第一次ソロモン海戦
「それでは、早速ですがこちらの地図をご覧下さい。」
ソロモン海周辺図 ガダルカナル島周辺図
「どこコレ?」
「ここは以前話した米豪分断作戦の一環として、日本軍がすでに進出していた地域です
ちなみに、ツラギは前々回の珊瑚海海戦で占領したソロモン諸島における要所です。」
「日本って、こんな南の方まで来てたんだ・・・。」
「今じゃ信じられない話ね〜。戦後だと自衛隊が海外に出るだけでも大騒ぎしてたもの。」
「今は戦中の話です。戦後の話は極力抑えてください。」
「まぁまぁ。そこまで規制でガッチガチにしても息苦しいだろ。何事もほどほどに、テキトーが一番さ。」
「同感〜。」
「・・・分かりました。なるべく堅苦しくならない様に心がけたいと思います。
さて、説明に戻りましょう。時はミッドウェー海戦から1ヵ月ほど経った昭和17年7月、
連合軍の偵察機がガダルカナル島のルンガ岬に建設中の飛行場を発見しました。」
「飛行場って・・・どこの?」
「もちろん日本です。ですが、この時はまだ、この海域が激戦区になるとは日本側は考えていなかった様です。」
「のんきなものね。」
「お国柄ですからねぇ〜。」
「昭和17年8月7日、アメリカ軍は予てより検討していた
ビスマルク諸島における日本軍への反抗作戦ウォッチタワー作戦を発動。
空母を含む82隻の艦船、23隻の輸送船を動員してガダルカナル島のルンガ岬から5km離れたレッドビーチに上陸したのです。
上陸したのはアメリカ第一海兵師団の将兵11000名、現地時間午前8時頃の事です。」
「1万か、結構な数だな。ところで日本軍の数ははどれくらいなのだ?」
「当時、ガダルカナル島にいたのは第11設営隊と第13設営隊の2571名
守備隊の将兵は249名・・・ほとんどが建設作業に従事する軍属で、軍人はごく一部。
準備を整えて上陸したアメリカ軍相手にはなす術も無く、日本側はジャングルに退避する他ありませんでした。
また、アメリカ軍はガダルカナル島上陸に先立ち、同島の北に位置するツラギ島、ガブツ島、タナンボコ島にも上陸。
駐留していた日本軍は圧倒的な兵力差に数日で全滅してしまいました。」
「数日って・・・あまりにも早過ぎない?」
「アメリカ軍8000人に対し日本軍守備隊は1000人にも満たない人数しかいなかったのです。
彼我兵力差は8:1・・・この差を埋める事は不可能と思われます。」
「ふ〜ん・・・、日本軍って化け物なのかと思ってたけど。」
「・・・無理を言わないで下さい。あまりにも予想外なアメリカ軍の強襲ですからね。
ツラギ守備隊は、アメリカ軍の侵攻を緊急電で後方のラバウルに通報するのがやっとだったのです。」
「ラバウルって?」
「ガダルカナル島から一番近い海軍の拠点です。
戦争初期にあっという間に制圧した地域であり、南太平洋における要衝と言えます。」
「ラバウルって・・・何か歌にもなってなかったっけか?」
「歌?」
「おぼえてい〜ますか〜。目と目が合ったと〜き〜を〜」
「お約束だね。」
「フフ、俺の歌を聴け〜でも良かったんですけどね〜。ちょっと可愛さをアピールしてみました。」
「いや、可愛い云々以前の問題だから・・・」
「それで・・・歌って?」
「ラバウル小唄の事では無いかと思いますが・・・私自身、良く知らないのでどうでも良い事として先に進みたいと思います。」
「ま、脱線しないって点ではマシな判断ね。」
「で、ラバウルが何だっけ?」
「ツラギ島からの緊急電を受け、最初に行動を起こしたのはラバウルの第25航空戦隊です。
司令官の山田定義少将は全戦力の投入を決定、次の部隊を出撃させました。」
台南航空隊・零戦17機
第四航空戦隊・一式陸攻27機
第二航空隊・・・・九九艦爆9機
「合計すると53機ですね。」
「全戦力って言うには、あんまり数が多くない気がするんだけど・・・」
「・・・日本にとってはこれでも大変なんです。」
「国力の無い国の性か・・・。」
「ちなみに、第四航空隊の一式陸攻27機は別の攻撃目標に向かう予定だったのですが、
緊急出撃の為魚雷への換装をしないまま陸用爆弾装備で出撃していったのです。
この状況はある意味、ミッドウェー海戦のもう一つの結果と言えると思います。」
「どういうこった?」
「ミッドウェーの時の兵装転換にまつわる話です。
あの時、九七艦攻を陸用の爆弾で出撃させていたらどうなっていたか・・・という話の結果の参考になると思うのです。」
「機体が違うんじゃ参考にならないんじゃないの?」
「あくまで参考です。陸用爆弾で艦船に対しどれほどの戦果を与えられるのか・・・という目安にはなると思います。」
「で、結果はどうなのよ?」
「その話は少し後になります。九九艦爆についての話も残っているので・・・」
「また、あとでなの?」
「・・・そうです。以前の様に極端に後回しにはしないつもりですけど。」
「どーだか。」
「アスカさん、そんな事ばかり言ってるといじめっ子のレッテルを貼ってあげますですよ?いいんでつか?」
「なんで私がいじめっ子呼ばわりされなきゃなんないのよ!」
「だってそうじゃないですか。よくあるいじめっ子の特徴ってこうでしょ?」
話を止める
憎まれ口を叩く
人気が無い
「ほら、パーペキ。」
「どこがよ!私は話を止めて無いわよ。脱線させる筆頭はあんたでしょ!」
「でも、下の二つは合ってるでしょ?」
「あってない!第一何よ、この人気が無いってのは!」
「そのものズバリだな。」
「うむ。」
「うっさい!そもそもあんた達は脇役でしょ!少しは黙ってなさいよ!」
「・・・・・。」
「アスカ、私も黙ってた方がいいのかな?」
「いきなりどうしたの?」
「だって、脇役は黙ってた方が良いって・・・」
「そんな事無いわよ。あいつらと違ってヒカリならそんなに卑下する事ないわ。」
「酷いです!宇宙船地球号に仲良く暮らす市民なのに差別するなんて!アスカさんには謝罪と賠償と発言の撤回と・・・」
「るさいっ!それに私がしてんのは差別じゃなく区別、被害妄想も程ほどにしなさいよ!」
「でも、脇役云々で言ったら・・・ここにいる面子全員そうじゃないのか?」
「いいじゃん、脇役でも何でも。
所詮この世は弱肉強食、強ければ生き弱ければ死ぬ
ほら、脇役の方が際立っちゃって主人公なのにパッとしないって事もあるじゃん。」
「それって馬鹿シンジの事?」
「え、違うよ。だって、シンジならちゃんと立ち直ってるでしょ?」
「確かに原作とは違っているからな。」
「陰が薄い主人公って結構いると思うけど・・・。え〜と、例えば・・・」
「例えば?」
「あたしは思い浮かばないけど・・・」
「・・・・・。」
「地味な主人公なら・・・シーブックとかはどうだ?」
「・・・シーブックってF91に乗ってる人よね?」
「あの人は地味だけど、パッとしない訳じゃないと思うよ。逆にあーゆう人も大事だと思うけどな〜。」
「・・・一体いつまで脱線続けるのよ。」
「あ・・・!」
「どうした?」
「あのさ、あたしが言うのもなんだけど・・・・・・ジュドーって結構地味だよね・・・。」
「それ言ったら作品自体が地味って話になっちまうが・・・」
「サキエルさん、それ禁句ですよ?」
「・・・説明を続けます。
攻撃隊の一翼をになった九九艦爆隊ですが、この部隊はラバウルに進出したばかりで準備が不十分だったのです。
おまけに九九艦爆の航続距離ではラバウル〜ガダルカナル島の往復は不可能でした。
普通に考えれば出撃は不可能なのですが、山田少将は出撃を強行させました。」
「往復出来ないって言うと・・・片道出撃って事?」
「・・・ご心配無く。洋上に不時着するであろう九九艦爆乗組員救助の為に次の部隊もあわせて出撃させています。」
水上機母艦・秋津洲
二式大艇
駆逐艦・追風
「・・・この事からも解る様に、日本軍は決して人命軽視の軍隊では無かったのです。
誰ですか?日本軍は人命軽視の極悪集団だと言ったのは。」
「誰もそんな事言って無いってば・・・。」
「あれ?アスカさん、前にそんな事言ってませんでしたっけ?確か、一式陸攻の説明の時だったと思いますけど・・・」
「似たようなツッコミすんじゃないわよ!意味合いが違うって言ってるでしょ!」
「・・・航続距離が足りなかったのは九九艦爆だけではなく、零戦も往復できるかどうかギリギリの距離でした。
この為、当時未整備だったブーゲンビル島の飛行場を緊急着陸用にあて、整備員と燃料を積んだ駆逐艦秋風を向かわせたのです。」
「・・・話だけ聞いていると、日本軍もよく言われてるみたいな人命軽視の軍隊とは思えんな。」
「零戦隊と一式陸攻がガダルカナル島に到達したのは10:20頃です。
しかし、沿岸監視員からの情報により日本軍の来襲を事前に察知していたアメリカ軍は
エンタープライズ・サラトガ・ワスプの三空母から迎撃の為のF4F戦闘機62機を発進させていたのです。」
「ん?ワスプ・・・聞いた事の無い名前だな。新型か?」
「・・・いいえ、新型という訳ではなくワスプは大西洋方面で活動していただけです。
ミッドウェーで失ったヨークタウンの穴を埋めるために回航され、ガダルカナル島の上陸支援にあてられました。」
「・・・あんた、ワスプがあるなんてこれまで一言も言って無いじゃない。」
「・・・説明が面倒だっただけです。日本に関係の無い大西洋で活動している空母の話をして何が楽しいのですか?」
「楽しい楽しくないじゃなくて・・・
あんた、アメリカ軍の空母が5隻しか無いみたいな事言ってたじゃない。その辺りはどうなのよ?」
「・・・細かいツッコミをする人は嫌いです。」
「ツッコミじゃなくて意見よ意見。おまけにそれ、本家で使われてたネタでしょ。」
「で、どうなったのだ?日本軍の攻撃隊は・・・。
日本軍攻撃機が50そこそこ、迎撃機の数が62。あまり分が良いとは思えんが。」
「一式陸攻隊は第一目標の空母を探したのですが見つからず
手近な輸送船・巡洋艦を爆撃しました。ですが、それほどの戦果を挙げることは出来ませんでした。」
「何で?日本軍って強いんじゃなかったの?」
「・・・艦船相手に陸用爆弾で攻撃した結果であると思われます。
動く目標相手に命中率の低い水平爆撃・・・おまけに効果の薄い陸用爆弾。
この結果はある意味予想通りとも言えるでしょう。そして、この事がミッドウェーでの結末の一つであるとも思うのです。」
「前に散々話してたアレだな。」
「はい。しかも、ミッドウェーの時は零戦隊の護衛は無しです。
この事からも南雲中将の判断は間違ってはいなかったと言えます。」
「今はミッドウェーの話じゃないでしょ。」
「・・・確かにその通りですが、色々と重複する内容があるのです。脱線ではなく必要な説明だと割り切ってご静聴下さい。」
「この面子に静かに聞け、というのは無理な相談ですよ。ねぇ、アスカさん?」
「だから何で私に話を振るのよ?」
「ほら、事あるごとに脱線させてるから・・・」
「それはアンタ!私は意見を言ってるだけ!」
「ま、結果論で言うとどっちも大した違いは無いんだかな。」
「うむ。」
「うるさい!」
「・・・続けます。遅れて出撃した九九艦爆9機が13:00にガダルカナル島に到着、攻撃を開始しました。」
「でも、9機しかいないんでしょ。そんな数じゃ大した攻撃にならない気がするんだけど。」
「・・・確かに。総力を結集した一連の攻撃もそれほどの戦果は上がらず
駆逐艦一隻に損害を与えたに止まりました。日本軍の被害は次の通りです。」
零戦2機
一式陸攻5機
九九艦爆9機(撃墜4・不時着5)
「・・・ちなみに、零戦隊は敵戦闘機を11機撃ち落としています。
零戦隊17機に対しF4F迎撃隊は62機・・・もちろん、敵迎撃機の目的は一式陸攻等の爆撃機でしょう。
ですが、それを考慮に入れても零戦隊の働きはかなりのものと言えます。」
「相変わらず化け物なんだね。」
「流石は帝国海軍のザクUですねぇ〜。」
「え?なんでザクU?」
「零戦はジオンのザクUの様に戦争初期から最後までずっと使われていたらしいな。
仕様の変更はあったが、最後まで第一線で使われていたそうだぜ。」
「ザクUって一種類なんじゃなかったの?」
「ザクUはJ型やR型、後期型やFZなどたくさんあるだろう・・・。貴様、それでもジオンの将か?」
「え〜、わたし別に将とかじゃないもん。おまけにその台詞、デラース准将入ってるし・・・。」
「馬鹿な、何故分かる!」
「ん〜、何となく。」
「・・・・・。」
「ヒカリ、ほっときなさい・・・。」
「・・・翌8日も日本軍は攻撃を続けます。前日、帰還する事の出来た機体を全て投入した全力での攻撃です。」
「結果はどうなりました?」
「・・・駆逐艦や輸送船に多少の損害を与えたものの、損害に見合った戦果ではありませんでした。
この日の攻撃で日本軍が失った機体は次の通りです。」
零戦2機
一式陸攻18機
「ちょっと・・・何よ、その18機って!出撃した機体って20そこそこでしょ?
18機喪失じゃ、攻撃隊のほとんどを無くしちゃったって事じゃない!何だってそんなに被害受けてんのよ!」
「・・・この日の攻撃は前日の水平爆撃と違い魚雷での攻撃・・・つまり雷撃です。
雷撃ならば敵艦に与えるダメージは期待出来ますが、低空に下りなければなりません。
低空に下りるという事は当然、対空砲火にさらされるので・・・」
「一式陸攻は・・・以前話に出ていたが防御力が皆無だったのだろう?」
「ワンショットライターですもんねぇ。」
「・・・アメリカ軍の対空砲火は凄まじいものだったそうです。
対して、防御力の低い一式陸攻・・・日本側がこれだけの損害を被るのも必然だったのかもしれません。」
「それだから日本軍は人命軽視って言われんのよ。」
「・・・以前も話しましたが、日本軍は人命を軽視していたわけでは無いのです。何故それが分からないのですか?」
「分かる訳ないでしょ!貧弱な機体で出撃させるなんて信じられないわよ!」
「なら、もしアスカが出撃するとして、選ぶとしたら・・・どちらを選びます?」
性能は良いが稼働時間の短いザクU
突出した性能は無いがそれなりなザクU
「もっと良い機体が支給されるまで戦わないに決まってるじゃない。」
「理想が高くて嫁き遅れるタイプ。」
「何の話よ!」
「・・・ふぅ。」
「あんたも何、溜め息ついてんのよ!」
「・・・救援要請が来ているのに戦わないという選択肢は、状況にもよりますがまずありえません。
・・・敗北ともとれる日本軍の損害は最善を尽くしたその結果に過ぎません。」
「む・・・。」
「玉砕が好きでつねぇ〜(・∀・)ニヤニヤ」
「意外とこの嬢ちゃん、旧日本軍向けの性格してんのかもな。」
「・・・だが、この少女は一機でティターンズの小隊を殲滅させたとも聞く。
人材不足のアクシズとしては欲しい逸材と言えなくも無い。」
「え〜と・・・、ネルフ本部がどうとかの時だったっけ?」
「そうそう、でもその後でEVA量産機にボコられてたけどな。」
「ここぞという時には使えないですねぇ〜。」
「だから何の話なのよ!」
「・・・これ以降、第一次ソロモン海戦におけるラバウル航空隊の出撃はありませんでした。
もっとも、6割を超える損害を出しているのですから当然と言えば当然ですが・・・」
「もう、打つ手は無いって事?」
「援護しようにも、先立つものが無けりゃどうしようも無いわな。」
「危機に陥った時こそ神様に祈るんですよ。アラーの神様お助け下さいって・・・」
「現実逃避してどうすんのよ・・・。」
「我が愛しのハマーン様。私はあなたにとっては救いを求める子羊です。
どうかこの子羊に知恵と勇気をお与えください。お願いいたします。
ハマーン様、ああ、ハマーン様、ハマーン様、ハマーン様。」
「・・・・・。」
「何です、それ?」
「プル、そんな恥ずかしい台詞どっから引っ張ってきたのよ。」
「え、この人。」
「ええ〜い、人を指さすな!何故お前がその事を知っている?誰だ、誰に聞いた!」
「え〜と、ゴットンだったかな。」
「奴め、余計な事を吹聴しおって・・・」
「あんたもある意味病気だな。私は子羊だ、なんて恥ずかしくて言えんぞ。」
「ええ〜い、忘れろ!く・・・ゴットンめ、有給休暇の事を根に持っているのか。」
「ああ、ハマーン様、ハマーン様、ハマーン様!!」
「黙れ!」
「・・・ツラギからの緊急電を受けたのはラバウルだけではなく、
三川軍一中将率いる第八艦隊にも情報は伝わっていました。彼らは直ちに行動を開始したのです。」
「第八艦隊、それはどのような部隊なのだ?」
「マシュマー様、話逸らそうと必死なの?」
「ああ、ハマーン様、ハマーン様、ハマーン様・・・」
「うるさい!」
「まぁまぁ、からかうのが面白いのは分かるが・・・その辺にしといたらどうだ?」
「は〜い、りょ〜かい。」
「一つのネタにこだわり過ぎてもしょうがないですからねぇ〜。」
「ぐぬぬぬ・・・」
「・・・第八艦隊は7月14日に新設された部隊です。ビスマルク諸島、ソロモン諸島等での作戦が担当となります。」
「・・・編成はどのような感じだ?」
「やっぱり必死・・・?」
「当たらずとも遠からずでしょう・・・ウフフ。」
「あんたら・・・、叩けるネタがあったらすぐに飛びつくのね。」
「アスカさん、人聞きの悪い事を言わないで下さい!私達は彩りを求めているのでつよ!」
「うんうん。」
「彩りって何よ、彩りって・・・。」
「彩り(いろどり)色の配合・面白みや華やかさ・・・」
「そういう意味じゃないっての!同じネタを繰り返すんじゃないわよ!」
「・・・次は第八艦隊の具体的な説明に移ります。第八艦隊は重巡を基幹とする艦隊です。」
「・・・で、この船は何なの?」
「・・・第八艦隊旗艦鳥海と同型の重巡、愛宕です。探したのですが丁度良い写真が見つからなかったもので・・・」
「あんた、もしかしてまた騙そうとしてたんじゃないの?」
「キングジョージV世だっけか?」
「そうそう。」
「人聞きの悪い事を言わないで下さい。一応検索はしたのです。
鳥海山の画像が山の様に出たときは流石に脱力しましたけど・・・」
「で、結局違う写真でお茶を濁すんでしょ。」
「はい。」
「はい、じゃないわよ!あんたやる気あんの?」
「・・・同型の船なのだから良いじゃないですか。何が不満なのですか?」
「あんたねぇ、そういういい加減な事ばかりすんじゃないわよ。説明の信憑性が下がっちゃうじゃないのよ。」
「・・・背に腹は代えられません。重巡洋艦と口で説明しても分からない人には分からないものなのです。
先人達は言います・・・百聞は一見に如かずと。分かりやすい説明にするには仕方の無い事なのです。」
「ん〜、確かに。」
「一理ありますね。」
「無いわよ!詭弁と小理屈で誤魔化すんじゃないわよ!」
「まぁ、細かい事は気にするな。」
「何でアンタまでファーストを擁護してんのよ。」
「擁護している様に聞こえるならそうなのかもしれん。だが、重箱の隅を突付く様な議論ばかりでは話は進まんだろう?」
「く〜、思いついた様にマトモな意見言うんじゃないわよ、子羊のくせに!」
「な!それは今の話と関係は無いだろう!」
「我が愛しのT−72神様。私はあなたにとっては救いを求める子羊で〜す♪」
「どうかこの子羊に知恵と勇気をお与えくださ〜い♪」
「オブイェークト!」
「ええ〜い、黙れ!」
「混ぜりゃ良いってモンじゃないだろうに・・・」
「・・・説明を続けます。次が第一次ソロモン海戦の編成になります。」
第八艦隊
旗艦・鳥海(重巡)
第6戦隊・青葉、古鷹、衣笠、加古(重巡)
第18戦隊・天龍、夕張(軽巡)
夕凪(駆逐艦)
「随分、少なくないか?」
「・・・ミッドウェーの後だから、尚更そう感じるのだと思います。
重巡洋艦を基幹とする艦隊はそれほど珍しいわけではありません。」
「ふ〜ん・・・。」
「アメリカ軍が侵攻を開始した8月7日・・・
第八艦隊に所属する艦船はそれぞれ別任務に就いていましたが、ツラギ島からの急報を受け直ちに集結。
14:30にガダルカナル島に向けて出発しました。正午頃にラバウルに届いた連合軍の情報は次の通りです。」
ガダルカナル島
巡洋艦×3 駆逐艦×7 輸送船×27
ツラギ島
戦艦×1 重巡洋艦×1 軽巡洋艦×3 輸送艦×15 輸送船若干
「数が違い過ぎる気がするんだけど・・・」
「日本側にとって、アメリカ軍の侵攻は予想外の出来事ですから、戦力の差は仕方ありません。
第八艦隊首脳部は数の劣勢を払拭する為、夜間奇襲作戦を立案していたのです。」
「ヤカン?」
「違います。夜間とは夜、奇襲を実行するのに最適な時間の事です。」
「う〜ん・・・。」
「どうしたの?」
「いえ、ツッコミが足りないな〜と思いまして。」
「ツッコミって・・・」
「そういや、あの2人はなにやってんだ?」
・
・
・
「ふ〜ん、騎士とか偉そうな事言ってたって実力が伴わないんじゃしょうがないわよねぇ。」
「貴様、ハマーン様に仕える騎士であるこの私を愚弄するか!」
「だから、実力が足りないって気付きなさいよ。そんなんだから連戦連敗なのよ。」
「ぐぬぬ・・・、仕様が違うのだ!機体性能さえ同じなら貴様ら連邦の犬ごときに負けはせん!」
「なんですって〜!子羊のくせに!」
「まだ、続いてたんだ。」
「・・・いずれ飽きるでしょう。
ガダルカナルに向け出撃した第八艦隊は穏やかな海を航行、7日夜にブガ島北方を通過。
翌8日送料にはブーゲンビル島北東海域を南下していきました。」
「どの辺りの話なのかよく分からんが・・・」
「この辺りの話は聞き流す程度で結構です。
さて、順調だと思われた航海ですが08:30頃、オーストラリア軍の哨戒機に発見されてしまいました。
第八艦隊は一斉射撃で追い払いましたがこの哨戒機は敵発見の報告を打電していたのです。
しかし、ここで、日本に幸運がおとずれました。」
「幸運ですか?う〜ん、何でしょう。時空を超えてイージス艦が現れたとか?」
「イージス・・・って?」
「そういう漫画があるのさ。そういや、あの話にも第一次ソロモン海戦って出てたよな。」
「・・・はい。正直、そちらを見ていただければこちらで説明する必要は無いのですが・・・。」
「ミもフタも無ぇなぁ。」
「あの作品は面白いとは思いますが、
強いて不満を挙げるとすればミッドウェー作戦を自惚れや過信で立てたと称していたところですね。
あの作戦のどこに自惚れや過信があったのか教えていただきたいものですが・・・」
「綾波さん、話逸れ始めてまつよ?」
「・・・失礼しました。さて、日本軍の幸運ですが・・・哨戒機の無線が通じていなかったというものです。」
「は、無線?」
「哨戒機から放たれた無電は日本軍も傍受出来ていました。
その事により、第八艦隊司令部は奇襲が失敗したと落胆したのですが・・・
幸運な事にその時、送信先の施設に人がいなかったのです。」
「人がいないって言うと・・・サボってたんでつか?」
「・・・いいえ。空襲警報が発令されていて防空壕に退避していたそうです。
日本軍発見の報告がアメリカ軍上層部に届けられたのは8時間後・・・
この時間のロスが日本にとって良い方向に作用したのだと思います。」
「ま、戦争ってのは時間も重要だからな。」
「ふ〜ん・・・。」
「・・・凡そ、この偶然なる余所者に支配される空間が戦場である。と言われるのも頷ける話です。
敵に発見された事で奇襲の機会が失われた事。
午前中に索敵目的で発進させた偵察機からの報告により敵艦隊の布陣が予想より強力だった事。
これらを知った第八艦隊司令部は、進路をラバウルへ向かわせました。」
「退却ですか?」
「転進です。第八艦隊は16:00に再び進路を変更、
コロンバンガラ島とチョイセル島の間を抜けガダルカナル島へ向け南下を始めたのです。」
「よくわかんないけど、もうすぐ戦闘開始かな?」
「そうですね。」
「ところであの2人は何してんだ?」
・
・
・
「いちいちうるさいのよ!この騎士ヲタ!」
「な!言うに事欠いて騎士ヲタとは何だ!」
「まだやってるし・・・」
「日没直前の16:20、第八艦隊旗艦鳥海から手旗信号により作戦命令が僚艦に伝えられました。
また、司令官の三川中将は日没を迎えると艦上の可燃物を全て投棄するようにも命じています。」
「あ〜、不法投棄〜!い〜けないんだ〜、いけないんだ〜。」
「・・・・・。」
「ツッコミが無い・・・。」
「それも本家のネタじゃなかったか?」
「ねぇ、なんで捨てちゃうの?」
「これから戦おうってのに、船の上に燃えるものがあったらマズイだろ?
砲弾当たって引火したりとかしたら目もあてられないことになるだろうしな・・・ミッドウェーみたいによ。」
「・・・悲しい話を思い出させないで下さい。
さて、ガダルカナル島に接近した第八艦隊ですが21:00、重巡洋艦鳥海、青葉、加古の3隻から偵察機を発進させました。」
「夜なのにか?その時代の飛行機って夜間出撃は危険なんじゃなかったのか?」
「・・・航空機による夜間出撃も完全に不可能というわけではありません。
現に珊瑚海海戦の時にも行っていますしね。
それに、今回発進させたのは九四式水上偵察機で、戦闘が始まった時に吊光弾を落とすのが目的だったのです。」
「吊光弾?」
「敵艦隊を視認しやすくするためのものです。
アメリカに対し日本はレーダー開発に遅れをとっていたので、敵を攻撃するには視認に頼らざるを得なかったのです。」
「でも、レーダーの基礎となったのを発明したのは日本だったんですよね?
日本は先見の明が無かったって叩かれてまつよ。」
「・・・・・。」
「どした?」
「・・・日本がレーダー開発を後回しにしたのは事実ですが
決してレーダー?(゚听)イラネという認識だった訳では無いのです。人手が予算が工業力が・・・アメリカとは違いすぎるのです。
もっとも、日本軍上層部にはレーダーを軽視する向きもあった様ですが・・・それが全てでは無いのです。
現にミッドウェー海戦前の5月、戦艦日向に水上見張用22号レーダーを試験装備させていたのですから。」
「はぇ?そうだったんですか?」
「ただ、レーダーは後に撤去されていたみたいです。
日本軍のレーダーについては後々も出てくると思うので、今はこのくらいで止めておきます。
話を戻します。第八艦隊は旗艦・鳥海を先頭に青葉、加古、衣笠、古鷹(重巡)天龍、夕張(軽巡)夕凪(駆逐艦)という順番で
単縦陣を形成し進撃していました。」
「単縦陣って?」
「縦一列に並んだ陣形の事です。
艦隊行動が容易な上に全ての艦の舷側攻撃力を無駄なく使う事が出来るという利点があります。」
「よく分からないんだけど・・・」
「問題ありませんよ。私も分かりませんから。ハハハ・・・」
「・・・第八艦隊の作戦は、単縦陣でサボ島とエスペランス岬の間のシーラーク海峡に突入。
ルンガ岬沖に停泊している敵艦隊を雷撃後、ツラギ島周辺の敵艦隊を砲雷撃する・・・というものでした。」
「シーラーク海峡ってどこだ?」
「・・・こちらの地図をご覧下さい。」
「あれ?前回の地図と違いません?」
「多少ですが変更してあります。
三川軍一中将率いる第八艦隊はサボ島とガダルカナル島の間・・・シーラーク海峡を進撃しています。
アメリカ軍の輸送船団はルンガ岬付近とツラギ島近辺・・・赤く記した部分にいるものと考えていただけると幸いです。
それぞれ12000mの間隔を開け進撃していた第八艦隊は22:00、総員戦闘配置という三川中将の命令により戦闘態勢に移行。
艦隊の速力を26ノットに増速させました。」
「ねぇ、ノットって何?」
「1海里を1時間で進む速さです。
1海里の距離は国によって異なるのでノットにも種類があるのですが・・・
以前、マシュマーさんが言われた通り1852mを1海里とするならそれがそのまま1ノットになります。」
「と言うと、26ノットって事は時速50kmくらいか。」
「大雑把でつよ、サキエルさん。正確な数字を出さなければ後々突っ込みも入ろうというものです。」
「いや、そこまで細かく考えるのメンドーだし・・・」
「・・・22:43、鳥海の見張り員が第八艦隊を横切る様に通過するアメリカ軍の駆逐艦を発見しました。
この駆逐艦ブルーはSCレーダーを搭載していたものの、第八艦隊の存在には気付いていなかったそうです。」
「て事は、レーダーより見張りの人の方が凄かったって事?」
「この当時のアメリカ軍のレーダーはまだそれほどの性能では無かったそうです。
結果だけ見れば・・・日本軍の見張り員の目の方が勝っていたという事になりますね。
西洋人と東洋人という人種の違いで夜目の違いもあるという話もありますが・・・確証が無いので、ここでの言及は避けます。
とにかく、この時はアメリカ軍に察知される前に日本軍が敵の存在にいち早く気付いたのです。」
「とりあえず、攻撃のチャンスって事だな。」
「チャ〜ンス、でつか?」
「それは誰のマネだ?」
「独断専行で突撃して返り討ちにあったりしてしまう人の事ですよ。
リツコさんに無様ねとか言われて逆ギレしたりする人の事なんでつけど・・・思い当たりませんか?」
「・・・・・。」
「わ!いきなり何ですか!」
「・・・あんた、いい度胸してるわね。」
「え、私はアスカさんの事だなんて一言も言ってませんよ?」
「言ってるのと同じよ!ファーストに向かって朴念仁って言ってるのと同じでしょ!」
「・・・・・。」
「とんだとばっちりだな。」
「まぁ、いつもの事みたいだけどな。」
「朴念仁ってな〜に?」
「愛想の無い人の事よ。道理の分からない人って意味もあるみたいだけど・・・」
「ふ〜ん・・・。」
「当たらずとも遠からずと言ったところだろう。もちろん無愛想という意味合いだろうが・・・」
「そういえば、マシュマー様、平気な顔していつの間に会話に参加してんの?」
「・・・議論そのものに意味を見出せなくなったからな。不毛な事をいつまでも続けていても意味は無い。」
「という事は・・・結局、マシュマー様=子羊って事で落ち着いたんだね。」
「勝手に話を落ち着けるな!誰が子羊だ!」
「え、この人。」
「ええ〜い、人を指差すな!」
「・・・第一次ソロモン海戦の話を続けても良いでしょうか?」
「ああ、いいぜ。つーか話し止めると脱線するからそ知らぬ顔で続けてた方がいいぞ。」
「・・・シーラーク海峡突入直前に
アメリカ軍駆逐艦と遭遇した第八艦隊ですが、司令官の三川中将は攻撃命令を出しませんでした。」
「え、なんで?攻撃する絶好のチャンスだったんじゃないの?」
「囮の可能性を案じたからです。駆逐艦一隻を攻撃し奇襲の機会が失われては本末転倒ですからね。
万一に備え各艦の砲門を敵駆逐艦の方向に向けたままやり過ごす事にしたのです。
その後、各艦は敵駆逐艦警戒の為、最後尾の夕凪を残しシーラーク海峡に突入していきました。
・・・一方、第八艦隊がシーラーク海峡に突入した時連合軍司令部の面々は今後の対応を決める為、旗艦マッコーレーに参集していました。
この指揮官不在も日本にとっては幸運だったのかもしれません。」
「なぁ、ちょっといいか?」
「何でしょう?」
「昼間って確かアメリカの空母いたよな?
日本軍は巡洋艦メインの艦隊だってんなら一方的に攻撃出来るだろ。ヤシらは何やってんだ?」
「16:00、アメリカ機動部隊指揮官のフレッチャー中将は燃料補給を理由にガダルカナル島からの撤退を要請していました。
撤退開始時間は分かりませんが、第八艦隊がシーラーク海峡に突入した時、
アメリカの機動部隊はガダルカナル島からすでに撤退していたのです。」
「撤退か・・・。燃料が無ければ満足に戦闘も出来んからな。妥当といえば妥当な判断か。日本も相当、運が良かった様だな。」
「んだな。ミッドウェーの時に、この時の運がもう少しあれば・・・」
「・・・・・。」
「あ、悪ぃ悪ぃ。そんな顔すんなって。」
「あ〜、女の子を泣かせるなんてサイテー。」
「別に泣かせてはいまい。確かに不注意な言動があったかもしれんが・・・」
「フッ、非を認めましたね?その安易な考えが賠償へと繋がるのですよ?」
「そうなのか?」
「そうでつ。それが国際社会の常識だそうでつ。」
「ま、しょーがないよね。子羊だもん。」
「いい加減にしろ!プル、何度同じ事を繰り返せば気が済むのだ!」
「あ〜、マシュマー様がいじめる〜。」
「女の子を泣かせるなんてサイテー。」
「その台詞はついさっき言ったばかりだろう。それにプル・・・嘘泣きは止めておけ。」
「え、判った?」
「ま、お前さんのこれまでの行動見てれば何となくは見当付くだろ。」
「う〜ん、もう少し打ち合わせしておくべきでしたねぇ。反省反省・・・。」
「そ〜だね。」
「あんた達・・・いつの間にそんなに仲良くなったの?」
「フッ、妬いてるんですか?」
「誰が誰に妬いてるってのよ!」
「・・・・・。」
「話を横道に逸れさせて悪かったな。続けていいぞ。」
「燃料補給の為に撤退したアメリカ機動艦隊ですが、撤退の理由は別のところにありました。
機動部隊指揮官のフレッチャー中将が日本軍の攻撃により空母を失う事を恐れたから・・・という話があります。」
「よーするにビビッちゃったってこと?」
「・・・平たく言うならそうなります。
彼は珊瑚海海戦やミッドウェーで日本軍の攻撃を目の当たりにしています。
経験から考えて日本軍に対し脅威を感じていたとしても不思議ではありません。」
「You are chicken!でつか?」
「何のネタよ・・・。」
「誹謗中傷になるので、そういった発言は控えた方が良いかと思いますが・・・」
「は〜い。」
「で、第八艦隊はどうなった?」
「・・・23:30頃、第八艦隊は重巡洋艦2隻、駆逐艦2隻を発見しました。艦名は次の通りです。」
南方部隊
重巡洋艦・キャンベラ、シカゴ
駆逐艦・バークレー、パターソン
「・・・三川中将は直ちに雷撃を命令。23:38に各艦から魚雷が発射されました。
戦闘状態に入っている日本軍とは対照的に、連合軍は未だに日本軍の存在に気付いてはいませんでした。」
「連合軍は何やってんのよ・・・。」
「東洋人に比べて西洋人は夜目が利かないって、綾波さんからさっき説明があったじゃないですか!
貴女は何を聞いていたんですか!」
「うるっさいわね〜!そこの子羊と議論してる真っ最中だったんだからしょうがないでしょ!」
「き、貴様・・・脈絡無く話しを蒸し返すな!」
「人種による夜目の違いについては、きちんとした情報源ではありません。あまり信用されても・・・」
「ま、いいんじゃねぇの?最初に会った駆逐艦の連中も今回のヤシ等も気付いて無いんだろ?
状況だけ聞いてると、その話もそれほど間違いって訳でもなさそうだぜ。」
「・・・わかりました。では、そういう事にしておきましょう。
連合国軍が日本軍の存在に気付いたのは約5分後の事です。駆逐艦パターソンが第八艦隊を発見
所属不明艦、わが海域に侵入と警報を送ったものの・・・5分の遅れが明暗を分けたのです。」
「そんな抽象的な表現じゃなくて・・・具体的に言いなさいよ。具体的に普通に分かりやすく。」
「・・・警報が発せられた時、すでに魚雷は連合国艦艇の目前にまで迫っていました。
加えて、上空を飛行していた日本軍偵察機から吊光弾が投下されたのです。
暗闇に映し出された連合国艦艇に向け、第八艦隊が苛烈な砲撃を加え始めました。」
「回避するなり何なり対処は出来なかったのか?」
「何をしておる!回避だ!緊急回避!」
「うわ〜っ(棒読み)」
「・・・すぐにネタを混ぜるの止めなさいって。第一、何のネタなのよ、それ。」
「星の屑の時のバスク=オムさんの真似です。」
「あたしは、連邦の中の人の真似〜。」
「星の屑か・・・。アナベル=ガトー少佐がジオンの栄光の為に戦われた伝説の戦いだな。」
「伝説って・・・ついこの前の話じゃなかったっけ?」
「そうだったか・・・?とにかく、物量に勝る連邦に対しコロニー落としを敢行。
戦略目標を見事達成したのだ。これを伝説と言わずして何を伝説と言う?」
「まぁな。ガンダムが邪魔したりとかガンダムが邪魔したりとかガンダムが邪魔したりとか色々あったみたいだからな。」
「て、邪魔したのあたし達なんだけどね〜。」
「話の時間軸も展開もメチャクチャでつね。」
「ま、スパロボだしな。」
「・・・戦略目標を成し遂げられるなんて羨ましい限りです。」
「あんたも現実逃避するの止めなさいって。」
「・・・23:43、オーストラリア軍巡洋艦キャンベラの右舷艦首に魚雷2本が命中、集中砲火を浴び炎上。
アメリカ軍巡洋艦シカゴも魚雷1本と命中弾1を受け戦場を離脱。
最初に日本軍を発見したパターソンも軽巡天龍の艦砲射撃を受け沈黙しました。」
「随分一方的な戦いだな。日本軍の被害は無いのか?」
「奇襲に成功したため、反撃する機会を全く与えませんでした。この時点での日本軍側の被害は無かったと思われます。」
「ふ〜ん・・・。」
「それにしても・・・連合国軍はなにやってんのかしら。いくら不意打ちでもだらしなさ過ぎるんだけど。」
「・・・不意打ちだから仕方ありません。
元々、日本軍が迫っている事に気付いていなかったのですから・・・連合軍がこんな有様なのも、ある意味当然と言えます。
あまり連合国の対応を責めるのも酷というものですよ。」
「ふ〜ん、珍しい事もあるのね。」
「いきなり何なんでつか?」
「え?ファーストが連合国側を擁護するような意見言うのが珍しいなって思っただけ。
日本万歳鬼畜米英女にしてはちょっとおかしいでしょ?」
「・・・私は別に鬼畜米英などと言った事はありませんが。」
「言ってるのと同じよ。」
「それもまた凄い偏見だわな。」
「・・・日本と連合国側は戦う理由など無かったのです。鬼畜米英と思う理由はありません。」
「だそうでつよ?」
「どーだか。」
「・・・説明を続けます。南方部隊を叩いた第八艦隊は北方部隊への攻撃に移りました。北方部隊の編成は次の通りです。」
北方部隊
重巡洋艦・クインシー、ビンセンズ、アストリア
駆逐艦・ヘルム、ウィルソン
「北方部隊とやらも南方部隊と似たような編成なのだな。」
「先程、パターソンから発せられた警報は北方部隊も受けていました。
しかし、激しいスコールが発生していたため状況が掴めていなかったそうです。
23:48、第八艦隊旗艦鳥海は、アストリアに向けて魚雷を発射。続けて砲撃を開始。
魚雷は命中しなかったものの、集中砲火を浴びたアストリアはすぐさま炎上、停止を余儀なくされました。」
「緊急回避!は出来なかったのかな?」
「・・・無理だった様ですね。アストリアの後続のクインシーも鳥海と青葉の砲撃を受け炎上しました。
クインシーは反撃を行い鳥海の海図室に命中弾を与えました。
鳥海目掛けて突進してきましたが十字砲火を浴び・・・40分後に沈没しました。」
「お、ようやく反撃らしい反撃が来ましたね。」
「でも、相変わらず一方的なんだね。」
「奇襲に対応するのは大変なんです・・・。
北方部隊の最後尾の重巡ビンセンズは戦闘が始まっても状況が中々理解できず、
探照灯で照らされても僚艦のものと勘違いしていたそうです。
その為、対応が遅れ日本軍の重巡加古、衣笠の砲撃雷撃を受け命中弾多数により行動不能・・・
先程のクインシーに数分遅れで沈没しました。
日付が変わった00:23、第八艦隊司令三川中将は全艦に撤退を下令。
サボ島の北西で隊列を整えると01:30過ぎにラバウルに向けて帰投していきました。」
「あれ、帰っちゃったの?」
「そうです。寡兵に過ぎない第八艦隊が長時間留まるのは危険なんです。」
「戦略目標も果たして無いのに何で帰るのよ?」
「戦略目標?」
「・・・第八艦隊の目的はガダルカナル島の救援でしょ?
物資の揚陸が終わってなかった輸送船がたくさんいたのに、三川中将って人はそのままにして帰っちゃったのよ。」
「そういえば、例の漫画にもそんな事は書いてあった様な・・・」
「あの話だと、第八艦隊は空母の所在が分からなかったから撤退したって書いてありましたよね。」
「・・・その説明で概ね合ってます。
鳥海艦長の早川大佐が輸送船団への攻撃を意見具申したそうですが、
三川中将を始めとする首脳部は敵空母の追撃を危惧。速やかな撤退を優先させたのです。」
「絶好の機会だったのに、もったいないわね〜。」
「・・・仕方の無い話です。」
「仕方なく無いでしょ。大体真珠湾の時と言いミッドウェーの時と言い
何であっさり帰っちゃうのよ?今回だって絶好のチャンスだったのよ。」
「・・・確かに輸送船団は丸裸同然でした。
私見ですが、北方艦隊への攻撃後に輸送船団への攻撃を開始していれば、
何の問題なく殲滅出来たと思われます。敵機動部隊も南方に退避していたので追撃を受ける可能性も低かったでしょう。」
「だから、何で攻撃しなかったのよ?」
「・・・それは、当時の第八艦隊司令部が敵空母の位置を特定出来ていればの話です。
所在不明の機動部隊の存在を考慮せずに行動するのは愚将のする事です。」
「愚将愚将〜!」
「るさいっ!」
「・・・仮に敵機動部隊の存在を無視したとしても、長期間戦闘海域に留まるのは得策とは言えません。
奇襲の要は敵の不意を突く事・・・準備の整った敵を相手にするというのは、もはや奇襲とは言えません。」
「でも、戦争ってのはリスクも考慮の内だろ?俺としても今回の日本軍の動きは慎重過ぎる様に思えるんだが・・・」
「・・・それは、第八艦隊が大した損害も無く戦場を離脱出来たからこそ言える意見です。
準備の整った敵相手では日本軍が被害を受ける事態も避けられないでしょう。
そうなったら功を焦って引き際を見誤ったと、三川中将が揶揄されるのは目に見えています。
また、敵潜水艦も十分な脅威です。・・・実際、第八艦隊は撤退途中に重巡洋艦加古を、敵潜水艦の攻撃で失っているのです。」
「ありゃ、そうだったのか?」
「・・・駆逐艦一隻では、敵潜水艦に対して十分な哨戒網を引く事は出来ません。
援軍も無い第八艦隊では奇襲後、即帰投が最善であったと思われます。」
「・・・・・。」
「不満そうでつね。」
「うるさい!」
「カリカリしてますねぇ。ちゃんと食物繊維摂った方が良いでつよ?」
「食物繊維は関係無いと思うけど・・・。」
「・・・第一次ソロモン海戦の双方の損害は次の通りです。」
日本軍
重巡鳥海(損害軽微)
重巡加古(帰投中に沈没)
連合軍
重巡キャンベラ(沈没)
重巡ビンセンズ(沈没)
重巡クインシー(沈没)
重巡アストリア(沈没)
重巡シカゴ(大破)
駆逐艦パターソン(大破)
駆逐艦ラルフタルボット(大破)
「奇襲が成功したとは言え・・・圧倒的だな。」
「アメリカはあまりの損害に、この戦闘結果を国民に2ヶ月間伝えなかったとされています。
情報操作の代名詞と言える大本営発表も珍しい話では無いのです。」
「やっぱり日本軍って化け物?」
「・・・いいえ。日本軍と言えど普通の軍隊です。
この勝利は日本軍の訓練の賜物とも言えますが、それと同時にいくつかの幸運が重なって得られた勝利でもあります。
そして、先程も述べましたが引き際を誤らなかった事も要因の一つです。」
「で、第一次ソロモン海戦ってのの話は終わりなわけ?」
「そうです。」
「やれやれ、次に期待ですか?」
「何がよ?」
「ほら、綾波さんに食ってかかっていつも返り討ちに遭ってるから。」
「誰が返り討ちなのよ!」
「・・・誰って、なぁ?」
「うむ。」