適当に排出すれば良いんじゃないんですか?」
「・・・その煙突の配置が問題なのです。
煙突からの排煙は通常艦の後方へと流れますが、その排煙により気流が乱れてしまう事で航空機の着艦に支障をきたしてしまいます。
ですから、排煙が着艦ルートに干渉しないように煙突を設置しなければならないのです。」
「え〜と・・・」
「・・・図で示してみましょうか。」
「左が世界各国で採用された艦橋と煙突を一体化した直立煙突、右が日本が採用した横向き煙突です。」
「どっちが良いんだ?」
「どちらが良いという事はありませんが・・・
米英に関してはよく解りませんが、日本が横向き煙突を採用したのにはある事情・・・友鶴事件が原因の一つです。
以前にも少し話したとは思いますが・・・」
「そうでしたっけ?」
「てゆーか、友鶴事件って何だっけ?」
「・・・てゆーかって言うな。」
「友鶴事件とは、悪天候と艦の重心の不備により当時の水雷艇友鶴が転覆した事件の事です。
その一件以降、帝国海軍は艦の重心と安定性、後の第四艦隊事件も含めてより慎重な設計を心がけるようになったのです。」
「それと煙突と何の関係があんのよ?」
「空母というのはただでさえ艦の重心が高くなってしまいがちな艦種です。
ですから、その上で艦の上部に煙突の様な重量の大きい設備を設置するのには抵抗があったのでしょう。
そこで出された策が先程の図で示した横向き煙突です。
あれなら煙突そのものも艦載機の運用の支障にはなりませんし、排煙の影響もありません。」
「完璧じゃん♪」
「ですが、後の大戦で横向き煙突の欠点も露呈されてしまいました。それは・・・」
「キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン♪」
「なによ、いきなり。」
「授業っぽいでしょ。それになんか懐かしいテイストですし♪」
「あからさまにパクりじゃん・・・。」
「ま、そういうワケで一時限目は終了〜。」
「おもいっきり中途半端な気がするが・・・」
「しょーがないよ、一応授業なんだもん。時間厳守♪」