マレー沖海戦
「次は真珠湾攻撃とほぼ同時・・・正確に言えば真珠湾攻撃より少し前になりますが、
東南アジアでの戦争の火蓋を切ったマレー沖海戦について説明を始めたいと思います。」
「は〜い、しつも〜ん!東南アジアってドコ?」
「おい、さっきから何度も言っているが少しは自分で調べろ。」
「そんな事言ったって・・・地球圏の事なんて解んないよ〜。」
「大丈夫です。そんな時の為の地図ですよ。ほら。」
「こんなんで解るかーっ!」
「贅沢ですねぇ。この地図なら太平洋での戦争はおろか
東部戦線や西部戦線、果てはアフリカ戦線まで説明できてしまうじゃないですか。」
「大雑把にも程があるわよ!こんな大まかな地図見て解る訳無いでしょうが!」
「・・・無いよりは良いかと思われます。
東南アジアは地図の中央からやや右よりの地域・・・オーストラリアの下だと思ってもらえれば結構です。」
「ムリヤリ使おうとするんじゃないわよ・・・。」
「・・・今気付いたが、
この地図のオーストラリアはコロニー落としの影響を受けていないのだな。
そうか・・・古の地球はこんな姿をしていたのか。」
「何、言ってんのよ。ジオンがコロニー落とさなきゃ始めから何事も無かったの。あんた達が悪いんじゃない。」
「何を言うか!連邦の無思慮な抵抗でコロニーの進路が逸れてしまったのだぞ?
後先考えずコロニーを迎撃した連邦軍こそ責任重大ではないか!」
「今度はギレン閣下のパクリ・・・」
「うるさい!」
「このままだと水掛け論にならないか?」
「う〜ん・・・」
「多分、朝まで生テ○ビの様に不毛な議論になると思いますよ。」
「・・・・・。」
「あんたねぇ、いきなり戦争しかけた方が悪いに決まってんでしょ!大体、何でコロニー落としなんて思いついたのよ!」
「戦力に差がある以上、正攻法では勝てん。騎士道精神には反するが・・・ギレン閣下も深慮の末に決断したのだろう。」
「でも、あれですねぇ。2人の会話は日本とアメリカの言い分そのままに聞こえませんか?」
「どういう事?」
「マシュマーさんが日本、アスカさんがアメリカという構図ですよ。」
日本の主張
アメリカが日本を開戦せざるを得ない状況に追い込んだ。アメリカが悪い!
「ホントだな。」
「どっちが正しいのかしら?」
「・・・どちらが正しくという話ではありません。
どちらの主張も間違っている訳ではないのですから。強いて言うなら立場の違いと言ったところでしょうか。」
「ふ〜ん・・・。」
「・・・そろそろ具体的な説明に入ります。
真珠湾攻撃の説明の時にも少し話しましたが、日本には資源が欠乏していました。
生きていく為に必要な資源を得るべく日本は南進したのです。」
「資源を求めて・・・か。やはり一年戦争初期のジオンによく似ているな。計画はやはり順調だったのか?」
「はい。真珠湾攻撃から遡る事約半年、日本軍はフランスの植民地だったベトナムに兵を動かしています。
結果的に西欧諸国とも事を構える事になってしまいましたが・・・
南方に進出した日本軍の目的は、当時イギリスの植民地だったマレー半島の攻略です。」
「資源の為に進軍?21世紀の中国と似た様なモンね。日本だって人の事言えないじゃない。」
「・・・資源さえ売ってもらう事が出来れば、日本もわざわざ進駐する必要はありませんでした。
文句があるならペテン師の某大統領に言って下さい。」
「何気に、お2人ともきちんと会話に参加してるんですね。」
「フッ。エアロゲイターという共通の敵が存在するこの状況で、仲たがいなどしている場合ではあるまい。
高貴な騎士は些細な事など気にしないのだ。」
「それって、いい加減ってこと?」
「違う!大らかという意味だ!」
「・・・ま、過ぎた事を延々と言い争ってもしょうがないもの。あの芸人に文句言ったって何かが変わるわけじゃないしね。」
「そりゃそうだな。過去に囚われて前進出来ない某国みたいにはなりたくないからねぇ。」
「某国って?」
「・・・知れば知るほど腹立だしくなるので、知らない方が良いと思います。
大東亜戦争開戦時、ベトナムには日本軍の陸海それぞれの航空部隊が配備されていました。
マレー沖海戦に投入された部隊の編成は次の通りです。」
第一航空部隊
第22航空戦隊
元山航空隊・96式陸上攻撃機×36
美幌航空隊・96式陸上攻撃機×36
第23航空戦隊(一部)
零式艦上戦闘機×27
96式艦上戦闘機×12
98式陸上偵察機×6
第21航空戦隊(一部)
一式陸上攻撃機×27
「・・・ここまでで何か質問はありますか?」
「毎度の事なんだけどさ・・・」
「また飛行機の区別がつかないんですか?」
「そう。いつまでこんな会話が続くのかと思うと・・・本当に頭が痛くなってくるわよ。」
「解りました。では今回も写真付きで説明しましょう。」
「だーっ!なんでそっち方向に話が進むのよ!
私が遠まわしにヲタな会話を止めろって言ってんのにどうして気がつかないわけ?」
「説明を省くと誤解が生まれる恐れがあるので・・・情報は正しく正確に伝えた方が良いと思います。」
「利いた風な事を言うんじゃ無いわよ!どーせ趣味でやってるくせに。」
「・・・さっきから、何がそんなに気に入らないのだ?」
「気に入る訳無いでしょ!説明とか何とか言って
さっきから一般の人お断りな内容を羅列してばっかじゃない。ねぇ、ヒカリ?」
「え?あ・・・うん。」
「事ある事に文句言うって事は・・・ある意味一番熱心とも言えるよな。」
「そだね。あたしなんか、完全に聞き役になっちゃってるし・・・」
「嫌よ嫌よも好きのうちって言いますからねぇ。
全く、素直じゃないんだから・・・本当に手間のかかる人です。」
「うるさいっ!」
「・・・解りました。では、今後は誰にでも解りやすい方法で説明していく・・・という方針で話を進めていきたいと思います。」
「そうそう、分かればいいのよ、分かれば。」
「では、こちらの地図をご覧下さい。」
「なに?この地図。」
「先程の地図では少し見づらいと思われたので・・・
マレー沖海戦は地図に赤く記した海域で行われました。
この時期はまだ、シンガポールは陥落していないので、ギリギリですがイギリス軍の勢力圏内であると言えます。」
「な〜んだ。こんな地図があるんならさっさと見せてくれればいいのに。どこぞの世界地図とは大違いね。」
「非道いです!私がせっかく見つけてきた地図を、そんなふうに・・・人の善意を踏みにじるなんて最低です!」
「いや、気持ちはありがたかったんだけど・・・正直、あの地図あんまり役に立って無かったし。」
「そういう時には嘘でも気を使うものです。それが古き日本の良き文化ですよ!」
「ほう、それが日本とやらの文化なのか?」
「間違ってはいない気もするけど、なんか違うような・・・」
「ああ・・・、アスカさん、貴方は私のガラスの様な繊細な心に傷をつけましたね。敵意に値するよ・・・嫌いって事さ。」
「どこぞのホモ男の真似は止しなさいよ!」
「そういや、そんな奴も居たなぁ。惜しい戦力を無くしたもんだ。南無阿弥陀仏・・・」
「・・・いきなり何を言うのよ。」
「まぁまぁ、これも日本の文化ってやつさ。」
「デカルチャ・・・」
「・・・・・。」
「・・・続いて、こちらの写真をご覧下さい。」
一式陸上攻撃機
長距離侵攻用に開発された攻撃機。量産性も求められた。
長所・軽量を生かした航続距離の長さ
短所・軽量を追及したが故の機体の脆さ
武装・7.7mm機銃×4 20mm機関砲×1
航空魚雷×1 800kg爆弾×1 250kg爆弾×4のいずれか。
「何だ、これ?」
「この機体が、マレー沖海戦における主役の一つ・・・一式陸上攻撃機です。」
「あんた、速攻で趣味に走るんじゃないわよ・・・。さっき、誰にでも分かりやすく説明するって言ったばかりじゃない。」
「・・・マレー沖海戦を語る上で、どうしても必要だから紹介しました。
決して趣味などではなく・・・因果律によって定められし事なのです。」
「・・・で?」
「先程も話しましたが、日本軍は資源を求めて南進しました。計画は順調に進み、当面の敵はイギリス軍となったのです。」
「それ、さっき話してたわよね?」
「・・・簡単におさらいをしてみました。
さて、イギリス軍も日本軍の動きを黙って見ている訳ではありません。
日本軍の動きを牽制する為に最終兵器とも言える、切り札を持ち出してきたのです。」
「さ、最終兵器だと?」
「彼女ですか?」
「違うでしょ・・・。」
「どんなのなんだろ・・・。ジオングとかかな?」
「切り札か・・・、我らにとってのハマーン様のキュベレイに相当するものか?」
「確かに、あのキュベレイは強いよね。あたしのキュベレイと同じ機体とは思えないんだけど・・・」
「何を言う?機体そのものは同じという事になっている。
もし、差を感じるのであれば、それは乗り手の違いと言うだけの話だ。機体の不満を言う前に精進しろ。」
「ぶー、マシュマー様だってさっきザクVがどーとか言ってたくせに〜」
「それにしても、あのキュベレイはある意味最終兵器だよな。
異常に避けて当てる・・・スーパーロボットじゃ精神コマンド使わなきゃ当てられんだろ。」
「そうですねぇ。さすがはハマーン様と言ったところでしょう。最強と謳われるのもあながち間違いでは無いですねぇ。」
「ひっど〜い!あたしが弱いって言ってるみたいじゃない!」
「いや、そうは言ってないぜ。彼女は単に別格ってだけで、あれと比べるのがそもそもの間違いなのさ。」
「ほんと?」
「プルさん、強くなりたいのであればまず、形から入ってみてはいかがですか?
とりあえず・・・ハマーン様の髪型を真似てみるとか。」
「どゆこと?」
「言葉の通りですよ。ハマーン様の様に、相手を威嚇するデカイおかっぱ頭にしてみるんですよ。
そうすれば、敵パイロットも恐れをなして逃げ去ることうけあいです。まさに戦わずして勝つ!」
「待てっ!黙って聞いていればなんだ!ハマーン様を愚弄するとは言語道断!修正してくれるわ!」
「いえいえ、別に馬鹿にしてませんよ。
ただ、あのエリマキトカゲの様に相手に脅威を与える方法をプルさんも持てば、少しでも彼女に近づけるのではないかと思いまして・・・」
「エリマキトカゲ?何だそれは?」
「大昔のオーストラリアにいたという美しいトカゲの事ですよ。
宇宙世紀の現在ではどうなってしまったかは分かりませんけど。」
「美しいトカゲ・・・か。ふむ、それならば別にいいだろう。」
「・・・あんた、騙されてるって。」
「・・・皆さんの予想通りかどうかは分かりませんが、これがイギリス軍の切り札です。」
「何これ?ただの戦艦じゃん。」
「そうです。これが当時のイギリス海軍における切り札なのです。
イギリス軍は兵士達の士気と結束を磐石のものとするため、
植民地に対する抑圧も兼ねてプリンス・オブ・ウェールズという新鋭戦艦を派遣したのです。
これは当時のイギリス首相チャーチルの意向でした。」
「ふ〜ん、そういえばそんな人が教科書に載ってたかも・・・」
「チャーチルねぇ・・・そいつの名言って結構あるよな。・・・何だっけ?」
「成人までにアカに染まらない人間は情熱が足りなくて
成人後にまでアカに染まっている人間は知能が足りない・・・でしたっけ?
うろ覚えなので保障は出来ませんけど。」
「それって・・・どういう意味なの?」
「さぁ・・・ただの自己弁護じゃねぇの?
又聞きの話だが、チャーチルってオッサンは若い頃アカの思想に染まってたらしくてな。
その後、自分の過ちに気付いて慌てて取り繕ってそんな事を言ってみた・・・と、そんなトコじゃねぇのかな。
若気の至りってのと同じ意味だろうぜ。」
「でも、最近聞いた話だと、それ言ったのチャーチルさんじゃないって話ですよ。
ググってないから詳しい事は知りませんけど。」
「ふ〜ん。」
「余計に分からなくなっちゃったんだけど・・・アカって何でそんなに駄目なの?」
「駄目なモノは駄目だ。強制収容所や粛清などに関わりたくはあるまい?」
「う〜ん・・・」
「・・・ファースト。誰も気付いて無いみたいだからツッこむけど・・・その写真、プリンス・オブ・ウェールズじゃないでしょ?」
「え?」
「それ、同型のキングジョージX世って戦艦の写真なの。あんた何、しょーもない嘘ついてんのよ。」
キングジョージX世
「・・・嘘はついてませんが何か?」
「何か?じゃないわよ!あんた、何食わぬ顔して堂々と間違った情報流さないでよ。不真面目もいいトコじゃない!」
「・・・全然、気付かなかったんだが。」
「もしかして、アスカさんは戦艦ヲタでつか?」
「誰がよ!」
「・・・私は写真の戦艦がプリンス・オブ・ウェールズだとは言って無いもの。
粗探しする前に、ちゃんと人の話を聞いてください。」
「どれどれ・・・ん〜、確かに綾波さんの言う通りみたいですねぇ。」
「るさいっ!あんな言い方したら誰だって間違うわよ!
私が言わなかったら十人中八人くらいは間違えてたに決まってんだから!」
「別にそこまで目くじら立てる事は無かろう。
例えて言うなら普通のスイカと思って割ってみたら実は黄色のスイカだった程度の違いだ。
戦艦に特別なこだわりが無ければ指摘する程の違いでは無い。」
「ワケ分かんないわよ!大体、何でまた例え話がスイカなのよ!」
「誰にでも分かりやすい例え話が良いのだろう?
プル用キュベレイとプルツー用キュベレイの違いといった例え話をすれば、また否定するのだろうからな。」
「む・・・」
「・・・説明を続けます。当時は戦艦が最強兵器と信じられていた時代でした。
重装甲に高火力を備えた戦艦に勝つには、やはり戦艦で挑まなければなりません。
ある兵器に対抗するには同種の兵器を用意する・・・これが古来から常識とされる戦術の基本です。・・・もちろん、例外はいくつもありますが。
事実、マレー半島海域に派遣された日本軍の艦艇の中にプリンス・オブ・ウェールズに対抗出来る艦艇は用意されていませんでした。
正面から艦隊戦を挑めば日本軍の不利は明白だったのです。」
「エヘへ・・・」
「どうしました?」
「おおかた、話についていけないってんだろ?」
「うん。」
「本筋から外れるのは不本意ですが、解り易く例えてみましょう。
イギリス戦艦二隻に対して、マレー半島周辺に派遣された日本軍艦艇は巡洋艦がメインでした。つまり・・・
日本軍・マジンガー
VS
イギリス軍・宇宙怪獣(混合型)
「こう考えれば分かりやすいかと思います。」
「ねぇ、マジンガーはともかくとして・・・なんで宇宙怪獣が出てくんの?」
「不満ならブリタイ艦でもオレアナでも構いません。固い敵なら何でも良いのです。
両方の機体の特性を考えて貰えれば解ると思います。まず、マジンガーの特徴ですが・・・」
「長所は装甲の高さとブレストファイヤーの火力ってとこかな。欠点は威力の高い攻撃の射程の短さだろ。」
「性能的には私には到底及びませんけどねぇ。クスクス・・・」
「まぁ、いいけど・・・でも、マジンガーの性能じゃ宇宙怪獣はキツくない?」
「そうなの?マジンガーって強いイメージあるけど・・・」
「前半戦での活躍を前提とした機体だからな。
後半、万が一にもマジンカイザーへの変更や根本的な改造が出来ない設定だとすれば、お蔵入りになる可能性の高い機体と言える。」
「ま、元々そういう仕様だからなぁ・・・。」
「どうして最初から強くしておかないのかしら?」
「洞木さん、それは言わないお約束ですよん♪」
「一方の宇宙怪獣やブリタイ艦、オレアナ等は長射程の・・・それなりに威力の高い武装をしています。
マジンガーで闘いを挑むと仮定すると、マジンガーは敵を自らの射程に収める前に敵の射程内に入ってしまうのです。」
「ふ〜ん、でも避けちゃえばいいんじゃないの?」
「・・・マジンガーに回避を求めるのは酷と言うものです。
精神コマンドを使わなければ、何発かは攻撃を受ける事になると思われます。」
「で、さっきのイギリスの話とどんな関係があるわけ?」
「巡洋艦と戦艦が戦う場合、単純に考えて射程の長い戦艦の方が圧倒的に有利という事です。
巡洋艦にしてみれば、戦艦の攻撃をかいくぐり接近しなければならないわけですから。
マジンガーで、宇宙怪獣やゼントラーディ戦艦等に勝てるかと言えば難しいとしか言いようがありません。
もっとも、戦艦が有利とは言っても多少の例外はありますが・・・」
「どうでも良いけど、そんな事言ってると甲児に殺されるわよ。」
「・・・そうでしょうか?彼なら気合と根性で勝てるでしょうから問題はありません。私の意見はあくまで個人的見解です。」
「気合は気力+10、根性はHP回復30%・・・さすがに無理では?」
「・・・意味が違うと思うぞ。」
「しかし、兵器の性能の差が決定的な戦力の差にならないと言われるように、格上の戦力を相手に勝つ方法は一応あります。」
「え、あるの?」
「真珠湾で日本が行った奇襲攻撃・・・平たく言うなら不意打ちですが、それを実行すればいいのです。
さて、実際の戦闘の説明に入る前に、イギリス軍の動きを手短に説明しておきます。」
「ホント、短めにお願いするわ。あんたが説明すると、いっつも長くなるものね。」
「・・・日本陸軍はイギリス空軍の反撃を受けながら、マレー半島東岸沖からの上陸に成功しました。
報告を受けたイギリス軍は12月8日午後6時、フィリップス長官が指揮する東洋艦隊をシンガポールから出港させました。
編成は次の通りです。」
イギリス東洋艦隊
戦艦・プリンス・オブ・ウェールズ
巡洋戦艦・レパルス
駆逐艦・エレクトラ
駆逐艦・エクスプレス
駆逐艦・テネドス
駆逐艦・ヴァンパイア
「どうでもいい事ですけど・・・船の名前にはお国柄が表れますねぇ〜。」
「そういえばそうね。アメリカは地名だっけ?」
「そうです。もちろん、命名基準は地名だけではありませんが。」
「本当に数が少ないのね。何考えてんのかしら?」
「・・・悲しい事ですが、日本は舐められていたのだと思います。
この東洋艦隊司令フィリップス長官ですが、日本船団攻撃の際、空軍に航空支援を要請しましたが断られてしまいました。」
「そうなの?イギリスって・・・結構薄情なんだね。」
「いえ・・・薄情云々ではなく
イギリス軍の戦闘機は航続距離が短いので、支援したくても支援出来ないというのが実情だったのです。
結局、東洋艦隊は航空支援無しでの出撃となりました。」
「大丈夫なのか?航空機からの攻撃は艦船にとって脅威になるのだろう?」
「その点は、イギリス軍の日本軍に対する見方が関係しています。」
「だいたいの見当はつくけどね。」
「解るんですか?」
「当時の欧米人は異人種への偏見が強かったもの。大方、日本軍の事を過小評価してたとか・・・そんなトコでしょ?」
「その通りです。
イギリス軍の日本の航空隊に対する見方ですが・・・日本にはドイツほどの実力は無く
精々イタリア程度のモノだろうと、思われていたらしいです。
日本とイギリスも以前は同盟関係にあったというのに・・・時の流れは寂しいものです。」
「え?イタリアって駄目なの?スパゲティとかが有名なんじゃなかったっけ?」
「ま、イタリアは悪くないさ。イタリア軍の評判が悪いってだけだからな。とりあえず、ここではその話は止めとこうぜ。」
「出撃したイギリス艦隊は、付近を哨戒していた日本軍の潜水艦によって発見されました。
報告を受けた南遣艦隊司令官の小沢治三郎中将閣下は巡洋艦をかき集め、夜襲をかけるべく出撃しました。
この夜襲というのが、先程話した戦艦に勝てる可能性のある戦術の一つの事です。
後で説明しますが、日本軍水雷戦隊には戦艦に対抗する為に開発された秘密兵器がありますからね。」
「夜襲ねぇ・・・。んで、うまくいったのか?」
「航空隊も動員して索敵に努めましたが、悪天候も災いして日本・イギリス両艦隊は接敵する事無くその日を終えました。」
「夜襲も結局駄目だったんだ。」
「奇襲というのも成功率が高い訳ではありませんからね。
真珠湾の様にあそこまでうまくいくのが珍しいのです。」
「どうでもいいけど、なんで小沢って人を閣下って呼んでんの?山本大将にはつけてなかったじゃない。」
「・・・何か不思議ですか?」
「そりゃそうでしょ。何で同じ軍人なのに扱いが違うのよ。」
「・・・何となくです。中将の下に閣下がつくのは自然でしょう。ドズル中将閣下が良い例かと思います。」
「うむ、お前には人を見る目がある様だ。あの御方はジオンの誇る偉大な英雄の1人だからな。」
「をい・・・、マシュマーはともかくファーストはジオンと関係無いじゃない。仮にも敵なんだから・・・」
「細かい事を気にしてはいけません。格好よければ良いのです。敵味方はこの際不問にします。
さて、12月10日、日本軍は引き続き航空隊や潜水艦を動員してイギリス艦隊の捕捉に全力をかけました。
雲は多かったものの、前日とは異なり視界も良好・・・
31機の偵察機を動員した日本軍は、ついにイギリス東洋艦隊を発見したのです。」
「ほう・・・、となると小沢中将とやらの出番か?」
「いいえ。マレー沖海戦の主役は前述の通り日本軍の航空隊です。
イギリス東洋艦隊を発見した偵察機は信号を発信しながら上空で旋回を続けました。
やがて、その信号を頼りに日本軍の航空隊が続々と集結し始めたのです。」
「ようやく戦闘開始か。随分前フリが長かったな。」
「誰かさんの活躍のおかげですねぇ〜。」
「・・・挑発には乗らないわよ。」
「アスカ、それ・・・」
「十分、挑発に乗ってるな。」
「うるさいっ!」
「マレー沖海戦に投入された日本軍の機体は、主に96式陸上攻撃機と一式陸上攻撃機でした。」
「あれ?・・・そういえば、なんで真珠湾で使ってた飛行機と違うの?」
「九九式艦爆や九七式艦攻はあくまで空母で運用される事を前提に開発された機体です。
艦上機は一式陸攻の様な機体と違い空母への収容を考えなければならないので、どうしても制約が出来てしまうのです。」
「MSと大型MAの違いの様なものか?」
「・・・そんなところです。
最初に到着し、攻撃を仕掛けたのは美幌航空隊の96式陸上攻撃機8機です。
12時45分、彼らは高度3000mからの水平爆撃で攻撃を開始。
投下された250kg爆弾の内の1発が巡洋戦艦レパルスの第4砲塔に命中、火災が発生しました。」
「イギリス戦艦への命中弾は8機中1発だけしか無かったのか?」
「おそらく。真珠湾と違い相手は航行中の・・・しかも戦闘中の艦船相手ですから。」
「何が違うのかちょっと分からないんだけど・・・」
「航行中という事は、当然目標の戦艦は動いている事になります。
そして、戦闘中という言葉が意味する事は対空砲火が飛んでくるという事です。
魚雷が命中した後に「これは演習ではない!」などと慌てているどこかの太平洋艦隊とは違うのです。」
「それは映画の話でしょ!どさくさに紛れて、何言ってんのよ!」
「この時の対空砲火はおよそ1分間に6万発
これはプリンス・オブ・ウェールズ単艦の話ですから・・・イギリス東洋艦隊の攻撃の激しさが分かるかと思います。」
「そんなに攻撃受けて大丈夫なの?」
「大丈夫な訳はありません。日本軍機8機中5機が被弾し1機は不時着したとの事です。」
「どうやら、相当な攻撃だった様だな。」
「これでもまだ、日本にとっては良い方だと思いますが・・・その事については後で話します。
次いで、元山航空隊の雷撃隊第一中隊8機、第二中隊8機が攻撃に加わりました。
これらの攻撃でプリンス・オブ・ウェールズに魚雷2本、レパルスに魚雷3本が命中。
しかし、2隻は依然健在。対空砲火を撃ちつつ回避行動を続けます。
美幌隊の水平爆撃隊も爆撃を繰り返しますが・・・残念ながら命中弾はありませんでした。」
「どんどん集まってきますねぇ。」
「13時30分、美幌航空隊第八中隊の雷撃機8機が到着。レパルスへの攻撃を開始しました。
13時50分、鹿屋航空隊の一式陸攻25機も到着、レパルスとプリンス・オブ・ウェールズへの攻撃に加わります。」
「・・・戦艦側から見ればうんざりする話だろうな。ワラワラと敵機が群がってくるなど・・・」
「13時54分、レパルス中央部に魚雷2本が命中。
操舵機を粉砕されたところにあらたな魚雷が3本命中し艦の命運は決まりました。」
「どうなっちゃったの?」
「レパルスは沈没しました。位置は北緯3度50分、東経104度11分、14時03分の出来事です。」
「随分、あっさり沈んじゃったのね。」
「航空支援の無い戦艦は脆いものです。ガンダムの無いホワイトベース並みに脆いです。
いくら硬くても、攻撃を受け続ければいずれ沈んでしまいますから。」
「ガンダムの居ないって・・・カイとかハヤトが居るでしょ?」
「彼らでは荷が重過ぎます。ア・バオア・クーでの出来事をお忘れですか?」
「あんた、さらりと酷い事言うわね・・・。あの2人が何もやってないみたいな言い方じゃない。」
「・・・私は現実を述べているだけです。
さて、レパルスを失った事で日本軍の攻撃はもう一隻の戦艦、プリンス・オブ・ウェールズに集中する事になりました。
美幌第七中隊の8機が襲い掛かり、第六中隊の8機も爆弾を投下。
500kg爆弾の1発が後部甲板に命中、プリンス・オブ・ウェールズは左舷に大きく傾きながら沈み始め・・・
最終的には大爆発を起こし沈没しました。14時50分の事です。」
「・・・終わった様だな。主力の戦艦を2隻とも失えば、いくら駆逐艦が残っているとは言え敗北は必定だ。」
「イギリス軍の損害は次の通りです。」
プリンス・オブ・ウェールズ(沈没)
魚雷7本・500kg爆弾2発命中
レパルス(沈没)
魚雷14本・250kg爆弾1発命中
「・・・ここで注目するべき点は魚雷の命中率です。
日本軍が放った49本のうち21発が命中しています。確率は40%ほど・・・
通常の雷撃の命中率が15%と言われているので、この数字がいかに高いかが分かるかと思います。」
「あんた・・・日本軍の事ベタ褒めじゃない。もうちょっと、バランス取った方が良いと思うけど・・・」
「バランス?何の事ですか?私は調べた内容を述べているだけ・・・贔屓をしているつもりもありませんが?」
「そうじゃないわよ。あんまり褒めすぎても何も生まないでしょって言ってんの。何かしら問題点があったんじゃないの?」
「ありません。私が知らないだけかもしれませんが・・・マレー沖海戦に関して、日本軍に失敗は無かったものと思います。」
「でも、褒めてばかりじゃ教訓になんないでしょ。」
「日本軍の戦果を褒めてはいけませんか?
彼らは決して悪ではないのですから、正しい評価も必要なのです。
彼らを嬉々として貶めるのは某新聞社だけで十分です。・・・さて、話を戻します。
今回の航空機による作戦ですが、攻撃が成功した裏には敵護衛機がいなかったという点が挙げられます。
もし、イギリス東洋艦隊が護衛戦闘機を従えていたら結果は違ったものとなっていたでしょう・・・。」
「そういえば、イギリスのヤシ等は航空支援を断られてたんだっけな。可愛そうに・・・」
「・・・仕方ありません。
日本軍の航空基地から750浬も離れた地点に航空機で攻撃を仕掛けてくるなど夢にも思わなかったのです。」
「イギリス海軍の中の人も大変ですねぇ。例えて言うなら・・・聞いてないぞ・・・!と、
地球に落とすコロニーを護衛していたシーマ・ガラハウ中佐と同じ様に予想外の出来事だったのでしょう。」
「星の屑での出来事だな?」
「台詞がマイナー過ぎるし・・・いつも通り、例えになってないんだけど。」
「そうですか?シーマ様萌えな人なら基本ですよ?」
「どこの基本なのよ・・・。」
「イギリス軍の予想を裏切ったのは日本軍攻撃機の航続距離の長さです。
イギリス軍も、日本軍航空機がアメリカ軍の4発爆撃機に匹敵する航続距離を持っているとは思っていなかったのでしょう。」
「なんだかよく分からないんだけど凄いんだね〜。」
「しかし、この後一線を担う事になる一式陸上攻撃機ですが、
航続距離を延ばす為に防弾設備を省いてしまっているのです。
その為に、後の闘いで損害が増える事になるのですが・・・それは後の話なのでここでは止めておきます。」
「脆いって・・・そんなに酷いの?」
「一式陸攻に付けられたあだ名、ワンショットライターが全てを物語っています。
一式陸攻は、ほんの少しの攻撃を受けただけで火を吹いたと言われています。
一度撃てば燃え上がる・・・だからワンショットライターと名づけられたのでしょう。」
「何で、もっと頑丈にしなかったのよ。旧日本軍は人命軽視って言われてるけどホントね。」
「・・・頑丈にすれば航続距離が短くなります。
そうなると当然、イギリス戦艦を沈めるどころか戦闘海域に到達する事も出来なかったでしょう。
航続距離の長さも戦略的には重要なのです。」
「戦略的に有利にするために人の命を軽く見た事に代わりはないじゃない。」
「食いつきますねぇ。綾波さんがそんなに嫌いなんですか?」
「違うわよ!私が気に入らないのはファーストの、目的の為なら人命軽視も止む無しって考え方の事よ!
さっきから聞いてれば、そんな話ばっかじゃない!」
「・・・・・。」
「反論は無いのか?」
「・・・酷な言い方ですが、使えない兵器に意味はありません。
それに、旧日本軍も人命軽視したくてしたのでは無く他に方法が無かっただけなのですから。
仮に、一式陸攻において人命を尊重するために防弾処置を施したところで、絶対に大丈夫という事はありません。
防弾処置を施し重量が増えれば速度も落ちます、結果的に被弾率も上がる事に繋がるのです。
重量の増した機体のスピードを上げる方法は単純に考えれば、エンジンの馬力を上げる事です。」
「なんだ・・・。方法があるならそうすればいいじゃん。」
「そう簡単に性能の良いエンジンが作れれば苦労はありません。
しかも、馬力が上がるという事は燃費の悪化に繋がります。
機体構造の見直しも必要になりますし・・・単純に馬力を上げれば良いという問題でも無いのです。
頑丈で速度も早い機体を開発可能、しかも運用できるのはアメリカの様な工業力の高い大国くらいのものです。
日本はスタートラインからして不利だったと言えます。」
「むぅ・・・。」
「どうでも良いが、マレー沖海戦はどこへいったのだ?」
「・・・失礼しました。
最新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズを失ったという報告はすぐさまイギリス本国に届けられました。
報告を受けたチャーチル首相は茫然自失、相当なショックを受け涙で枕を濡らしたと言われています。
イギリスからしてみれば、やはり予想外の出来事だったのだと考えて良いと思います。」
「涙で枕を濡らすなんて・・・デタラメな上に気色悪い事言うんじゃないわよ。」
「・・・多少の脚色はTVや映画でも行われている事です。
彼がショックを受けた事は事実なのですから・・・大した違いでは無いと思いますが?」
「そういう問題じゃないわよ!」
「いいじゃないですか。
フィクションがノンフィクションだと思われているなんていうのは珍しい事じゃないんですから。
ほら、あのブレアなんとか言うB級ホラーがヒットしたのもこれは実話か?って言う噂が広がったからでしょ?
実際、ヤラセだったって事が露呈されたんですから・・・やってる事なんかどこも変わりませんって。」
「あれはヤラセとは違うでしょ。単に出演者を驚かしてただけで・・・」
「ま、微妙なラインではあるがな。」
「・・・・・。」
「どうしたんですか?」
「あの、話についていけなくなっちゃって・・・」
「あたしも〜。」
「映画の話ですか?ブレアウィッチプロジェクトという映画が何年か前にありまして、その奇抜な作風は・・・」
「ごめんなさい。映画じゃなくて、戦史の話なの。」
「そうでしたか。それは失礼しました〜。」
「・・・日本ではマレー沖海戦と呼ばれていますが、イギリスではクワンタン沖の悲報と呼ばれています。
大した戦果も無く航空機の攻撃で一方的に沈められたのですから・・・」
「ワンタン?」
「だから、つまんないって・・・」
「・・・どうやら、この世界でも戦艦は時代遅れのものとなりつつあったようだな。MSが登場した地球圏と同じ様なものか。」
「・・・そうですね。南遣艦隊の指揮官を務めていた小沢中将閣下は二大戦艦沈没の報を受け
日本の行く末に同じ物を感じていたとか・・・
どこまでが本当かは解りませんが、戦艦が航空機に沈められるというのは妙な因果を感じます。
・・・このマレー沖海戦で、それまで信じられていた戦艦の優位性は崩れ去りました。
一つの時代が終わりを告げ・・・新しい時代の幕開けとなったのです。」
「でも、日本だって大和なんて時代遅れな戦艦を作ってたじゃない。」
「・・・大和については後で説明します。
さて、日本はこの闘いでマレー半島付近での制海権を確立する事が出来ました。
と同時に、大英帝国と言われた先進国の威信を揺るがす事にも成功したのです。
マレー沖海戦は、戦術的にも戦略的にも大成功を収めたと言って間違いはないでしょう。」
「で、説明は終わりなわけ?」
「次は何の話になるんだろ・・・。」
「次は、戦闘規模の小さい闘いをいくつかまとめて説明します。」