「第三回戦はこちらのゲームになってます。」
「これは?」
「サッカーだよ。任天堂さんから1985年に発売されたヤツさ。」
「さて、次にアスカさんの相手をするのはどなたです?」
「ちょっと待った。」
「はい?」
「なんで私ばっかなのよ?」
「私馬っ鹿?そんな分かりきった事、今さら念を押さなくても。」
「ちがわい!ムリヤリ間違えてんじゃないわよ!」
ゴッ(鈍い打撃音)
「あいたっ!」
「フン!」
「それじゃあ、今度は僕が相手をしましょう。」
「フフフ、惣流・アスカ・ラングレー、これでアンタも終わりよ。」
「そうよ!アンタはこれでお終いなのよー!」
「あ、今回は見てるだけでいいわ。いい加減疲れたし。」
「逃げる気?フフン、イロウルごときに恐れをなしたなんて、とんだお笑い草ね。」
「いや・・・、恐れとかじゃなくて今回は最初から見てるつもりだったんだけど・・・」
「僕、アスカさんに嫌われちゃったんですか・・・。」
「いや、だから違うって。」
「困りましたね。アスカさんが全部対戦してくれると思ってたんですが・・・」
「言っとくけど僕はやらないからね。あくまでサポートってポジションなんだからさ。」
「むぅ・・・」
「そうするとイロウルの不戦勝という事になるかしら?」
「そうよねぇ。誰もいないんじゃどうしようもないものねぇ〜。これでついにゼルエル様は私のものになるのね。」
「ちょっと、どうしてそーなんのよ?」
「何がよ?イロウルはあたしの下僕、つまりイロウルの勝利はあたしの勝利なのよー。」
「なんですって〜!イロウル!あんた、裏切ったわね〜!」
「あの・・・僕は下僕でも何でも無いんですけど・・・」
「ひし形、アンタ自分でやれば良いじゃない。」
「でも、私は片手が塞がってて・・・・・・あ!」
「何ですか?いきなり。」
「丁度よく、ここに助っ人がいるじゃないですか。」
「まさか・・・」
「ノーマッドさん、ここはひとつよろしくお願いします。」
「私ですか?そもそも私はゲストという話だったはずですよ。」
「それじゃ、さっそく始めましょうか。」
「聞けよ、人の話。」
「人じゃねーだろ。」
「でもさ、ノーマッドってぬいぐるみでしょ?どうやって操作すんの?」
「口のところにケーブルを繋げてもらえれば操作は出来ますが。」
「そうなんですか?便利なんですね。」
「知らなかったのかよ。」
「では、ノーマッドさん。失礼しますね。」
「丁寧にお願いしますよ?」
「了解です。大船に乗ったつもりでドーンと構えちゃってください♪えい!」
「むぎゅ!」
「あれ?ちょっと接触が悪いような・・・」
ググッ!ギュウゥ!(嫌な音)
「ラミエルさん、人の話を聞いてます?雑にも程がありますよ。」
「それではイロウルさん、スタートしちゃってください。」
「は、はい。」
「どのチームが良いとかってあんのか?」
「色くらいしか違いは無いですよ。昔のサッカーゲームですからね、コレ。」
「じゃ、パターン青という事でGBRというチームにします。」
「ピンク色はJPNですか。これ日本って意味ですよね?なんでピンクなんですか?」
「そんな事言われても・・・私には分かりません。」
「で、下のほうのスキルなんたらってのは?」
「あ、それよく分からないんでそのままスタートしちゃってください。」
「ちゃんと調べなさいよ。」
「ちなみに十字キーで選手の操作、AボタンがシュートでBボタンがパスです。
細かい操作方法は身体で覚えちゃってくださいね。」
「て、適当ですね・・・。」
「前回のスカイキッドと説明の幅が違いすぎるんだけど。」
「まぁ良いんじゃない?とにかく勝てば良いんだから、ねぇイロウル?」
「え?そんな眼で見られても困りますよ。勝てるかどうかなんて分からな―――」
「勝ちなさい。」
「は、はい・・・。」
(青)VS(ピンク)
「ところで、お2人ともサッカーのルールは知ってますよね?」
「はい、一応は。」
「私を誰だと思ってるんですか?ロストテクノロジーの結晶なんですから知っているのは当然でしょう。」
「そうでしたか。ルールが分かってるなら問題ありません。やっちゃってください。」
「ところで、メンバーが5人しか見当たらないんだけど・・・」
「それは仕方ないですよ。昔のサッカーゲームなんですから。キーパーも含めて6人編成なんですよ。」
「6人編成って・・・」
「ま、フィールドもそんなに広くないからね。逆に11人編成だったらゴチャゴチャして分かりにくくなるんじゃないかな。」
「フレー!フレー!イロウル!」
「頑張れ頑張れイロウル!頑張れ頑張れイロウル!」
「イェ〜!」
「・・・使徒にしては仲間をちゃんと応援してんのね。ちょっと見直したわ。」
「そうか?だって・・・ほれ。」
「イロウル〜!負けたら承知しないわよ〜!」
「そうよ!アンタが負けたらゼルエル様があたしのものにならないんだからね〜!」
「動機が不純だぞ?」
「・・・・・。」
「両チームともいまだ決定打がありません。0−0のまま試合が進んでいます。」
「アンタはどこぞのアナウンサーかい。」
「そんな・・・あんまり褒めないでくださいよぉ♪」
「褒めてないわよ。」
「でも、なんでまた今回の対戦はサッカーなんだ?スポーツなら他にもいくらでもあるだろ?」
「ほら、サッカーって今が旬って感じがしません?今年もワールドカップがあったわけですし。」
「今年って、いつの話よ?今は宇宙世紀でしょうが。」
「あれ?そうでしたっけ?
ま、良いじゃないですか。サッカーってメジャーなスポーツですから。」
「あ〜、もう!イロウルそこよ!そこでシュートだってば!」
「違うわよ、パスよ!パス!相手の防御を崩すのよ!」
「あ、あの・・・」
「アンタも大変ね。少し同情するわ。」
「はい・・・。」
「おおっと、ノーマッドさんのチームの中の人がノーマークだーっ!」
「んな実況いらんわい。」
「ノーマッド!そこでパスよ!」
「え?ここでパスしたらオフサイドになっちゃいませんか?」
「チッ・・・」
「なんですか、その舌打ちは。貴女・・・、さっきの指示はワザとですね?」
「うるさいわね!偶然よ!」
「正々堂々のかけらもねーな。」
「ねぇ、このゲームにオフサイドってあんの?」
「え?オフサイド?何ですか、それ。」
「知らないのかよ・・・。」
「ちょっと待ってください。
えーと・・・、一応、このゲームにもオフサイドっていうのはあるみたいですね。」
「へぇ、やっぱりあるのか。」
「両者とも一進一退の攻防が続いています。
前半も残すところあと少し・・・どう思います?解説のアスカさん。」
「誰が解説じゃい!知らんわよ!」
「それにしても本当に決め手がねーな。」
「ちょっと!スライディングとかタックルとかは無いわけ?」
「ありませんが?」
「なによ、もう!使えないわね〜!」
「これだから第五使徒はダメなのよねぇ〜。」
「(´・ω・`)ショボーン」
「まぁ、このゲームって決め手になるようなのが無いからね。
相手がミスするまで辛抱強くいくしか無いと思うよ。」
「そうみたいですね。」
「それにしても、本当にどうにもなりませんね。このままだと引き分けになりそうですよ。」
「前半後半ともに引き分けのままだとPK戦になります。さすがにPKでなら決着もつくでしょう。」
「本当にそうなりそうなのがアレよね。さっきからボールもってウロウロしてばっかだし。」
「両者とも0点のまま、ハーフタイムになっちゃいましたね。」
「ま、しょーがねーわな。」
「どうしても決め手に欠けるからね。選手の能力に差があるとかも無いし疲れとかも無いし。」
「で、なにこれ?」
「チアガールの皆さんですね。ハーフタイムの間に踊ってくれるみたいです。」
「ふーん、人間はこういうヒラヒラした格好が好きなわけ?」
「さぁ?私に聞かれても困っちゃいますが。」
「面白そうねぇ。あたしも着てみようかしら。」
「アンタ、そうやってゼルエル様の気を引こうって魂胆ね。抜け駆けはゆるさないわよ。」
「あんた等が・・・ああいうヒラヒラした服着るの?」
「かなりマニアックだよね。」
「いや、そういう問題じゃないから。」
「さぁ、後半のキックオフです!」
「イロウル!今度こそはしっかりやんなさいよ!」
「そうよ!あたしの未来がかかってるんだから!」
「は、はぁ・・・あ、あれ?」
青(イロウル)が先制点
「イェ〜!」
「やったやったやった〜!」
「なんかすんなり決まっちまったな。」
「おい、ぬいぐるみ。やるならしっかりしなさいよ。なんで棒立ちのまんまなのよ。」
「それが、どういうわけか動きが悪いんですよ。操作はしてるんですけど。」
「はい?」
「もしかして接触が悪くなっちゃったとか?」
「分かりません。とにかく早くなんとかしてくださいよ。」
「はい。ちょっと待っててください。え〜と・・・」
ググゥッ!(嫌な音)
「むぎゅぅっ!」
「どうですか?」
「動いてねぇぞ。」
「イロウルも何ボサッとしてんのよ!今がチャンスでしょうが!」
「え?え?でもまだノーマッドさんが・・・」
「勝てばよかろうなのよ!動けないのはあっちの都合なんだから気にしなくていいの!」
「でも・・・」
「やりなさい。」
「は、はい・・・。」
・
・
・
すでに五点差・・・
「何やってるんですか、ラミエルさん。まだ直らないんですか?」
「え?そうは言われましても・・・う〜ん、今度はどうです?」
「動いてないね。」
「あわわ・・・、早くなんとかしないと・・・!」
「あの・・・、いくらなんでもこれはやりすぎじゃないでしょうか?」
「余計な情けは禁物よ。ここで手を抜いたらどうなるかは分かってるんでしょうね。」
「はい・・・。」
・
・
・
バレーの試合みたいな点数です。
「なにやってんのよ!これじゃもう追いつけないでしょうが!」
「え・・・あ、はい。ちょっと待ってください。もう少しでどうにか・・・!」
ギュッ!ギュッ!(嫌な音)
「ぎゅぅっ!」
「今度はどうですか?」
「お、ようやく動き始めたみたいだな。」
「動いたって言っても、もう遅いみたいだけどね。」
ほとんど試合終了です。
「・・・・・。」
「イェ〜!私たちの勝利よ〜!」
「やった〜!イロウル最高〜!」
「なんか凄い罪悪感が・・・」
「勝ちは勝ちです。やり方はどうあれ、今は勝ちを得られた事を素直に喜びましょう。」
「お前、前回敗者になりたいとか言ってなかったか・・・?」
「おい、ひし形。これどうしてくれんのよ。」
「そうですよ。機器の不調で負けるなんて対戦以前の話じゃないですか。」
「で・・・では、次の対戦に―――」
「話を逸らすんじゃないわよ!」
ゴッ(鈍い打撃音)
「あいたっ!」
「ったく!今回はこれで勘弁するけど、次からはちゃんとしなさいよね!」
「はい・・・。」