ミンドロ島沖海戦

 

 

 

 

「アメリカ軍がレイテ島に上陸して以降、現地の日本軍は劣勢に追い込まれていきました。
元々、準備不十分だったのですから仕方の無い事なのですが・・・」

「台湾沖での戦果誤認がここでも響いていたか。」

「海軍のアホが陸軍にミスを知らせなかっただけじゃん。自業自得よ。」

「・・・それはそうですが。」

「それに、前の戦いで栗田って人は突入しないで退き返しちゃったじゃない。あそこで突っ込んでれば多少は良くなったでしょうに。」

(玉砕玉砕・・・)

「・・・突入した場合、栗田艦隊が全滅していた可能性も否定出来ませんよ?
それに戦果が得られたかどうかも分かりません。」

「をい、戦果が分からないってのはどういう事よ。」

「言葉の通りですよ。
レイテ湾の先には、その日の早朝に西村艦隊を撃破した艦隊が居ますからね。
砲弾の残弾が少なかったという話もありますが、栗田艦隊も戦力十分と言う訳ではありません。
故に、突入したらどうなっていたか分からないというのが正確なところかと思われます。」

「でも、日本にはヤマトがあるじゃん♪」

「デスラー砲、発射!」

「何を訳の分からん事を・・・」

「単艦で戦局を変える事など出来ません。
大和と言えど、他の戦艦より艦砲と防御が多少優れているだけですから。
数の差を跳ね除けられるかどうかは・・・神のみぞ知るという話になってしまいます。」

「え〜、つまんな〜い!」

「・・・それに、栗田艦隊の敵は戦艦部隊だけではありません。」

「そうなの?」

「・・・頭に血の上ったハルゼー大将が機動部隊を率いて迫ってくるでしょうからね。
史実ですら、栗田艦隊は退却中にアメリカ軍の激しい追撃を受けているのです。
これは私見ですが・・・レイテ湾に突入していたら栗田艦隊は全滅していたものと思われます。」

「何言ってんのよ?元々、全滅覚悟の任務だったんでしょうが。」

「全滅覚悟はもちろんですが、決して犬死しに行くわけではありません。
突入させた場合の勝算が無ければ何の意味もありません。」

「で、勝算とやらはあったのか?」

「・・・これも私見になりますが、アメリカ軍の上陸作戦を大幅に遅らせるほどの戦果は見込めないと思います。
戦力をすり減らされた栗田艦隊では、敵戦艦を数隻道連れに出来れば御の字でしょう。」

「・・・確かに、戦力差から考えれば日本軍は不利だからな。」

「そして、多少の損害を与えたとしても栗田中将に対する非難はあったと思いますよ。
無意味な突入をしなければ、本土防衛に艦船を回せたのに引き際を見誤ったとかなんとかと言った感じで・・・。
第一次ソロモン海戦での三川中将や、後の輸送作戦で臨機応変な対応をした田中少将に対しても非難の声があるくらいですから。」

「確かに、他の話からも鑑みれば十分ありえそうな展開ではあるが・・・」

予測できない展開などありません。

「それキャラ違うって・・・」

「三川なんとかって人って・・・誰だっけ?」

「・・・三川中将は、第一次ソロモン海戦で敵艦隊に打撃を与え迅速に引き上げた司令官。
田中少将は輸送作戦途中で敵に遭遇、敵の撃滅を優先させる代わりに輸送任務を失敗させてしまった司令官だ。」

「ふ〜ん、そうなんだ。」

「今、初めて知りますた。」

「・・・やれやれ。」

「で、何の話だったっけ?」

「アスカさんが今回も立派に玉砕なされたという話でつ。」

「るさい!なんで話がそうなんのよ!」

「だって〜。」

「・・・アスカの意見も分からなくはありませんよ。
大和が敵戦艦を次から次へと薙ぎ倒すなんて燃える話ですから。」

「あんたも何を言いだすのよ?私はそういう意味で言ったんじゃ無いって。」

「違うのですか?」

「あったりまえでしょ!何で私が海軍ヲタの妄想に付き合わなきゃなんないのよ!」

「・・・では、栗田艦隊の反転については文句は無いという事でよろしいですね?
私としても、レイテ湾に突入して艦隊戦を行って欲しかったとは思いますが、それはあくまで個人的な願望です。
栗田艦隊の反転そのものに異を唱えるつもりはありません。」

「・・・で、結局はどういう結論なのだ?」

「だから、誰かさんの玉砕ですって。」

「うるっさいわね〜!まだ終わってないっての!」

「今回は粘るねぇ。」

「いえ・・・、これ以上の議論は意味がありません。
レイテ突入後の栗田艦隊の戦果が、ある程度見込めなければ突入させる意味はありませんから。
栗田艦隊の突入を推進するならそれなりの勝算を挙げて下さい。」

「む・・・、だから敵部隊は砲弾が無くなってたって言うでしょうが。」

「却下です。戦後に分かった話で論ずるなど論外ですよ。」

「む・・・。」

「・・・私は突入に関して否定はしません。
問題なのは栗田艦隊を突入させる価値があったかどうかなのです。その辺りの論拠をお願いします。」

「そんなものがあればですけどねぇ。」

「るさい!」

「さて、反論も無いようなので話を戻します。」

「・・・・・。」

「(・∀・)ニヤニヤ」

「あんたムカつく!」

「日本軍はレイテ島において劣勢に追い込まれていきました。物量から考えてもそれは仕方ありません。
もちろん、日本軍も増援や物資をレイテに送ろうとはしていましたが・・・制空海権を奪われてしまった状況では無理な話です。
多数の輸送船が貴重な人員とともに沈められてしまうというありさまでした。」

「なんかもう・・・本当に駄目っぽいね。」

「そうですなぁ。」

「レイテ島の奪回は事実上不可能となりましたが、それでも日本は戦力をつぎ込みました。
しかし、昭和19年12月15日になると状況がさらに悪化しました。
アメリカ軍が、日本軍が拠点としていたルソン島間近に位置するミンドロ島に上陸を開始したのです。」

「それって・・・何がダメなの?」

「上陸したアメリカ軍はミンドロ島に飛行場を建設し始めたのです。
このミンドロ島を橋頭堡とし、ルソン島への上陸を意図している事は明白です。直ちに日本軍は航空隊を出撃させました。」

「また特攻なの?」

「・・・そうです。15日には輸送船2隻に損傷を与えましたが、それ以後はアメリカ軍の迎撃に遭ってしまったそうです。」

「前の特攻で味を占めちゃったって事よね。んなロクでもない戦術を執って何が楽しいのかしら。」

「楽しい訳ないでしょう。誰が好き好んで特攻なんて下策を・・・。」

「・・・苦肉の策と言ったところだな。」

「・・・陸軍による防戦や航空隊による特攻だけではなく、海上からの支援も検討されていました。
もっとも、連合艦隊主力は内地へと帰還してしまったため、戦力十分とは言えません。」

「栗田さん帰っちゃったもんね。」

「性懲りも無く、まだなんかやる気なの?」

「・・・出来る事なら、実行出来るうちにやっておく必要があります。時間とともに好機は失われていくのですから。
比島沖海戦以降、フィリピン方面に残っていたのは志摩中将の第五艦隊や小沢機動部隊を護衛していた戦艦伊勢・日向。
第二水雷戦隊の駆逐艦等・・・強大なアメリカ軍に比べればごく僅かな戦力でした。
それに加え、レイテ島への輸送任務である多号作戦で戦力はさらに擦り減らされていたのです。」

「何やってんだか・・・」

「昭和19年12月20日、南西方面艦隊から第二遊撃部隊に対しある作戦が命じられました。」

「また突撃か?」

「・・・まぁ、そうですね。
先程話したミンドロ島への上陸を進めているアメリカ軍の上陸部隊を撃滅する事、これが今回の作戦の概要です。」

「随分簡単に言うが・・・勝算はあるのか?」

「・・・さぁ?」

「おいおい・・・」

「さぁ?ってのはどういう事よ。あんたやる気あんの?」

「・・・単純な戦力差から考えれば勝ち目はありません。しかし、神風によりアメリカ軍は大打撃を受けています。
日本軍にとって明るい材料があるとすればそのくらいでしょう。」

「はぁ?神風って言ったって、たかが少数の突撃でしょ?」

「・・・いえ、私が言うのは文字通りの神風。先程話した台風の事です。」

「アメリカ軍がコテンパンにやられちゃってた自然の驚異でつよねw」

「・・・そうです。いくら物量で勝っているアメリカ軍とは言え、決して少ない被害ではありませんでしたからね。
とは言うものの、今回の作戦に投入される日本軍の戦力はこれだけですから・・・やはり不利は否めません。」


第二水雷戦隊
駆逐艦・霞、清霜、朝霜

南西方面艦隊
重巡・足柄
軽巡・大淀
駆逐艦・杉、樫、榧

 

「こんだけなの?」

「残念ながら・・・。一応戦艦二隻もあるにはあるのですが、速力に不安が残るため作戦参加は見送られました。」

「いざという時に使えないんじゃ、何のためにあるんだか分からないわね〜。」

「・・・台風程度で推進軸が曲がってしまうような事はありませんから、さほど問題はありませんよ。」

「それ何の話よ?」

「・・・先程話した台風によるアメリカ軍の損傷艦のうちの一隻。
某ペテン師大統領がテヘランの会談に向かう時に乗艦した新鋭戦艦アイオワの事です。」

「写真は無いの?」

「・・・手間なので省略します。」

「あんた、興味の無い事にはトコトンいい加減なのね。」

「それで、アイオワとやらがどうかしたのか?」

「・・・アイオワが先の台風で損害を受け、翌年1月に真珠湾に戻ったというだけの話です。
駆逐艦が転覆している事も含め・・・どうやら、アメリカ軍の台風に対する対策は万全ではなかった様です。」

「どうしてそんなにその・・・台風に弱かったの?アメリカだってハリケーンとかたくさん来てるでしょ。」

「そういえばそうだよな。」

「だから、台風の時に救助ヘリを要請したら墜落しちゃって、
それが原因で遺伝子操作サメに襲われちゃうDQNさんが居る国だからしょうがないですってw」

「その映画、微妙だったけどな。」

「だから、何の話してんのよ!」

「・・・正直、アメリカ軍の台風に対する認識がどの程度のものだったのかは分かりません。
興味も無いので、この話はここで終わりにしておきます。」

「ちょっと!やる気無いにも程があるでしょ!」

「・・・アメリカ軍の事ですから、これ以降は何かしらの対策を施すでしょうね。
同じ失敗を何度も繰り返すほど、アメリカ軍は馬鹿ではありませんから。」

「・・・ふむ、確かにな。」

「今回行われる作戦は礼号作戦と呼称されました。作戦の指揮を執るのは木村昌福少将です。
彼は以前説明したキスカ島からの撤退作戦を指揮し、作戦を成功に導いた名将でもあります。」

「へぇ〜、スゴイ人なんだね。」

「・・・すごいの?」

「・・・アメリカ軍の目を盗んで撤退を成功させるなど並大抵の人間に出来る事ではありません。
キスカ島からの撤退作戦は神業と言っても良いでしょうね。」

「その割には説明が無かったと思うが・・・」

「どーせ、忘れてたか知らなかったんじゃないの?」

「・・・ミもフタも無ぇなぁ。」

「それと、いい機会なので日本軍の駆逐艦について少し説明しておきます。」

「興味ないんだけど・・・」

「そういえば、松とか樫とか投げやりな名前の船がありましたよね♪」

「艦の命名基準は分かりませんが・・・、帝国海軍の新型なのですから伊達ではありませんよ。」

νガンダムは伊達じゃない!

お母さん発言で株を下げた人の話でつよね。」

「お母さん発言ってをい・・・。」

「だから、マザコンとかロリコンとか言われちまうんだけどな。可愛そうに・・・」

「・・・何の話だ?」

「え?クワトロ大尉の話だよ。」

「シャア大佐が?あの方が・・・そんな馬鹿な。」

「知らないのも無理はありませんでしょうけど・・・事実でつ。」

「ぬぅ・・・信じられん。」

「その点、マシュマー様は良かったよね。」

「?」

「ほら、不名誉なレッテル貼られなくて済んでるじゃねぇか。」

ハマーン様萌えの騎士ヲタでも痛いのに、マザコンロリコンなんかだったら救いよう無いもんね〜♪」

黙れ!人の評価を貶めるな!」

「だって、ホントのことじゃん。」

「ね〜♪」

「ええ〜い、黙れと言っている!」

「・・・松型駆逐艦は、従来の駆逐艦と違い性能よりも生産性が重視されていました。」

「あんたも随分淡々と話を進めるのね・・・。」

「性能より生産性か。帝国海軍は常に質を求めているのかと思ったが・・・」

「あ〜、マシュマー様話逸らそうとしてる〜♪」

「必死でつね(プ」

黙れ!

「・・・それだけ切羽詰っていたとも言えます。
帝国海軍も駆逐艦の存在を重視していましたが、ソロモン海での損耗は当初の予想を上回るほどの損害でした。
もはや、贅沢を言っていられないというのが実情だったのです。」

「形振り構ってられないってヤツだな。」

「・・・以前、説明した秋月型駆逐艦を覚えていますか?」

「何だっけ?」

「・・・防空用に作られた駆逐艦だ。当時の日本としては画期的な逆探を搭載していたという話だったが。」

「防空用って?」

「・・・敵航空機から味方を守る事を任務としている。その為に、高性能の対空砲を装備していたはずだ。」

「秋月型駆逐艦に搭載されていた九八式10cm65口径連装高角砲は、確かに優れた性能でした。
しかし、造りが複雑で量産に不向きだったため秋月型駆逐艦以外に搭載されたのは空母大鳳だけという有り様だったのです。」

「ねぇ、ちょっといい?」

「はい、何でしょう?」

「説明がヲタ臭くてワケ分かんないんだけど。あんたは結局なにが言いたいのよ?」

「・・・私自身、よく分かってませんから気にしていただかなくて結構です。」

「をい!」

「・・・話を戻します。
海軍は高性能の秋月型駆逐艦の増産を目指しましたが、そんな事が出来るほど日本に余裕はありません。
高性能の船の完成を待つ余裕が無いのなら・・・当然、質より量を選ばざるを得なくなってしまいます。」

「つー事は、秋月ってのが作れないから松型が作られたってのか?」

「・・・そういう意味ではありません。秋月型は単なる比較対照の例として持ち出しただけです。
さて、新鋭駆逐艦の松型ですが・・・武装にはこれといった特徴はありませんでした。」

「どーせ、間に合わせなんでしょ。」

「・・・確かに。航続距離は長くありませんし速力も27ノット程度。
魚雷発射管は搭載していますが次弾装填装置が無いので水雷戦に秀でているというわけでもありません。」

「よくわかんないんだけど・・・連邦のジムみたいなモンかな。」

「マザコンの人の赤ズゴックに腹を貫通されるMSでつね。」

「お前達・・・不穏当な発言は止さんか。」

「あんたら、何の話をしてんのよ・・・。」

「まぁ、生産性が優先されましたから多少の簡略化は仕方ありません。
ですが、松型駆逐艦には従来の艦には無い特徴がありました。」


「何これ?」

「松型駆逐艦の動力部を表していると思ってください。赤色が缶室、黄色が機関室です。
細かい説明は省きますが、当時のエンジンは缶室と機関室とで動力を得ていました。」

「ヲタな話は止めなさいって言ってるでしょ。」

「つまり・・・缶室と機関室で一つのエンジンとなる訳か?」

「・・・概ね当たりです。さて、松型駆逐艦では缶室と機関室を交互に配置していました。
これはシフト配置と呼ばれ、生産性が優先された松型において唯一工期の増加を招いた部分だったのです。」

「どう言う事なのか分からないんだけど・・・」

「・・・平たく言うなら、松型のシフト配置は建造する時に余計にめんどくさくなるのだと思ってください。
生産性をさらに追及するのなら、従来の方法の方が優れているわけですから。」

「さっぱり分からないんだが・・・何でわざわざメンドーな事してんだ?」

「・・・生存率を高めるためです。
従来の駆逐艦では魚雷や爆弾1発で航行不能となる事が多々ありました。
缶室と機関室・・・どちらか一方でも損傷してしまえば即致命傷となってしまうからです。

「だから、何話してんだか分からないってば。」

「・・・しかし、缶室と機関室を交互に配置する事で、一撃で航行不能となる危険性を極力抑える事が出来るのです。
機関室と缶室、一つずつ残っていればとりあえず航行不能にはなりませんから。」

「で、結局何が言いたいのよ?」

「・・・帝国海軍も、思考に多少の柔軟性を持っていたことを分かっていただければ問題ありません。」

「どゆこと?」

「・・・新兵器に多くの性能を求める日本軍にしては珍しい話なので紹介しました。
生産性第一で作られ、生存率を高める配慮もなされていました。これは稀有な例かと思いまして・・・」

「あんたが1人で珍しがってるだけでしょうが。」

「・・・さて、戦史に話を戻しましょう。今回出撃する日本軍の目標はこちらです。」

 

「こちらってどこですか?」

「今回の戦いの舞台となるのはアメリカ軍の上陸したミンドロ島。
目標となる上陸部隊の揚陸地点はミンドロ島の南方になります。」

「そこには日本軍はいないの?」

「レイテ島の守りですらままならなかった日本軍です。ミンドロ島には日本軍守備隊はほとんどいませんでした。」

「まぁ・・・仕方あるまい。そこまで手を広げられるのなら始めから苦労は無い。」

「で、その島を占領されるとまずいのは分かったが・・・突っ込ませる船だってそんなに多くは無いのに、大丈夫なのか?」

「・・・12月24日09:00に出撃した木村艦隊は途中、アメリカ軍の潜水艦や偵察機に発見されました。
しかし、潜水艦の追跡は振り切る事が出来ましたし、偵察機は遠くを飛んでいるだけで何もしてきませんでした。
とりあえずは大丈夫だったみたいですね。」

「ふ〜ん。運が良かったんだな。」

「さすがに運だけでも無いと思いますが・・・おそらく15日の台風の影響もあったのだと思います。
とりあえず、木村艦隊は出港から26日までアメリカ軍からの攻撃を受けることなく、順調な航海を続ける事が出来たのです。」

「自然の猛威とは恐ろしいものです、ハイ。」

「コロニーには無い大自然の驚異というやつだな・・・。」

「何言ってんの?コロニーでも大自然の驚異って一杯あるじゃん。」

「いきなり、何を言い出す?人為的に制御されたコロニーに大自然などあるまい。」

「だって、コロニーに穴が空いたらみんなパニックになるじゃん。
マシュマー様だって、コロニーの穴から放り出されちゃってたし・・・あれだって大自然の驚異でしょ?」

「・・・あれは人為的なものだろう。嫌な事を思い出させるな。」

「へへ〜♪」

「笑い事ではない!私は命を落としかけたのだぞ!」

「あんたら、なに脈絡の無い脱線してんのよ。」

「脱線(・A・)イクナイ!!」

「む、すまん・・・。」

「ごめんなさ〜い。」

「まぁ、コロニーに限らず船に穴が空いても大惨事に繋がるわけですが・・・あまりにも脈絡が無いので脱線は止めておきます。」

「あんたも行き当たりばったりで話を進めるんじゃないわよ。」

「さて、ミンドロ島から300km付近の海域に到達した木村艦隊ですが・・・
ここまで接近するとさすがにアメリカ軍も放っておく訳がありません。
ミンドロ島に進出させた陸上機を動員して木村艦隊への攻撃を開始しました。」

「陸上機?」

「陸上での運用を目的とした航空機です。ミンドロ島には、戦闘機だけではなく爆撃機等も進出していました。
当然、アメリカ軍はそれらの航空機を出撃させてきます。」

「出撃させてきますって・・・をい。」

「なにか?」

「なにか?じゃないでしょ。出撃して早々、いきなり大ピンチじゃない。無謀にも程があるっての。」

「大ピンチってヤツですね。」

「だから、大ピンチって言ってんでしょうが!あんたはなに聞いてんのよ!」

「日向さんの真似をしただけなのに・・・ウワーン・゚・(ノД`)・゚・

「そうだったのか?」

「私に聞かれても困ります・・・。」

「いきなり言われたって分かる訳ないでしょ!んなマイナーな台詞知らないわよ!」

アンタ馬鹿ぁ?

「るさいっ!人の真似すんの止めなさいよ!」

「・・・日本軍にとって幸運があったとすれば、ミンドロ島へ上陸したアメリカ軍がまだ準備不十分だった事が挙げられます。」

「何それ?」

「・・・言葉通りです。
アメリカ軍は飛行場の建設等を迅速に進め、離発着は出来る様になっていましたが爆弾の揚陸は十分では無かったのです。
その為、木村艦隊の攻撃に来襲した機のほとんどは爆装していませんでした。」

「爆弾を積んでいない・・・?ならばどうやって攻撃するつもりだ?」

「・・・機銃です。実際、木村艦隊の爆弾による損害はそれほどではありませんでしたが、
銃撃を受けた事による損傷は無視できるものではありませんでした。」

「無傷ってわけにはいかないのね。」

「・・・爆撃を受けるよりは良いかと思います。
また、木村艦隊を待ち伏せようとしていたアメリカ軍の魚雷艇群は、
日本軍の水上機による攻撃と同士討ちにより木村艦隊に損傷を与える事無く壊滅してます。」

「なにやってんだか・・・」

「うるっさいわね〜!」

「・・・夕暮れ時の話ですから仕方ありません。当時は、敵味方識別の方法は目視しかありませんから。」

「へ?あんた、アメリカ軍の擁護すんの?」

「・・・別にそのつもりはありません。当時は誤認も珍しい時代では無かった・・・ただ、それだけの話です。」

「日本もアメリカも大して変わらんか・・・。」

「・・・アメリカ軍の一連の攻撃により駆逐艦清霜が脱落。
木村少将は後で必ず救助に来ることを約束し、アメリカ軍の揚陸地点であるマンガリン湾に突入していきました。」

「パンに塗ると美味しい。」

「それはマーガリン。」

「楽器の一つ。」

「それはタンバリン!」

「かめ○め波で粉々になった人。」

「それもタンバリンよ!あんた、いい加減にしなさいよ!」

「つまんな〜い!」

「あんたのボケの方がよっぽどつまらないわよ!少し黙ってなさい!」

「・・・良いですか?説明を続けますよ。
22:45、木村艦隊は陸岸に接近し攻撃を開始しました。
重巡足柄の偵察機から投下された照明弾を頼りに、照らし出された物資集積所や飛行場へ攻撃を開始したのです。」

「攻撃開始って・・・突入出来たの?」

「・・・そうです。木村艦隊は陸上の目標だけでなく、輸送船に対しても攻撃を行いました。
確認されているだけで輸送船1隻を大破、3隻に損害を与えています。」

「へ〜、やるじゃん♪」

「ちょっとちょっと、アメリカ軍は何やってんのよ?指をくわえて見てるだけって事も無いでしょ?」

「・・・さぁ?」

「をい。さぁ?・・・ってのはどういう事よ?」

「・・・言葉の通りです。
約20分に及んだ木村艦隊の攻撃は一方的なものでした。アメリカ軍による反撃らしい反撃は無かったようですね。」

「ほんと珍しいね。いつもだったら・・・」

「行く途中で撃退されるか、着いても待ち伏せ食らって退却か・・・だもんな。」

「・・・攻撃を終えると木村少将は素早く引き上げを命じました。
もちろん、途中で脱落した清霜の救助も忘れません。
木村少将は艦隊の指揮を重巡足柄の艦長に任せ、自ら乗艦する霞と朝霜とで救助作業を行ったのです。
清霜は沈んでしまった様ですが、生存者258名の救助に成功しました。」

「ふ〜ん、どっかの誰かさんと大違いね。」

「・・・誰の話だ?」

「栗田って人に決まってるでしょうが。さっさと逃げちゃった人とはエライ違いよね〜。」

「まぁ、どこぞの料理にこだわりを持つ父親と疎遠になってる偏った新聞社社員と結婚しちゃったみたいですけどね。」

「その栗田じゃないわよ!話に脈絡が無いでしょうが!」

「・・・その辺りは個人の性格によるものかと考えられます。どちらが正しいと言う事はありません。」

「あんた、そればっかね。」

「・・・だが、指揮官とはそういうものだ。
部隊指揮を優先するか、遭難者の救助を優先するか・・・どちらも人の命が懸かっていることに変わりは無いのだからな。」

「マシュマー様、そーいう台詞は似合って無いよ。」

「ええ〜い、黙れ!」

「帰路に付いた木村艦隊ですが、
その旅路は決して楽なものではなくアメリカ軍の潜水艦や航空機の攻撃を幾度と無く受けました。
途中、航行速度や燃料の関係などで艦隊を分離するような事があったようですが、
最終的には沈没した清霜以外の全ての艦艇がカムラン湾に到着出来たのです。

損害ゼロと言う訳にはいきませんでしたが・・・今回のミンドロ島沖海戦については日本軍の勝ち戦と見て問題無いと思います。
劣勢に追い込まれていた日本軍の・・・数少ない勝利となりました。」

「勝利したとか言って・・・この攻撃でアメリカ軍が退却したって訳でもないんでしょ?」

「それが何か?」

「フフン、そんな程度の戦果で喜んでちゃどうしようも無いわね〜。結局、何の意味も無かったじゃない。」

「・・・戦略的にはそうかもしれませんが、戦術的に見れば大勝利と言っても過言ではありません。
制空権は言うに及ばず、制海権もアメリカ軍の手に渡りつつある状況で損失を駆逐艦一隻に止められたのです。」

「それに、なんだかんだ言っても取り逃がしている訳ですから人の事は言えませんよね(プw」

「うるさい!」

「あのさぁ、ちょっと聞きたいんだけど・・・」

「・・・なんでしょうか?」

「カムラン湾ってなに?」

「ブライトさんの恋敵だった人でしょ?」

「・・・カムラン違いよ、それ。」

「・・・かつてのフランス領インドシナにある日本軍根拠地の一つです。
方角的にシンガポールの方向だと思っていただければ問題ありません。
南方方面には、まだそれほどアメリカ軍の手が及んでいなかったのです。」

「ふ〜ん・・・。」

「そういえば・・・イギリス軍は何をしているのだ?緒戦に戦って以来、ずっと話に出てきていないようだが・・・」

「さぁ・・・?」

「あんた、知らなすぎよ。ちょっとくらい調べなさいよ。」

「主だった海戦に出てくるのはほとんどアメリカ軍です。
連合国相手と言っても・・・アメリカ以外はおまけの様なものですから。」

「何を言うんですか!大英帝国ですよ大・英・帝・国!
きっとどこかで日本軍への反撃を狙っているに違いありません!」

「複葉機の国だもんね〜♪」

「・・・まぁ、それだけでも無いんですけどね。イギリスはイギリスでドイツのUボート相手で大変なんでしょう。
もう少し後になれば日本との戦いにも出てくると思いますが・・・興味も無いので深く掘り下げるつもりはありません。」

「おいおい・・・」

「・・・とりあえず、ミンドロ島沖海戦については以上です。少々短かったかもしれませんが、次に進みたいと思います。」

 

 

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