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ガダルカナル島撤退戦
「・・・大東亜戦争も開戦から約一年。
雌雄を決したガダルカナル島での戦いは敗北を喫してしまいました。
もっとも、ガ島からの撤退も実際のところは第三次ソロモン海戦の後から真剣に検討されていたそうですが・・・
正式に決定したのは昭和17年12月31日の御前会議での事です。」
「・・・そういえば、ガ島とやらからの撤退は決定したのだったな。」
「ガ島ってどこにあるんだっけ?」
「・・・地図で確認しましょうか。」
「このガダルカナル島からは手を引くことにしたんですよね。
ところで、一つお尋ねしたいのですが・・・ガ島に残った日本軍の方々はどうするんです?
撤退って言ったってそう簡単に出来る事でもないでしょ。」
「どーせ、人命軽視の日本軍の事だもの。見捨てるなり特攻なり玉砕戦法なりじゃないの?」
「・・・・・。」
「な、何よ?」
「・・・以前にも言ったはずですが、日本軍は決して人命軽視の軍隊ではありません。
将兵を救出する方法はちゃんと考えています。」
「エラそーな事言ってるけど・・・後々、玉砕やら特攻やらはしてたじゃない。それはどう説明すんのよ。」
「・・・それは後で説明します。
この頃はまだ日本にも多少の余裕があるので、ガ島の将兵を救出するという選択が選ばれたのです。
もっとも、一部には彼らを切り捨てて他地域の防備を固めるべしという意見はあった様ですけどね。」
「何よ、やっぱりそういう主張があるんじゃない。」
「・・・結果的に撤退が決まったのだから良いじゃないですか。
退却すら許さないどこかの国よりは十分良心的だと思いますが。」
「どこかの国って?」
「どーせあの赤い国だろ?あそこは例外なんだから比べるだけ無駄だと思うが・・・。」
「・・・さて、先ほどラミエルさんが言ったように軍隊にとって撤退というのは簡単な事ではありません。
そこで、まずヘンダーソン飛行場に対する空爆とアメリカ艦隊の動向を調べる事から始めました。」
「飛行場に空爆・・・そんな簡単に出来る事なのか?」
「・・・もちろん日中に攻撃するのは自殺行為に等しいので夜間爆撃になります。
夜間攻撃そのものが熟練度に頼るものであり、航空機にレーダーも搭載していなかったので
爆撃そのものにそれほどの効果は無かったと思いますが・・・。」
「じゃ、何の為に攻撃してんの?」
「・・・効果が無くとも無駄ではありませんからね。
多少でも飛行場に打撃を与えておけば昼間の作戦行動も少しは楽になります。
ヘンダーソン飛行場に対する空爆は1月中旬頃から行われました。また、それと同時に付近海域の哨戒も強化され・・・
29日早朝、サンクリストバル島の南方で哨戒中の1機がアメリカ軍の艦隊を発見したのです。」
「ねぇ・・・サンなんとかってドコ?」
「・・・ガ島のさらに南だと思ってください。」
「とか何とか言って・・・あんたも知らないんじゃないの?」
「・・・ご想像にお任せします。さて、索敵機からの報告を受け日本軍の航空基地各所からも多数の偵察機が発進しました。」
「何でまた?」
「・・・アメリカ艦隊を捕捉し続けるためです。日本側の攻撃隊が出撃するまでに行方が分からなくなっては困りますからね。」
「攻撃隊?日本の機動部隊はもう再建出来たのか?」
「・・・一応の再建は済んでいました。
ですが、この時の攻撃隊は機動部隊の航空機ではありません。マレー沖海戦を覚えていますか?」
「・・・何でしたっけ?」
「・・・あんた、自慢のS2機関はどうしたのよ。」
「フッ、私の場合は情報量が膨大な為、古い記憶から順番にゴミ箱行きなんですよ。
ところてんみたいに押し出されていくんでつ。」
「訳分からないから・・・。」
「マレー沖っていったらアレだろ。
航空機でイギリス自慢の戦艦沈めてチャーチルとかいうオッサンを泣かしたってやつ。」
「ワンショットライターの話だったよね。」
「・・・その呼び名は不本意ですが、仕方ありません。今回のレンネル島沖海戦での主役はこちらの攻撃機です。」
一式陸上攻撃機 96式陸上攻撃機
「あれ、左の方は見たことあるけど・・・右の飛行機は何?」
「・・・一式陸上攻撃機の前に正式採用された機体です。
一式陸攻より古いだけあって、さすがに性能的には劣っています。
戦争中期になると第一線からは退いた様ですが、終戦まで使用された良質な機体だった様です。」
「と言うと・・・役割も似たようなものか。」
「・・・そうなりますね。これがレンネル島沖海戦での日本軍の編成です。」
日本軍
ラバウル基地部隊
第705空陸攻隊・一式陸攻×16
第701空陸攻隊・96式陸攻×16
カビエン基地部隊
第751空陸攻隊・一式陸攻×11
「・・・これだけ?もっといないの?」
「・・・無理を言わないで下さい。これでも大変なんです。」
「まぁ、そうみたいだわな。日本は工業力が低いから・・・しゃーねーんだが。
さっき話に出てたマレー沖に比べたら随分数が少ないしな。」
「・・・ところで護衛は?」
「アメリカ艦隊の位置がガ島よりさらに遠方だったため
零戦の航続距離を持ってしても随伴は不可能です。したがって、今回は護衛無しです。」
「ふ~ん・・・。」
「おや?今度は人命軽視とか何とかイチャモンつけないんですか?性質の悪いチンピラみたいに。」
「誰がよ!私はあんたみたいに、筋の通らない指摘はしないわよ!」
「いや、そーでもなかった気もするが・・・」
「うるさいっ!」
「ところでアメリカ軍の編成はどういったものなのだ?
話を聞いていると連邦の様に抜け目の無い連中の様だからな。何かしら対策を執っていたとしてもおかしくはないが・・・」
「アメリカ軍の艦隊編成は次の通りです。」
アメリカ軍
重巡×3 軽巡×3 駆逐艦×8 護衛空母×2 輸送船×4
「また、手抜きなのね。」
「・・・いいんです。
やたらと数の多いアメリカ軍の中でも、上記の艦船は主要なものではありませんから名前を調べるだけ無駄です。
第一、アメリカ軍の護衛空母の名前を知りたいと思いますか?」
「いや、あんまり・・・」
「知りたい知りたくないじゃなくて、日本の説明ばっかするのはひいきでしょって言ってんの。」
「・・・そこまで言うなら説明しましょうか。
アメリカで初めて空母として運用されたのはラングレーという小型空母でした。
戦争初期に日本軍の攻撃により大破・自沈処分されており、この時期だと・・・すでに海の底ですね。」
「待たんかい!」
「ですが、アメリカ軍の空母の運用などのデータ取りとして活用され、
航空機の輸送任務に従事するなど・・・一応の役には立っていた様です。」
「先生!ラングレーという名前の由来はなんですか?」
「名前ですか?あの有名なライト兄弟に先んじて人類初飛行に挑戦して見事に失敗した人の名前だという話ですが・・・」
「ちょっと待ちなさいよ!」
「・・・何か?」
「何かじゃないわよ!それ、私への当て付けでしょ!」
「アスカ、落ち着いて・・・。」
「落ち着いてられるわけないでしょ!
何で蒼龍とかラングレーとか私に関係ある名前の船の説明ばかり雑なのよ!綾波とかは丁寧にしてたくせに!」
「・・・差別した覚えはありません。これらは史実に基づいた説明ですが何か?」
「くぅ~っ!ファーストのくせに生意気~!」
「ラングレーさんはすでに海の底ですか。悲しい事でつ。(・∀・)ニヤニヤ」
「あんたもうるさい!」
「・・・護衛空母の仕事は主に船団の護衛や航空機の輸送などですね。
この点では日本の軽空母とあまり違いは無いと思います。」
「ほう、護衛空母を随伴させているか・・・やはり抜かりは無いようだな。
そのまま陸攻とやらに攻撃させたのでは、あまり分が良く無いのではないか?」
「・・・それは日本側も承知しています。そこで実行されたのが、日暮れを見計らっての攻撃です。
日が落ちてからの雷撃は危険ですが、日本軍は夜間攻撃の訓練を積んでいましたから問題は無かったのです。」
「マシュマー様の考えるような事は対策済みだって♪」
「む・・・、そうか。」
「・・・あれ?怒んないの?」
「大の大人がいちいち頭に血を上らせてどうする?そもそも私は指揮官なのだぞ。」
「三等兵なのに?」
「誰が三等兵だ!」
「・・・あんたもいい加減学習しなさいよ。」
「アスカさんも♪」
「るさいっ!」
「・・・アメリカ軍の艦隊はガ島の駆逐艦4隻と合流する為急いでいた様です。
そこで、足の遅い護衛空母2隻と護衛の駆逐艦2隻を分離させ、
自らは重巡を基幹とする艦隊を率いて合流地点に向かっていたのです。この点は日本側に有利に働きました。」
「そうなの?」
「・・・護衛空母の艦載機は日暮れと共に母艦に戻ってしまいましたからね。
また、艦隊はガ島飛行場の援護圏にも到達していなかったので、満足な航空支援も受けられない状況だったのです。」
「なんで、そうまでして急いでたんだ?」
「分かりません。
指揮官のギフェン少将は艦隊の合流予定時間に間に合わせようとしていたらしいのですが・・・
夕刻になり護衛機が引き上げた時点で、彼はもう敵襲は無いと思っていたそうです。・・・孫子にこんな言葉があります。」
軍争の難きは迂を以て直と為し、患を以て利と為す。
「どゆこと?」
「軍争・・・戦場への先着を争うという意味ですが、先に戦場に到達するというのは難しい事です。
迂回路を進むように堅実にゆっくりと行軍しながらも、実際は敵を利で誘い出し自分達の望む戦場で相対する様にする・・・。
つまり迂回路を直進の近道とする方法を考えるのが大事だという事です。」
「エヘへ・・・。」
「綾波さん!我が同士エルピー・プルが分からないと申しております!もう少し分かりやすく説明して頂きたい!」
「・・・それでは、実際のアメリカ軍の行動でその問題点を指摘してみましょう。」
護衛空母と分離、先を急いだ事
「これだけ?」
「・・・これで十分です。
先を急ぐあまり護衛空母と分かれた事、そして希望的観測により日本軍の攻撃は無いだろうと判断した事。
これらは明確な判断ミスと言って差し支えは無いと思います。」
「ちょっと待ちなさいよ。あんた、アメリカの指揮官だからって毒舌過ぎんじゃないの?
南雲なんたらって人は擁護しまくってたくせに。」
「・・・間違いは間違いと指摘する必要があります。私は公平な判断をしているつもりですが。」
「どこがよ!」
「・・・これも、孫子の兵法の一節です。」
軍争は利たり、軍争は危たり。
軍を挙げて利を争えば則ち及ばず。
軍を委てて利を争えば則ち輜重捐てらる。
「また小難しい事を・・・」
「で、どんな意味なんだ?」
「・・・戦場に先に到達するというのは大事な事です。
ですが、先を急ぎすぎる事が自らの首を絞めてしまう事もありえるのです。」
「訳分かりませんでつ。」
「・・・大軍では機敏に動けないので戦場に到達する時間は自ずと遅れます。
逆に、速さを優先し素早く到着出来たとしても、それはそれで本末転倒なのです。
行軍速度を速めると足の遅い部隊が遅れるのは当然の事。それは、今回の護衛空母の件からも証明されています。」
「つーか、別にアメリカ軍は戦場に向かってたんじゃなくて、ガ島に行こうとしてただけでしょ?」
「・・・ガ島は戦場ですよ?戦うつもりがあろうとなかろうと本質は一緒です。
さて、戦いの基本は多数を持って少数に当たる事、少数での行動は各個撃破の恐れが出てきます。
ギフェン少将の行動を振り返れば失敗は見えるでしょう?彼は、行軍速度を優先させる代わりに戦力を分散させてしまっているのですから。」
「そりゃそうだけど・・・日本の攻撃が無いって思ったんだからしょうがないじゃない。」
「・・・その点は無用心としか言い様がありません。日本軍は以前から夜間攻撃を繰り返しています。
それらの状況から、ある程度の予測は出来ると思うのですが・・・。」
「ホントに容赦無いですね。鬼畜米英でしょうか?」
「違いますよ?私はただ単に間違いを指摘しているだけです。」
「そうは思えないけど。」
「・・・ご想像にお任せします。さて、話を戻しましょう。
零戦の護衛の無い一式陸攻にとって敵迎撃機は脅威でしたが、運良くアメリカ軍機の迎撃は無くなりました。
考えてみると・・・マレー沖海戦と状況は似たようなものですね。」
「言われてみればな。あの時も今回と同様、イギリス軍には護衛機がいなかった。
となると・・・日本軍にとって脅威になるのはせいぜい対空砲くらいのモノか。」
「・・・そうですね。日本軍攻撃隊がアメリカ艦隊と接触したのは1月29日の17:10。ちょうど、日の暮れ始めた頃です。
日本軍の第一波はラバウルの705空、一式陸攻16機でした。」
「一式陸攻ってすぐ燃えちゃうんでしょ?大丈夫なのかな・・・。」
「すぐ燃えると言っても・・・装甲が紙という訳ではないのですから多少は大丈夫です。」
「そうなの?」
「あくまで多少は・・・です。
アメリカ艦隊の陣形は以前話した挺身攻撃隊と同じ様なものです。中心部に輸送船を置き、その両側を重巡・軽巡の単縦陣で護衛。
その前方に駆逐艦を先行させ対潜哨戒に当たらせるというものでした。・・・図で見てみましょうか。」
「ん~、やっぱりこの方が分かりやすいね~。」
「ねぇ、数が違くない?」
「細かい事は気にしないで下さい。
日本軍の第一波となった一式陸攻16機ですが、有効な攻撃を与える事は出来ず1機が撃墜されてしまいました。」
「駄目じゃん。」
「・・・まぁ、仕方ありません。
突然の攻撃に虚を突かれたものの、アメリカ軍はどうにか日本軍の攻撃をしのぐ事が出来ました。
この時点で周囲は闇に包まれた事もあり、指揮官のギフェン少将はもう攻撃はないだろうと判断したそうです。
しかし、そのすぐ後に日本軍の第二派701空の96式陸攻15機が攻撃を開始しました。」
「ん?15機だったか?確かもう1機多かったはずだが。」
「・・・出撃したのは16機だったのですが、エンジントラブルにより1機引き返しています。その為、15機での攻撃になりました。
日本軍の攻撃により、重巡シカゴに命中弾×3。他巡洋艦と駆逐艦にも1発ずつ命中させていますが
こちらの魚雷は不発に終わっています。一方の日本軍は対空砲火により96式陸攻を2機喪失。
魚雷攻撃を終えた陸攻隊は迅速に引き上げていきました。」
「ふ~ん・・・。」
「日本軍の攻撃って、結局それだけ?」
「・・・そうです。一連の攻撃により重巡シカゴが航行不能。
指揮官のギフェン少将はガ島の艦隊との合流を諦め、撤退を開始したのです。
戦術的にはそれほどの打撃は与えられませんでしたが、戦略的にはアメリカ軍を撤退させる事に成功しています。
これは日本軍の勝利といっても良いでしょう。」
「・・・ようやく勝利したか。いつもとは立場が逆になった様だな。」
「逆って?」
「これまでは日本軍が戦術レベルでは勝利しながらも、戦略目標を達成する事は出来ていなかっただろう?
だが、今回は見事成功させたわけだ。」
「へ~、そうなんだ。」
「( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェー」
「少しは真面目に聞け。」
「・・・日本軍は翌日も同艦隊に対する攻撃を行っています。
撤退するアメリカ軍に対し再び攻撃を敢行。751空の一式陸攻11機の攻撃により、曳航中のシカゴを撃沈。
また、陸攻の内の1機が駆逐艦ラ・バレットへ魚雷を命中させそのまま体当たり・・・同艦を大破させています。」
「また体当たり?」
「・・・そうです。しかし、前日と違いこの日の攻撃は昼間に行われました。
その為、アメリカ軍迎撃機の攻撃に遭い4機が撃墜されてしまい、別の2機が対空砲で落とされました。
これに加えて先ほど体当たりした1機・・・合計7機が未帰還となってしまったのです。」
「あんた、夜間だ何だとか言って散々持ち上げてたくせに・・・なんで昼間に攻撃してんのよ。」
「・・・撤退中という事は日本軍の基地から離れているという事です。
ただでさえ遠方なんですから、攻撃時期を逃せば逃げられてしまうとは思いませんか?」
「つーか、別にそこまでして攻撃しなくても良いんじゃないの?撤退してたってんなら尚更でしょ。」
「・・・そこは意見が分かれるでしょうね。
私としては敵を叩く好機であり、前日の攻撃を無駄なモノにしなかったと思っています。
1月29日から30日にかけての戦闘がレンネル島沖海戦と呼ばれる戦いです。
日本軍は重巡を戦艦と誤認していたフシもあり、戦果発表も誇大なものになってしまいました。」
「大本営発表ってやつだな。」
「・・・戦果の内容は別として、
アメリカ艦隊をガ島周辺から追い払うという戦略目標は達成出来ています。
これにより、ガ島で危機に瀕している将兵達を撤退させる目処がついたというのもまた事実。
レンネル島沖海戦は日本の勝利と言って間違いありません。
次はイサベル島沖海戦、海戦と命名されてはいますが、日本軍のガ島からの撤収作戦とそれに伴う戦闘を称した名前です。
ですから、今回は大規模な戦闘は行われないと思って下さい。」
「ようやく撤退を決めたって訳ね。もう少し早くしてれば良かったのに。」
「・・・そこは否定しません。前にも話したかもしれませんが、
日本軍がガ島からの撤退を真剣に考え始めたのが第三次ソロモン海戦の直後でした。」
「第三次って・・・何だっけ?」
「ガ島への砲撃と陸軍への補給だ。
戦闘そのものは引き分け、戦略的には砲撃も補給も失敗したため結果的には日本軍の敗北だな。」
「ガ島からの撤退が考慮され始め、現実味を帯びてきたのは戦況の変化も一因なのです。こちらの地図をご覧下さい。」
「・・・第三次ソロモン海戦が行われている頃とほぼ同時期にアメリカ軍がブナに侵攻、その後飛行場を建設しています。
アメリカの行動をこのまま放っておけば、南方の拠点であるラバウルが敵の攻撃にさらされるのは明白です。」
「つまり、奪回の見込みの薄いガ島から手を引き、逆にラバウル周辺の防備を固めた方が良いと・・・そういう事か?」
「そうです。もし万が一にもラバウルが陥落する事があれば
次は連合艦隊の根拠地であるトラックが危険にさらされます。ガ島の撤退が検討され始めたのも戦況に即したものだと言えますね。」
「マシュマー様、なんで分かったの?」
「・・・私は指揮官なのだと何度言えば分かるのだ。」
「え~・・・だってそんな風に見えないし~。」
「人を見た目で判断するな!そもそも貴様は一体何者なのだ!怪しげな風貌をしおって!」
「あ~、マシュマー様ったら人を見た目で判断してる~!サイテー!」
「サイッテー!」
「・・・人じゃない人じゃない。」
「元はと言えばそのラミエルとやらが突っかかってきた事が原因だろう?誰に非あるかは明白ではないか。」
「今度はレッテル張りですか!酷い!あなたは鬼です!悪魔です!」
「酷い言われようだな。」
「・・・・・。」
「誰が鬼で誰が悪魔だ。レッテルを貼っているのはお前の方だろう?」
「酷い!私は清廉潔白、質実剛健をモットーに頑張っているのに!
あなたには薔薇の騎士の称号はもったいない、代わりにお笑い騎士の称号を授けましょう!」
「勝手に決めるな!そもそも誰がお笑い騎士なのだ!」
「一目瞭然じゃん。」
「ね~♪」
「・・・あなた達、廊下へ行きたいですか?」
「え?」
「・・・脱線はかまいません。しかし、程ほどにお願いします。この調子ではいつまで経っても終わらなくなってしまいますから。」
「ねぇ、廊下って何?」
「ま、廊下に立って反省してろって意味だろうな。」
「・・・すまなかったな。話のコシを折るつもりは無かった。」
「つもりがあったらもっとダメダメですよね。これからは気をつけて下さいよ?」
「ね~♪」
「お前達が言うな!」
「バケツ付きですよ。」
「え、あ・・・ゴメンゴメン。これからは気をつけるから。」
「・・・そうだな。」
「ムシャクシャしてた。今は反省している。」
「どこが反省してんのよ。」
「粘着は嫌われますよん。」
「あんたが言うな!」
「・・・いいですか?説明を続けますよ。
連合艦隊側はガ島からの撤退という方向で決まっていましたが、陸軍側は意見が分かれていました。
内地の大本営陸軍部や陸軍中央部などでは撤退意見が主流でしたが、
ラバウルに進出した第八方面軍司令部では、まだ意見が分かれていたのです。」
「日本の陸軍ってあんまり良い評判聞かないけど・・・」
「それは戦後に作られたイメージだと思いますよ。海軍善玉・陸軍悪玉という一種のプロパガンダでしょう。
誰が言い始めたかわかりませんが・・・はた迷惑な話ですね。一部では海軍が無能という意見もありますが。」
「そうなの?」
「・・・単純な二分化は問題があります。多岐に亘る物事を善悪で判断できるのなら、それほど楽な話はありません。
さて、第八方面軍ではガ島に二個師団を投入し
昭和18年2月中旬にヘンダーソン飛行場を奪回しようという計画が検討されました。」
「待て・・・。」
「どうしました?」
「どう考えてもそれは無理だろう?これまで何度失敗したと思っているのだ。」
「・・・ご安心下さい。計画が検討されただけで実行に移そうとはしませんでしたから。
もっとも、移そうとしなかったのではなく、まず不可能という結論に至っただけなのですけどね。
仮に50隻の輸送船を送り出したとしても半数が洋上で沈められ、
ガ島にたどり着いた残りの船も24時間以内に全て沈められるという・・・夢も希望も無い試算が出されましたから。」
「で、結局どうなったんだ?」
「第八方面軍ではガ島奪回の見込みは無く、
内地でも奪回の方針を打ち出すことも出来ない・・・もう、撤退以外に方法はありませんでした。」
「て事は、やっぱり撤退なんだね。」
「・・・はい。しかし、撤退作戦を実行するにあたり問題がありました。」
「問題って・・・?船なり何なりでさっさと撤退させちゃえば良いんじゃないの?」
「その船が問題なのです。先ほども言いましたがガ島周辺はすでにアメリカ軍の勢力圏。
輸送船などを使用したのでは敵潜水艦や航空機の良い的になってしまいますからね。」
「それじゃどうするんです?」
「大丈夫大丈夫、方法ならあるじゃん。」
「一応聞くが・・・方法とは何だ?」
「いつだったか駆逐艦とかってので輸送作戦してたじゃん。その船って足が速いんでしょ。それ使えば良いんじゃない?」
「・・・・・。」
「なによ~、その顔!また何か言うつもり?」
「・・・別に何でも無い。あまりにマトモな意見だったから感心しただけだ。」
「え、そう?」
「プルさんの意見は的確です。実際の作戦で使用された主要艦船は駆逐艦ですから。
あとは高速輸送船、上陸用舟艇なども使われたようです。」
「大当たり~!」
「へへ~、ありがと~♪」
「しかし、現地の海軍各部隊では駆逐艦の投入に難色を示していました。」
「え、なんで?だって他に方法って無いんでしょ?」
「・・・そうですね。他に手段は無いと思います。
ガ島周辺の制空海権を手に入れられるというのなら話は別ですが・・・まず無理でしょうから。」
「なら、なんでまた?」
「・・・もったいないからです。駆逐艦が。」
「をい!」
「何か?」
「何かじゃないでしょ!何なのよ、その消極的な理由は!人命がかかってんでしょ!」
「・・・ガダルカナルを巡る戦いで連合艦隊は駆逐艦を消耗していたからです。
あらゆる作戦に活用出来る駆逐艦は、どの部隊でも重宝されるものなんです。」
「だからって、そんな勝手な事言ってる場合じゃないでしょうが!駆逐艦と人の命とどっちが大事だと思ってんのよ!」
「・・・問題ありません。
連合艦隊司令長官山本五十六大将の強い意向により、
出来るだけの多くの艦艇を投入するという事に決定しましたから。」
「そうじゃないでしょ!私が気に入らないのはその姿勢よ!」
「・・・結果的に投入が決まったのだから良いじゃないですか。細かい事は言いっこなしです。」
「そういう問題じゃないわよ!」
「それにしても・・・久しぶりに聞いた気がするね。その人の名前。」
「山本何とかとやらか。話に出てきたのは随分前だったからな。」
「ミッドウェー以降の戦いでも、幾度か前線に指示を出していた事はあります。
久しぶりな気がするのは単に話に出さなかったからでしょうね。」
「ふ~ん。ま、前に比べたら何か影響力が少なくなった様な気はするわな。気のせいかもしれんが。」
「ガ島からの撤収作戦はケ号作戦と命名されました。それでは、撤退作戦の手順を―――」
「ねぇ、ちょっといい?」
「何です?」
「その作戦の名前ってなんか意味があるの?」
「?」
「ほら、ヤシマ作戦とかも名前に意味があったりするじゃないですか。だから何か意味があるのかな、と。」
「・・・そういう事ですか。ケ号作戦の名前の由来は捲土重来と言う故事成語なのだそうです。
捲土重来とは、一度戦いに敗れた者が再び勢いを盛り返して攻め寄せてくると言う意味があります。
・・・平たく言うなら、縁起をかついだ作戦名とも言えますね。」
「ふ~ん・・・。」
「それでは、ケ号作戦の具体的な手順について説明します。まず第一に一個大隊をガ島に上陸させる事から始まりました。」
「はい?」
「何か問題でも?」
「撤退作戦なんでしょ?なのになんでまた上陸させんの?」
「・・・撤収準備を行うためです。ガ島の将兵達では疲弊しているので満足に働く事すら難しいですから。
では、手順を箇条書きで記します。」
1.ガ島西端に兵員を移動、後衛陣地を築き撤退準備を進める。
2.1月中旬から航空部隊による作戦を開始し、敵航空部隊に対し打撃を与える。
3.上記の作戦開始後にラッセル島を占領。撤収作業の中継地点とする。
4.1月25~26日頃からガ島の第一線からの撤退を開始、戦線を縮小させる。
5.必要に応じて、ガ島に部隊を上陸させ後衛陣地確保に努めさせる。
6.2月初旬に撤退作戦を開始。戦傷者優先、続いて第二師団、第38師団主力。最期は後衛部隊とする。
7.残存兵力については潜水艦等で脱出させる。
「こんなところですね。何か質問は?」
「それにしても随分一気に説明したな。」
「あまり長々と説明する気も無かったので・・・それにこの方が全体の概要も掴みやすいはずです。」
「まぁ、それはそうかもしれないわね。」
「質問はこれと言ってないが・・・かなり周到な計画といった印象があるな。」
「それもそうですねぇ。日本軍と言えば無理・無茶・無策を地で行く軍隊のはずなんですけど。」
「・・・そういう悪質なプロパガンダは止めて欲しいものです。
さて、一応の計画は立てられましたが、現地でも内地でも誰一人として計画通り事が進むとは思っていませんでした。
山本大将ですら、撤退可能な人員は3分の1くらいだろうとの見通ししか立てられなかったそうです。
これは陸軍の現地司令部、第八方面軍でも同様でした。」
「ちょっと待ちなさいよ。3分の1しか撤退出来ないってどういう事なのよ?」
「言葉の通りです。
足の速い駆逐艦を使用したとしても、これまでの経験を踏まえると沈められてしまう可能性が十二分にあります。
また、撤収作戦の1度目は成功したとしても2度目3度目は失敗する・・・
現地の司令部ではそういった認識が多数を占めていた様です。」
「もっとちゃんとした計画―――」
「あれば苦労はありません。
どんなに周到な計画を立てたとしても失敗する時は失敗します。後は運を天に任せるしか無いでしょうね。」
「をい!」
「・・・いかな天才と言えど運に見放されれば負けます。こればかりはどうしようもありません。
次は具体的な作戦の推移について説明します。
まず、作戦の第一段階。1月14日、ガ島撤収作戦支援の為に歩兵第230連隊の一個大隊約750名が上陸しました。」
「そういえば、撤退支援って何すんだ?」
「ガ島に展開する各部隊への撤退命令の伝達、陣地の確保、陽動など色々です。
現地部隊は一杯一杯ですからね。現地の兵員約30000名の内、満足に動けるのは約7000名程だったと言われていますから。」
「ちょっと待った!7000って言ったら4分の1くらいじゃない!」
「それが何か?」
「動ける人数がそれだけって・・・一体どうなってんのよ!」
「餓えや病気、戦傷などで現地の将兵達は次々と力尽きていました。
撤収作戦が開始された頃だと約20000名が戦死していたはずです。」
「いくらなんでも死にすぎでしょ!何やってんのよ!」
「・・・だから撤退なんです。」
「これだから日本は・・・。聞くところによると20000名の尊い犠牲者のほとんどが病気と餓えだったそうじゃないですか。」
「・・・耳の痛い話です。」
「綾波さん、分かっているんですか!日本軍は人命を軽視していたんですよ!その為に罪も無い多くの人の血が・・・」
「あんたはどこぞの人権主義者か。」
「・・・ガ島の場合は人命軽視というより、戦略的な失敗ですね。もっとも、これは後知恵に過ぎない意見だと思いますが・・・
ガ島戦での失敗は海戦で勝利すると言う前提で立てられたため奪回作戦も失敗しただけ。
戦局如何では飛行場奪回も可能だったはずです。」
「つーか、それも極端な意見だと思うけど。」
「そうでしょうか?」
「そーよ。何度攻めても落とせなかったんだから勝てるわけないでしょ。」
「・・・忘れられているかもしれませんが、第二次ソロモン海戦の後に行った総攻撃で
川口支隊はヘンダーソン飛行場を攻め落とす一歩手前までいったんです。あと一押しがあれば・・・」
「だが、仮に飛行場を奪回出来ていたとして・・・アメリカ軍の攻撃を退け攻勢に移れるものなのか?」
「それは無理でしょう。仮にヘンダーソン飛行場を奪回出来ていたとしても、終戦の時期が少し延びるだけ・・・
少なくとも、当時の状況では日本が攻勢に出る事は難しかったとしか言えませんね。
・・・と言うより、ガ島を奪回出来たとしてもその維持が可能かと言うと正直、無理だろうというのが私見なのですけどね。
昭和18年と言うとアメリカ軍の準備が徐々に整い始めてくる時期ですから。」
「そなの?」
「それは後で話します。話していても気分的にも良いものではありませんし・・・あまり脱線してしまうのも問題があるので。」
「つーか、脱線しすぎ。少しは真面目にやんなさいよ。」
「・・・失礼しました。それではガ島撤退作戦の話に戻しましょう。
撤退支援部隊上陸の次は、ガ島将兵達を西端へ移動させる事でした。
移動させると言っても、ただ単に後退させるのではアメリカ軍の追撃を受ける可能性があります。
そこで、日本軍の真意を悟られない為に大規模攻勢の準備をしているかのように偽装する事にしたのです。
また、撤退する将兵達にも作戦目的は徹底的に秘匿されていました。」
「秘匿って?」
「うう、ワシはもう駄目じゃ・・・ゴホゴホ。」
「それ・・・危篤?」
「任務完了!これより━━━」
「帰投しますとか言うんじゃないでしょうね。」
「草野。」
「・・・それは仁(ひとし)でしょ!脈絡無いボケは止めなさい!て言うか秘匿から離れすぎよ!」
「秘匿とは秘密にして隠しておくという意味があります。月並みな言い方をするなら・・・」
「いや、別に言い換えなくても良いから。」
「て言うと撤退を内緒にしてたって事なの?」
「・・・そうなります。現場の将兵達はガ島西端にたどり着いた後もこれから逆上陸すると思い込まされていたそうですから。
陸軍は情報管理がしっかりしていたとは言いますが・・・その様ですね。」
「それに比べて海軍は何やってんのかしらね~。」
「海軍の暗号も、それほどダダ漏れと言う訳では無いと思いますが・・・」
「でも、漏れてた事に変わりは無いんですよね?」
「・・・はい。」
「それがどういう事か分かっているんですか!戦争においては情報こそが命!それを軽視するなど笑止千万一目瞭然!」
「・・・あんた、日本語ヘンよ。」
「・・・まぁ、仕方ありません。
暗号解読されているにしても何にしても、人手が違うのですからどうしようもありません。
暗号についても後で話す予定なので今は止めておきます。」
「・・・その方が良い。ガ島の話がどこかへ消えてしまうからな。」
「ガ島撤収作戦の次の段階は航空部隊による撃滅戦。
これはさっき話したレンネル島沖海戦を含んだ一連の攻撃を指します。
次はラッセル島の占領ですが・・・今回の行動は、あくまで撤収作戦の中継地の意味合いでの占領です。
したがって、作戦終了次第放棄する予定になってます。」
「ラッセル島って?」
「カート・ラッセルと言う俳優さんでつよ。有名どころでいくと・・・北極だか南極だかでの宇宙人との遭遇映画がありますよね。」
「それ、遊星からのなんたらってやつでしょ?北極か南極って・・・説明がテキトー過ぎ。」
「・・・宇宙人?我々スペースノイドの事か?」
「違う違う。宇宙人って言うよりは・・・化けモンだわな。
人間の姿に変化出来る化け物が現れて阿鼻叫喚の地獄絵図か繰り広げられるって言うパニックホラー映画さ。」
「化け物?何の話かさっぱり見えてこないが。」
「まぁ・・・、口で説明するのって骨が折れるわよね。」
「う~ん、腹が裂けて口になったと思ったら手を食いちぎったりとか
首から足が生えて動き回ったりとか・・・中々見目麗しい内容ですた。」
「あんたの美的センスはどーなってんのよ。あんな悪趣味な映画、気味悪いったらありゃしないわ。」
「・・・話が離れすぎです。とりあえず、地図をご覧下さい。
ラッセル島はガダルカナル島の西にある小島の事です。」
「ふ~ん、そうなんだ。ありがと~♪」
「・・・ガ島での戦線も順調に縮小し、次はいよいよ実質的な撤退作戦の開始となります。」
「・・・長い前フリだったな。」
「誰かさんのせいでつ。」
「・・・誰かさんって誰よ?」
「心当たりのある人が反応するんですよねぇ。」
「あんたは~!」
「・・・・・。」
「あ、気にせず続けてくれ。」
「撤収部隊の駆逐艦はショートランド泊地で出撃準備を整えていました。
しかし、間の悪い事に準備を進める日本軍に対しアメリカ軍来襲の報が届けられたのです。」
「アメリカ軍だと?・・・例の機動部隊とやらか?」
「・・・いえ、この時来襲したのはB-17フライングフォートレス、P-38ライトニングで両方とも陸軍機です。
空母から飛び立てる機体ではありませんから、どこかの飛行場から出撃したのでしょう。」
「甘いでつね。綾波さん。陸軍機であろうと気合と根性で空母から飛び立てるんでつよ?」
「ドゥーリットルの話ですか?あれは例外中の例外だと思いますが・・・」
「フフン、違いますね。なんてったって
滑走路が3000m必要な機体が空母から出撃できると言い放った国会議員が某国に存在するんでつよ?」
「何の話なの?」
「え?え・・・私に聞かれても・・・」
「・・・その話ですか。あれはただの電波です。すみやかに忘れて下さい。」
「だから何の話なのよ?」
「知るだけ無駄です。実際に言ったかどうかも不明ですし
そんな事に記憶の容量を使うのなら別の事を覚えた方がよほど有意義かと思います。さて―――」
「あの・・・、リアクションはそれだけですか?」
「他に何か?」
「いえ、別に・・・グスン・゚・(ノД`)・゚・」
「あんたが落ち込むなんて珍しいこともあるものね。」
「・・・せっかく拾ったネタが使えないなんて・・・シクシク。こうなったらアスカさんに八つ当たりをしてうさ晴らしを・・・」
「だから、なんでそこで私が出てくんのよ!」
「まぁ・・・いつもの事と言えばいつもの事だが。」
「うんうん。」
「そこ!納得しない!」
「これぞ人徳!」
「だから、日本語が違うっての!」
「・・・話を戻します。この時、現れたのはB-17が9機、P-38が12機です。
しかし上空警戒の零戦隊とブイン、バラレ等の周囲の飛行場から援護にやってきた零戦隊により
アメリカ軍側は有効な爆撃を加える事が出来ませんでした。
一連の戦闘でアメリカ軍はB-17を4機失っています。日本側も零戦1機が不時着、大破してしまいましたが・・・。」
「実質的な損害は軽微か。ところで、ちょっと聞きたい事があるのだが・・・」
「はい、何でしょう?」
「B-17、P-38と言ったか?初めて聞く名だが・・・新型か?」
「・・・B-17は四発爆撃機、P-38は双発戦闘機です。2機種の写真はこちらです。」
B-17フライングフォートレス P-38ライトニング
「ふ~ん、これが敵の飛行機なんだ。やっぱり日本のと何か違うね~。」
「違うって何がです?」
「ん~・・・何となくだけど。何かこう・・・何だろ?」
「私に聞くな。分かる訳がないだろう。」
「・・・・・。」
「おいおい、いきなり何落ち込んでんだ?」
「・・・やはり違いは分かるものなのでしょうか?
B-17は日本の爆撃機と比べても搭載量が多いですし、
P-38は航続距離・最高速度ともに帝国海軍機の主力である零戦を上回っていますし・・・」
「て言うと・・・日本軍の機体より性能が良いって事?」
「・・・B-17はともかくとして、P-38に関しては必ずしもそうとは言い切れません。
零戦の強さは軽量高機動を生かした格闘戦であり、P-38の利点は高出力エンジンを生かした一撃離脱戦ですから。
どんな兵器も使い方次第と言う訳です。しかし・・・」
「おかし。」
「だからつまらないってば。」
「この時点で・・・と言うより元々比べるのも酷なのですが
昭和18年になると日米での技術格差が明確になり始めているのです。
P-38に積まれているエンジンにはターボチャージャーという過給機が搭載・実用化されていたのです。」
「何それ?」
「当時のエンジンの造りを簡単に図で表してみました。こちらです。」
「何、このヘタクソな絵は・・・。」
「・・・中央やや右側部分がエンジン本体です。
空気を取り入れ燃料と混合、燃焼室で爆発させその爆発力がピストンの上下運動となり
爆発力による縦運動を回転運動に変換、動力となり飛行機の推進力となります。
そして、燃焼を終えた排気ガスは排出される・・・という当時のエンジンの工程が解って頂けたでしょうか?」
「図がヘボいって。もう少しちゃんと書きなさいよ。」
「エンジンの出力を高めるのに重要なのが、先ほどから言っている過給機の存在です。
ターボチャージャーと記してある部分がそうです。」
「無視すんじゃないわよ!」
「フフフ、綾波さん。あなたは間違えている!」
「バルブが無いとか、クランクシャフトはドコだとかですか?細かい事はあまり気にしないで下さい。私は気にしませんから。」
「ガガーン!・・・シクシク。」
「何度も図を出すのも何なので一気に説明します。
エンジンの出力を上げるには多くの混合気を燃焼室に送り込み爆発力を高める必要があります。
その補助となるのが過給機・・・板の様なものを回転させてムリヤリ空気を送り込む機械だと思って下さい。
・・・日本の工業力では、そのターボチャージャーを量産する事が不可能だったのです。
技術的な問題もあったようですが、一番の問題は国力ですね。」
「また?」
「ターボチャージャーの要となる板・・・タービンブレードという名前なのだそうですが
その原料が特殊なもので入手・加工が日本にとっては困難だったのです。」
「困難って・・・ダメダメだったの?」
「もちろん完全に無理と言う訳ではなく、少数の部隊で細々とやっていく分にはなんとかなりますが・・・
アメリカの様に大量生産は出来ません。おまけにタービンブレードは消耗品ですから長持ちはしません。
それに、何度か説明していますが戦いは数です。少数生産で運用したとしても焼け石に水というものですね。」
「そうなんだ・・・。」
「ちなみに、零戦にも過給機は搭載されていました。
造りが違うので一括りには出来ませんが・・・今で言うスーパーチャージャーと呼ばれるもので加速性能の向上には役立っていました。
しかし、構造上高高度になると出力が伸び悩んでしまうのです。
それが日本軍の悩みの種であり、高度を取られてしまえば日本は不利になってしまうので・・・」
「ところでさ、それと撤退作戦と何の関係があんの?」
「・・・さぁ?」
「さぁ?ってどーゆー事よ!何かしら意味があるんじゃなかったの?」
「マシュマーさんの質問に答えていたのに・・・どうして話が逸れてしまったのでしょう?」
「知らないわよ!」
「思いっきり脱線してたよな。」
「・・・すみません。」
「マシュマー様がヘンな質問するから。」
「何がおかしい?」
「だってぇ~、マシュマーさんが質問したから脱線しちゃったんじゃないですかぁ~。
だから、責任の一端はどうしてもありますしぃ~。」
「・・・その間延びした口調は何だ?」
「え、これはさっきも話した某国の国会議員の口調でつ。やはり時代の先駆者ともなるとこんな風になるわけですよ。」
「そうなの?」
「・・・多分違います。それでは話を戻しましょう。
アメリカ軍の攻撃を受けるというハプニングはあったものの、09:30に第一次撤収部隊が出発しました。」
「撤収部隊ねぇ・・・。やっぱり駆逐艦がメインなんだよな?」
「はい。駆逐艦20隻は一路、ガ島目指して出撃していったのです。」
「いよいよ、日本軍の説明も手抜きになってきたわね。」
「・・・説明しましょうか?」
「別にしなくていいわよ。全部駆逐艦なんでしょ?」
「そうです。」
「そういえば・・・今回は昼間に出撃しているのだな。大丈夫なのか?」
「・・・一応、護衛の零戦が18機随伴していました。
案の定、アメリカ軍機36~8機の攻撃を受け旗艦・巻波が至近弾により行動不能となっています。」
「・・・何してんのよ。」
「・・・夜間にガ島に到着するよう時間調整した結果でしょう。こればかりはどうしようもありません。
零戦隊も遊んでいたわけではなく、アメリカ軍機4機を撃ち落しています。
アメリカ軍の攻撃を凌いだ日本軍は駆逐艦文月を巻波の救援に残し、再びガ島を目指して進んで行きました。」
「損傷艦が一隻で済んだと言うのは不幸中の幸いか・・・。」
「はい。その後はアメリカ軍機に遭遇する事も無く、日本艦隊はガ島周辺まで無事に到達する事が出来ました。」
「ふ~ん・・・、アメリカ軍の艦隊はいないの?」
「・・・説明を省略しましたが午前中に日本軍航空隊が敵艦隊を追い払っています。
結果、数隻の魚雷艇くらいしか迎撃に現れなかったそうです。」
「一応、アメリカ軍も迎撃には来てるみたいですしぃ~。」
「止めんか!鬱陶しい!」
「日本軍は将兵収容のために艦隊を分離、カミンボ泊地・エスペランス岬へそれぞれ向かっていきました。」
「カミンボ泊地?」
「・・・エスペランス岬とそれほど離れた位置ではありません。
一応、地図で確認しておきましょうか。ガ島の西端と思っていただければ差し支えはありません。」
「さて、先ほど魚雷艇の話をしましたが、アメリカ軍も駆逐艦相手に攻撃を加えてきたのです。
しかし戦力差は明確、帝国海軍の誇る駆逐艦の攻撃により敵魚雷艇は蜘蛛の子を散らすように壊走していきました。」
「ちょっとちょっと!何なのよ、その表現は!」
「・・・事実を述べているだけですが何か?」
「あんた、中立の立場で説明するとか言って・・・あからさまに日本ひいきじゃない!」
「そうだそうだ!」
「オブイェークト!」
「・・・無闇に混ぜるな。」
「・・・多少の誇張はよくある話です。気にする事じゃありませんよ。」
「だったら最初から、中立ぶるんじゃ無いわよ!この独善者!」
「そうだそうだ!」
「うるさいっ!あんたはスネ夫か!」
「・・・では少し変えましょう。
アメリカ軍の魚雷艇が日本軍の行動を阻止しようと健気にも立ち向かってきたものの、
江風の45口径12cm単装砲により撃沈されてしまい・・・」
「ふむ、変わった趣向の説明だな。」
「変わって無いわよ!ファースト、あんたアメリカ嫌いでしょ!」
「ですから、私はアメリカ嫌いでは無いと何度言えば・・・」
「おかしいですよ!カテジナさん!」
「・・・・・。」
「どうしました?」
「・・・何で、そこでその台詞が出てくんのよ。」
「え?流れ的にそろそろかな~と思って。」
「どんな流れだ。」
「え~、だってぇ~、このタイミングを逃したら一生使えないと思ったからですしぃ~。
そうなったら後悔してもしきれませんしぃ~。」
「その口調、止めんか!鬱陶しい!」
「そもそも、そのカテジナさんって誰の事だ?」
「知らないんですか?通称カテ公と呼ばれる彼女の壊れっぷりは中々真似できませんよ?
アスカさん、貴女もうかうかしてられませんね。あっという間に王座を奪われてしまいますよ?」
「だから、どうして私に話を振るのよ!あの人の壊れ具合と私とは何のカンケーも無いでしょ!」
「精神崩壊という点で共通してる・・・。」
「うるさいってば!」
「て事は、カテジナさんってマシュマー様と同じ様な人なのかな?」
「何故、そこで私を出す?」
「ほら、素で壊れてるから♪」
「誰がだ!」
「・・・話を続けます。魚雷艇を追い払った日本軍は作戦通り収容地点に到着させ将兵を収容。
アメリカ軍の敷設した機雷に接触し駆逐艦一隻を処分するという事態がありました。
ですが、00:00には第一次撤収部隊はガ島を出発。二つに分かれた艦隊も合同し敵攻撃圏からの離脱を始めました。」
「何だ、うまくいったんじゃん。これなら後は帰るだけでしょ♪」
「・・・その帰り道も大変なのです。
05:50、攻撃圏から脱する為に北上を続けていた撤収部隊を追撃する為にアメリカ軍の航空部隊が現れたのです。」
「んもぅ!しつっこいわねぇ~!」
「・・・一応聞いておくけど、私の真似じゃないわよね?」
「おや、何で解ったんです?」
「解らない訳ないでしょ!」
「戦いなさい、私の腕の中で。勝った方が私が全身全霊を賭けて愛してあげるよ!」
「・・・その台詞は何だ?」
「それはハマーン様の台詞でつ。クワトロ大尉とシロッコさんが戦っている時に使われた台詞ですよん。」
「な!ば・・・馬鹿な!」
「・・・つーかその台詞もカテジナとかって人のでしょ。何、つまんない嘘ついてんのよ。」
「・・・そうか、驚かすな。」
「あれ~?、マシュマー様・・・それってジェラシーとか?」
「違う違う・・・、なぜそこまで話が飛ぶ?」
「え~、でも、あなたがハマーン様萌えなのはバレバレですしぃ~。」
「私は・・・ハマーン様に使える騎士。不埒な考えを抱くなど許されん事だ。」
「え~、今時そんなの流行んないよ。良いじゃん、玉砕しちゃえば。」
「そうそう(・∀・)ニヤニヤ」
「ええ~い、黙れ!」
「・・・いいですか?話を続けますよ。」
「え~!つまんな~い!」
「・・・すみませんが、本当に話が延び延びになってしまうので・・・お察し下さい。」
「で、どこまで話が進んでたんだっけ?」
「アメリカ軍の航空部隊が追撃に現れたというところまでです。
・・・この時の攻撃は、日本艦隊各艦の巧みな操艦技術により無傷で脱する事が出来ました。
アメリカ軍の追撃を振り切った日本軍はブーゲンビル島南端のエレベンタに無事到着。第一次撤収部隊が撤退させた人員は次の通りです。」
陸軍・5164名
海軍・250名
「全部、無事だったの?」
「・・・帰り道で沈んだ艦は無かった様です。」
「飛行機で攻撃されてんのに無傷ってのも凄いね~。」
「・・・訓練の賜物ですね。月月火水木金金と呼ばれた猛訓練があって
初めてそれだけの練度を誇っている訳ですから。」
「月月火水木金金・・・?何それ?」
「土日が抜けてるってゆーと・・・休み無しって事じゃねーの?」
「さすがに一年中休み無しという事は無いと思いますが・・・それだけ日本軍の訓練は厳しかったという事です。
日本軍の駆逐艦もアメリカ軍の駆逐艦と比べて圧倒的なまでの性能差はありません。日本軍の強さの根源は・・・」
「・・・人の力と言う事か。」
「・・・そうです。」
「機体の性能が決定的な戦力の差とはなりえない・・・。
どうやらあの方の言葉は的を得ている様だな。やはりシャア大佐は偉大だ。」
「どっかの誰かさんとは大違いだね。」
「うむ。」
「え?自覚してんの?」
「なに!誰かとは私の事だったのか?」
「他に誰がいるのかと小一時間・・・」
「・・・続いて第二次撤収作戦です。決行されたのは2月4日、動員された艦艇は駆逐艦20隻です。」
「説明は?」
「・・・面倒なので省略します。」
「そういや、前回の作戦で駆逐艦が何隻かやられてたよな?やっぱり今回の分はどっかから引き抜いてきたのか?」
「・・・巻雲が沈没、巻波が損傷していたため、別の駆逐艦2隻が編入されました。
出撃は09:30、前回とほぼ同じ時間ですが、今回は一度目と少し状況が違っていました。
・・・偵察機からの情報により、ガ島周辺にアメリカ軍機動部隊が進出している事が判明したのです。敵機動部隊の編成を簡単に説明します。」
アメリカ軍機動部隊
空母×1 戦艦×2 軽巡×2 駆逐艦×9
「・・・手抜き極まりないわね。」
「・・・空母はおそらくエンタープライズでしょう。日本軍は直ちに攻撃隊を編成、出撃させました。」
一式陸攻×9
零戦×17
「また少なくなってんだね・・・。」
「・・・悲しくなるような事を言わないで下さい。本当に日本は一杯一杯なんです。」
「なら、どーして戦争なんかしてんのよ?日本は不利なんでしょ?」
「・・・そういった苦情は、あのペテン師に言ってください。日本としては戦争するつもりなんか無かったのですから。」
「そんな事言ったって、戦争に踏み切ったのは日本じゃない。どっちが悪いかなんて分かりきった事でしょ。」
「・・・そういえば、国家の無条件降伏なんて話が出てきたのもこの頃でしたね。彼は本当に理解不能な人です。」
「ちょっと!ちゃんと人の意見に答えなさいよ!」
「・・・前にも話したはずです。日本は戦争を回避する為に最大限の譲歩を考えていた、
それを潰したのは他でも無いルーズベルト大統領です。
フライングタイガーはともかく、南方の艦隊を用いて挑発行為も働いていました。・・・状況証拠から、どちらに非があるかは明白ですね。
さて、敵機動部隊攻撃に向かった日本軍の第751航空隊ですが、彼らは攻撃を断念し引き返しています。」
「なんで?」
「・・・敵機動部隊が日本軍航空隊の攻撃範囲外へ移動してしまったからです。
しかも、その位置から動こうともしない・・・攻撃断念は仕方の無い事だったのです。」
「ふ~ん・・・。」
「・・・その後、アメリカ軍機動部隊は攻撃隊を編成し日本軍の第二次撤収部隊に攻撃を加えています。
この日も艦隊上空直衛の零戦が奮戦しましたが、駆逐艦舞風が至近弾を受け航行不能となっています。」
「アメリカも中々やるな。日本軍航空隊の攻撃範囲外から攻撃を繰り出すとは・・・。」
「・・・アメリカ軍の迎撃を受けつつも日本軍は作戦を続行。
前回と同じ手順により艦隊はガ島の将兵を収容し、翌日11:00頃にはエレベンタに無事到着しています。」
陸軍・4458名
海軍・519名
「・・・本当に説明が手抜きになってきたわね。」
「説明を簡略化している割には中々終わりません。不思議な事もあるものです。」
「ホントホント♪」
「あんたらが原因でしょ・・・。」
「・・・まぁ、同じ様な事を何度も話すというのも面白くはありませんからね。
つぎは第三次撤収作戦、次の作戦に投入された駆逐艦は18隻です。」
「減ったか?」
「はい。ですが、当初予定されていた損害よりははるかに少ない数字です。
元々、第一次撤収作戦は成功してもその後の確証は無かったのですからね。」
「言われてみれば・・・。」
「・・・三度目ともなると流石に前回までと同じルートを使う訳にもいかないので、
今回はソロモン諸島の外側を迂回するコースを取ることにしました。しかし・・・」
「おかん。」
「・・・離れすぎよ。」
「・・・15:40にアメリカ軍攻撃隊が来襲したのです。
今回は随伴の零戦隊も反応が遅れ、駆逐艦磯風が命中弾を受けてしまいました。
しかし、不幸中の幸いか磯風は火災を消しとめ、無事戦線から離脱出来ました。」
「・・・駆逐艦とかって爆弾当たっても平気なの?」
「運次第ですね。戦艦ですら当たり所が悪ければ一撃で沈んでしまうようなものなのですから。」
「ふ~ん・・・。」
「・・・もちろん運任せにするなどあってはならん。
しかし、世の中には運に左右される事も往々にしてあるのだ。覚えておいて損は無いぞ。」
「・・・その後は大した妨害も無く作戦を遂行出来ました。
手順は前回、前々回と同じ、カミンボ泊地・ラッセル島から部隊を収容し、翌日2月8日には無事にエレベンタに到達しています。
今回の撤収作戦で収容された人員は次の通りです。」
陸軍・2576名
海軍・62名
「これで作戦は終わりなのよね。」
「・・・しかし、日本軍将兵を完全に収容しきれてはいなかったのです。約1000名がアメリカ軍の捕虜となってしまいました。」
「・・・・・。」
「またいつも通り、何か文句があるんでつか?」
「別に・・・何でも無いわよ。」
「言いたい事があるならハッキリ言っておいた方がいいぞ?何事もタイミングが重要なんだからな。
後からツッコミ入れたって負け犬の遠吠えになっちまうんだぜ。」
「おかしいですよ!カテジナさん!」
「いや・・・、おかしいのはあんただから。」
「ウッソ!信念を貫き通す子供など薄気味が悪い!」
「カテジナ!僕はもうあなたに恋などしませんよ!」
「じゃあ私を殺してごらん・・・坊や!」
「そんなの汚い!卑怯ですよ!消えて・・・下さい!」
「だから、脈絡無い脱線は止めなさいって。」
「いや、脱線に脈絡は無いだろ。」
「細かいツッコミいれんじゃないわよ!」
「・・・触らぬ神に祟り無しか。それにしてもその台詞は何が元ネタなのだ?」
「エンジェルハイロウとか言うのを持ってきた敵の話でしょ?そういえば、あんたは知らないんだっけ?」
「その頃は確か・・・、我々は貴様等ロンド・ベルに対抗する為に兵力を温存していた時期だ。随分昔の事の様に思える・・・。」
「待ち伏せですよっ!カテジナさん、そこまでやるんですかっ!」
「来ると思ったよ、甘ちゃん坊やは・・・。
この艦が沈めばこの艦もろともみんなが幸せになれるんだろう?馬鹿にして・・・坊主がやること?坊主が・・・!」
「プル・・・あんた大丈夫?」
「まやかしがぁっ!」
「・・・・・。」
「プル・・・お前壊れたか?」
「え?何が?」
「何が?じゃない。さっきからお前は妙な事ばかり口走っているからだろう?」
「え~、だってあたしはカテジナさんって人の台詞を真似てるだけだし~。
脱線するからにはそれなりに気合入れないとね~♪」
「そうですよ。我が同志エルピー・プルは私の脱線に華を添えてるだけでつ。」
「て事は・・・あんたが元凶って事じゃん。」
「その意気や良し。だが・・・私の勝ち戦に華を添えるだけだ。」
「だから止めなさいってば。」
「そろそろよろしいですか?ガ島戦のまとめに入りたいのですが・・・」
「は~い。」
「・・・数ヶ月に亘るガダルカナル島攻防戦はこの日を持って終わりを告げました。
残念ながら大日本帝国軍の撤退という形で幕を閉じたのです。」
「この後は・・・どうなっていくの?」
「・・・日本軍は戦線を徐々に縮小していきます。
ソロモン海付近は完全に連合国側の勢力化となり・・・戦線はニューギニア方面へと移っていきます。」
「戦線縮小って言うか・・・追い込まれていってるだけでしょ?
太平洋戦争って、どうしても日本があっさり負けちゃったってイメージがあるんだけど。」
「・・・それは主観の違いでしょう。
日本はあっさり負けたとする見方もあるでしょうが、元々の国力が違いすぎるのです。
あれだけの差がありながら4年近くも持ちこたえたというのが、先の大戦に対する私の見方です。」
「・・・やっぱり何がなんでも旧日本軍を持ち上げるのね。少しくらい反省しなさいよ。」