ミッドウェー海戦 後
「・・・3空母が炎上している最中、南雲機動部隊司令部は、幾度かの乗り換えを経て、軽巡・長良に移動これを旗艦としました。
一方の第二航空戦隊司令長官山口少将は全機今ヨリ発進敵空母ヲ撃滅セントスとの信号を発信、
直ちに攻撃隊を発信させたと言われています。」
空母・飛龍
「言われているって?」
「3空母が炎上している状況では情報が錯綜して当然です。
ここからのミッドウェー海戦の話は推測混じりであるという事を了承した上でお付き合い下さい。」
「いい加減ねぇ・・・。」
「そんな事言ったら歴史なんか語れませんですよ。」
「敵機動部隊攻撃を目的とした第一次攻撃隊の編成は次の通りです。」
零戦6機(制空)
九九艦爆18機(爆撃)
「これだけなの?」
「準備が整っていたのは以上です。」
「たったそれだけの機数で大丈夫なのかな・・・?」
「・・・大丈夫とは言いがたいでしょう。
数が少なければ1機あたりの被弾率が上がる事に繋がりますから・・・しかし、搭乗員達の士気は衰えていなかった様です。」
「士気って・・・私達の感覚でいうところの気力でしょう?味方がやられてるのに士気が高かったんですか?」
「そうです。・・・何か不思議な事ですか?」
「味方が少なくなっているって聞いたら・・・何か、戦意が少なくなってもおかしくない気がするけど。」
「・・・それは状況次第とも言えます。
ゲッターチームのムサシさんが亡くなられた時、士気が下がりましたか?
・・・どちらかと言えば、隊全体の士気は上がったものと見て良いのではないかと思います。」
「ムサシは死んでないって・・・。」
「そうそう、原作とは違うから生きてたはずだぞ。」
「・・・失礼しました。少し勘違いをしていた様です。」
「勘違いじゃ済まないわよ!何、勝手に仲間を殺してんのよ!」
「・・・あまり、本筋から話を逸らすのは止めて下さい。」
「張本人はあんたでしょ!」
「・・・飛龍搭乗員の士気は、どちらかと言えば高かったと思われます。
そして、士気の高さの理由の一つとして司令官である山口少将の存在が挙げられます。」
「ちょっと!話を投げっぱなしにすんじゃないわよ!ムサシの話はどうなったのよ!」
「・・・今は山口少将の話です。武蔵については後で話します。」
「字が違うわよ!私が言ってんのは・・・」
「巌流島の武蔵さんですか?」
「違うって言ってるでしょ!あんたもつまんないボケすんじゃないわよ!」
「・・・カリカリしてますねぇ。ほねっこ食べた方が良いですよ。」
「私は犬かっ!」
「何度か話に出ているが・・・山口少将とはどの様な人物なのだ?」
「・・・山口少将はアメリカの駐在武官をしていた事もあり、日本とアメリカの国力の差が身に染みていたと言われています。
徹底した開戦反対派で、連合艦隊司令長官の山本大将からも期待されていたそうですね。
しかし、いざ戦いとなれば勝つための算段を考え機動部隊の構想を意見具申を行っていたりもします。」
「ふーん・・・。」
「また、搭乗員の訓練に対してもかなり厳しかったそうで、人殺し多聞丸とまで言われていたそうですが、
平時には気軽に兵達と談笑するなど・・・指揮官として部下達に好かれていたみたいですね。
・・・そして、アメリカ機動部隊への攻撃を前に、飛龍攻撃隊搭乗員に対し
貴様らだけを死なせはしない俺も必ず後から行くという趣旨の訓示を行ったとされています。
こんな事を言われてしまえば・・・士気が上がらないと考える方が不自然でしょう。」
「・・・部下に慕われる上官か。まるでかのドズル中将閣下の様だ。」
「どっかの誰かさんとは大違いだね。」
「誰かさんとは誰の事だ?」
「え?この人。」
「人を指さすな!」
「・・・あんた、部下からも見放されてんの?」
「悪質なデマを流すな!私ほど部下から慕われている士官も珍しいぞ。」
「そう?ゴットンなんかいっつも頭抱えてんじゃん。」
「ヤツは神経質すぎるのだ。私の指示通りに動けばいいものを・・・」
「・・・話を続けます。小林大尉指揮下の飛龍第一攻撃隊は10時58分に出撃。
12時08分に敵空母ヨークタウンを発見、攻撃を開始しました。」
「護衛の戦闘機って6機だけなんだろ?大丈夫なのか?」
「ヨークタウン上空で待ち構えていたのは12機のF4F戦闘機です。
飛龍の第一次攻撃隊は突撃を敢行、半数以上を失いながら爆弾3発を命中させました。」
「半数以上・・・やはりアメリカ軍とやらも侮れん様だな。」
「アメリカもアメリカで必死ではあった様です。
事実、ヨークタウンから発進し南雲機動部隊攻撃に向かった爆撃機の多くが未帰還となっています。」
「え、どうして?」
「・・・燃料切れだそうです。
元々、攻撃隊を発進させた位置が帰還できるかどうかギリギリの距離だったらしいですからね。
燃料切れもある意味必然だったとしか言えません。」
「アメリカって人命保護はしっかりしてると思ってたんだけど・・・。」
「・・・搭乗員の救助に駆逐艦なり何なりは向かわせたのではないかと思います。
まぁ、アメリカ搭乗員の行く末は調べて無いのでどうでも良い事として、話を進めたいと思います。」
「どうでもいいって・・・。」
「日本も日本で手一杯なのです。他に気を回している暇などありません。」
「そういう問題じゃないわよ。」
「例によって、何か不服なんですか?」
「・・・ファースト、あんたアメリカ嫌いでしょ?
何だかんだ言って言葉の端々から打倒、鬼畜米英!みたいな雰囲気が漂ってくるんだけど。」
「それはまた・・・偏見に満ちた意見ですね。」
「ヘンケンってエマさんにホの字の?」
「うるさい+つまんないって言ってるでしょ!アンタはいつになったら理解すんのよ!」
「ウケないネタでも繰り返すと定着するものですよ?
実際にプロの方々もそうしてるじゃないですか。あえてどの芸人さんのどのネタとは言いませんけど・・・」
「・・・以前にも申しましたが、私はアメリカ嫌いではありません。
21世紀の日本にとってアメリカは、無視出来ない重要なパートナーであると認識しています。」
「ホントかしら。とてもそうは思えないんだけど・・・。
それに、21世紀の話するならついでに言っとくけど、
アメリカにとって日本はさほど重要視されてないって意見も聞いたんだけど。そのあたりはどうなのよ。」
「・・・アメリカにとって日本はアカやロシアに対する防波堤の一部でしかありませんでしたからね。
重要視していないとは言い切れませんが、アメリカに過度な期待をするのも酷でしょう。しょせんは他国なのですから。」
「また、横道に逸れはじめたな・・・。」
「・・・なら、何でアメリカ追従な外交してんのよ。アメリカは日本防衛のアテにならないんでしょ?」
「・・・他に方法があるなら教えてください。
アテにならないからと言って、耳障りの良い国際協調路線などを執ってしまえば、それこそ明日はこないかもしれないのです。
基本的に、国際社会は信用ではなく利益で動く世界なのですから。
日本がアメリカに追従しなければならないのは、それもこれも自国で自己防衛が出来ない現状こそが原因なのです。
・・・今、不満を言ってもどうしようもありませんけどね。」
「でも、自衛隊とかっていう組織がありますよね。日本防衛に問題は無いんじゃないですか?」
「・・・今の自衛隊には、意味を感じられない制約が多いのです。例えば専守防衛ですね。
攻撃を受けなければ反撃出来ない・・・。これでは他国に対する本当の意味での圧力にはなりません。」
「そうなの?攻撃を受けなければ、こちらから攻撃しないって・・・それなら相手も攻めてこようとはしないんじゃないのかな?」
「・・・それは軍事力の拮抗が前提ではないかと思います。
圧倒的な軍事力を持って攻められれば、専守防衛など何の抑止力にもなりません。
忘れがちですが、日本の隣には21世紀においてまだ侵略を是とする国家が存在しているのですよ?
・・・皆さんも早く赤いカプセルを飲み、真実に気付いていただきたいものです。」
「マトリックスネタは止めなさいって。古いから。」
「・・・話を元に戻します。飛龍第一次攻撃隊の発進から約2時間後の13時20分、
友永大尉指揮の飛龍第二次攻撃隊が編成され出撃しました。」
零戦6機(制空)
九七艦攻10機(雷撃)
「やっぱり数が少ないんだね。」
「・・・南雲機動部隊において、現時点で健在な空母は飛龍のみですからね。
この第二次攻撃隊の指揮官友永大尉の機体は早朝のミッドウェー攻撃の際に被弾しており、片道分の燃料しか搭載出来なかったのです。
しかし、彼は整備兵の制止を振り切り片道を承知で出撃したそうです。」
「片道という事は帰還出来ないという事を承知で出撃していったという事か。その意気込み・・・凄いものだな。」
「風通しが良いとか言って、コクピットのハッチ付けないまま出撃した誰かさんとは大違いだね〜。」
「そりゃ、誰の話だ?」
「え、この人。」
「人を指差すなと言っただろう!」
「・・・・・。」
「何、呆れた顔してるんですか?」
「・・・別に。ジオン系の軍人ってこんなのばっかなのかと思って。」
「誰がこんなのだ!貴様ら、ジオンを何だと思っているのだ!」
「どっちかって言うと、ジオンじゃなくてマシュマー様が変だって話なんだけど・・・」
「ええ〜い、うるさい!」
「・・・飛龍第二次攻撃隊がヨークタウンを発見したのは14時40分頃とされています。
制空戦闘機と苛烈な対空砲火の中、2本の魚雷を命中させヨークタウンの戦闘力を喪失させる事に成功しました。
日本側の損害も相当なものでしたが・・・」
「そんなに酷かったの?」
「零戦隊の3機、雷撃隊の5機が未帰還となっています。友永大尉も・・・帰っては来ませんでした。」
「ところでヨークタウンってのは沈んだのか?」
「いいえ、日本軍の猛攻に関わらず沈没には至っていません。
しかし、戦闘力は奪ってあるので空母としての機能は喪失しています。少なくとも、現海戦中はですが。」
「我らの意地を見たか!って感じだね〜。」
「なぜ、カリウス軍曹・・・?」
「・・・山口少将は第三次攻撃隊を編成しようとしました。
しかし、稼動機が少なくなっていた為、まともな編成を行う事が困難となっていたのです。稼動機については次の通りです。」
零戦10機
九九艦爆5機
九七艦攻4機
「それだけなの?艦爆隊って、帰還できたのはもっと多かったはずでしょ?」
「いいえ。母艦に戻る事が出来た艦爆は5機だけだったそうです。
途中ではぐれてしまったか、撃ち落とされたか・・・それは分かりません。
山口少将は夕暮れを利用して奇襲を行おうと考えていた様ですが・・・、運命は皮肉を心得ていたようです。」
「・・・だから、マトリックスネタは止めなさいって。」
「17時頃、アメリカ空母エンタープライズから出撃したSBDドーントレス爆撃機の攻撃を受けてしまったのです。
直撃弾は4発、この時点で飛龍の戦闘力は喪失し・・・01時20分には山口少将は総員退去を決断したそうです。
02時30分、美しい月の下、山口少将は全乗組員を集合させ訓示を行ったといわれています。」
「17時から01時って言うと・・・被弾してから随分経過してますよねぇ。その間は何してたんですか?」
「・・・その辺りは後で説明します。」
「また、先延ばしかい・・・。」
「山口少将と飛龍艦長の加來大佐は参謀達の退艦の進めには応じず、飛龍の艦橋に残ったそうです。
その時、交わされた言葉で有名なのが一緒に月でも眺めるかというものだったと言われています。
以前、航空機搭乗員に語った訓示の通り・・・山口少将と加來大佐は艦と運命を共にしたのです。」
「そうなんだ・・・。」
「・・・指揮官が艦と運命を共にするのはそれほど珍しい話では無いのです。
マレー沖海戦の時、日本軍に沈められたプリンス・オブ・ウェールズの艦長もそうでしたから。」
「空母4隻を失ったと言う事は・・・日本は負けたという事だな?」
「・・・そうです。」
「日本がこの作戦で負けた理由、よく言われてるわよね。
艦隊の編成が悪かったとか兵装転換が原因だとか・・・その辺りはどうなのよ?」
「そういった話に移る前に、まだ説明する事があります。
被弾した3空母のその後、爆撃を受けてから総員退艦を命じるまでの飛龍の状況・・・
そして、それらの状況を後方にいた山本大将はどの様な指示を送ったのか・・・。
そのくらい説明しなければミッドウェー海戦を語る意味はありません。」
「もしかして、これまでの説明って・・・ただの前フリ?」
「・・・当たらずとも遠からずですね。」
「マヂでつか・・・。」
「空母は爆撃を受けたからといって、即沈没ではありません。
もちろん当たり所にはよりますが・・・3空母のどの乗組員も艦の保存に懸命だったのです。」
「ふ〜ん・・・。」
「でも、さっき話してたよな。燃料やら爆弾やらに引火して手のつけられない状況になってたって。
そんな惨状から回復させる事なんて出来んのか?」
「・・・出来るか否かではありません。やらなければならなかったのです。
人の足を止めるのは絶望ではなく諦め、人の足を進めるのは希望ではなく意思・・・。
人の意思こそが重要なのです。例え結果がどのようなものになろうとも・・・」
「あんた・・・帝国陸軍の精神論の信奉者かなにか?」
「いや、多分何か元ネタがあるぞ。」
「・・・それでは、時間を10時20分過ぎにまで戻します。赤城・加賀・蒼龍の3隻が爆撃を受けた頃です。」
「そういえば、前にも少し話していたな。被害が大きかったのは蒼龍だったか?」
空母・蒼龍
「・・・はい。正規空母蒼流は、被弾からおよそ20分後の10時45分に総員退去命令が出されました。
機関が停止してしまったため、消火しようにも打つ手はなかったのです。これは3空母全てに言える事ですが・・・。
沈没したのは19時15分、突然大爆発を起こしたそうです。」
「蒼龍さんが沈没ですかぁ。悲しい事ですねぇ〜。」
「・・・あんた、しつこいわよ。」
「・・・次は加賀の話に移ります。」
「ちょっと待った!」
「どしたの?」
「なんで蒼龍の説明がそんなに短いのよ!他に何か説明する事くらいないわけ?」
「20分程で総員退去命令が出されてしまったので・・・あまり、説明する様な細かい話が無いのです。」
「お前さん、名前が同じだから・・・やっぱり愛着とかがあるのか?」
「うるっさいわね〜!そんなんじゃないわよ!」
「・・・動力を失った蒼龍は磯風・濱風の2隻の駆逐艦に見守られ、
炎と黒煙に包まれながら漂流を続けていた様です・・・。精強であった正規空母の一隻とは言え、終わる時は物悲しいものですね。」
「・・・・・。」
「次は加賀だな?」
空母・加賀
「・・・加賀の状況はさらに酷かった様です。
加賀の火災は船体やペンキを燃やす程激しく、乗組員の多くは船体の前後の僅かな隙間に集まって炎を避けていました。
また、加賀も機関が停止していたため惰性で漂流しており、
加賀の後を追った駆逐艦萩風・舞風が投げ出された乗組員を救助していくという有様でした。」
「酷いものだ・・・。」
「・・・総員退去命令が下されたのは16時40分。
救助作業が続けられていた加賀ですが、この時アメリカ軍の潜水艦ノーチラスの雷撃を受けています。」
「雷撃って・・・魚雷の攻撃よね?救助作業の途中なのに攻撃してくるの?」
「・・・悲しい事ですが戦争なのです。」
「それ、スレッガーさんの・・・?」
「・・・偶然です。日本にとって幸運だったのは、ノーチラスの放った魚雷が不発で済んだ事ですね。
そのノーチラスも駆逐艦萩風の爆雷攻撃により制圧されました。」
「見えないところで仕事してるんだね〜。」
「駆逐艦って縁の下の力持ちって感じだな。少し地味な気もするが・・・」
「・・・日本の駆逐艦は練度と酸素魚雷のおかげで無類の強さを誇っていました。
艦隊決戦にさえ持ち込めれば、アメリカ軍に対しても引けを取りません。
もちろん、機動部隊相手では苦戦に追い込まれるでしょうけど。
汎用艦である駆逐艦が酸素魚雷の力で一撃必殺の攻撃力を持つ・・・艦隊決戦が主流なら無敵だったでしょうね。」
「日本自身が艦隊決戦の時代を終わらせちゃったんだから・・・皮肉な話よね。」
「・・・加賀が漂流している最中、
駆逐艦舞風が山本大将から加賀曳航の可否について問い合わせを受けたという話があります。
加賀は炎上して漂流している状態ですから出来る訳がありません。
19時25分、加賀は大爆発を起こします。その後、海面から姿を消しました。
時刻は19時26分・・・あっという間の出来事だった様ですね。」
「あのさぁ・・・、山本大将ってのは何やってんの?そもそも主力部隊ってどこにいるのよ?」
「・・・機動部隊の後方300浬、約500km離れた位置だったと言われています。
これには諸説あるので正確とは言い切れません。」
「とりあえず、とんでもない後ろという事だな。」
「・・・そんな離れた場所で何やってんのよ!機動部隊が一大事なんだから何か行動くらい起こすべきでしょ?」
「・・・それについては後で話します。」
「あんた、先延ばしし過ぎだって。」
「・・・今は、3空母のその後を話す方が優先です。
さて、次は南雲機動部隊の旗艦赤城についてです。赤城は被弾後も機関は健在で、しばらくの間は航行も可能だった様です。」
空母・赤城
「流石は赤城さんですねぇ〜。」
「・・・・・。」
「・・・10時46分、南雲機動部隊司令部が退艦。
11時30分頃、艦長の青木大佐により負傷者と搭乗員の退艦が命じられました。」
「搭乗員って・・・パイロットだっけ?」
「・・・そうです。母艦はすでに飛行機の発着は不可能な状況です。
退艦は搭乗員の安全を考えての措置でしょう。
3空母被弾による航空機搭乗員の戦死者数は全搭乗員5分の1だったと言われています。」
「・・・・・。」
「どうしたんです?意外そうな顔してますけど。」
「え?あ・・・うん。想像してたよりは被害が少ないような気がして・・・」
「・・・人的資源に余裕の無い日本にとって被害が少ないとは言えませんが、
被害は最小限に食い止められたと言っても言いすぎでは無いと思います。
誰です?日本軍は人命を軽視していた最悪の軍隊だと言ったのは?」
「誰もそんな事、言って無いって。」
「あれ?アスカさん、前に日本軍は人命を軽く見てたとかって言ってませんでしたっけ?
確か零戦の話してた時だったと思いますけど・・・」
「・・・私は最悪の軍隊だなんて言って無いわよ。意味合いが違うのよ意味合いが。」
「言い逃れ、(・A・)イクナイ!」
「うるさいわね〜!揚げ足取りくらいしか脳が無いひし形は引っ込んでなさいよ!」
「ははは、何をおっしゃいますやら。
ATフォールド展開出来ますし、加粒子砲も撃てまつよ?これ以上、私に何を求めるんですか?」
「・・・脱線は控えてください。」
「注意したところで焼け石に水・・・。いや、馬の耳に念仏と言ったところだそ。」
「どっちも微妙に違う気がするけど・・・」
「・・・しばらくの間、自力航行が可能だった赤城ですが
必死の消火作業も虚しく機関が停止してしまいました。
これによって消火能力も落ちてしまい・・・19時20分、青木大佐は総員退去を命じたのです。
赤城乗組員の駆逐艦への収容が終わったのが22時30分頃とされています。
艦長の青木大佐は艦と運命を共にするつもりだった様ですが、山本大将からの赤城処分待てとの電文もあり、
戦いの趨勢が決まらない状況では処分は無く、沈没もしばらくは無いとの事で駆逐艦嵐に移乗したそうです。」
「でもまぁ・・・赤城はもう駄目なんだろ?」
「・・・日付が変わっても赤城は浮かんでいました。
しかし、その時にはミッドウェー攻略作戦の中止が決定されており赤城は処分する以外、他に方法はありませんでした。」
「浮いてたんなら、持って帰るって方法もあったんじゃないの?」
「・・・曳航中に敵の攻撃にさらされる可能性は否定できません。
また、被害が甚大だった事も考慮すると持ち帰ったところで戦線復帰は難しかったと思われます。
結局、赤城は味方駆逐艦の魚雷により介錯されました。時間は5時頃の事だったそうです。」
「結局、3隻とも全部沈んじゃったんだね。」
「・・・はい。あらためて考え直してみても、この3隻は不運でした。
・・・次は、唯一難を逃れた空母飛龍についてです。
以前にも説明しましたが、飛龍は攻撃隊を発進させヨークタウンを戦闘不能にまで追い込みました。
しかし、飛龍も敵爆撃隊の攻撃により被弾してしまったのです。」
「そういえば、さっきそんな話してたよね。」
「他の3空母と違い、飛龍は被弾後も機関は健在で30ノット近くの高速で航行出来たと言われています。
もっとも、実際はそこまでの高速航行は出来なかった様ですが、他の3空母よりは大分条件が良かった様です。」
「何故だ?飛龍は他の空母より頑丈だったとでも言うのか?」
「・・・多分違います。」
「へへ〜、あたしは何となく見当ついてるけどね。」
「ほう、では何が理由なのか答えてみろ。」
「簡単簡単、当たり所が良かったんでしょ。レイだってそんな事言ってたよね?」
「そんな単純な問題とも思えんが。」
「いえ。概ね合ってます。」
「な!」
「3空母の被害が大きかった理由の一つとして、多数の航空機を収容していたという点が挙げられます。
これが飛龍との大きな違いであり、当たり所が良かったと言えば語弊がありますが・・・間違いではありません。」
「むぅ・・・。」
「へへ〜、あたしの勘を見たか!ってとこかな〜。」
「勘ねぇ。ニュータイプってのは凄いもんだ。」
「ニュータイプは関係ないでしょ。
それにしても、日本も不運よね。魔の五分とかってのが無ければ話は違ったんでしょうに・・・。」
「魔の五分・・・何それ?」
「散々既出だけど、南雲って人が兵装転換を決断した時の話よ。その五分間の決断で全てが変わったとかって・・・」
「・・・有名な話ですが、現在のところそのような時間は無かったという意見が主流です。」
「わ、分かってるわよ、そんな事!」
「ほんとでつか〜?」
「るさいっ!」
「・・・飛龍の話に戻しましょう。
炎上していた飛龍ですが乗組員の消火作業や駆逐艦の協力もあり、一時火事が下火になったと言われています。
・・・正確な時間は分かりませんが、飛龍艦長の加來止男大佐が
鎮火に協力してくれている駆逐艦に対し礼を述べ消火活動を中止させたとする話もあります。」
「良かったじゃん。火事が収まったんでしょ?」
「・・・しかし、程なくして再び誘爆が発生。
機関室との連絡が途絶えた事もあり、加來大佐は飛龍放棄を決断せざるをえませんでした。」
「・・・なんでもう少しちゃんと消火しなかったのよ。」
「・・・爆発してみなければ、誘爆するかどうかは分からないものです。
当時の人には飛龍がその後爆発するという結果は分からないのですから。」
「後知恵、(・A・)イクナイ!」
「うるさいっ!」
「・・・飛龍の総員退艦時の話は以前した通りです。夜が明け始めた頃、駆逐艦によって介錯されました。」
「これで正規空母4隻全部の説明は終わったわけか・・・。」
「ふぅ、やっとミッドウェー作戦の問題点に切り込める訳ね。」
「何か嬉しそうだな。」
「あったりまえよ。これでようやくファーストの鼻っ柱を折る事が出来るんだから。」
「その前にまだ説明する事があります。軽巡洋艦長良に移乗した南雲中将のその後について・・・」
「あんた、どれだけ説明すれば気が済むのよ!」
「・・・重要な事は情報の開示、伝えるべき事を伝える事が私の使命です。」
「それと、あんたの説明の長さと何の関係があるのよ。」
「今作戦の指揮を執った南雲中将についてですが、とにかく酷評が多いのです。
確かに優柔不断な面があったのかもしれません。
しかし・・・南雲中将に対する酷評のほとんどは情報不足にあると考えています。
多少長くなろうと、然るべき説明を行えば・・・彼に対する酷評はきっと和らげさせる事が出来ると信じています。
そして、南雲中将は不運に見舞われただけだと考えています。
ミッドウェー作戦は完全に運に見放されていた・・・。私が言える事はそれだけです。」
「運で全てを片付けるんじゃないわよ。何の反省にもなってないじゃない。」
「・・・他に評価の仕様が無いのです。
南雲中将も3空母被弾後、手を拱いていたわけではありません。
まず、単艦で突出したと言われている飛龍の護衛に向かったのです。
残存艦をまとめて飛龍に合流した南雲中将麾下の部隊は、そのまま飛龍の護衛に移っています。
3空母が被弾した状況でも部隊が整然と行動しているのです。
これらを統率した指揮官としての南雲中将に酷評を送るのは忍びないとは思いませんか?」
「でも、結局飛龍も守れなかったんでしょ?」
「作戦初期と違い、護衛の零戦隊が存在しないのです。
敵攻撃隊に対して十分な防御が発揮できなかったのは、ある意味当然と言えます。」
「あれ、午前中に飛んでた零戦隊ってどうなっちゃったの?」
「燃料切れで不時着しています。中には不運にも味方に打ち落とされてしまった機体もある様ですが・・・
多くの搭乗員は味方駆逐艦に救助されています。
・・・アスカの言うとおり、奮戦虚しく飛龍は敵機動部隊の攻撃により損傷。
復旧作業の甲斐なく放棄される事になってしまい、ミッドウェー攻略は翌02時55の時点で中止されています。
これで、この戦争の趨勢は決してしまいました。」
「あと3年も戦いが続くのにここで決着が決まっちゃったなんて思えないんだけど・・・」
「・・・防衛戦で戦争に勝つ事はまずありません。
敗北か引き分けならあるでしょうが・・・勝利を収める事は不可能と見ていいでしょう。
私の言う戦争の趨勢とは日本が勝利にいたる道筋が完全に無くなってしまったという意味合いです。」
「完全にって・・・もうお手上げって事か?」
「誇張しすぎな気もするけど・・・。」
「いいえ。日本が攻勢に出る機会はミッドウェー以降永遠に失われています。
勝機があったとは思いたいものですが・・・現実は非情ですから。」
「これでミッドウェー海戦の話は終わりなんですか?長かったですねぇ〜。」
「・・・いえ、まだあります。」
「そりゃそうよね〜。あんたが先延ばしにしてた話がいくつもあるもの。
その辺りを説明してもらわないと無責任極まりないものね。」
「イヤミを言わせたら右に出る人はいませんねぇ〜。」
「嫌味と言うよりは挑発だな。」
「そんな安い挑発に引っかかるヤシがいるのか?」
「そんな奇特な人いる訳ないでしょ。」
「あんたら、うるさいわよっ!
大体、山本なんとかって人は何だって後方でのんびりしてんのよ!
さっきも言ったけど、機動部隊が一大事だったんだから出張ってきてもおかしくないでしょ?」
「・・・もう、そういった話に移るんですか?飛龍の乗員救助に向かった駆逐艦の話が残っているのですが・・・」
「そういうのは興味がある人が調べればいいの!そんな事より、ミッドウェー作戦の問題点を知る事の方が大事でしょ。」
「何でいきなりやる気になってんだ、この嬢ちゃんは。」
「さぁ・・・、さっき勉強していた様ですからねぇ。その知識を披露したいだけなんじゃないですか?」
「・・・小学生と変わらんな。」
「うるさいっ!あんたらは黙ってなさいよ!」
「それで・・・何か?」
「主力部隊が何もせずに帰っちゃったってのがどうしても理解出来ないんだけど。
南雲なんとかって人の部隊がやられたんなら、そのまま主力部隊を前進させて敵機動部隊を倒しちゃえばいいじゃない。」
「主力部隊って何だっけ?」
「・・・山本大将麾下の戦艦を中心とした部隊です。
以前にも少し話しましたが、機動部隊の後方にいた為、戦闘には何の影響も与えないまま帰還する事になってしまいました。」
「戦艦なんだから防御力はあるんでしょ?
多少、航空機の攻撃を受けても沈まないんだから敵機動部隊に突っ込ませればどうにかなると思うんだけど。」
「こりゃまた・・・強引な意見だな。」
「ま、この意見は誰かの受け売りなんだけどね。」
「その意見に何も疑問を感じないのですか?」
「疑問?そんなのある訳無いでしょ。」
「ふぅ・・・。」
「何よ、その溜め息!」
「・・・仮に戦艦を突っ込ませたとしましょう。
その状況から敵機動部隊をどうやって捕捉するか?という点の説明が無ければその意見には賛同出来ません。
確かに、大和にも偵察機は搭載されていました。
仮定の話になりますが、仮に敵機動部隊の位置が掴めたとしましょう。問題となってくるのはその後です。」
「何が言いたいのよ、あんたは?」
「簡単な話です。アスカの意見には
戦艦を中心とした部隊で、どうやって敵機動部隊に追いつくのかという方法が提示されていないのです。
以前にも話しましたが、空母の攻撃範囲500kmに対し戦艦はおおよそ40km・・・戦艦で空母に挑むのは無謀ですよ。」
「そんな事言ってる場合じゃ無いでしょ!ミッドウェー作戦には総力をつぎ込んでるって言ってたじゃない!
多少の被害を恐れてどうすんのよ!」
「・・・被害云々以前に主力部隊では敵機動部隊に追いつけないと思われます。
戦艦より空母の方が足が速いですから。主力部隊を前進させたとして、永久に空母を捕捉出来なかったらどうするのです?」
「む・・・。」
「う〜ん・・・。ジュデッカを倒せれば熟練度が上がるけど、
ガンバスターじゃ追いつけないから無理って状況に似てるかな?ほら、そんな話あったよね?」
「・・・私に聞くな。その頃はまだ合流していない。」
「まぁ、スパロボの話は置いといて・・・結局どういう事なんだ?」
「アスカの言う通り、主力部隊は何もせずに帰還してしまいました。
この部分もミッドウェー海戦における批判の大きい部分ですが・・・
空母4隻を失った時点で作戦中止を決めた山本大将の決断は間違ってはいないと考えています。」
「あんたは〜!何でそうやって擁護しまくってんのよ!どう考えてもおかしいでしょ!」
「さっきの話は丸投げでつか?」
「丸投げなんかしてないわよ。それに、元をただせば主力部隊が後方でのほほんとしてるのが悪いんじゃない。」
「何かいけませんか?」
「いけませんか?じゃないわよ、まったく・・・。大体、やる気が感じられないのよ、やる気が。」
「やる気って・・・何の事?」
「だって・・・そう思わない?確か、出撃の時点で主力部隊ってのは機動部隊から遅れて出撃してたでしょ?
最初から最後まで主力部隊は遠く離れたところに居ただけなんだから、やる気が無いと思われても仕方ないと思うんだけど。」
「連邦軍みたいなモンかな。出てきてもあんまり頼りになんないもんね〜。」
「まぁな。アルベルトの一撃で終わってっからねぇ。」
「何の事かさっぱり分からないわ。」
「ヒカリ、相手にしない方がいいわよ・・・。」
「・・・・・。」
「で、何か反論はある?」
「・・・重要な事は何事にも理由があるという事。」
「あんたもしつこい!」
「いいえ。問題なのは日本軍がミッドウェー作戦を行った理由・・・。それが分からなければ本質は見えてきません。」
「・・・また訳の分からない事を言うんじゃないわよ。」
「・・・皆さんは、日本がミッドウェー作戦を遂行した理由は何だと思いますか?」
「いきなり話を振られてもねぇ。」
「理由?そんなの私が知る訳無いでしょ。あんたが言ってた様に、敵機動部隊の殲滅とミッドウェーの占領じゃないの?」
「上に同じです〜。」
「敵機動部隊の殲滅、及びミッドウェー島の攻略・・・それは手段であって目的ではありません。
もし、ミッドウェーの攻略が目的ならば何が何でも同島を占領したでしょうから。」
「へへ、頭がチンプンカンプンなんだけど・・・どういう事なの?」
「・・・言ったはずです。ミッドウェー攻略は手段であって目的では無い・・・と。
作戦を中止させ全軍反転させたのはミッドウェー攻略を中止する理由があったから。
圧倒的な戦力を有していながらミッドウェー攻略を強硬しなかったのは攻略する理由が無かったから・・・。
理由こそ力の源であり、それを欠けば無力です・・・。」
「あの、も少し分かりやすくお願いしまつ。」
「・・・ミッドウェー攻略の目的の一つは敵機動部隊の殲滅でした・・・が、
日本軍の切り札であるナグモ・タスク・フォースは事実上壊滅。
しかし、敵機動部隊は健在・・・南雲機動部隊無くして敵機動部隊の殲滅は不可能。
この時点でミッドウェー攻略の理由が一つ無くなりました。ここまではよろしいですか?」
「まぁな。かの一年戦争当時、MSの無い地球連邦軍がジオンに圧倒されたのと同じ様に
機動部隊相手に戦艦では太刀打ちできないと言う事なのだろうからな。そんなところだろう?」
「・・・はい。」
「でも、戦艦を中心とした部隊を後ろに下げて出撃させた編成を正当化する理由は無いでしょ?」
「・・・主力部隊に関して言えば、最初からミッドウェーでの戦闘に加わる意思は無かったと考えられます。
よって、主力部隊が機動部隊の後方にあろうと前方にあろうと結果はそれほど変わらなかったと推測されます。」
「戦闘に加わらないって・・・をい。」
「おいおい、出撃しておいて戦闘に参加しないとはどういう事だ?」
「まったくやる気が感じられんな。敵前逃亡は士道不覚悟だぞ。」
「それ、るろ剣の新撰組三番隊組長斉藤一の台詞のパクりじゃん」
「・・・何の話だ?これは偶然の一致に過ぎん。」
「何度も言いますが、戦艦を中心とした部隊では機動部隊相手に役に立ちません。
例えて言うならエヴァでラミエルさんに白兵戦を挑むくらい無謀な行為です。
むしろ、無理をしてまで多数の戦艦を機動部隊に随伴させる理由が理解出来ません。何か利点があるのですか?」
「戦艦を中心とした部隊に敵航空機の攻撃を引き付けさせておけば、
自軍の機動部隊が安全になるじゃない。何でそんな事くらい思いつかないのよ。」
「ふぅ・・・。」
「む!ムカつくわね〜っ!言いたい事があるならハッキリ言いなさいよ!」
「精神崩壊パイロット(゚听)イラネ。」
「アンタには言ってないわよ!」
「図星か・・・。」
「うるっさいわね〜!あんただって強化人間になって人格おかしくなってたじゃない!」
「ドサクサに紛れて何を言う?誰の人格がおかしいのだ?」
「違うよ。マシュマー様の場合、普通の人になっただけだよね〜。元がアレだもん。」
「アレとは何だ、アレとは!」
「まぁ、とりあえず・・・作戦始まっていきなり移動不能ってのは勘弁して欲しいよな。」
「ホントですねぇ〜。」
「うるさいって言ってるでしょ!調子悪かったんだからしょうがないじゃない!」
「脱線はそこまでにして下さい。さて、アスカの意見の問題点ですが・・・
戦艦で敵を引き付けられる可能性がどれほどあるのかという点にあります。
・・・アメリカ軍も日本軍同様、空母の有用性には気付いています。
日本の空母が出撃してくると分かっている状況で、優先順位の低い戦艦をわざわざ攻撃すると思いますか?」
「それは・・・どうなんだ?」
「・・・航空機側からしてみれば、戦艦が前衛に居たところで
攻撃せずに素通りする事も出来ますし撤退する自由もあります。
私には戦艦を中心とした主力部隊が有効な前衛になれるとは思えません。
・・・もちろん、主力部隊が前衛であれば歴史は違っていたかもしれませんが、それは後世だから言える事。
日本軍での最強部隊である南雲機動部隊を前衛に配置した編成に間違いはありません。」
「間違いありませんって・・・言い切っちゃってますねぇ。」
「いいの?そこまで言っちゃって。」
「・・・構いません。」
「じゃあ、こういう意見もあるんだけどそれはどうなのよ?」
機動部隊に主力部隊を随伴させる
「これは・・・?」
「空母の護衛を戦艦にさせれば良かったって意見よ。
ほら、艦船の数が増えれば弾幕も厚く張れるじゃない。だから空母も守れたんじゃないかって・・・」
「・・・南雲機動部隊には高速戦艦が2隻随伴していました。本質的にはさっきの偵察機の話と変わりはありませんね。」
「・・・つまり、戦艦の数は問題じゃないという事か?」
「・・・そうです。」
「ずいぶん簡単な説明ね・・・。」
「・・・他に言い様がないですからね。仕方の無い事です。ところで、そろそろ話を本筋に戻してよろしいでしょうか?」
「本筋?」
「山本大将がミッドウェー作戦を中止し撤退を決断した理由です。
敵機動部隊殲滅が実行不能となった事を理由の一つとして挙げたはずですが・・・その後に話が横道に逸れてしまいましたからね。」
「あんたが考え無しに話を進めるのが原因でしょ。本当に収拾つける気あんの?」
「・・・最善は尽くします。さて、山本大将がミッドウェー作戦を中止した理由ですが・・・何故だと思います?」
「いきなり話を振られてもねぇ。」
「困りましたね〜。何で中止したんです?」
「私に聞くな。知る訳が無かろう。」
「ミッドウェーを占領する理由が無かったんでしょ?アンタもさっきそう言ってたんだし・・・それでいいじゃない。」
「・・・その答えでは不十分です。私が皆さんに聞きたいのは、ミッドウェー攻略を中止した理由・・・そのものです。」
「やっぱり、よく分からないんだけど・・・」
「・・・以下が山本大将が撤退を決める直前の日本軍の状況です。」
1.南雲機動部隊の4空母は喪失同然。しかし、敵機動部隊は健在。
2.ミッドウェーの基地機能も已然健在。基地航空隊が翌日も攻撃を行う可能性はある。
3.空母4隻を喪失したとは言え日米の戦力差は歴然。力押しでミッドウェーを占領する事は十分可能。
「ミッドウェー占領って出来るの?もう、空母は無いんでしょ?」
「・・・空母が無くても、力押しでミッドウェー守備隊を無力化させる事は十分可能です。
一方のアメリカ機動部隊は空母が生きているとは言え艦載機の多くが失われています。
・・・状況を見る限り、ミッドウェーの攻略は可能だったと言えます。」
「え、そうなの?」
「・・・あくまで可能性の話です。それに、日本軍はこの作戦に大量の動員をかけています。
艦船を動かす燃料も貴重な日本にとって、このまま撤退する事は全てが徒労に終わる事を意味しています。
山本大将も空母を喪失した後、戦局を挽回する為に指示を出しますが・・・結局は作戦中止を決定したのです。
彼がそういった結論に至った理由は何だと思いますか?」
「なんか、禅問答みたいだな。」
「・・・ただ、答えを知るだけでは面白くは無いでしょう?考えてみる事も重要なのです。」
「・・・そんな事、いちいち考えるだけ無駄じゃないの?答えって言ったって、アンタの意見が絶対に正しいって事も無いでしょ。」
「その通りですが何か?」
「何か?じゃないわよ!それならこんな議論なんかする必要無いじゃない!」
「言ってはならん事を・・・」
「上に同じ〜。」
「・・・歴史の解釈は人の数だけ存在します。どれが正しいという事はありません。私の意見もあくまで意見の一つですから。」
「そう。なら、あんたは何で作戦中止したと思ってんの?私らに聞く前に自分の意見を言いなさいよ。」
「意見聞いたら、いつも通りケチつけるんですか?どこかの野党と同じく。」
「フン、何でも反対のあんな連中と私を一緒にすんじゃないわよ。ファーストの意見だってまともな話なら認めるつもりだもの。」
「作戦中止の理由ですか?もちろん私見になりますけど・・・。」
「もったいぶらないで、さっさと言いなさいよ。いい加減、長いんだから。」
「・・・わかりました。山本大将が作戦を中止した理由、
それはミッドウェー攻略のメリットが消えたからであると考えています。
ミッドウェーを攻略しても今後の役に立たない・・・故に作戦を中止したのだと思うのです。」
「ちょっと、話が掴めないんだけど・・・。」
「・・・ファースト、あんたメチャクチャな事言うんじゃ無いわよ。
ミッドウェー攻略が役に立たないってんなら何の為に攻略しようとしてたのか分からないじゃない。」
「やれやれ、やっぱり批判してるじゃないですか。」
「いちいちうるさい!ファーストが意味不明な発言するのが原因でしょ!」
「意味不明でしょうか?・・・山本大将の真の目的はアメリカとの講和にあります。
そのための作戦行動であり、ミッドウェー攻略だったのです。空母4隻を失った時点での撤退は至極当然と言えます。」
「どーして当然なのよ。その辺りを説明しなきゃ分からないでしょ?」
「・・・私はミッドウェー攻略の本質はハワイ攻略の前哨戦であると見ています。
ハワイ攻略の橋頭堡としてミッドウェーを手中に収める・・・そういう目的があったのではないかと思っています。」
「ハワイって・・・最初に攻撃してなかったっけ?」
「真珠湾奇襲の目的はあくまでアメリカ太平洋艦隊・・・、今度はハワイの奪取が目的です。」
「・・・いきなり何を言い出すのかと思ったら・・・。どこをどうやったらハワイ攻略なんて話が出てくんのよ。
ハワイ攻略なんて軍令部に承認すらされてなかったでしょ?」
「・・・ミッドウェーを占領し、敵機動部隊さえ叩けていれば、ハワイ攻略も決して夢物語では無かったはずです。」
「いや、その発想自体架空戦記だから・・・」
「少し、話のコシを折るが・・・真珠湾攻撃の時、何故占領しなかったのだ?
南方などに進まずに占領しようと思えば出来なくもなさそうに思えるが・・・」
「それもよく聞く意見だわな。」
「・・・それは無理な相談です。仮に全てがうまくいってハワイを占領したとしても
日本からあまりに離れすぎている為、占領を維持する事が困難であろう事が推測されるからです。
第一、そんな状況でアメリカが講和に応じるとは思えませんしね。」
「でも、アンタだってハワイ占領を主張してんじゃん。自分の言ってる事矛盾してると思わない?」
「・・・矛盾はしていません。
ミッドウェー後にハワイを攻略するのと緒戦でハワイを攻略するのとは制海権という点で状況が大きく異なります。
それでは分かりやすく例え話で説明しましょう。
緒戦でハワイを攻略するというのは、宇宙怪獣の集団中心部に戦艦無しの部隊で片道デフォールドするのと同じ・・・」
「だから、スパロボネタは止めなさいって言ってるでしょ!」
「緒戦でハワイを攻略するというのは、100人のエージェント・スミスが待つ・・・」
「マトリックスネタも止め!大体、アンタはワンパターン過ぎるのよ!」
「アスカさんのツッコミもワンパターン・・・」
「うるさい!」
「結局・・・どういう事なの?」
「簡単だろ、全ては補給の問題さ。既出だが軍隊にとっては補給が命だからな。」
「・・・日本は開戦から半年をかけて勢力圏を広げてきました。
真珠湾攻撃時にはここまで広がってはいませんでしたし、戦争遂行に必要となる南方資源の確保すら出来ていなかったのです。
もし、真珠湾攻撃の時にハワイを占領出来たとしても、
補給路が断たれ占領した日本軍が無力化してしまう事は想像に難くありません。」
「その話と、ミッドウェー作戦の後にハワイ占領するってアンタの意見とどんな違いがあるのよ。」
「・・・ミッドウェーを首尾良く占領出来たのなら、アメリカの太平洋における拠点はハワイのみとなります。
流れを見ればハワイ攻略は当然・・・むしろ、ミッドウェーの後にハワイを攻略しないという方が不自然であると思います。」
「だから、それはアンタの主観でしょ?そんなんじゃ説得力が無いのよ。」
「・・・ハワイ攻略を示唆する状況証拠ならあります。
・・・日本軍はミッドウェー攻略作戦と同時にアリューシャン諸島のアッツ島・キスカ島の占領
アラスカのダッチハーバーへの空襲を行っています。これらの作戦は牽制、陽動目的に行われたとされています。」
「で、実は陽動じゃなかったってオチか?」
「いいえ。陽動であり牽制です。ただ、ミッドウェー攻略の為だけの作戦だったとは考えにくいというだけなのですが・・・。」
「それでも、ハワイ攻略作戦の根拠にはなんないでしょ。」
「・・・他にも何か意見を肯定する材料があるのだろう。違うか?」
「・・・状況証拠ならあります。」
「アンタ、そればっかね。」
「・・・仕方の無い話です。
ミッドウェー攻略後の話なんて仮想戦記同然なのですから、半分以上無意味と言っても過言ではありません。
・・・ですが、物事には全て理由があります。ミッドウェー作戦という物差しで計ると無意味に見える存在も
大局的に考える事で存在意義が見えてくるものがあるのです。」
「訳分かんないんだけど。」
「・・・山本大将麾下の主力部隊、戦艦を中心とした部隊は役に立たないと揶揄してきました。
実際、何の役にも立てなかったのですが・・・それは何故だと思いますか?」
「なぜって・・・それ、また禅なんとか?」
「・・・そう受け取っていただいても差し支えはありません。こういった事は、自分で考える事が何よりも重要なのです。」
「先生!考えても分かりませんでつ〜!」
「・・・あんた、ほんとに考えてんの?」
「失礼な、ちゃんと考えてますですよ。
ほらよく言うじゃないですか。人間とは考える足であると。昔の人はうまい事言うものですねぇ。」
「・・・突っ込まないわよ。いい加減つまんないって事に気付きなさいよ。」
「・・・やれやれ、これだから最近の若者は。寒い時代になったものですなぁ。」
「ほんとほんと。」
「時代は関係ない!」
「・・・あの、何か意見はありますか?」
「どうでも良い事なんだけど・・・さっきの人間は何とかって何?」
「・・・大昔のフランスの思想家ブレーズ・パスカルの有名な言葉です。人間は考える葦である
人間は取るに足らない存在であるものの、考えるという行為において崇高である・・・という意味合いの言葉である様です。」
「ふ〜ん・・・、やっぱ分かんないな〜。」
「格言か・・・、他にもあるぞ。
読書は単に知識の材料を提供するだけである
それを自分のものにするには思索の力である
これはイギリスの哲学者ロックとやらの言葉だ。」
「二番煎じでつね♪」
「うるさいっ!」」
「・・・主力部隊に関する意見は無しですか。
ミッドウェーにおける主力部隊は無駄な存在だと誰もが思っているのですね・・・。悲しい事ですが、話を続けたいと思います。」
「あんただって、自分で役に立たないって言ってんじゃない。」
「・・・役に立たなかったというのは事実ですからね。
ところで、こういった事を考えてみた事はありますか?役立たずの主力部隊をわざわざ出撃させた理由です。
先にも述べたように、戦艦を基幹とする主力部隊をミッドウェー攻略作戦に投入する気は無かったものと推測されます。
これは主力部隊が機動部隊のはるか後方に配置されている事からも明白でしょう。」
「ちょっと話が分からないんだけど・・・どういう事なの?」
「・・・繰り返しになりますが、日本には資源が欠乏しています。
にもかかわらず、戦艦を中心とした大部隊を出撃させているのです。
もし、本当に戦闘に参加させる気が無ければ真珠湾の時と同じ様に日本近海でお茶を濁す方が良いはずです。
しかし、少ない資源を使って日本から遠く離れた場所へ出撃させている以上、
主力部隊にも何か役目があったと見るのが自然でしょう?」
「・・・まぁ、それはそうかもしれんが。」
「で、つまりはこういう事?主力部隊を出撃させたのはハワイ攻略の為だったって言うの?大した根拠も無いってのに。」
「・・・その通りです。ですが、根拠としては十分でしょう?
よく言われるような編成ミス・山本大将の怠慢・日本軍に蔓延していた驕りと言う様な理由よりは十分説得力があるはずです。
・・・私見ですが、編成だけ見てもミッドウェー占領が主目的なら機動部隊・攻略部隊で十分です。
戦闘に参加させる気が無い主力部隊をわざわざ出撃させているのだから、
当然ミッドウェー攻略後に何かしらの理由があったと考えていいと思うのです。」
「・・・結局は、あんたの脳内仮想戦記でしょ?
それに資源が少ない少ない言いながら、せっかく実行した作戦の撤退を決めた理由はまだ出てきてないじゃない。」
「・・・撤退を決めたという事実そのものがハワイ攻略を示唆する理由です。」
「先生!もう少し分かりやすくお願いしまつ!」
「先生じゃないでしょ・・・。」
「・・・先にも少し話しましたが、空母を失ったものの日本軍の優位は圧倒的でした。
その気になればミッドウェー攻略は成功したと思われます。」
「だから、何で攻略しなかったのかって言ってるでしょ!勿体付けないでさっさと言いなさいよ!」
「・・・カリカリしてんなぁ。カルシウム摂った方がいいぞ。」
「ほねっこ、食べませんか?」
「るさいっ!」
「空母を失った状態でミッドウェーを占領しても戦略的には役に立たないと判断した・・・、それが理由かと思われます。」
「確かに作戦中止を決めたのは4空母の喪失が決まった後だが・・・空母とはそれほど重要なのか?」
「・・・空母の有無が海戦における主導権の有無を決定します。
逆から言えば、空母を潰せば戦いの主導権を握れるのです。
だからこそ、山本大将はミッドウェーでの戦いで敵機動部隊の撃滅を目標としたのです。
敵に空母さえ無ければ、大和を中心とした主力部隊も役に立てる様になるのですから。」
「そんなもんなの?」
「・・・そうです。空母の次に攻撃範囲が広いのは戦艦なのですからね。
それに、日本海軍には異様に射程の長い酸素魚雷もあります。
つまり、敵空母を潰す事さえ出来れば日本は圧倒的優位に立てたはずなのです。
・・・以前話した、海軍が意図的にミッドウェー攻略の情報を流したという話の理由はこちらです。」
1.山本大将にとっては敵機動部隊撃滅が目的だった。
2.作戦目的地が市井に漏れた時、対策が施されたという話が無い。
3.情報漏れは日本軍の規律の乱れと言われているが、作戦行動を見ても軍規が乱れていた気配は感じられない。
4.攻撃隊の半分を雷装で待機させて置くよう、事前に機動部隊司令部に伝えている。
5.敵機動部隊出撃が判明した時も対応らしい対応が無い。
6.つまり、山本大将にとって敵機動部隊の進出は予想外のものでは無かったと思われる。
「・・・これらの事から、山本大将にとってのミッドウェー作戦は機動部隊殲滅に比重が置かれていたと考えられます。
しかし、山本大将の考えとは裏腹に南雲機動部隊の4空母が喪失。
にも関わらず、敵機動部隊は健在。このまま作戦を続行したところで傷口が広がるだけ・・・。
この事からも分かる通り、撤退を決めた決断は間違いではありません。」
「なら、何でミッドウェーを占領しようとしたのよ!偉そうな事言って・・・全然説明になってないじゃない。」
「・・・説明してるじゃないですか。ハワイ攻略の為だと。
日本から遠く離れている為、ミッドウェーの長期占領は難しいと思われますが
ハワイ攻略の橋頭堡としてなら十分使えるはずです。
しかし、ハワイ攻略を行うには機動部隊が無ければ不可能・・・だからこそ、ミッドウェー攻略を中止したのだと思われます。」
「う〜ん・・・、ミッドウェー作戦って大規模な作戦だったんでしょ?空母が無くなっただけで中止を決めちゃうものなのかな。」
「・・・ミッドウェーの攻略と撤退の二つを天秤にかけて出た結論が撤退だったのでしょう。
ミッドウェー攻略に投じた資源と天秤にかけても撤退を選んだのですから・・・
その決断にはそれなりの理由があったと見るべきですね。」
「どうでもいいが、そろそろ話をまとめた方が良いんじゃないのか?」
「それもそうだな。あまりにも話が長すぎるぜ。何が何だか分からなくなっちまったところもあるし・・・」
「あたしも同感〜。」
「ほんと、まとまりが無いわね。ファーストの説明は。」
「・・・問題ありません。それでは、ミッドウェー海戦に関する意見を総括します。」
運が悪かった
「これで、ミッドウェー海戦の説明を終了します。何か質問は・・・」
「待て待て待て!」
「どうしました?」
「どうしました?じゃないわよ!大体何よ、その総括は!
言うに事欠いて運が無かったなんて、何の反省にもなってないじゃない!」
「何が何でも気に入らないんですねぇ。もうビョーキですね、ビョーキ。」
「うむ。」
「反対意見を言う事が存在する理由なのかねぇ。」
「うるさいっ!」
「・・・クラウゼヴィッツの戦争論からの引用です。偶然なる余所者に支配される空間が戦場であると。
振り返ってみればミッドウェーは様々な偶然が全て悪い方向へと進んでいました。
作戦目的、暗号解読、索敵、情報伝達、編成・・・これらに問題が無かったとは言えません。」
「何よ、ちゃんと分かってるじゃない。」
「・・・しかし、これらは作戦後に分かった問題点です。
ですから、ミッドウェー作戦を指揮した山本大将や南雲中将、山口少将を批判する材料にはなりません。
だからこそ運が悪かったとしか言い様が無いのです。ここまではよろしいですか?」
「そんな事言ってたら反省になんないでしょ。
前に話したときはいつの間にかうやむやになってたけど・・・
セイロン島の作戦の時も兵装転換中にイギリス軍の攻撃を受けてたじゃない。
手元の資料にも、日本はその時の教訓を生かさなかったって書いてあるけど。」
「・・・兵装転換の話は正直、お腹一杯なのですが・・・」
「手、抜くんじゃ無いわよ。ほらほら、弁解があるなら言ってみなさい。」
「うわ、高圧的!アスカさん、その芸風だと世界名作劇場とかの意地悪系キャラでつよ。いいんですか、それで?」
「誰が意地悪系よ!大体、芸風って何よ!私は芸人じゃないっての!」
「今さら否定しても手遅れだろ。」
「うるさいわね〜っ!使徒のくせにいちいち細かいのよ!」
「使徒のくせにって・・・それじゃジャイアニズムと変わりませんよ?」
「うるさいって言ってるでしょ!話のコシを折るんじゃないわよ!」
「ジャイアニズムって・・・ボゲーの人だっけ?」
「ボゲー言うな。もっとも、最近どうなっているのかは分からんがな。」
「あんたらも脱線に輪をかけないでよ。ただでさえ、話が長くなるんだから・・・」
「へへ〜、ゴメンゴメン。」
「・・・セイロン島の教訓を生かさなかったとするアスカの意見ですが、それは的外れなモノであるとしか言い様がありません。」
「な、何でよ!」
「・・・分かりませんか?
セイロン島の時の話は兵装転換中に攻撃を受けたのであって、兵装転換が原因で攻撃された訳ではありません。
一見似ているようですが、これは天と地ほどの違いがあります。」
「よく分からないんだけど・・・」
「・・・セイロン島の時は兵装転換中に攻撃を受けただけです。
イギリス軍の攻撃を許した原因は制空の零戦隊、又は敵の出現に気付かなかった監視要員にあります。
つまり兵装転換=失敗の原因という公式が成立していないと言えます。」
「う〜ん、何が違うの?」
「フフフ。私が理解しやすい例え話で説明して差し上げましょう。」
「・・・・・。」
「おや、何か不服なんですか?」
「一応、聞くだけ聞いてみるけど・・・どんな話よ?」
「え〜、エヴァンゲリオンの初号機と弐号機ですが、見かけは似てますが戦闘力には雲泥の差が・・・」
「待たんかい!」
「何です?」
「何です?じゃないわよ!何なのよ、その例えは!」
「え〜、だって、S2機関搭載した初号機とケーブルに繋がった弐号機では、
どちらが扱いやすいかは明白じゃないですか。戦艦から10ヘックスしか離れられない弐号機じゃ・・・」
「うるさいっ!そんなの仕様が違うんだからしょうがないでしょ!」
「・・・・・。」
「ま〜た脱線してるし。」
「そういえば、ミッドウェー海戦における日米双方の損害を話すのを忘れていました。以下の通りになっています。」
日本軍
空母・赤城(沈没)
空母・加賀(沈没)
空母・飛龍(沈没)
空母・蒼流(沈没)
重巡・三隈(沈没)
アメリカ軍
空母・ヨークタウン(沈没)
駆逐艦・ハンマン(沈没)
「後は航空機ですが・・・、日本側は南雲機動部隊に配備された空母が全て喪失してしまったため
航空機のほとんどが失われてしまっています。」
「なぁ、ちょっといいか?」
「・・・何でしょう?」
「重巡なんていつの間に沈んだんだ?そんな話あったっけか?」
「そういえばそうね。私は覚えてないけど・・・」
「重巡洋艦三隈は、ミッドウェー作戦中止の際、巡洋艦最上と衝突してしまったのです。
その後、夜が明けたところでアメリカ軍のSBDドーントレス爆撃機の追撃を受け沈没しました。」
「衝突って・・・ぶつかっちゃったって事でしょ?何で当たっちゃったの?」
「・・・アメリカ軍の潜水艦に対処する為に艦隊運動をしたのですが、
その時に信号を見落としていたそうなのです。そもそも、状況も分からないまま突然作戦中止ですから・・・混乱は当然でしょう。」
「それもそうかもね。
ほら、ガトー少佐だって星の屑作戦の時戦闘中止・・・バカなっ!って言ってたじゃん。
よく分かんないけどあんな感じでしょ、多分。」
「・・・違うと思うが。」
「そうかな。マシュマー様の例え話よりは分かりやすいと思うけど〜。」
「・・・貴様、その話に何の関係がある。私を晒し者にする気か!」
「その台詞、デラーズ准将のパクリ・・・」
「ええ〜い、うるさい!」
「・・・この調子では話がまとまりませんね。どうしましょう?」
「どうしましょうって言われても・・・」
「・・・とりあえず、粛々とまとめに入りたいと思います。」
1.日本軍が全力で挑んだミッドウェー作戦は失敗に終わった。
2.作戦失敗の直接的な原因は見当たらない。様々な要因が敗北に繋がった。
3.ミッドウェー作戦を中止した山本大将の判断は間違いとは言い切れない。
4.しかし、ミッドウェー作戦が転機となり日本が攻勢に出る機会が失われた。
5.駆逐艦の救助活動により救われた命は多かった。駆逐艦万歳。
6.山口多聞少将燃え。
「ちょっとちょっと、1〜5までは置いといて・・・最後のは何なのよ?」
「・・・もう、話は済んだのですか?」
「別に。話ってほどじゃ無いわよ。あれは、ひし形が勝手に言いがかりつけていただけなんだから。」
「誰がひし形ですか!私にはちゃんとラミエルという気品溢れる名前があるんですよ。
しっかり覚えてもらわなければリンダ困っちゃうですよ?」
「古いって・・・。」
「え、篩(ふるい)?」
「つまんないってば。」
「篩(ふるい)・粉、砂などを入れ振り動かして選り分ける道具。円形や方型の枠の底に網を張った道具で・・・」
「どうでも良い事を説明しない!」
「・・・第二航空戦隊の活躍無くしてヨークタウンの沈没は無かったはずです。
その指揮官である山口多聞少将に燃えを感じるのは当然かと思いますが。」
「そういえば、アメリカとやらの空母はいつの間に沈んだのだ?
戦闘不能になったとは聞いたと思うが・・・」
「空母ヨークタウンは真珠湾への曳航途中、日本海軍の伊168潜水艦の雷撃により沈められました。
ヨークタウンへの命中は2。この時、駆逐艦ハンマンにも1発命中し轟沈しています。
これら一連の攻撃は酸素魚雷によるものと思われます。」
「へぇ〜、酸素魚雷ってのは凄いもんだな。駆逐艦を一撃って・・・あのUなんとかの映画みたいだな。」
「嘘から出たなんとやらですねぇ。」
「・・・まぁ、そんな事はどうでもいいんだけどさ。ファーストに聞きたい事があるんだけど。」
「何でしょうか?」
「あんた、ハワイ占領に随分御執心だけど・・・ハワイを占領したって、講和なんか結べないと思うんだけど。」
「え、そうなの?てっきりハワイってとこを占領すれば、戦争終わるのかと思ってた・・・。」
「そんな簡単な訳ないじゃない。大体、アメリカにとって太平洋の島々なんて防波堤みたいなモンなんだから・・・。
仮にファーストの言う通りハワイまで占領しても講和なんか結べないわよ。」
「それがどうかしましたか?」
「は?あんた、知ってて言ってたの?」
「・・・当たり前の事を指摘されても困ります。
ハワイを占領しただけで、あのアメリカが講和に応じる訳無いじゃないですか。
と言うよりむしろ、ハワイの占領なんて話はした覚えがありませんが。」
「あんた、何言ってんのよ!さっきからハワイハワイって連呼してたじゃない!」
「私はハワイの攻略と言ったまでです。
確かに、最終的に占領できれば万々歳ですが日本の戦力を考えると正攻法では難しいとしか言い様がありません。
正攻法で挑むのが困難であるならどうすれば良いか・・・どう思いますか?」
「いや、いきなり言われても分からんって。」
「・・・山本大将は博打好きだったと言われています。
ミッドウェー攻略作戦そのものは周到に計画されたものですが、博打的な要素があった事もまた事実です。
もし、敵機動部隊さえ完全に叩けてさえいれば・・・私ならハワイへ主力部隊を向かわせますね。
ハワイ攻略には機動部隊の航空攻撃で飛行場を叩かなければなりません。
飛行場が完全に叩けたのなら、戦艦群をハワイからよく見えるところに浮かべておくだけで十分です。」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
「主力部隊はあくまで威圧が目的・・・平たく言うならただの脅しですね。
戦艦と機動部隊の力を誇示してハワイ駐留のアメリカ軍に降伏を勧告・・・
それでも降伏に応じなければ、日本軍の作戦は失敗。降伏に応じれば成功です。」
「んな事でハワイが落ちるわけないじゃない。
まさか、ハワイには数万人のアメリカ軍兵士が居るって知らないんじゃないでしょうね?
アメリカが徹底抗戦したらどうすんのよ?」
「・・・当時、アメリカは日本軍の実力を過大評価していました。
真珠湾奇襲から始まり、フィリピンやシンガポール方面での快進撃、イギリス戦艦の撃破など様々・・・
そんな状況で、ミッドウェーが占領された上に
迎撃に向かった味方の機動部隊が壊滅したなんていう情報が届いたらどう思います?
無理をして抵抗するより、降伏の道を選ぶという選択肢が必ず出てくるはずです。
ましてや合理的なアメリカ人がハワイを守る為に自らの命を賭け死力を尽くして戦うとは思えません。
まぁ、戦争とは基本的に騙し合いですからね・・・うまくいくかどうかは神のみぞ知ると言ったところでしょうか。」
「結局推測じゃん。それにハワイ攻撃以前にアメリカの艦隊が出撃してきたらどうするつもりよ?」
「それこそ望むところです。艦隊決戦が挑めるのなら日本側にさらに有利になりますから。
太平洋艦隊がさらに大打撃を被れば、あのペテン師と言えどさすがに世論に突き上げられるでしょう。
真珠湾の損害を1年くらい国民に隠していた様ですが、太平洋艦隊の壊滅は流石に隠しきれないかと・・・
そうすれば、早期講和の芽が出てくる可能性も否定は出来ないかと思われます。」
「随分都合のいい未来予想図ね。」
「・・・以前にも少し話したとは思いますが、日本がアメリカとの戦争に突入したのは外交面で八方塞になってしまったからです。
その元凶を作り出したペテン師大統領が在任している限り、日本に明日はありません。
彼は、後のカサブランカ会談で国家の無条件降伏を主張した程の逸材なんですよ?
そんな人が大統領をしているのだから、講和を結べる可能性なんかあるはず無いのです。
逆から言えば、彼が失脚し共和党が政権を担当すれば講和の芽が出たのではないかと思うのです。
日本もドイツもアカに対する防波堤には最適であり、重要なパートナーとなれる存在であると
アメリカ国民に認識させる事が出来さえすれば・・・」
「あんた・・・ルーズベルト嫌いでしょ。」
「・・・日米双方を無意味な戦争に引き込んだ人間です。
彼の背後に何が居たかは知りませんが、彼の行動は容認できるものではありません。」
「ねぇ、国家の無なんとかって・・・なに?」
「・・・国家の無条件降伏、敗れた国は戦勝国側の主張、指示、命令、全てに従うという意味になる。」
「そうなると・・・どうなっちゃうの?」
「・・・無条件降伏を受け入れた国の民の暮らしは酷いものとなるだろう。
全てが戦勝国の思うままとなってしまうのだからな。戦勝国が複数だった場合、国が分かれる事になってもおかしくは無い。
それらはスペースノイドに対する地球連邦どもの圧政とは比較にならんぞ。」
「ふ〜ん・・・。」
「で、講和の可能性が無いのにハワイを攻める理由なんかあんの?」
「日本に有利な条件で講和を結べる可能性・・・それをアメリカから引き出す方法が他に無かったのです。」
「他に無かったって・・・言いすぎでしょ。何かしら方法はあるんじゃないの?」
「・・・その方法を教えてください。
私には、1942年6月の時点で日本が取りえる最上の選択は、
ミッドウェー攻略及び、敵機動部隊の撃滅しか無かったと思っています。
その後、ハワイを奪取。それでもアメリカ国民の目が覚めないと言うのなら本国へ・・・」
「待った待った待った!歴史の説明すんのに、あんたの脳内仮想戦記を話すのは止めなさいよ!」
「・・・そうですね。私としても仮想戦記は望むところではありません。」
「とか何とか言いながら・・・ハワイ攻略だって仮想戦記だろ?実際、計画そのものだって立てられてなかったっつってたし。」
「・・・ハワイ攻略は別です。
状況を見る限り、ハワイ攻略は確実・・・でなければ、主力部隊をわざわざ動かした理由が見当たらない事になります。
私がハワイ攻略を主張するのは役立たずと揶揄される主力部隊の名誉回復に他なりません。」
「でも、ミッドウェー攻略してすぐハワイ攻略なんて出来るわけないでしょ。」
「別に休み無く戦闘を続けるという話ではないのですが・・・
ハワイに顔見せ程度に行くくらいなら良いと思いますけど。もちろん制空海権をある程度確保出来るなら・・・の話ですよ。」
「それにしても随分主力部隊とやらにこだわるのだな。」
「主力部隊はメンツのために出撃し、大和の存在を秘匿する為に後方にあったと言われますが、
それだけでは貴重な燃料を用いてまで出撃した理由には弱いと思われます。
だからこそ、ミッドウェー後にハワイ攻略、あるいは艦隊決戦があったと考えているのですが・・・
仮想戦記なので聞き流していただいて結構です。」
「あんた・・・何でそこまでして主力部隊を擁護すんの?」
「・・・そこに大和があるからです。それ以上でも以下でもありません。」
「をい・・・。」
「・・・最後になりますが、ミッドウェー作戦で失われた正規空母4隻(+重巡1隻)と航空機300あまり、
そして貴重な人員など・・・ミッドウェー海戦における損害はかなりのものでした。
しかし、日本はそれ以上に重要なものを失っていたのです。」
「他に・・・重要なものって?」
「また、禅問答でつか?」
「マトリックスネタじゃねぇの?」
「ありえないとは言い切れないわね。」
「う〜ん、何のネタにつながるんだろ〜。」
「・・・ネタには繋がりません。何の意見も無いようなので答えを出しておきます。
ミッドウェーで日本が失ったものとして最重要なものは講和のタイミングであると思うのです。
ミッドウェー海戦当時が日本の戦力が充実していた時期であり、アメリカ軍の戦力が整っていなかった時期でもあります。
よく言われる意見ですがミッドウェーで勝とうと負けようと、いずれ日本は負けた・・・とするものがあります。」
「夢も希望も無い意見だな・・・。」
「でも、国力の差を考えれば当然だろ。と言うより、国力の差を考えれば戦争しようなんて思わんわな。」
「・・・日本は戦争しなければならない状況になってしまったのですから、その辺について言及はしません。」
「で、あんたは何が言いたいのよ?」
「日本にも勝機・・・つまり講和のタイミングはあったと思うのです。
今さら言っても詮無い事ですが、ミッドウェー、ハワイ攻略での日本の損害が軽微なものだったとしたら・・・。
そして、それらが昭和17年内に終わっていれば・・・。もしかしたら、講和が結べたのかも・・・と思ってしまうのです。
アメリカ軍が準備を整えるのは昭和19年。それ以前にアメリカ西海岸を空襲出来ていれば・・・いや、それでも無理ですね。
何を思おうとペテン師が居る限り日本に明日は無いのですから・・・。
いざとなったら、戦艦や空母を80人で動かせるという忍者部隊に彼の削除をお願いするしかありませんね。」
「一体、何の話よ・・・。」
「また、仮想戦記でつか?」
「・・・仮想戦記の一つも言いたくなります。
今後、日本は防衛戦に追い込まれていくのですから・・・。」
「そろそろ・・・話が終わるかな?」
「そうですね。」
「そういえば、ミッドウェーで日本が情報をわざと流したとする意見の説明は終わったのか?」
「・・・少し前に話しました。私の意見の論拠は日本軍の驕りの有無にあります。
通説は驕りがあったから情報が漏れた・・・とするものです。
しかし、日本軍のミッドウェーでの戦いぶりや編成・作戦内容を見る限り、驕りがあったとは思えません。
驕りが無かったとするなら情報漏れの原因は一体何なのか・・・?」
「で、行き着いた答えが海軍が意図的に流したってアレ?」
「・・・以前は海軍と言いましたが、正直なところ山本大将周辺が発信源ではないかと思うのです。
もっとも、これは全くの想像なのでアテにしない方が賢明です。
・・・しかし、山本大将には敵機動部隊をどうしても叩いておきたかったという理由があります。
緒戦で敵機動部隊を叩いておけば、その後の作戦行動は楽になりますからね。」
「緒戦って・・・それあんたの妄想でしょ。
それにミッドウェーで敵機動部隊を殲滅したとしても、アメリカにはまだ空母が残ってるじゃない。」
「・・・空母が残っているだけで、機動部隊として役に立つかどうかは別問題です。」
「何が何だか分からないんだけど・・・」
「・・・空母は艦載機を載せる事でその能力を発揮します。
しかし、アメリカ軍は艦載機の用意すら出来ていなかったのです。
事実、ミッドウェーにムリヤリ参加させたヨークタウンの艦載機はサラトガのものでしたから・・・。
戦争初期はアメリカ軍も一杯一杯だった様です。」
「なんか、アメリカって連邦みたいだね。最初準備出来てなかったって・・・」
「それは言わないお約束だろ。」
「・・・ミッドウェー海戦そのものを振り返ってみると、事前の戦略では日本側に完全に分があったと見て良いでしょう。
日本側が望む戦場に目標となるアメリカ機動部隊の誘致には成功しています。
そして、最強の手駒である南雲機動部隊をぶつけるというところまでは良かったのですが・・・戦術的に大敗してしまいました。
・・・戦闘というのは本当に奥が深いものですね。
では、ミッドウェー海戦における説明を終了したいと思います。ご清聴ありがとうございました。」
「・・・ちっとも静かでは無かったと思うがな。」
「ムリヤリ終わらせたって感じね。」
「次は、戦争の部隊が南太平洋へと移ります。これからが戦争の本番・・・日本における泥沼の東部戦線の始まりです。」
「東部戦線って・・・」
「・・・ここからの日本の作戦は場当たり的だと言われています。
しかし・・・それも仕方の無い事かもしれません。ミッドウェーでの敗北により、山本大将の発言力は低下してしまったのです。
それに、ミッドウェーで敗北してしまった以上、日本に勝機は残っていません。
先を見ろといわれても、どう見れば良いのでしょうか・・・。」
「知らないわよ、そんなの。ちゃんと考える人がいるんでしょ。」
「だと良いのですが・・・。とりあえず、ミッドウェー海戦は終わり次は第一次ソロモン海戦になります。」