ミッドウェー海戦 前

 

 

 

 

 

aikon1-64-53.PNG「さて、次はいよいよ帝国海軍連合艦隊の運命を・・・いえ、この戦争の帰趨を決する戦いの話です。」

aikon3-64-3.PNG「ん?もう終わりが近いのか?」

aikon1-64-53.PNG「いいえ・・・、戦争そのものはまだ3年以上続きます。」

aikon6-64-10.PNG「あと3年も続くのにもう結末が決まっちゃうの?」

aikon8-64-2.PNG「そうなんだっけ?」

aikon1-64-53.PNG「この時期こそが、有利な条件でアメリカとの講和を結べる最初で最後の機会だったと思います。・・・あくまで私見ですが。
次の戦いはミッドウェー海戦・・・多少なりとも歴史に興味がある人なら分かると思います。
普通の教科書等にも太平洋戦争の転機として書かれているはずです。
もっとも、転機の一つとして書かれているだけなので詳しい説明は無いでしょうが・・・。」

aikon2-64-9.PNG「細かい説明なんかある訳無いでしょ。何が楽しくて、マニアックな事を授業で習わなきゃなんないのよ。」

「まぁ、そう言いなさんな。だからこそ、これから説明するんですもんね?」

aikon1-64-53.PNG「・・・そうです。」

aikon3-64-1.PNG「だが、ミッドウェー海戦とはこれまでと同じ、戦いの一つなのだろう?
一つの戦いが戦争そのものに影響を及ぼすものなのか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・はい。これから詳しく説明していきたいと思います。」

aikon6-64-4.PNG「なるべく分かりやすくね?」

aikon1-64-53.PNG「・・・分かっています。さて、有名なミッドウェー海戦ですが舞台となるのはその名の通り、ミッドウェー島と呼ばれる小島です。」

aikon6-64-10.PNG「あれ・・・、地図は?」

aikon1-64-53.PNG「探してみたのですが・・・良い地図が見つからなかったので今回は地図無しで行きたいと思います。」

aikon2-64-35.PNG「あんた、やる気なくなってきたんじゃないの?地図が無いとミッドウェーがどのあたりなのか、さっぱり分からないじゃない。」

「フフフ、そんな時のための地図でつよ?」

 

 

 

aikon2-64-7.PNG「あんたも同じネタを何度繰り返せば気が済むのよ・・・。その地図じゃ見づらいって言ったでしょ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・わかりました。それでは、こちらをご覧下さい。」

 

 

 

「ツッコミを入れたそうだな。」

aikon2-64-19.PNG「・・・別に。」

aikon1-64-53.PNG「あまりにも有名なミッドウェー島攻略ですが、計画自体は2月頃から検討されていました。
しかし、計画の認可までには紆余曲折があったのです。
地図を見れば分かるとおり、ミッドウェーは日本から遠く離れた場所にあります。
攻略し占領したところで長期間確保するのは困難。軍令部はこうした観点からミッドウェー攻略には否定的でした。」

aikon6-64-10.PNG「そういうモンなの?」

aikon3-64-1.PNG「そうだ。自軍の勢力圏から離れたところを占領したとしても、長くなった補給路を確保する事は難しい。
補給を断たれた軍隊ほど惨めなモノはないからな。否定的な意見が出るのもおかしい話ではない。」

aikon1-64-53.PNG「・・・軍令部、島の攻略を要請される陸軍はミッドウェー攻略に難色を示していましたが、
強硬にミッドウェー攻略を主張したのが連合艦隊司令長官山本五十六海軍大将です。
彼は真珠湾攻撃の時と同じ様に、自らの辞任をちらつかせながら作戦の認可を迫りました。」

aikon2-64-8.PNG「・・・また?同じ手が何度も通用するとは思えないけど。」

aikon1-64-53.PNG「軍令部のミッドウェー攻略に対する否定的な意見を消したのは、何度も話しに出ているドゥーリットル空襲です。
アメリカ機動部隊の恐怖をその身で味わった日本軍中枢はドゥーリットル空襲以降、
ミッドウェー攻略に対する非難めいた言動を消してしまいました。」

aikon2-64-7.PNG「ん?ドゥーリットルとミッドウェーと何かつながりがあるのか?」

aikon1-64-53.PNG「ミッドウェー攻略作戦は単なる侵攻作戦ではありません。
ミッドウェーを攻略し、その作戦を阻止しに進出したアメリカ海軍機動部隊を叩くという・・・
これまでとは毛色の違った作戦だったのです。」

「てぇと・・・つまり、アメリカ軍を誘い出すって事か?」

aikon1-64-53.PNG「そうなりますね。」

「そうなんですか?ミッドウェー海戦はアメリカ海軍の待ち伏せに遭ったって聞いたんですけど・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・確かに日本軍はアメリカ軍の待ち伏せには遭いました。
しかし、その待ち伏せが予期せぬ事態だったかどうかとなると話は違うと思います。
その話はもう少し後でするつもりなので・・・今は控えておきます。」

aikon2-64-7.PNG「また?」

aikon1-64-53.PNG「こういった話は流れが大切なんです。順を追って説明した方が理解しやすいはずですよ。」

「んで、ミッドウェー作戦とやらの承認はされたんだっけか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・軍令部が正式な作戦命令を出したのは5月5日です。
しかし、この作戦も他の作戦と同様、作戦内容はアメリカ軍に漏れていました。」

aikon2-64-3.PNG「ちょっと・・・、ミッドウェーってのは日本にとって重要な作戦なんでしょ。
作戦情報がバレてちゃまずいんじゃないの?」

aikon1-64-53.PNG「・・・通常の作戦なら大丈夫では無いのですが、
ミッドウェーに関して言えば情報の漏洩は大した問題では無かったみたいですね。」

「何のこっちゃ?情報ってのは大事なんだろ?漏れてて大丈夫な訳ないだろ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・ミッドウェー作戦に関して言えば、作戦の機密性は皆無でした。
何故なら街の芸者ですら知っているほどだったのです。
この頃の日本軍は緒戦の連勝に浮かれ、敵を侮る奢った空気が蔓延していた・・・と、よく言われています。」

「つまり天狗さんになっていたわけですね?」

aikon6-64-11.PNG「天狗さん?」

「調子に乗った人の例えでつよ。鼻が高くなるとか・・・よく言いますでしょ?」

aikon8-64-1.PNG「自惚れている人の事を指して天狗になるって言う事はあるわよね。」

「そうですそうです。ナイスフォローです、洞木さん。」

aikon2-64-9.PNG「何やってんのよ、日本軍は・・・。自惚れていられる戦力比じゃないでしょうに。」

aikon1-64-53.PNG「誰が自惚れているんですか?」

aikon2-64-13.PNG「はぁ?あんた、日本軍には奢った空気が何とかって言ってたじゃない。」

aikon1-64-53.PNG「私は言われているとは言いましたが、断定はしていません。あくまでよく言われる話を例に挙げたまでです。」

aikon3-64-3.PNG「話が見えてこないのだが・・・」

aikon1-64-53.PNG「例によって帝国海軍の暗号は、ある程度解読されていたと言われています。
蒸留装置の故障等の話でも解る様に、アメリカ軍が事前にミッドウェー攻略作戦をそれなりにつかんでいた事は間違い無い事実の様ですね。」

aikon2-64-7.PNG「で?」

aikon1-64-53.PNG「・・・一方の日本ですが、ミッドウェー攻略の情報全てが市井に知れ渡っていた訳でも無いようです。
先程の芸者の話でも次の攻略先が知れている程度ですので、情報漏洩がそこまで酷かったとは思えません。」

「余計に話が分からないんだが・・・」

aikon6-64-1.PNG「あたしも・・・。」

aikon2-64-7.PNG「行き先程度って・・・行き先が知れ渡っちゃったらどーしようも無いでしょ。待ち伏せを受けても当然じゃない。」

aikon1-64-53.PNG「・・・先程も言いましたが、ミッドウェー攻略作戦の目的は敵機動部隊の撃滅でもあります。
特に山本大将にとっての敵機動部隊は厄介者以外の何者でもありませんからね。」

「そりゃそうだろ。機動部隊相手じゃどこから攻撃されるか分からないからな。うっとーしいと感じるのも当然だろ。」

aikon1-64-53.PNG「ミッドウェー攻略で敵を誘い出すと言っても・・・
都合よく敵機動部隊が進出してくるとは限りません。もし皆さんが敵を誘い出すとしたらどうしますか?」

aikon8-64-2.PNG「誘い出すって・・・どうしたらいいのかしら?」

「挑発でイチコロでつよ。」

aikon2-64-19.PNG「んなモン無いわよ。」

aikon6-64-2.PNG「あたしはお手上げ〜。マシュマー様は?」

aikon3-64-10.PNG「フッ、そんなもの簡単だろう。」

「どういう方法でつか?」

「敵を誘い出すにはこちらから情報を流すしかあるまい。
敵にとって有効な情報をな。誤情報で敵を撹乱するのは古来から伝わる戦術の一つでもある。」

aikon1-64-53.PNG「・・・正解です。」

aikon2-64-45.PNG「で?全然話がつながらないんだけど。」

aikon1-64-53.PNG「・・・ミッドウェーの情報が日本の市井に知れ渡ったのは、海軍によって意図的に流された可能性があるという事です。
もっとも、この話に根拠は無いのであくまで私見になりますが。」

「意図的と言うと・・・ワザとって事ですか?」

aikon1-64-53.PNG「そうなりますね。」

aikon2-64-20.PNG「待ちなさいよ!何でそんな事する必要があんのよ?」

aikon1-64-53.PNG「噂が広がったのは日本の軍港周辺だったという話があります。
軍にとっての重要地域ですから・・・当然、敵国の諜報員が紛れていたとしてもおかしくありません。」

aikon6-64-10.PNG「諜報員って言うと・・・ジェームス・ボンドみたいな?」

aikon3-64-7.PNG「そんな、あからさまに目立つスパイが居る訳なかろう。」

aikon1-64-53.PNG「・・・ここからは推測ですが、アメリカには日系人も居ましたから、
日本国内で諜報活動を行なう日系人・・・アメリカのスパイが居たとしても不思議ではありません。
そういった方々の耳にも届くように次はミッドウェーという情報を流しておけば
ミッドウェー攻略を阻止する為に、敵が機動部隊を動かす可能性が出てくる訳です。」

aikon2-64-7.PNG「・・・海軍が情報を流したっていう証拠は?」

aikon1-64-53.PNG「ありません。」

aikon2-64-35.PNG「駄目じゃん。」

aikon1-64-53.PNG「・・・だから推論だと言ったでしょう?
確かに定説通り、日本の軍規が乱れていただけなのかもしれませんけど・・・状況から見ると意図的に流したとしか思えないのです。」

aikon2-64-45.PNG「でも、証拠は無いんでしょ?」

aikon1-64-53.PNG「状況証拠ならありますが・・・」

「状況証拠ってどんなだ?」

aikon1-64-53.PNG「それを説明するにはミッドウェー攻略作戦そのものの行動を話さなければなりません。
申し訳ありませんが、その話はまだまだ先になります。
昭和17年5月27日、南雲忠一中将率いる第一機動部隊ことナグモ・タスク・フォースは6月5日の攻撃開始を目指して広島湾から出撃しました。」

aikon6-64-6.PNG「ロンド・ベル隊の出撃だね。」

aikon1-64-53.PNG「しかし、前回の珊瑚海海戦で損害を受けた第五航空戦隊はミッドウェー攻略には参加していません。
これは不幸中の幸いであったとも言えますが・・・」

「ミッドウェー攻略部隊はこれだけなのか?」

aikon1-64-53.PNG「いいえ、5月28日にミッドウェー攻略部隊である
陸軍の一木支隊(約3000名)と海軍の特別陸戦隊(約2800名)を乗せた15隻の輸送船が、
5月29日には攻略部隊主力の第二艦隊も出撃しています。
・・・出撃したのはこれだけではありません。同29日、瀬戸内海の柱島泊地から
連合艦隊司令長官山本五十六大将麾下の主力部隊もミッドウェーに向けて出撃しました。
この艦隊には帝国海軍の誇るガンバスター新鋭戦艦大和も配備されていました。」

aikon2-64-7.PNG「ガンバスターって・・・訳分からない例えするんじゃないわよ。それに、所詮は戦艦なんでしょ?」

aikon1-64-53.PNG「エクセリオンに例えた方が良かったですか?」

aikon2-64-9.PNG「そういう問題じゃないわよ。何で今さら戦艦を持ち出してくんのよ。時代遅れもいいトコじゃない。」

「あ〜!アスカさん!貴方は何て事言うんですか!
ガンバスターが時代遅れなんて・・・ノリコさんが聞いたら怒りまつでつよ?」

aikon2-64-23.PNG「誰もそんな事言ってないでしょ。私は大和が時代遅れって言ったのよ。」

「言い逃れは見苦しいですよ?い〜けないんだ〜いけないんだ。せ〜んせいに言ってやろ〜・・・」

aikon2-64-10.PNGるさいっ!あんたは小学生か!」

aikon1-64-53.PNG「大和が時代遅れという意見ですが・・・それは結果論というものです。
大和が起工されたのは機動部隊を中心とした戦術など確立していなかった時期・・・。
抑止力として強力な戦艦を建造し配備しておくのも当然の結果かと思います。」

aikon6-64-10.PNG「抑止力って?」

aikon3-64-1.PNG「直接的に攻撃せずとも敵を抑える力・・・言わば脅しだな。
相手に強力な兵器があれば攻撃するにも多少は躊躇するだろう?」

aikon6-64-13.PNG「ジュデッカが出てきた時に様子を見るのと同じ様な意味かな?」

aikon3-64-1.PNG「・・・まぁ、そんなところだ。」

aikon1-64-53.PNG「孫子の兵法で有名な一説ですが
百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり、戦わずして兵を屈するは善の善なる者なりと言われています。
つまり戦って勝つことよりも、戦わずに相手を屈する事が最上であると言う事です。
本来、戦争とは外交手段をやり尽くした後に行われる政治の最終手段なのです。
そして、交渉を有利に進める為に必要なのが抑止としての軍事力なのです。」

aikon2-64-7.PNG「つまり・・・脅して言う事聞かせるって事?」

aikon1-64-53.PNG「・・・人聞きの悪い事を言わないで下さい。日本の戦力は自衛の為の軍事力です。」

aikon2-64-8.PNG「そういうのって、侵略者がよく使う方便よね。」

aikon1-64-53.PNG「・・・国家を守る事が方便と揶揄されるなら方便で構いません。」

「開き直りですか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・そうかもしれません。ですが、国際社会は生存競争でもあります。
その過酷な競争社会の中では生き延びる事こそ全てなのです。
勝てば官軍負ければ賊軍・・・何よりもまず勝たなければ話になりませんからね。」

aikon2-64-19.PNG「やっぱりただの開き直りじゃない・・・。」

aikon3-64-1.PNG「・・・だが、その少女の言う事も一理ある。敗者と言うのは辛いものだからな。」

「経験者は語る・・・てとこか?」

aikon3-64-1.PNG「うむ・・・、何よりもまず勝利しなければ理想を成就する事すら出来んからな。」

aikon6-64-12.PNG「アクシズとかネオジオンとかも負けちゃったしね♪」

aikon3-64-4.PNG「うるさい!我々は負けたのではない!ハマーン様が居る限り我らに敗北の二文字は無い!」

aikon6-64-8.PNG「はいはい。」

aikon3-64-9.PNG「ぐぬぬぬぬ・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・話が逸れすぎましたね。このまま進めるとミッドウェーの話など影も形も無くなるので元に戻したいと思います。
さて、ミッドウェー作戦(MI作戦)は、アリューシャン攻略作戦(AL作戦)と同時に実施されました。
作戦に参加した艦艇約350隻、航空機約1000、参加将兵約10万人・・・規模としては最大規模です。
これは日本海軍によるオペレーション・バルバロッサであると考えて差し支えは無いと思います。」

「オペレーション・・・何だ?」

aikon1-64-53.PNG「オペレーション・バルバロッサです。
作戦そのものについてはソフィア先生のところで勉強していただくとして・・・
ミッドウェー攻略とは、まさに帝国海軍の総力を結集した作戦だったのです。
しかし、大規模な作戦を実行するにはそれだけ大量の物資が必要となります。
弾薬や燃料、食料に至るまで・・・南方資源を確保したとは言え、それほどの余裕が出来たわけではないのです。
それに、資源を確保しても前線や内地まで確実に運ぶ方法が確立されていなければ意味はありません。
日本はこの点でも遅れていた・・・と言うよりは手が回らなかったと言った方が正確ですね。
この、補給路の確保も後々ひびいてくる点ではあるのですが・・・。」

「日本の中の人も大変なんですねぇ。しみじみ・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・本当に大変です。
そんな貴重な物資、人員、艦船のほとんどを注いだミッドウェー作戦は
日本にとって敗北は許されない作戦だったと言えます。しかし・・・、結果は有名ですよね。」

aikon8-64-2.PNG「負けちゃったんだっけ?」

aikon6-64-10.PNG「え?ロンド・ベルなのに?」

aikon1-64-53.PNG「・・・当時最強と謳われた南雲機動部隊と言えど、決して無敵ではなく無敗でも無いのです。
では、これから実際の戦いの推移を説明していきたいと思います。」

aikon3-64-1.PNG「・・・ロンド・ベル隊を打ち負かすとは羨ましい限りだな。どうあっても勝てない我らは一体・・・」

aikon6-64-6.PNG「仕様だからね。しょーがないよ。」

aikon3-64-1.PNG「むぅ・・・」

aikon1-64-53.PNG「では、戦いの説明を・・・と思ったのですが、まだ止めておきます。」

aikon2-64-13.PNG「はぁ?いきなり何を言うのよ。」

aikon1-64-53.PNG「アメリカ軍の説明がまだでした。相手の動きも説明しておかなければ訳が分からなくなりますからね。」

aikon2-64-8.PNG「その台詞・・・自分で行き当たりばったりで説明してますって言ってるようなモンじゃない。
白状しちゃってどうすんのよ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・それほど気にする事じゃありません。」

aikon2-64-7.PNG「言い訳にもなってないんだけど・・・」

「そんなツッコミでいいわけ?」

aikon2-64-4.PNG「るさいっ!」

「そのパターン好きだねぇ・・・。」

aikon1-64-53.PNG「総力を結集させた日本軍に対し、アメリカ軍は圧倒的に不利な状況でした。
あらかじめ日本軍のミッドウェー攻略を掴んでいたアメリカ軍とはいえ、迎撃に回せる空母は3隻がやっとだったのです。・・・ご覧下さい。」

 

アメリカ正規空母
エンタープライズ
ホーネット
ヨークタウン(修理中)
サラトガ(修理中)

 

 

aikon1-64-53.PNG「この中の1隻ヨークタウンは、珊瑚海海戦での損傷修理に3ヵ月を要するとの事だったので
本来は2隻の正規空母で日本軍を迎撃する予定でした。
しかし、二ミッツ提督はヨークタウンの修理を3日で済ませろとムチャな注文をしたのです。」

「3ヶ月かかる修理を3日でなんて・・・ムチャじゃないですか。労働基準法違反でつよ!」

aikon2-64-7.PNG「何でアンタが怒ってんのよ・・・。」

aikon1-64-53.PNG「・・・しかし、アメリカ軍はヨークタウンの修理を本当に3日で済ませてしまいました。
その後、ミッドウェー海域に向かっている2隻の空母に合流させる事にも成功・・・、
これで日本とアメリカの正規空母の差を4:2から4:3まで引き上げる事が出来たのです。」

aikon8-64-1.PNG「アメリカって凄いのね。3ヶ月かかる修理を3日でなんて・・・いくらなんでも早すぎるわ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・ヨークタウンの修理が早く終わったのには理由もあります。日米の空母の根本的な設計の違いです。」

aikon3-64-3.PNG「エンドラとアーガマの違いの様なものか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・その例えだと抽象的過ぎるので、図で説明したいと思います。まず、日本の空母から説明しましょう。」

 

 

 

aikon2-64-8.PNG「何?このヘタクソな絵は・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・余計な突っ込みは控えてください。さて、上記の図は日本の空母が爆撃を受けた様を表しています。」

「赤い色っぽいのは爆風かい?」

aikon1-64-53.PNG「そう考えて頂けると助かります。さて、まずは日本の空母についてですが
仮に爆撃を受けたとして内部で爆発した場合、爆発のエネルギーにより内側から別の場所へダメージを与えてしまうのです。
爆撃を受けていない別の飛行甲板が内側から破損するなど・・・爆発エネルギーの適切な逃げ場がない為の結果です。
現に前回の珊瑚海海戦で損傷した正規空母・翔鶴は投下された爆弾によりかなりのダメージを受けてしまいました。」

 

 

 

aikon1-64-53.PNG「こちらは一方のアメリカ空母です。
同じ様に爆撃を受けたとしても、日本の空母と違い爆発エネルギーの逃げ場がある程度あるので
それほどの損害を被る事が無いのです。」

aikon8-64-2.PNG「エネルギーの逃げ場って・・・?船に穴でも空いてるの?」

aikon1-64-53.PNG「開放型という格納庫を採用しているのです。
21世紀のアメリカ海軍の空母を見ても分かるかと思います。
厳密に言えば開放型とは違いますが、あの空母は船の横にエレベーターが設置されているでしょう?
・・・口で説明するより実際に見ていただいたほうがいいですね。まずは日本の空母を見てください。」

 


空母・蒼龍

 

 

aikon1-64-53.PNG「この空母もミッドウェーに出撃した正規空母の一艦です。
日本製空母は密閉式という方法を採用しており、その名の通り格納庫は密閉され飛行甲板の中央にエレベーターがあります。」

「蒼龍さんですか。やはり爆弾の直撃でも受けたらコロッと戦闘不能になってしまうんですか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・そうです。当たり所にもよりますが。」

「そうですかぁ〜、蒼龍さんも大変ですねぇ〜。」

aikon2-64-9.PNG「・・・何かムカつくんだけど。」

「いえ、惣流さんの事は何とも言ってないでつよ。」

aikon1-64-53.PNG「対するアメリカ軍の空母はこちらです。」

 


ヨークタウン型・航空母艦

 

 

aikon6-64-10.PNG「ホントだ・・・。横に穴が空いてるね。こんなんで大丈夫なの?」

aikon1-64-53.PNG「私は専門家では無いので断定は出来ませんが・・・アメリカ軍も密閉式格納庫の航空母艦を造ってはいたようです。
事実、サラトガと珊瑚海海戦で沈んだレキシントンは密閉式を採用していました。
しかし、他の航空母艦のほとんどが解放式格納庫を採用していた事を見ると・・・
ダメージコントロールという点で考えるなら、密閉式よりは開放式の方が良かったのでしょう。」

aikon2-64-9.PNG「・・・・・。」

aikon3-64-1.PNG「どうした?不機嫌そうな顔をしているが・・・」

aikon2-64-23.PNG「・・・説明が本筋からおもいっきり外れてんじゃん。ミッドウェーの話はどこへいったのよ。

aikon1-64-53.PNG「これも、ミッドウェーに関わる大事な説明の一つ。・・・これは必然です。」

aikon2-64-5.PNG「どこがよ!空母が何たらなんて・・・普通の人が聞いたら確実に引く話を嬉々として・・・
しかも図解付きでご丁寧に進めるんじゃないわよ!」

aikon1-64-53.PNG「・・・・・。」

「ん、反論は無しか?」

aikon1-64-53.PNG「ミッドウェー海戦は今もなお議論の終わっていない海戦の一つです。
中途半端な説明で終わらせるよりは、出来るだけの事はしておいた方がいいでしょう?」

aikon2-64-3.PNG「いいでしょうって・・・私はそういう事を言ってんじゃないの。趣味に走るなって言ってるだけなのよ。分かる?」

aikon1-64-53.PNG「・・・言い掛かりは止めてください。先程の説明のどこが趣味に走っていると言うのですか?」

「どこがって・・・あからさまな気がするが。」

「私もてっきり趣味全開かと思ってたんですけど・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・それは偏見ですよ。」

aikon2-64-15.PNG「説得力無いわよ!」

aikon1-64-53.PNG「・・・話を戻します。
航空母艦というのは、その名が示すとおり航空機の運用が仕事であり飛行甲板が命です。
日本製空母は飛行甲板にダメージを受ければ、空母としての機能は喪失しドックで修理しなければなりません。
一方のアメリカ空母はどうかと言うと、当たり所が悪くなければ爆撃で受けた穴を塞ぐ事で
飛行甲板としての機能を回復させる事が出来るのです。」

aikon6-64-1.PNG「ふ〜ん・・・。」

aikon3-64-1.PNG「ちゃんと理解しているのか?」

aikon6-64-10.PNG「ん〜・・・、何となく。要するにアメリカ空母の方が直しやすいって事でしょ?それ以上はちょっとわかんないけど・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・そんなところですね。」

aikon2-64-7.PNG「それが、ミッドウェーの話と何の関係があんのよ?」

aikon1-64-53.PNG「これはただの予備知識です。日本の空母に比べてどうして米国空母が早く戦線復帰出来たのか・・・
このあたりを説明しておかなければ先人達の沽券に関わりますからね。
これは、私見なのですが・・・日清・日露戦争当時の指導者に比べて大東亜戦争当時の方達の扱いが低い気がするのです。
例えば、日本海海戦を勝利に導いた連合艦隊司令長官東郷平八郎閣下を悪く言う人はまず居ません。
しかし、真珠湾奇襲を成功させたというのに南雲中将の評価はあまり高くないのです。・・・私にはそれが残念でなりません。」

aikon2-64-8.PNG「負けたんでしょ?ならしょーがないじゃん。」

aikon1-64-53.PNG「・・・その通りです。敗軍の将は厳しく罰せられるのが掟なのですから。しかし・・・」

「何かあるんですか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・戦争に負けるには、それなりの理由があるのです。
その理由を知っているかどうかだけで先人達に対する評価は変えられるはずなのです。
日清・日露戦争は日本が戦略的に多少有利だったに対し、大東亜戦争は圧倒的に不利だったのです。
そんな状況で知力を尽くして戦った方々には・・・酷評ではなく賛辞が送られてしかるべきだと思うのです。」

aikon8-64-1.PNG「そういうものなのかな?でも、負けちゃったんだから後々の反省は必要でしょ?」

aikon1-64-53.PNG「・・・確かに。その部分は否定しません。
重要なのは反省と検証なのであり後知恵の酷評ではありません。
しかし・・・世に溢れる文献には先人達を貶めるかのような後知恵の酷評が多いのです。
私はその酷評を少しでも和らげるが出来れば・・・と考えているに過ぎません。私はそのために説明を行っているのです。」

「そうなんだっけ?今の説明は、確か俺たちの今後に役立つとか何とかが理由なんじゃなかったっけ・・・。」

aikon3-64-1.PNG「そういえばそうだな。」

aikon6-64-1.PNG「まぁ、あたしは暇つぶしで聞いてるだけだからどっちでも良いんだけど・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・歴史を学ぶ意味は先人達が得た経験を未来に生かす為であり、
それは当然私達の未来にも役立ちます。これは間違いありません。」

aikon2-64-7.PNG「ファースト、あんたさっきから偉そうな事言ってるけど
これまでの説明で私達にとって何か役に立つ話があったわけ?とても、そうは思えないんだけど・・・。」

aikon1-64-53.PNG「・・・・・。」

aikon2-64-20.PNG「黙ってないで何とか言いなさいよ!」

「なんとか」

aikon2-64-5.PNG「うるさいって言ってるでしょ!ひし形は引っ込んでなさいよ!」

「酷っ!ちょっと愛嬌振りまいただけなのに〜」

aikon8-64-2.PNG「で、私達の参考になる事って何?」

aikon1-64-53.PNG「・・・戦艦は時代遅れ。」

aikon2-64-10.PNG「今さらそんな事、したり顔であんたに言われなくても分かってるわよ!」

「くすくす・・・、惣流さんも必死ですねぇ〜。」

aikon2-64-13.PNG「は?」

「ひとたび真面目な話になってしまえば、アスカさんは出番無くなってしまいますもんねぇ。
人気を保つ為に人を貶める・・・どこぞの芸人と一緒じゃないですか。」

aikon2-64-5.PNG「な!訳の分からない事言うんじゃ無いわよ!それはあんたの想像でしょ!」

「・・・図星突かれたか。」

aikon2-64-15.PNG「うるさいっ!」

aikon8-64-1.PNG「アスカ、あの・・・」

aikon3-64-1.PNG「・・・案ずる事は無い。いつもの事だからすぐに終わる。」

aikon1-64-53.PNG「それでは、ミッドウェー海戦における日米双方の編成を説明します。」

 

機動部隊

空襲部隊
第一航空戦隊・赤城、加賀(空母)
第二航空戦隊・蒼龍、飛龍(空母)

支援部隊
第三戦隊・比叡、霧島(戦艦)
第八戦隊・利根、筑摩(巡洋艦)

警戒隊
第十戦隊・長良(軽巡)
第十駆逐隊・秋雲、夕雲、巻雲、風雲
第十七駆逐隊・谷風、浦風、浜風、磯風
第四駆逐隊・萩風、舞風、野分、嵐

主力部隊

主隊
一戦隊・大和、長門、陸奥(戦艦)

警戒隊
第三水雷戦隊・川内(軽巡)
第十一駆逐隊・吹雪、白雪、初雪、叢雲
第十九駆逐隊・磯波、浦波、敷波、綾波

空母隊
空母・鳳翔
駆逐艦・夕月

特務隊
特殊潜航艇母艦・千代田
水上機母艦・日進

警戒隊
本隊
第二戦隊・伊勢、日向、山城、扶桑(戦艦)
警戒隊
第九戦隊・北上、大井(軽巡)
第二四駆逐隊海風、江風
第二七駆逐隊・夕暮、白露、時雨
第ニニ駆逐隊・天霧、夕霧、夕霧、白雲

 

 

aikon6-64-10.PNG「これだけ?」

aikon1-64-53.PNG「主力部隊は・・・ですけどね。ちなみに、これでも省略している部分があるのですが・・・
次は、ミッドウェーそのものの攻略を任された部隊編成を説明します。」

aikon2-64-19.PNG「ちょっと待って。」

aikon1-64-53.PNG「何でしょう?」

aikon2-64-22.PNG「あとどれくらい続くの?それ・・・。」

aikon1-64-53.PNG「さぁ・・・半分で終われば上々でしょうか。」

aikon2-64-7.PNG「もう少し短く出来ない?興味ない人には意味無いでしょ、それ。」

「それ以前に興味の無いヤシは飛ばすだろ、普通。」

aikon3-64-1.PNG「ある意味、的を得た意見だな。」

aikon2-64-3.PNG「む・・・」

「また玉砕ですか?懲りないですねぇ。」

aikon2-64-15.PNG「うるさいわね〜。」

aikon6-64-13.PNG「でも、あたしも短くってのにはさんせ〜。あんまり、長いと飽きちゃうもん。」

aikon1-64-53.PNG「了解しました。では・・・」

 

攻略部隊

本隊
空母・瑞鳳、戦艦×2、重巡×4
軽巡×1、駆逐艦×8

 

 

「こりゃまたさっぱりしたな。」

aikon2-64-1.PNG「そうそう、こんくらいでちょうど良いのよ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・個人的には省略しすぎかと思います。この艦隊の動きにも後々の戦訓となる出来事が起きているのですから・・・
まぁ、ミッドウェー海戦に参加した艦艇を全て知りたいという方はこちらをご覧になっていただければ解るかと思います。
とりあえず、話を先に進めます。次はアメリカ海軍です。」

 

空母攻撃部隊
第17任務部隊
空母・ヨークタウン
重巡・ポートランド、アストリア
駆逐艦・ハンマン、アンダーソン
ラッセル、ヒューズ、モーリス、ダウイン

第16任務部隊
空母・エンタープライズ、ホーネット
重巡・ミネアポリス、ビンセンズ、
ペンサコラ、ニューオリンズ、ノーザンプトン
軽巡・アトランタ
駆逐艦・フェルプス、ウォーデン、モナガン、
エイルウィン、バルク、コニンハム、ベンハム、エレット、マウリー

補給部隊
駆逐艦・デューイ、モンセン
油槽船・シマロン、プレート

 

 

aikon3-64-1.PNG「これで全部か?」

aikon1-64-53.PNG「・・・もしかしたら情報漏れがあるかもしれませんが、知っている限りではこれが全てです。」

aikon6-64-1.PNG「ふ〜ん・・・。んで、どっちが有利なの?」

aikon3-64-1.PNG「お前の目は節穴か?戦力差をよく見てみろ。圧倒的では無いか、日本軍は。」

aikon6-64-14.PNG「ひっど〜い!あたしだってちゃんと聞いてるもん!」

aikon3-64-1.PNG「・・・だと良いのだが。」

aikon6-64-8.PNG「こっそりギレン閣下の台詞パクってるくせに・・・」

aikon3-64-3.PNG「お前・・・!何故分かるのだ!」

aikon6-64-12.PNGプルプルプル〜!

aikon3-64-9.PNG「訳、分からんわ!」

aikon2-64-19.PNG「・・・・・。」

「どうしたんですか?」

aikon2-64-19.PNG「何でもないわ。ただ・・・ちょっと現実に戻っちゃってね。なんで私、ここにいるんだろうって・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・重要なのは何事も理由があって起こるという事。
理由から逃れる事は出来ない・・・目的を否定する事も出来ない。何故なら、私達は目的無しに生きられない・・・」

aikon2-64-10.PNG「うるさ〜いっ!マトリックスネタは止めろって言ったでしょ!」

aikon1-64-53.PNG「・・・違う。これはハレのちグゥからの引用。

aikon2-64-5.PNG「平然と嘘つくんじゃ無いわよ。あんた、元ネタ知らないでしょ?」

aikon1-64-53.PNG「・・・大丈夫。知らない部分は想像力で補うから・・・」

aikon2-64-15.PNG「そういう問題じゃ無いわよ!」

「しっかし、全然話が進まんな。ミッドウェーの話題になって随分経つが・・・未だに戦闘の話に移ってないだろ。」

aikon8-64-1.PNG「それもそうね。でも、色々と説明する事があるんじゃないのかな?」

「そうでしょうか?とてもそうは思えないんですけど・・・ほら。」

 

 

 

 

 

aikon2-64-20.PNG「あんたは何で事あるごとにマトリックスネタを混ぜるのよ!同じネタは飽きるって知らない訳?
大体、ブームなんかとっくに過ぎ去ってるでしょうが!」

aikon1-64-53.PNG「・・・私のビジネスは情報の取引、知るべき事を知っている。」

aikon2-64-15.PNG「だから止めなさいって言ってるでしょ!一体何度目だと思ってんのよ!」

aikon1-64-53.PNG「さっきのは・・・多分三回目。」

aikon2-64-5.PNG「くだらない事、言ってんじゃないわよ!」

aikon3-64-1.PNG「まぁ、そう目くじらを立てるな。何事にも予定外の事は起こるものだぞ?」

aikon6-64-9.PNG「それ、エギーユ・デラーズ准将のパクり・・・」

aikon3-64-9.PNG「うるさい!」

 

 

 

 

 

aikon1-64-53.PNG「・・・それではミッドウェー海戦の説明に移りたいと思いますが・・・その前にこれまでの要点をまとめておきます。」

 

1.ミッドウェー攻略は日本にとって失敗の許されない作戦で大規模なものだった。
2.アメリカ軍は事前に日本軍によるミッドウェー攻略の情報を掴んでいた。
3.日本とアメリカの空母には違いがある。

 

 

「いきなり話が戻ったな。」

aikon2-64-8.PNG「あれ?あんたが言ってた日本が情報を漏らしたって話は?」

aikon1-64-53.PNG「ただの私見なので、まとめに入れるには不適格です。」

aikon2-64-9.PNG「なら、何で説明してんのよ?」

aikon1-64-53.PNG「情報漏れの原因が日本の慢心だとは思えないからです。・・・これは勘ですが。」

aikon2-64-19.PNG「勘かい・・・。」

aikon1-64-53.PNG「・・・そろそろ具体的な戦闘の説明に入ります。
以前話したとおり、攻撃開始は昭和17年6月5日、現地時間午前4時30分。
ミッドウェー島北西約390kmの地点からミッドウェー島空爆を目的とした第一次攻撃隊が出撃しました。編成は次の通りです。」

 

日本軍第一次攻撃隊
零戦36機(制空)
九九艦爆36機(爆撃)
九七艦攻36機(爆撃)

 

 

aikon1-64-53.PNG「・・・第一次攻撃隊を率いるのは航空母艦飛龍の飛行隊長・友永丈市大尉です。」

「今回も真珠湾の時みたいに第二次攻撃隊ってのも、もう準備してんのか?」

aikon1-64-53.PNG「はい。ですが、第二次攻撃隊は対艦隊攻撃用の兵装です。
九七艦攻はすでに魚雷を装備していました。」

aikon6-64-10.PNG「なんで?」

aikon1-64-53.PNG「南雲機動部隊が出撃する2日前の5月25日連合艦隊と南雲機動部隊幹部による最後の打ち合わせが行われていたのです。
その席上で山本大将は、以下の様に語ったとされています。」

 

ミッドウェー作戦の目的は島の攻略ではなく
攻略阻止に進出した敵空母の撃滅であり
攻撃機の半分を雷装で待機させておくように

 

 

aikon1-64-53.PNG「おそらく南雲中将は山本大将の意向通りに動いていたのでしょう。」

aikon6-64-1.PNG「ふ〜ん・・・。」

aikon1-64-53.PNG「彼の言動からも分かるとおり
山本大将のミッドウェー攻略作戦における主目的は敵機動部隊であり、空母の撃滅であったのだと思います。
しかし、実際に南雲中将が受けた陸海軍中央協定の命令には
ミッドウェー島攻略の支援・進出してきた敵艦隊の殲滅の二つが記載されていました。
これは、軍令部と山本大将の意思が統一されていなかった事の現れかと思います。」

aikon3-64-1.PNG「敵艦隊の殲滅と敵地の攻略か・・・。二兎追うものは何とやらだな。」

aikon1-64-53.PNG「・・・諺の通りになってしまいましたからね。耳の痛い話です。」

「ところで攻撃隊はどうなったんだ?ミッドウェーの攻撃に向かったんだろ?」

aikon1-64-53.PNG「はい。例によって情報が漏れていたので強襲になってしまいましたが・・・。」

aikon2-64-1.PNG「作戦が筒抜けだものね。」

aikon1-64-53.PNG「同日6時15分、ミッドウェー上空に到着した第一次攻撃隊ですが同島基地に敵機の姿はありませんでした。
この頃、アメリカ軍の偵察機は南雲機動部隊を発見しており、
ミッドウェー島に配備されていた機体は南雲機動部隊の攻撃に向かったか上空に退避していたかのどちらかだったのです。」

「やっぱり暗号を解読されてた影響ですかねぇ。」

aikon1-64-53.PNG「手際が良いですからね。戦争において情報が命と言われるのも当然と言えます。」

aikon3-64-1.PNG「で・・・、第一次攻撃隊はどうなったのだ?」

aikon1-64-53.PNG「第一次攻撃隊を待ち構えていたのは、上空に上がっていた27機の戦闘機です。
機種は不明ですが・・・零戦隊の敵ではありませんでした。敵戦闘機のうち15機が撃墜、又は行方不明。
基地に戻った12機のうち大破が7、・・・何とか飛べるのが5機だけという惨状でした。」

aikon6-64-13.PNG「何だかんだ言っても流石はロンド・ベル隊だね〜。」

aikon1-64-53.PNG「友永大尉指揮の攻撃隊は激しい対空砲火にさらされながら、基地施設に攻撃を加えました。
しかし、滑走路を機能喪失させるには至りませんでした。
状況を確認した友永大尉は第二次攻撃の要ありとの電文を機動部隊に送ったのです。
この電文は後の南雲機動部隊の運命を決めたとも言われています。」

aikon6-64-11.PNG「そなの?」

aikon1-64-53.PNG「この友永大尉の電文を受けた機動部隊司令部は
雷装で準備をすでに整えてある攻撃隊の兵装を陸攻爆弾に変えるか?という決断を迫られる事になりました。
この兵装転換にまつわる話は少し後になりますが・・・この兵装転換がミッドウェー敗北原因の一つとされてます。
しかし、この第二次攻撃要請の電文で分かるのは日本軍に慢心が無かった表れでは無いかと思います。
油断があればこそ敵を過小評価し第二次攻撃隊の要請を行わないと思うのですが・・・いかがでしょうか?」

aikon2-64-7.PNG「いかがでしょうって・・・いきなり話を振られても困るって。」

「同じく〜。」

aikon1-64-53.PNG「開戦以来連勝続きとは言え、航空隊搭乗員の戦死者は出ています。
先に行われた珊瑚海海戦での被害はかなりのものです。
妾の子、本妻の子云々というような奢った空気が本当にあったのか・・・正直、疑わしいと思います。
仮にそういった空気があったとしても、日本軍全体に蔓延していたとは思えません。」

aikon8-64-1.PNG「まぁ、当時の人じゃないと分からないと思うけど・・・」

aikon1-64-53.PNG・・・空想を語っても仕方ありませんね。次に進みます。」

aikon2-64-13.PNG「散々話しといて空想なの?」

aikon1-64-53.PNG「・・・日本軍に慢心は無かったとする確固たる情報源が無いからです。となると状況証拠しか無いのが現状です。
さて、第一次攻撃隊がミッドウェー島に到達し攻撃を加えていた頃
南雲機動部隊もミッドウェーから飛び立ったアメリカ軍攻撃隊の攻撃を受けていました。
種類は海軍陸軍混成とも言える雑多なものでしたが、制空の零戦隊によって撃退されています。」

「この頃はまだ大丈夫だったんだな。」

aikon1-64-53.PNG・・・悲しくなるような事を言わないで下さい。
アメリカ軍の攻撃を何とか退けていた南雲機動部隊ですが、各空母は第二次攻撃隊の準備に追われていました。
攻撃目標はミッドウェー島施設になります。」

aikon3-64-3.PNG「ん?第二次攻撃隊は雷装では無かったのか?」

aikon1-64-53.PNG「友永大尉の報告を受けた南雲中将は攻撃隊へ魚雷から爆弾への兵装転換を命じていました。
敵機動部隊の存在がつかめていなかったが故の判断です。」

aikon2-64-3.PNG「なんでそんな事してんのよ。ミッドウェー作戦の目的は敵機動部隊の殲滅なんでしょ?索敵はどうしたのよ、索敵は。」

aikon1-64-53.PNG「・・・ご心配なく。第一次攻撃隊の出撃時と時間を前後して索敵機が7機、周囲の索敵に向かっています。
ただ、カタパルトの故障で利根4番機が30分遅れで出発するというトラブルがありました。
これも・・・敗北を喫した原因の一つであると言われています。そして、索敵機そのものが不足していたとする意見もあります。」

「そうなんですか?」

aikon1-64-53.PNG「そういった意見があるだけで、私は的外れなモノだと見ていますが・・・説明は必要ですか?」

aikon2-64-19.PNG「どっちでもいいけど・・・手短にお願いするわ。」

aikon1-64-53.PNG「この索敵法はこれまで行われていたものと違いはありません。
機数が少ないとしても何と比較して不足なのかよく分かりません。
もし仮に、偵察機を倍に増やしていたとしても、敵空母を発見できなければ評価は同じだったのではないでしょうか?
そんな単純な比較は、あまりに酷というものです。
南雲中将が索敵機?(゚听)イラネと言っていたのなら話は別ですが、
従来通りの方法を執っていたのですから索敵方法そのものを非難するのは、少々強引では無いかと思うのです。」

aikon2-64-35.PNG「(゚听)イラネって・・・をい。」

「まぁ、いいんじゃないですか?。分かりやすいでしょ、ふふふ・・・」

aikon8-64-1.PNG「分かりやすいのかな・・・?」

aikon3-64-1.PNG「ところで、索敵の結果はどうだったのだ?」

aikon1-64-53.PNG「南雲中将が兵装転換を命じた7時15分の時点で機動部隊発見の報告はありませんでした。
その時点での機動部隊司令部の見方は敵機動部隊は存在しないとする意見がほとんどだったのです。」

aikon2-64-3.PNG「でも、敵機動部隊の撃滅も任務だったんでしょ?もう少し待っても良かったんじゃないの?」

aikon1-64-53.PNG「そのもう少しの基準はどう行うのですか?
もっとも、この兵装転換命令も全ての索敵機からの報告が済んでいなかった時点での命令ではあったのですが・・・。
しかし、この兵装転換命令も決して間違ったものではありません。」

「そうなんですか?一回目の兵装転換命令ですけど結構非難されてますよ、それ。」

aikon1-64-53.PNG「それは、利根4号機・・・30分遅れて出発した索敵機が敵を発見するという事実を知っているからの意見かと思います。
当時の機動部隊司令部は敵機動部隊がミッドウェー海域に居るかどうかすら知らなかったのですから。」

aikon2-64-8.PNG「そうだっけ?
聞いた話なんだけど、後方の山本大将って人の部隊は敵の無線を傍受してて敵機動部隊が進出してるって事は掴んでたって話よ。
おまけにその情報を前線に伝えなかったって・・・日本軍の情報軽視ここに極まれりね。」

aikon1-64-53.PNG「・・・・・。」

aikon3-64-3.PNG「反論は無いのか?」

「アスカさんは、どこで話を聞いたんでしょうか・・・。」

aikon1-64-53.PNG「・・・後方の戦艦大和が敵無線を傍受出来たのは、通信技術に精通した人員を配置していたからだそうです。
同様に、第一航空艦隊旗艦である赤城にも同様に配置していたという話があります。
もっとも、情報源がハッキリしたものでは無いので断言は出来ませんが・・・」

aikon2-64-8.PNG「でも、傍受出来てなかった事に変わりはないんでしょ?何で前線に知らせなかったのよ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・作戦中は無線封止するという決まりになっていたからです。
加えて、遠く離れた大和で無線が傍受出来ているのだから、遥か前方にいる赤城でも傍受しているだろう・・・という見方が主流だったのです。」

aikon2-64-3.PNG「色々言ってるけど、伝えるべき事を伝えようとしなかったんじゃない。」

「段々、私達の出番が減ってきた気が・・・」

「んだな。その他大勢になってきた気がするぜ。」

aikon6-64-13.PNG「あたしも〜。このままじゃ本当に傍観者になっちゃうね。」

aikon8-64-1.PNG「私は最初から会話についていけなかったけど・・・」

aikon3-64-10.PNG「フッ、少し状況を見てみたらどうだ?」

「は?」

aikon3-64-1.PNG「状況から察するに、今は重要な会話の真っ最中と言える。
そんな中、我らに出来る事は少ない・・・。これは紛れも無い事実だ。」

aikon6-64-8.PNG「そんな事は分かってるんだけど・・・マシュマー様には何か妙案があるの?」

aikon3-64-1.PNG「無い。」

aikon6-64-9.PNG「駄目じゃん。」

aikon3-64-1.PNG「ならば、我らに出来る事はただ一つ・・・
彼女らの会話に口を挟まない事だ。そうする事で、重要な会話の終息を早める事に繋がるはず・・・。
つまり、お前達が口を挟める状況になる可能性が増えるというわけだ。」

「もし最後まで大事な話のままだったらどうするんです?」

aikon3-64-1.PNG「・・・・・。」

aikon6-64-10.PNG「マシュマー様?」

aikon3-64-1.PNG「・・・その時はその時だ。自分で考えろ。」

「ムチャ言うな。」

「フフフ、大丈夫でつよ。私達もムリヤリ会話に首を突っ込めば良いんです。」

aikon6-64-1.PNG「いいのかな、そんなんで・・・」

「良いんです。授業の極意は討論にあり!朝まで生TVだって不毛な会話を続けてるじゃないですか。
知識なんか無くても喋ったモン勝ち。それで良いんですよ。」

aikon8-64-1.PNG「良いのかな・・・?」

aikon1-64-53.PNG「・・・皆さん、何を話しているんです?」

aikon2-64-7.PNG「あんた達・・・私らの話、全然聞いてなかったでしょ?」

「いやいや、聞いてたぜ。無線封止がどうとか言う話までは。な?」

aikon3-64-1.PNG「・・・その通りだ。あまり我々を見くびってもらっても困る。」

aikon2-64-8.PNG「そう?なら良いけど・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・ミッドウェーに関する意見は多岐に亘るのでとにかく長くなります。
飽きが来ているのは分かりますが・・・今後の日本軍の動向に大きな影響を与えますので、もう少々辛抱して下さい。」

「は〜い。」

aikon6-64-13.PNG「りょ〜かい。ところでレイに聞きたい事があるんだけど・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・何でしょう?」

aikon6-64-10.PNG「あたしみたいな素人が会話に参加してもいいの?」

aikon1-64-53.PNG「・・・始めは誰もが初心者であり素人です。私だって素人同然なのですから、躊躇う必要など無いと思いますが・・・。」

aikon6-64-13.PNG「よかった〜。ちょっと心配しちゃった。」

aikon1-64-53.PNG「知らない事は恥ずかしい事ではありません。知ろうとしない事が問題なのです。
これは、某掲示板の話ですが大和の主砲は38cmだから使えない云々という意見がありました。
自分の有している知識が使えるものかどうか・・・自分で判断するには線引きが難しいものなのです。」

aikon6-64-10.PNG「何がなんだかよく分からないんだけど・・・」

aikon3-64-1.PNG「要するにだな、分からない事は質問しろという事だ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・と言う様なことが旧日本軍にも言える訳です。」

aikon2-64-35.PNG「はぁ?」

aikon1-64-53.PNG「情報とは客観的に見られなければ判別がつかないモノなのです。
先程の無線封止が情報軽視とする意見ですが、それも見解の一つであり情報漏洩を防ぐ為の無線封止とも受け取れる訳です。
日本軍の暗号がアメリカに筒抜けだった事を当時の方々は知らなかったのですから・・・
連合艦隊司令部が無線封止に拘った事にも一理はあるのです。」

「話、繋がってたのか・・・。」

aikon2-64-9.PNG「どーせ、むりやり繋げたんでしょ。」

「何が何でも否定するんですねぇ。そんなに気に入らないんですか?」

aikon2-64-20.PNG「違うわよ!ファーストの何が何でも日本軍擁護の姿勢が気に入らないの!
少しくらい反省して謙虚になってもいいと思わない?」

aikon1-64-53.PNG「私は十分、旧海軍が反省すべき点を挙げているつもりですが・・・」

aikon2-64-5.PNG「どこがよ!あんた、口を開けば悪くなかった、理由があったばっかじゃない!
どうしてそこまで擁護する気になるのか・・・気が知れないわよ!」

aikon1-64-53.PNG「先人達を不当に貶めていた自虐史観に比べれば、十分有益かと思います。」

aikon2-64-15.PNG「そういう問題じゃ無いでしょ!」

aikon8-64-1.PNG「アスカ、綾波さんも・・・冷静に、ね?」

「焦っているだと・・・私は冷静だ!」

aikon6-64-20.PNG「ガルマ・・・、恨むのなら君の生まれを呪うがいい。君の父上がいけないのだよ。」

シャア・・・謀ったな!シャ(ry

aikon2-64-13.PNG「なに言ってんのよ、あんたらは・・・」

aikon1-64-53.PNG「話を先に進めたいと思います。
魚雷から爆弾への兵装転換を命じてから程なく・・・索敵機利根4号機から敵艦隊発見の報告が届きました。」

aikon3-64-1.PNG「間の悪い話だな・・・。」

「ま、勝負ってのは知力・体力・時の運だからなぁ。それも一つの選択の結果さ。」

aikon1-64-53.PNG「最初は、敵艦隊に空母が存在するかどうかは不明でしたが
数度に亘る確認を経て敵空母が存在するという現実が確実なものとなったのです。さて、問題なのはここからです。」

aikon6-64-10.PNG「何が問題なの?」

aikon2-64-8.PNG「さっきから言ってるアレでしょ?」

aikon8-64-1.PNG「アレって・・・?」

aikon2-64-7.PNG「兵装転換とか言うやつよ。
ついさっき魚雷から爆弾に付け替えるように南雲って人が命令出しちゃったでしょ?
せっかく魚雷装備で待機させてたってのにね。」

aikon1-64-53.PNG「・・・敵空母発見の報を受けた8時30分の時点で、
雷装から爆装への換装がある程度進んでしまっていました。ここで南雲中将は決断に迫られます。」

 

再び雷装に戻すか、現在の装備のまま出撃させるか

 

 

aikon1-64-53.PNG「・・・この部分がミッドウェー海戦での南雲中将に対する非難が最も大きい部分かと思われます。」

aikon3-64-1.PNG「そうなのか?私にはよく分からぬが・・・」

「なんか、そうみたいですよ。余計な時間を潰したって・・・」

aikon1-64-53.PNG「この時、航空母艦飛龍の第二航空戦隊司令官山口多聞少将から、
爆装の済んでいる攻撃隊を発進させてほしい・・・という意味の発光信号が南雲中将宛に送られてきました。
以前説明を省いてしまいましたが、真珠湾攻撃の時、第二派攻撃の意見具申を行ったのも彼なのです。
ですが、南雲中将はその意見具申を取り上げず、魚雷への兵装転換を実行させました。」

aikon6-64-10.PNG「なんで?戦争って時間が勝負なんでしょ?」

aikon2-64-3.PNG「南雲って人は水雷が専門で魚雷攻撃に拘ってたって聞いたんだけど・・・。
それにセイロン島の時も、魚雷だ爆弾だって艦内大童になってたでしょ?何で前回と同じ事繰り返してんのよ。」

aikon1-64-53.PNG「アスカの意見はよく聞く話です。
しかし、私は南雲中将の判断は間違ったものではないと考えています。」

aikon2-64-4.PNG「何でよ!戦争ってのは先手必勝でしょ!
ただでさえ時間が勝負なんだから、爆弾でも何でも攻撃に向かわせちゃえばいいじゃない!」

aikon3-64-1.PNG「強引だが・・・一理ある。戦いにはスピードも要求されるからな。」

aikon1-64-53.PNG「・・・攻撃隊を出そうにも護衛に付ける戦闘機が居なかったのです。
零戦隊はすでに敵機の迎撃に追われていますから、零戦隊を一度収容して再編成する必要もあったのです。」

aikon2-64-5.PNG「そんな悠長な事言ってる場合じゃないでしょ!敵が迫ってんのに・・・一刻を争うのよ!」

aikon1-64-53.PNG「気持ちは分かりますが・・・珊瑚海海戦を思い出してください。」

aikon6-64-11.PNG「珊瑚海・・・ってなんだっけ?忘れちゃった〜。」

aikon3-64-1.PNG「史上初の空母同士の戦いだ。あの時は引き分けで終わったはずだが・・・」

aikon1-64-53.PNG「・・・珊瑚海海戦の時、攻撃を終えた日本軍の攻撃隊が敵戦闘機に撃ち落とされるという事があったのです。
この事からも解る様に、戦闘機の護衛の無い爆撃機というのは非常に脆いものなのです。
これらの事実から考えると・・・攻撃隊を再編成して出撃させようという南雲中将の判断は間違いでは無いと言えます。」

aikon2-64-3.PNG「む・・・」

「もう、反論は無しですか?」

aikon2-64-15.PNG「うるっさいわね〜!ちょっと待ってなさいよ!今考えてんだから・・・」

aikon1-64-53.PNG「アスカが考えをまとめている間、ただ待つのも何なので話を先に進めたいと思います。」

aikon2-64-5.PNG「ちょっと、待ちなさいよ!」

aikon1-64-53.PNG「・・・いくら考えても反論は思いつかないと思います。
現実を見れば護衛無しの出撃がいかに無謀かは理解出来るはずですから。
おまけに、南雲機動部隊の上空では、護衛の無い敵攻撃隊が零戦に次々と打ち落とされているのです。
珊瑚海海戦での経験と目の前の光景・・・虎の子の攻撃隊を丸裸で送り出すという選択肢はどう考えても無謀かと思います・・・。」

aikon2-64-3.PNG「むぅ・・・」

「駄目出しされちゃいましたね?」

aikon2-64-20.PNG「るさいっ!」

aikon6-64-10.PNG「敵に攻撃受けてて・・・南雲さんの部隊って平気なの?」

aikon1-64-53.PNG「護衛の零戦隊と、空母乗組員の操艦技術のおかげで無傷です。この時点では・・・ですが。」

aikon6-64-6.PNG「後部対空砲!弾幕薄いぞ、何やってんの!・・・て感じかな?」

aikon3-64-3.PNG「なぜ、ブライト中佐を出す・・・?」

aikon1-64-53.PNG「敵の攻撃をどうにか退けていた日本空母ですが、艦内は大忙しでした。
兵装転換の最中に第一次攻撃隊が戻ってきたからです。」

「あ・・・そうか。そういえば、ミッドウェー島攻撃に向かった部隊が居たもんなぁ。すっかり忘れてたぜ。」

aikon1-64-53.PNG「燃料切れ間近だった攻撃隊を放っておく訳にもいきません。
各空母では収容作業が優先され・・・甲板上は混乱していました。
それと、あまり有名では無いようですが、
南雲機動部隊は敵攻撃機以外に敵潜水艦にも捕捉され攻撃を受けていた様です。」

aikon6-64-1.PNG「潜水艦って・・・?」

aikon3-64-1.PNG「・・・そのくらい自分で調べろ。」

aikon6-64-8.PNG「え〜、ちょっとくらい説明してくれたっていいじゃん。」

aikon3-64-1.PNG「やれやれ・・・。いいか?潜水艦とは水中に潜れる船の事だ。後は自分で考えろ。」

「ずいぶん、なげやりな説明ですねぇ。」

aikon3-64-1.PNG「スペースノイドの我々にはあまり縁の無い兵装だからな。正直なところ私もよく知らんのだ。」

「まぁ、いいんじゃねぇの?説明も間違っちゃいない様だし。」

「潜水艦と言えば、アメリカの水兵だか何かがUボートを奪取するという話がありましたねぇ。
あれも中々、面白い話でしたよねぇ。可も無く不可も無く・・・」

「Uなんとかってヤツだよな。暗号機を目的に乗り込んだは良いが
母艦の方が沈んじまったんだよな。さすがアメリカ、情報には力を入れていたんだな。」

aikon8-64-1.PNG「何の話なの?」

「何年か前に公開された潜水艦の映画さ。色々言われているけど・・・まぁ面白かったと思うぜ。
Uボートって映画には及ばない気がするが・・・。にしても、案の定ドイツ兵は悪役だったな。」

「それはしょうがないですよ。パールハーバーじゃ日本人も悪役ですから。」

aikon1-64-53.PNG「・・・・・。」

aikon6-64-13.PNG「マシュマー様も悪だしね。」

aikon3-64-9.PNG「誰が悪だ!」

「しかし、魚雷1発で駆逐艦が木っ端微塵というのはどうなんでしょう?
そんなに当たり所が悪かったんですかねぇ?」

「さぁ、酸素魚雷でも積んでたんじゃねぇの?ほれ、日本とドイツは同盟結んでたろ。
だから魚雷の1本2本くらい、ヘンなのが混じってても分からねぇって。なぁ?」

aikon1-64-55.PNG「・・・私に聞かれても困ります。」

aikon3-64-3.PNG「ところで、潜水艦からの攻撃というのは空母にとって脅威なのか?」

aikon1-64-53.PNG「潜水艦による魚雷攻撃は喫水線下にダメージを与える為、非常に危険です。
航空母艦の見張り員は敵航空機だけでなく、敵潜水艦に対しても神経を尖らせなければならなかったのです。
常に神経を張り詰めなければならない彼らの疲労度は想像以上かと思われます。
同じ頃、敵機動部隊の雷撃隊が攻撃体制に移り始めました。」

aikon3-64-1.PNG「敵機動部隊・・・という事は空母から飛び立った部隊だな?」

aikon1-64-53.PNG「・・・そうです。日本軍の第一次攻撃隊がミッドウェー島に到達しようとしていた時
基地からアメリカ軍機動部隊に向けて日本軍来襲と打電していたのです。
報告を受けたレイモンド・A・スプルーアンス少将はエンタープライズ・ホーネット両艦の攻撃隊に出撃を指示、
すでに位置が特定されていた南雲機動部隊への攻撃に向わせたのです。」

 

F4F20機(制空)
SBD68機(爆撃)
TBD28機(雷撃)

 

 

aikon8-64-1.PNG「その時って日本軍は何してたんだっけ・・・?」

aikon1-64-53.PNG「その頃は、ミッドウェーから飛び立った攻撃隊からの攻撃に遭っていた頃です。
まだ敵機動部隊の位置はおろか、存在にすら気付いていませんでした。」

「な〜んか・・・、負けるべくして負けたって感じだな。」

aikon1-64-53.PNG「・・・南雲機動部隊が雷撃機の攻撃を受け始めたのは9時30分頃
各空母がようやく第一次攻撃隊を収容し終えた頃です。」

aikon3-64-3.PNG「・・・一難去ってまた一難か。こうも立て続けに攻撃を受けるというのも大変なのだろう?」

aikon1-64-53.PNG「・・・はい。アメリカ軍の雷撃隊は直衛の零戦隊にことごとく落とされていきます。
雷撃隊が放った魚雷も外れ・・・赤城、加賀、飛龍、蒼龍の4空母は無傷だったのです。」

aikon6-64-4.PNG「・・・無傷ってのも凄いね。零戦隊って化け物なの?」

aikon1-64-53.PNG「この頃の日本軍は、日中戦争の頃からのベテランが多く、士気・練度・技術の面で高レベルな状態を維持していました。
・・・おそらく、この時が日本軍機動部隊の最盛期であったと思います。ですが・・・これから、旧帝国海軍にとっての終わりが始まるのです。」

「あれ?そういえばアスカさんはどうしたんですか?あれ以来、静かになっちゃってますけど・・・」

aikon2-64-7.PNG「なによ?」

aikon8-64-1.PNG「何って・・・どうしたの?その本の山・・・」

aikon2-64-3.PNG「別に・・・、ファーストをギャフンと言わせるために色々調べてんのよ。少しは勉強しないと話しについていけないもの・・・」

「なんでそんな暇な事してるんです?別にテキトーで良いじゃないですか。」

aikon2-64-6.PNG「そうはいかないわよ!戦いに勝つには情報が基本なんだから!
私の方が正しいって事を証明してみせるわ!」

「単に負けず嫌いなだけの様に思えるが・・・」

aikon1-64-53.PNG「では、昭和17年大東亜戦争の運命を決めた・・・今日のその時がやってきます。」

aikon6-64-1.PNG「何で公共放送・・・?」

「さぁ・・・?」

aikon1-64-53.PNG「雷撃を行うには基本的に海面近くに下りる必要があります。
アメリカ軍雷撃隊は雷撃のために海面ギリギリまで降下・・・、
一方、空母を守る為に直衛の零戦隊もTBD攻撃機を追い海面近くまで高度を下げていたのです。・・・悲劇は次の瞬間に起こりました。」

aikon8-64-2.PNG「悲劇?」

aikon1-64-53.PNG「雲の切れ間から、SBDドーントレス急降下爆撃機が突然現れたのです。
数は47機・・・あまりにも突然の事に、見張り員が叫んだ時にはすでに打つ手はありませんでした。」

「回避なり何なり出来なかったのか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・無理だった様です。例えて言うならガミラス帝国のデスラー戦法の様な完全な奇襲だった様ですね。」

aikon2-64-8.PNG「ガミラスって・・・をい。」

aikon6-64-10.PNG「デスラー戦法って・・・あの顔色の悪い人の事?」

aikon1-64-53.PNG「そうです。あまり話を進めると本筋から大きく外れるので止めておきますが・・・
日本軍にとって、急降下爆撃機の奇襲は予想外の出来事だったようです。」

aikon2-64-3.PNG「見張りはどうしたのよ?」

aikon1-64-53.PNG「雷撃機による攻撃と潜水艦に脅かされていた状況です。
見張りの誰もが海面に意識を集中させていた時に実行された狙い済ましたかの様な急降下爆撃
これに対応するのは困難かと思われます。」

aikon3-64-7.PNG「雷撃隊を囮にして、急降下爆撃を成功させるか・・・。非情だが確実な方法だ。」

aikon1-64-53.PNG「・・・ちなみに、この奇襲が意図的だったかどうかは分かりません。
アメリカ軍機動部隊は十分に距離を詰めてから攻撃する予定だったのですが、
日本軍索敵機に発見された事を知ると、準備の出来た部隊から逐次出撃させたのです。」

aikon2-64-6.PNG「臨機応変に行動したって事よね。日本人もそのくらい柔軟な発想すれば良かったのに。」

aikon1-64-53.PNG「・・・アメリカ軍の攻撃も結果的にはうまくいきましたが、戦術的には優れてるとは言いがたいものです。
なぜなら、戦力の逐次投入は各個撃破される恐れがあるからです。
同じ戦術を日本軍が執ったら、まず間違いなく非難されるでしょう。・・・実は後年、日本に似た様な状況が起きているのです。」

aikon2-64-7.PNG「やっぱり後回しにするわけ?」

aikon1-64-53.PNG「・・・後半の話なので行うべきところで説明します。」

aikon8-64-1.PNG「ねぇ、日本の空母ってどうなっちゃったの?爆弾当たっちゃったんでしょ?」

aikon1-64-53.PNG「爆撃を受けた赤城、加賀、蒼龍の3空母は瞬く間に燃え上がりました。
兵装転換時に取り外した陸攻爆弾や装着したばかりの魚雷、航空機に搭載された航空燃料・・・
それらに引火し大爆発をおこしてしまったのです。もはや、手の付けられない状況でした。」

「炎上ですか・・・。残念ですねぇ。蒼龍さんも燃えてしまったんですか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・はい。」

「蒼龍さんが・・・悲しい事です。」

aikon2-64-7.PNG「あんた、ワザと言ってるでしょ。」

aikon1-64-53.PNG「3空母の乗組員は必死の消火作業を続けましたが、
加賀・蒼龍の2隻は当たり所が悪く、すぐに機関が停止してしまいました。
しばらくの間、航行を続けていた赤城も機関が停止すると破棄を止むを得なくなり・・・後に総員退艦命令が出される事になります。」

aikon3-64-1.PNG「赤城とは旗艦だったのだろう?南雲中将とやらはどうしたのだ?」

aikon1-64-53.PNG「・・・艦に残るつもりだった南雲中将ですが、周囲の人間に説得され退艦しました。」

「その南雲って人もつらいだろうなぁ。自分の指揮下で大打撃を受けちまったんだから・・・」

aikon1-64-55.PNG「・・・その心情は私には分かりません。」

aikon8-64-1.PNG「戦争って・・・大変なのね。」

aikon1-64-53.PNG「旗艦が損傷を受け、司令部が混乱している状況では指揮を執るのは困難です。
航空戦の指揮権は、被害を受けていない正規空母飛龍の第二航空戦隊司令官山口少将に代わりました。
空母3隻が損害を被っている間、唯一難を逃れていた飛龍は3空母の海域から離れていきます。」

aikon3-64-1.PNG「圧倒的優勢が一気に覆されたな。戦争とは非情なものだ・・・。」

aikon1-64-53.PNG「・・・しかし、戦いはこれで終わった訳ではありません。
空母は炎上しているとは言え、乗組員達は艦内で必死の消火作業を続けています。
また、正規空母飛龍の戦闘力が失われた訳でもありません。」

「と言うと・・・次は第2ラウンドって考えていいのか?」

aikon1-64-53.PNG「・・・そうです。」

 

 

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