「良かったですね。妹さんが無事に見つかって。」
「いや、開口一番そんな事言われても困るだろ。まるで俺に妹が居て何かあったみてーじゃねぇか。」
「ええ〜、サキエルに隠し妹〜?!」
「やだぁ〜!」
「だから、なんで勝手に話を作るんだよ!つーか、隠し妹なんて日本語聞いたことねーよ!」
「で、これからどうすんだっけ?」
「とりあえず居住区へ戻るんじゃないか?」
「なんでです?妹さんも見つかったんですし、このまま帰っちゃっても良いんじゃないですか?
あのメッセージの意味も分かった事ですし。」
「ちょっと待て。このまま地球へ帰って何になるんだよ。
それにキャティさんが言ってただろ。妹を見つけたら居住区に戻ってきてくれって。」
「そんな事言っちゃって、キャティさんが可愛かったもんだから。」
「否定はしねぇけど、そんな理由じゃねぇよ。それに武器だって借りっぱなしじゃねぇか。」
「でも、妹さん、大丈夫なんですか?あんな化け物の居るところに放置されてたのに。」
「怪我とかは大丈夫らしいぜ。精神的には分からんって話だが。」
「それもそうよね。あんな小さい子が化け物に連れ去られたんだから・・・」
「PTSDとかになっても不思議じゃないわよね〜。」
「そうそう。今、流行でしょ?そういうの。」
「流行とは言わんでしょうに・・・。」
「でも・・・、精神的には相当キツいと思いますよ。
私なんかだったら多分・・・、連れ去られた時点で心停止でもしてたんじゃないかと思います。」
「アンタに心臓あんのかよ。」
「じゃあ、S2機関停止で。」
「ひし形なら、わざわざ異星人に連れ去られるなんて上品な事されなくても巨大蜘蛛さえ居れば氏ぬって。」
「・・・それ、本当にシャレになりませんから止めてくださいよ?」
「まぁ、いろんな話が出来るから、適当に雑談しといて。」
「雑談って言うのか?割と大事な話が多いみたいだぞ。」
「これ、何の話?」
「ん?連中が妹をさらったのは偶然だったのか・・・って話だ。」
「どういう事?」
「だからよ。この3人の中でGLORYについて知ってるのは妹だけだろ?
それを確認した上でさらったのか、それとも単なる偶然だったのか・・・ま、考えてみたところでよく分からねぇけどな。」
「でも、妹さん、さらわれた後でGLORYの事とか聞かれたとも言ってましたよね。
男の子に化けていた異星生物が、妹さんが情報を持っているらしいと判断したからさらっていったのではないでしょうか?」
「でもさ、どうしてその異星生物連中って妹の事を生かしておいたのかしらね〜?」
「なにそれ?」
「だって、情報収集が目的なら妹から情報が引き出せないって分かった時点で用済みでしょ?
連中は人間とは違うんだし、わざわざ妹を生かしておく理由も無いと思うんだけど。」
「う〜ん・・・、なんでなんでしょうね・・・。」
「あのさ、なんでその異星生物ってのはGLORYをそんなに目の敵にしてるわけ?1機しか無いって言ったって普通のロボットでしょ?」
「それもそうですよね。ガトーさん専用ゲルググくらいの位置付けですから・・・精々専用機レベルですもんね。」
「その位置付けはアンタが勝手に決めたんでしょうが・・・。」
「やっぱり・・・何か秘密があるんじゃねぇの?
あのジフってのもGLORYを操れる主人公が邪魔みたいな事を言ってたしな。」
「これは何?」
「いや・・・、香水のペンダントが壊れちまったってのを主人公が残念がっててな。
ほれ、妹の前ではそんな事を気にする素振りは見せてなかったろ。」
「お母さんの形見ですから・・・やっぱり残念なものは残念なんでしょうね。
確か、形見の品ってそれしか残ってなかったはずですもん。」
「今度は?」
「さっきの03区居住区での話だ。妹を見つけた時にエリナが何かの匂いがするって言ってたろ?
それは、妹が持ってた香水のペンダントの匂いだったわけだけど・・・その匂いがGLORYのコクピットと同じだったんだってよ。」
「???」
「つまり、GLORYのコクピットの匂いは母親の香水の匂いだったって事さ。」
「あ・・・なるほど。でも、どうして・・・?」
「主人公の父親が体臭キツかっただけじゃないの?」
「あるいは、奥さんの香水を愛用してたとかね。そういうのって何か良いわよねぇ〜♪ねぇ、ゼルエル様?」
「そうですね・・・。」
「う〜ん・・・、何かまだ分からない事だらけって気がしますね。」
「それもそうだな。ま、とりあえずようやく居住区に―――」
「なんだ?爆発?」
「もしかしてこれって・・・!」
「なによ?」
「ジオン公国が本格的に地球連邦政府に宣戦を布告したんじゃ・・・」
「・・・・・」
ゴッ(殴打音)
「あいたっ!」
「いつまでその話で引っ張るのよ。居住区の反乱って話は嘘だったでしょ。」
「とにかく行ってみようぜ。なにが起きてるのかワケ分からねぇし。」
「まるでさっきの03区居住区ですね。以前の賑やかさが嘘みたいです。」
「どうするんですか?これから・・・」
「どうするもなにも・・・とにかくその辺、見てくるしか無いんじゃねぇの?」
「あ、そうか。妹を1人残していくってのは確かにアレだな。」
「結局、エリナを船に残して単独行動するみたいね。」
「こういうのってある意味死亡フラグじゃないですか?出来れば一緒に行動した方が良いと思うんですけど・・・」
「選択肢とか出てねぇからどうしようもないぞ。それに船で待機させるんだから大丈夫だろ。
とりあえず中央へ行ってみようぜ。」
「ホントにすごい事になっちゃってますね・・・。」
「ボロボロだな。本当に何があったんだ・・・?」
「中に入るの?」
「まぁな。ここまで来たんだから見ておこうぜ。」
「案の定、誰も居ないみたいだが・・・」
「でも、この部屋は何とも無いみたいね。外はボロボロだったのに。」
「さぁ・・・?一応、居住区の役所みたいなところだからじゃねぇの?」
「ところで、シルキーヌさんの部屋にも入れるみたいですよ?」
「あんまり興味も無ぇが・・・」
「ダメですよ。ここまで来たら一応確認しておかないと。ほら、中でシルキーヌさんが瓦礫に埋もれてるかもしれないでしょ?」
「それは無いんじゃねぇの?大体、お偉いさんってのはすぐに脱出するもんだろ。」
「ほれ、誰も居ない。」
「ここも異常は無いみたいですね。」
「さ、次はマックベリーズだ。」
「・・・・・。」
「ハンバーガー屋が無くなっちゃったわね。これじゃ、あのサービス券使えないじゃない。」
「いや、あれは期限切れだし・・・第一、持ってきてねぇし。」
「マックベリーズにも誰もいないんですね。さ、船に戻りましょう。」
「いや、地下に行ける様だし、とりあえず降りてみようぜ。誰かいるかもしれないし。」
「もう避難してるんじゃないですか?仮にも軍人さんでしょ?」
「お前、さっきと言ってる事が違うぞ。」
「ここもボロボロになっちゃってますね。一体何があったんでしょうか?」
「俺に聞かれても困るし・・・」
「最下層に着いたみたいですよ。」
「う〜ん・・・、見事に廃墟になっちまってるな。」
「そういえば、メタルスレイダーも無くなっちゃってますね。」
「見た感じ、ここにも誰も居な・・・ん?誰か居るぞ・・・!」
「え?どこですか?」
「左の方だ。何枚かあるモニターの下あたりだ。あれは・・・!」
「な・・・!キャティさんじゃねーか!まさか・・・!」
「話しかけても反応がありませんね。これは死んでいるのでは?」
「おいおい、それ冗談じゃねぇぞ。仕方無ぇ。ちょっと調べてみるしか・・・」
「ええ〜!調べるとか何とか言っちゃって、下心まる出しじゃないの〜?」
「やっぱりサキエルってムッツリ〜?」
「なんでそうなるんだよ。話しかけても反応無いんなら仕方ないだろ。それに怪我とかしてたらヤバいじゃねぇか。」
「あ、よかった・・・、無事みたいですよ。気を失ってただけみたいですね。」
「そうだな。無事で何よりだ。」
「な〜んだ。ここでてっきり死亡フラグが成立してると思ったのに。」
「そんな展開だったら俺はここで止めるぞ。」
「オレは人間を止めるぞ〜!ジョジョ〜!」
「アンタは元から人間じゃないでしょうが。」
「とにかく話を聞いてみようぜ。ここで何があったのか・・・」
「え?いきなり侵攻?あの異星生物って浸透工作とかしてたんじゃないの?」
「その工作が終わったからなのか、それとも、工作をする必要が無くなったからなのか・・・。とにかく非常事態ってわけだな。」
「結構、行き当たりばったりで行動してるような気がするけど・・・これの敵。」
「そうでもありませんよ。ほら、私達の部隊でもイングラム少佐とかって目的果たしたらとっとと裏切っちゃったでしょ?
目的が終われば本性を表すのってパターンですもん。」
「まぁ・・・そうかもしんないけど。」
「キャティさん、自分らがこんな事になってんのに妹の心配してくれてるんだな。」
「・・・良い人なんですね。」
「でも、これからどうするんだろうな。基地もこんなじゃ使えないだろうし・・・」
「ダークエリア?なにそれ?」
「俺に聞くなよ。知らねぇって。ま、とにかくそこに行こうって話になってるけどな。」
「そうですね。ここもいつ爆発が起きるか分かりませんし。急いで脱出しましょう。」
「だな。で、どうでも良いんだけどよ・・・」
「なに?」
「このキャティさんは初めて見るよな。他のヤツみたいに、ちゃんとアップが用意されてるんだな。」
「・・・・・。」
ジュッ!(加粒子砲が当たった音)
「いてっ!なにすんだ、お前!」
「・・・別に。何でもありませんよ。」
「何でもないで加粒子砲を撃つヤツがいるかよ!お前、そういうキャラじゃねーだろ!」
「・・・・・。」
「どうするの?って言われてもな・・・こっちが聞きたいくらいだし。」
「とりあえず話をしてみない事には始まらないみたいですし、色々聞いてみましょう。」
「そうだな。まずはこれから行くダークエリアってトコについてなんだが・・・」
「ダークエリア・・・そのまま受け取るなら暗いところって意味よね?」
「まぁ、そうだよな。ダークエリアってのは居住区の太陽光の当たらない部分の事なんだと。
つまり、太陽の反対側の部分らしいぜ。」
「で、なんでそこに行かなきゃならないわけ?」
「私設軍の取り決めで、基地が使用不能になったらそこに集まるようになってんだってよ。」
「なんで?」
「なんでもなにも・・・もし、そういうのを決めておかなかったら
いざって時にメンバーが散り散りなっちまうじゃねぇか。」
「それもそうですね。でも・・・」
「どした?」
「私設軍の人達・・・、これからどうするんでしょう?拠点が使えなくなっちゃったのって、かなりの打撃ですよね?」
「キャティさんの話だと、とりあえずは大丈夫らしいけどな。」
「とりあえずって・・・?」
「さぁな。大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんじゃねぇの?」
「アンタも意外といい加減な性格してるのね。大雑把にも程があるわよ。」
「でも、化け物連中ってなんでいきなり攻撃なんてしてきたのかしら?物語を盛り上げるにしてもタイミング良すぎじゃない?」
「物語って・・・」
「キャティさんは、私設軍の場所が異星生物に知られてしまったから・・・と、仮定してるみたいですね。」
「そういえば、マックベリーズは他と違って完全に破壊されてたしな。」
「単にハンバーガーが嫌いなだけじゃないの?」
「んなわけあるかい。もしそうだとしたら、どこまでハンバーガーが嫌いなのよ。」
「ところで、キャティさんだけじゃなくエリナとも話せるみたいなんだが・・・」
「それがどうしたのよ。」
「これ・・・」
「やっぱ、話さなきゃ駄目なのか?」
「うん。じゃないと話が進まないし。」
「どうしてそこまで嫌なんですか?キャティさんの時は喜んで話してるじゃないですか。」
「なんか、言葉にトゲがある気がするんだが。」
「気がするじゃなくてトゲだらけだっての。」
「え?なに?」
「シルキーヌさんと私設軍が実は協力関係にあったという話ですよ。
考えてみれば、ハンバーガーショップだけで資金的にやりくり出来るはずもありませんからね。」
「ふーん、て事は・・・実は政府と協力してたって事になるのかしら?」
「いや、そうでもないらしい。
なんでも、事実を知ってるのは、主人公達と私設軍メンバーと月のレストランの店員、
後はそのシルキーヌって人と、そのシルキーヌってのが個人的に信頼している人間が少し居るだけなんだってよ。
だから、政府と協力ってほどじゃ無いよな。」
「そう・・・、なんだか頼りない気がするけど・・・。」
「仕方ないだろ。異星生物が政府のどこまで入り込んでるか分からないらしいからな。
迂闊に手を広げるわけにもいかないんだろうさ。」
「でも、どうしてそこまで秘密にするんでしょうか。公表しちゃった方が色々な人から協力してもらえると思うんですけど。」
「人間の側に立ってモノを言うのは好きじゃないんだが・・・」
「は?」
「異星生物の存在を公表したとするよな?」
「はい。」
「人間以外に知的生命体が存在し、その生命体は人間に敵対的な態度を取っています。」
「まぁ、そうだけど・・・」
「自分の意思で姿を自由に変えられる事も分かりました。」
「はいはい。」
「それで・・・どうする?」
「どうするって・・・大騒ぎになりますよね。異星生物を捕まえろって。」
「だから、どうやって捕まえる?」
「あ・・・!う〜ん・・・、それなら今こそ私達が・・・」
「断る。私は自分の味方であってヒトという種の味方では無い。」
「アンタら、何の話をしてんのよ・・・。」
「仮に異星生物が正体を現したとして、そいつはすぐに別人になれるんだ。人間達に捕まえる事は出来ない。」
「でも、このままじゃ・・・」
「じゃあ、私達でその異星生物を探し出したとして・・・そいつをどうする?殺すのか?
私には人間的な感情は無い。だから仲間を殺す時もどうという事は無い。」
「はい?仲間って何の話よ。」
「だが、もし私とラミエル(さん)が逆の立場だったらどうする?」
「!」
「・・・こう言うと悩む。これが人間という生き物なのだ。」
「ちょっと待ちなさいよ!それ寄生獣ネタじゃない!何かおかしいと思ったのよ!」
「だって・・・」
「だってもへったくれも無いわよ!途中まで感心して損したわ!」
「お〜い、ようやく目的地が見えてきたみたいだぞ。」
「これは何?」
「T・ストークとか言う船らしいぜ。デカすぎてどんな形してるのかはさっぱり分からんけど。」
「そんなに大きいんですか?」
「全長が6.9km、胴体直径が1.88kmだって。だから、エクセリオン並に大きいんじゃないかな。
載せられるメタルスレイダーは90機そこそこらしいけど。」
「へぇ〜。大きさの割りにそんなにメタルスレイダーは積めないんですね。」
「そうだな。ま、とにかく中に入ってみようぜ。」
「本当に広そうですね。見たところ格納庫っぽいですけど。」
「さっき、キャティさんが格納庫のハッチに船を付けてくれって言ってたろ。お前、何も聞いてないんだな。」
「私だってちゃんと聞いてますよ。え〜と・・・え〜と・・・・・・」
「もういい。」
「ところでこれからどうするの?」
「まぁ、ここに居る連中と話せるみたいだから片っ端から話しかけてみてるんだが・・・」
「キャティさん、どうしたんです?」
「何か引っかかる事があるみたいだな。キャティさんだけじゃなく、エンカイも同じ様な事を言ってるが。」
「ふ〜ん・・・、どうしたんですかね。」
「そういえばさ、このTなんとかって船はもう完成してるわけ?」
「今、エネルギー充填中なんだとさ。それが終われば通常航行可能らしいぜ。」
「やよいさんって月のレストランのウェイトレスさんですよね。
いくらなんでもその格好のままで来ちゃうのはどうかと思うんですけど・・・」
「アンタ、人の事を言える立場じゃないでしょ。」
「そういえば、小夜子さんのおかげで妹さんが見つかったんですよね。」
「まぁ、そうだけど・・・つーか、小夜子さんは連絡受けただけでしょ。」
「・・・・・。」
「どうしたんです?」
「・・・いや、なんでもねぇ。」
「これから、ブリッジへ上がるみたいですね。」
「ここで休めるけど・・・どうする?」
「ふむ・・・」
「普通にやったらここが休める最後のポイント。だからここで休んでおいた方が良いと思うけど・・・」
「じゃあ、そうしておくか。」