エピローグ
「・・・次は、坊の岬沖海戦のその後になります。」
「つーか、その後ってあんの?」
「・・・もちろん。終戦までまだ間はありますからね。」
「でも、別にもう話す事無いんじゃないの?もう日本にできることなんかないでしょ。」
「ミもフタも無いことを言うなよ。確かに燃料とかはヤバイだろうが。」
「この時期は、沖縄への特攻作戦が開始され陸海軍の総力でアメリカ軍を攻撃していた頃なのですが・・・
沖縄方面への特攻作戦についてはすでに説明済みですので割愛します。」
「確かに・・・、説明が重複してしまうからな。」
「じゃあ、終わりで良いじゃん。」
「大東亜戦争 第三部 完!」
「お疲れ様〜♪」
「第三部って何よ、第三部って・・・」
「まぁ、通過儀礼ってヤツだな。」
「何の通過儀礼よ・・・。」
「・・・説明を続けます。
日米が沖縄で死闘を繰り広げている頃、アメリカにある異変がありました。」
「異変って?」
「4月12日、フランクリン・D・ルーズベルト大統領が他界されたのです。
彼の後任には、副大統領であったハリー・S・トルーマンが大統領の任に就きました。」
「アレの人、死んじゃったの?」
「・・・そうですね。」
「あれ、あんた喜ばないの?さんざんアレ扱いしてたじゃん。」
「・・・人の死は喜ぶものではありません。」
「そういう、あんたの偽善的なところが気に入らないんだけど。」
「人の死を喜ぶ様な方は人間的にどうかと思いますが・・・」
「それはそうだな。」
「まぁ、ルーズベルト大統領が天に召されたか冥府に逝ったかは神のみぞ知る話なので
どうでも良い事として話を進めたいと思います。」
「どうでも良いって・・・そりゃそうだけど。」
「さて、一方のヨーロッパではドイツの命運が風前の灯火となっていました。
東西から連合国軍の挟み撃ちを受ける格好になったドイツは奮戦空しく敗北。
4月30日にヒトラー総統が自殺したとされ、5月4日にドイツが無条件降伏を受け入れています。」
「ドイツも負けちまったか。」
「それはまぁ・・・多勢に無勢ですからね。
ドイツに関しては本家で行われているので詳しい話は割愛しますが・・・あれだけの戦力差がある相手によく戦ったものだと感心しますよ。
また、日本が島国であって本当に良かったとあらためて確認しました。」
「なんで?」
「・・・当時は大部隊を海を越えて移動させるのが困難だったからです。
そんな事ができるのは膨大な国力を有する一部の国だけ・・・日本とソ連が地続きだったら日本は滅亡してましたよ。
とは言うものの、地続きだったら歴史そのものも変わるでしょうから、ソ連以前に日本が存在出来たかどうかすら分からなくなりますが。」
「で、それが日本と何のカンケーあんのよ?」
「・・・地続き云々はどうでも良い話ですが、ドイツが負けてしまった事は日本にとっては問題です。
なぜなら、日本は文字通り完全に孤立する事になってしまいましたからね。
おまけに勝ち馬に乗り遅れるなと言わんばかりに日本に対し参戦する国も出てきて・・・何と言ったら良いのか分かりません。」
「明るい材料は何も無いか・・・。」
「・・・そうでもありません。アメリカ大統領が代わりましたから。
日本にとってはトルーマン大統領も決して褒められた人物とは言えませんが、アレよりは話が通じますからまだ良い方かと。」
「あんた・・・人の死は喜ばないとか言ってたじゃん。」
「・・・喜ぶことではありませんが、話が通じる様になったのは大きなプラスです。
未確定情報ながら、ルーズベルト大統領が日本の無条件降伏にこだわったのは
戦争開始時の日米交渉についての文章等が日本に残っていると不都合があったからだとか・・・
まぁ、この情報はガセの可能性が高いですから信用されなくて結構です。」
「なにそれ?」
「リメンバー・パールハーバーが情報操作だったと国民に知れ渡ることを恐れていたのでしょう。
事実、ハルノートの内容をアメリカ国民が知ったのは戦後の事です。
ハルノートを見ればアメリカが望んで戦争に突き進んだという結論に至るのは明白ですからね。
ルーズベルト大統領以降、大統領が2選以上しなくなったのも、この戦争での出来事と無縁では無いでしょう。」
「ガセとか言っておきながら、長々と話してんじゃないわよ。」
「・・・状況証拠から考えればありえない話ではありませんよ。
ルーズベルト大統領が行った情報操作は決して少ないものではありませんからね。
5選を目指していたとすれば、無条件降伏にこだわったのも決して理解出来ない訳ではありません。」
「5選か・・・、そんなことが出来るのか?」
「彼が生きていれば・・・
アメリカもアメリカで内部からアカに侵食されていましたからね。
戦後に行われたアカ狩りが無かったら、世界がどうなっていたか私には分かりません。
ヤルタ協定なんていうアメリカの国益すら無視するようなものまでソ連と結んでいる人ですから・・・」
「ヤルタ協定って?」
「満州や樺太のソ連の権益を保障するというものです。
ざっと見た感じですがアメリカの国益に有益な点は何も無く、アメリカにしてみればどうしてこんな協定を結んだのか解らないでしょう。
後任のトルーマン大統領ですら、その任に付くまでヤルタ協定の内容を知らなかったとか・・・恐ろしい話です。」
「話は聞かせてもらったぞ!(ガラッ!AA略」
「お前ら全員シベリヤ送りだ!(AA略」
「・・・何の話なのよ。」
「さて、日本では燃料が欠乏しているため、
海軍もまともな作戦行動が執れなくなってしまいましたが南方では話が違っています。
資源地帯をいまだに掌握している日本軍は孤立した友軍を救うため輸送作戦を決行しようとしていました。」
「え?まだ戦いがあったの?」
「はい。ペナン沖海戦と呼ばれるもので今回の敵はアメリカではなくイギリスとなっています。
場所はだいたいこちらの方です。」
「昭和20年5月12日アマンダン島付近に取り残された友軍を救うため、
補給物資を満載した重巡・羽黒と駆逐艦・神風がシンガポールから出発しました。」
「たった2隻だけか?」
「・・・そうです。しかし、5月15日、陸軍機からイギリス軍進出の情報を受け目的地への移動を断念、
日本艦隊はペナン島への退避を開始しましたが、翌16日にイギリス軍の駆逐艦5隻に補足されてしまいました。」
「それじゃ、日本の船はどうなっちゃったの?」
「物資を満載した艦船がまともな戦闘を行えないのはソロモン海での戦いの時に説明した通り、
重巡羽黒は物資を投棄して戦闘開始したものの、イギリス軍駆逐艦の放った魚雷が命中し速力が低下。
搭載したドラム缶に引火したところにイギリス艦隊が再び攻撃。司令官の橋本中将は神風に退避を命じ神風は命令通り戦線から離脱。
一方の羽黒は奮戦空しく沈没。その後、救援に戻ってきた神風が乗員の救出を行いました。」
「ボロ負けじゃん。」
「2対5の戦力でどうしろと?しかも、日本軍は物資を満載した状態です。
神風に至っては魚雷発射管すら外しているので戦闘力は低下しています。駆逐艦5隻に敵うわけがありません。」
「確かにな。」
「・・・ちなみに、このペナン沖海戦が今回の戦争で行われた最後の海戦になります。」
「それじゃ、ようやく説明も終わりって訳ね。」
「・・・そうですね。本当に末期になってしまいましたが、5月29日
海軍総司令長官兼連合艦隊司令長官兼海上護衛司令長官に小沢治三郎中将閣下が就任。
今後の海軍の舵取りは彼が行っていく事になりました。」
「なんか、久しぶりだね。その人が出てくるの。」
「で、なんでいちいち中将閣下なんて呼んでんのよ。」
「・・・中将のままでこの地位に就いているからです。
小沢中将閣下は最後まで大将への昇進を拒み続けたとか・・・ですから中将閣下なんです。」
「ワケ分からないわよ・・・。」
「さて、坊の岬沖海戦で連合艦隊の総力を結集した帝国海軍には、もはや艦隊行動を行えるだけの余力はありません。
4月から終戦までの数ヶ月間を戦ったのは、ほとんど潜水艦部隊となります。」
「潜水艦って海に潜れる船でしょ?」
「・・・そうです。また、回天特別攻撃隊の作戦行動も活発になってきました。
昭和20年4月下旬から終戦まで行われた攻撃によって得られた戦果は次の通りです。」
回天によると思われる戦果
輸送船15隻
巡洋艦2隻
駆逐艦5隻
水上機母艦1隻
艦種不明6隻
合計29隻撃沈
他2隻大破
「なんか・・・スゴ過ぎない?」
「・・・酸素魚雷の威力は以前説明した通り、回天の搭乗員が選りすぐりであった事も説明していたはずです。
強大な破壊力を持つ魚雷が正確無比に喫水線下にダメージを与える・・・非人道的とは言えその威力は絶大でした。
実質的な損害だけではなく、アメリカ軍に与えた心理的影響もかなりのものだったはずです。」
「そうなの?」
「・・・終戦直後、外務省と陸海軍の代表がマニラに招致され、進駐に関する打ち合わせの会議が開かれました。
その席でアメリカ軍のサザーランド参謀長は、回天はまだ海上に残っているか?と質問したそうです。
日本側が回天搭載の潜水艦が7隻洋上にあると答えると
それは一大事だ、即刻降伏を打電せよ!と大騒ぎになったとか・・・。
回天がいかにアメリカ軍に恐れられていたかを証明するエピソードのひとつと言えますね。」
「ホントかしら?」
「視認困難な上に回避不能、威力絶大な魚雷が高速で迫ってくるとすれば・・・その恐怖は想像に難くないでしょう?
私達の世界で例えて言うなら、魂×必中の暗黒大将軍がデフォールドでランダムに襲ってくる様なものです。」
「どこから攻撃されるのか判らないとなれば、確かに脅威と言えるな。」
「・・・それ以前に、暗黒大将軍はデフォールド出来ないでしょうが。」
「細かいことを気にしてはいけません。デフォールドが駄目なら援軍でもワープでもポゾンジャンプでも何でもいいです。」
「おいおい・・・。」
「でも、スゴいんだね。中に人が乗ってるってのがちょっとあれだけど・・・」
「なんだかんだ言って特攻兵器だからな。」
「それにしても、日本軍は人力に頼りすぎ。なんで無線誘導とかの発想が無いのかしら。」
「陸軍の話になりますが、イ号一型という無線誘導ロケット弾の開発は行われていました。
ちなみに、イ号一型は爆弾の搭載量が違う甲・乙の二種類に分類されています。」
「無線誘導?そんなのが日本にあったの?」
「一応は・・・ただ、使用方法は以前に説明した桜花と同様に母機に搭載して目標付近まで運ばなければなりません。
それに無線誘導と言っても当時の技術力では、実際に運用するにも様々な問題が山積みという状態でした。
加えて、実戦に投入されたとしても桜花と同様の危険性はあります。」
「でも、桜花に人乗せて特攻よりはよっぽどマシじゃん。」
「母機を操縦する乗員にとっては危険度は桜花以上です。
イ号一型は目標から10km付近の距離まで近づかなければならず、発射後も母機はイ号一型を追跡しなければならないのですから・・・。
それに命中精度という点で鑑みれば桜花にはとても敵いません。事前のイ号一型のテストからもそれは明白でしょう。」
「なんかあったの?」
「イ号一型の誘導テストの最中、故障により温泉旅館に突入してしまったとか・・・
それによりイ号一型は不名誉なあだ名も付けられてしまいました。」
「あだ名って何です?」
「それは・・・その・・・」
「何よ?ちゃんとはっきり言いなさいよ。」
「・・・検索してください。」
「何なのよ、その投げやりな答えは。」
「そんな事を言われましても・・・」
「そりゃまエロ爆弾なんてあだ名が付けられちゃなぁ。
しかも女湯に突っ込んだとも、爆弾が命中して裸の女中が逃げ回ったとも言われてるみたいだからな。
兵器として、これ以上不名誉なあだ名も無いだろうぜ。」
「確かに不名誉だ。兵器としての性能はともかく・・・ある意味、最も悲惨な兵器だな。」
「・・・はい。」
「あんた、今更なに恥ずかしがってんのよ。カマトトぶってんじゃないっての。」
「ガサツなアスカさんには無縁な話ですもんね〜♪」
「うるさいわよ!誰がガサツなのよ、誰が!」
「↑」
「ちょっと!手抜きにも程があるでしょうが!」
「・・・話を潜水艦に戻しますが、潜水艦での作戦は回天だけでは無くこんな兵器も実戦に投入されました。」
伊ー400型 特型潜水艦 特殊攻撃機 晴嵐
「これは?」
「この伊400型は特潜型と呼ばれるかなり大型の潜水艦です。
晴嵐と呼ばれる水上機が3機搭載可能、敵勢力圏へ入り込み攻撃機を射出し奇襲攻撃で敵を叩く事が目的となります。
平たく言うなら伊400型は潜水空母という分類になりますね。」
「潜水空母・・・」
「潜水艦に飛行機って・・・冗談みたいな話ね。」
<<こちらリムファクシ、発射系統が一部損傷した!散弾ミサイルが発射出来ない!>>
<<今、撃たなくて何のためのリムファクシか!味方の防衛線が次々と突破されているんだ!味方が崩れる前に急げ!>>
「だから、ワケの判らない脱線はやめなさいっての。」
「潜水艦に航空機を搭載するという研究は各国で進められていましたが、実際に運用していたのは日本だけとか・・・
この伊400型登場以前にも偵察機を潜水艦に搭載し運用したりしていました。」
「潜水空母とか言ったって、3機程度の飛行機が役に立つわけないでしょうが。」
<<3機相手にこの被害か!まるで釣り合わない!やっぱりラーズグリーズの話は本当だったんだ!>>
<<まだ、そんなおとぎ話を信じているのか?あんなのは作り話だ!>>
<<じゃあ、この損害をどう説明する?悪魔の所業そのものだぞ!>>
<<奴らこそラーズグリーズだ・・・、本物の悪魔だ。>>
「だから、脈絡のない脱線はやめなさいってば。」
「まぁ、伊400型が実際に役に立てたかどうかは神のみぞ知るという話になってしまいますが・・・」
「は?実戦に使ったって言わなかった?」
「・・・神風特別攻撃隊・神龍特別攻撃隊として出撃した伊400、伊401他ですが
作戦には投入されたものの進出途中に終戦となってしまったのです。故に実際に戦闘行為を行ったわけではないのです。」
「何よ、そのオチは。」
「・・・別にオチをつけたつもりはありません。」
「ついてるでしょうが。つまんないオチが。」
「この伊400型は戦後、アメリカ軍に接収され調査が行われました。
やはり、航空機を搭載する潜水艦と言うのは珍しかったのでしょうね。文字通りの潜水空母なワケですから。」
「で、戦後のアメリカの役に立ったとか言うんじゃないでしょうね。」
「そんな事を言って何が楽しいのですか?
具体的に伊400型のどの箇所を参考にアメリカ潜水艦の開発をしたのかという情報が無い以上、
何の推測にもなりません。潜水艦に飛行機を積む発想が他国に無かったわけではありませんし・・・」
「ふ〜ん・・・。」
「さて、潜水艦以外にも日本にはまだ艦艇そのものは残っていました。
大和に次ぐ40cm砲を搭載する長門や36cm砲を有する伊勢や日向、榛名も健在です。
空母も数が少ないとは言え天城や葛城はありますし、軽空母もまだ何隻かは残っています。
また、巡洋艦や駆逐艦も数が少なくなったとは言え、数的には戦えないわけではありません。」
「でも、燃料が無いんじゃどうしようも無いじゃん。」
「・・・そうですね。前回の伊藤艦隊の出撃が帝国海軍の全力であったというのは再三説明した通り。
艦隊行動を起こせるほどの燃料も用意出来なくなった以上、各艦は浮砲台となるより他に道はありません。
昭和20年7月下旬・・・、アメリカ軍の機動部隊を含めた大部隊な航空部隊が日本軍有数の軍港である呉に来襲しました。」
「呉?」
「・・・広島のあたりです。地形も入り組んでいて軍港として適した場所であると言えますね。
しかし、地形により潜水艦への対策は執れても空からの攻撃にはあまりにも無力でした。」
「燃料が無ければ回避運動も出来んだろうからな。当然といえば当然か・・・」
「そなの?」
「一応、擬装と言う方法があり、
例えば、戦艦なら木々や小屋を設置する事で艦を小島の様に見せかけたりというカモフラージュを行ったりしていましたが
戦艦の様な巨大な艦なら言うに及ばず、駆逐艦ですら擬装するにしても限界があります。
呉に停泊していた連合艦隊の残存艦隊は、たちまち敵航空部隊の攻撃対象となってしまいました。」
呉でアメリカ軍機の攻撃に晒される日本軍艦艇
航空戦艦・伊勢 軽空母・龍鳳 正規空母・葛城 軽巡洋艦・大淀
「なんか、一方的にやられてるようにしか見えないんだけど。」
「・・・これが燃料の無い艦艇の末路です。
各艦は主砲や対空砲で反撃こそしていますが、動くことが出来なければどうしようもありません。
7月下旬に行われた空襲により連合艦隊の艦艇の多くが大破・着底、または転覆するなどの甚大な被害を受けてしまいました。
大和が仮に沖縄に出撃しなかったとしても・・・おそらく、呉で被害を受けた艦艇の内の一艦になっていたのでしょうね。」
「だから、出撃して良かったっての?」
「・・・そうは言っていません。」
「行くも地獄、退くも地獄と言ったところか・・・。」
「・・・そうですね。どちらが正しくどちらが間違っているという事は無く
どちらの選択肢も駄目だったと・・・そしてそれ以外に道は残されていなかったという事です。」
「でも、燃料とか無駄に消費してんじゃん。
聞いた話だと、大和に燃料たくさん使ったからその後の輸送任務に支障が出たってあるんだけど。」
「日本近海を敵の潜水艦が跳梁跋扈する状況で輸送任務・・・ですか?
おまけに、日本近海にはB−29が機雷を大量にばら撒いています。近海での輸送任務と言えど、決して成功率が高いとは思えません。
正直、どちらに燃料をつかうべきかは私にはよく判りません。」
「でも、特攻させるよりはマシじゃないの?」
「・・・では、逆を考えてみてください。
伊藤艦隊による特攻を行わず、大和以下の艦船は日本各地で浮砲台として戦闘を行うもほとんどが大破・着底。
また、作戦を行わない事で生じる4月7日の航空機による沖縄特攻の成功率や戦果の低下。
一方の大陸からの輸送任務ですが、すべて完遂出来るとは考えにくいので5割が成功したと仮定しましょう。
それで海軍首脳部は賞賛されたと思いますか?」
「思いますかって・・・私に聞かれても困るけど。それに特攻よりは良いに決まってじゃん。」
「大和を特攻させなければ、その行為による結果は解りません。
沖縄にたどり着ける可能性がほとんど無かった事は明白ですが、実行してみなければその事実を認識するのは難しい事なのです。
大和が内地で敵の攻撃により戦闘不能となった歴史で・・・その結果に対し異論が出ないと言い切れますか?」
「仮定で話されても困るって。んなの解るわけないじゃない。」
「私は、大和を出撃させるべきだった・・・とする意見は間違いなく出ていたと思いますけどね。
やり方によっては、もしかしたら大和も沖縄にたどり着けたかもしれない。最後まで艦隊保全主義の海軍は無能(ry・・・と。
そんな批判が戦後に出ていたとしても何も不思議ではありません。」
「いくらなんでも、それは無いんじゃないの・・・?」
「・・・後知恵で批判する人というのはどんな状況でも材料を見つけてくるものです。
結果的に敗北が免れない状況で、やり方次第で海軍首脳部が賞賛された可能性があると本気で思えますか?私には無理です。」
「無理じゃねーの?どっちにしろ戦果らしい戦果がねーし。」
「でも、それはファーストの妄想でしょ?大体、なんで輸送任務が5割しか成功しないって言えるのよ?」
「末期の帝国海軍の戦力で輸送作戦を確実に行えるという方が難しいと考えられます。
大陸からの輸送なので移動距離は長くありませんが、昼間は航空機による妨害が考えられますし夜間では潜水艦の襲撃が起こりえます。
それらの襲撃を防ぐ術が無い以上、私個人としては輸送作戦に対し楽観的にはなれません。」
「あんた、そこまでして大和の出撃を正当化したいワケ?」
「・・・まさか。再三説明した通りですがまともな手段が無かったというだけの話です。
どちらの手段にも長所と短所があり、どちらが正しくどちらが間違っていたという話ではありません。」
「ねぇ、今ふと思ったんだけどさ・・・」
「?」
「大和を輸送船代わりにしちゃえば良いんじゃないの?そうすれば役に立てる上に危険も少ないじゃん♪」
「おお、さすが同志エルピー・プル!ナイスな着眼点でつ!」
「まぁ、一度きりの輸送作戦なら話は解らなくありませんが・・・
大和は輸送船ではありませんから多くの荷物は運べませんし、万が一にも沈められる様な事があれば目も当てられなくなります。
それに消費する燃料もかなりのものなので、あまり現実的な手段とは思えません。」
「そっかぁ・・・(´・ω・`)ショボーン」
「悲しむことはありませんよ。どっかの誰かさんにくらべたらよほど建設的な意見でつ。」
「うるっさいわね〜!」
「・・・娘、一つ質問してもいいか?」
「はい、何か?」
「アメリカ軍は機雷をばら撒いているとか言ったが・・・いずれはアメリカも日本本土へ侵攻するつもりなのだろう?
日本軍の艦船が動けなくなるほど機雷が設置されているのであれば、アメリカ軍自身の侵攻にも影響が出ないか?」
「言われてみれば・・・確かにそうよね。」
「だいじょぶじゃないの?ほら、機雷なんか人力でどかしちゃえば問題なさそーだし♪」
「デスラー機雷でつね♪」
「・・・ふふふ、久しぶりだな。ヤマトの諸君。」
「だから、脱線は止めなさいっての。無意味に話が長くなるでしょうが。」
「アメリカ軍の機雷は起爆装置等の性能が優れていた為、日本軍の技術では掃海困難でした。
また、アメリカ軍が予定していた本土上陸作戦を行う頃には機雷が爆発しなくなる様にあらかじめセットされています。
ですから、マシュマーさんが危惧される様な事はまず起きないかと・・・」
「なるほど。アメリカはそこまで考えていたか・・・」
「抜け目ねーんだな。アメリカって。」
「さて、本当に末期になってしまいましたが、8月6日、9日に日本に原子爆弾が投下されました。
これも国際法違反の無差別爆撃です。本当に民主党政権はロクな事をしませんね。」
「をい・・・、あんたの好き嫌いで話を進めるんじゃないわよ。」
「・・・トルーマン大統領は日本が降伏しなければ、まだ原爆を落とすつもりでしたが何か?
原爆の被害に対する研究はまだ進んでいなかったのでしょうから、高威力の爆弾としか思ってなかった可能性もありますが・・・
それでも容認できる行為ではありません。それとも何ですか?本気で原爆が終戦を早めたとでも思っているんですか?」
「それは違うけど・・・」
「昭和20年8月の時点で日本の生産拠点はかなりの損害を受けていました。
全くの零ではありませんが、戦力的に見ればアメリカ軍に対抗できる軍備を整える事は不可能です。
したがって、条件次第では日本も降伏には応じることは確実と言えます。」
「そうなの?軍部は本土決戦するつもりだったって聞いたけど・・・」
「選択肢の一つとして・・・。また、最悪の事態は想定しておかなければなりません。
交渉したとしても、講和できなかった場合に話が纏まりませんでした、ごめんなさいではどうにもなりません。
加えて、日本はまだ戦えるという事を示すことで少しでも良い条件を引き出せる可能性もあります。」
「そんなんでうまくいくのかしら。」
「外交とは駆け引きです。ちなみに、アメリカ軍の出した試算ですが
本土決戦に移行したするとアメリカ軍将兵の犠牲者が100万人に達すると予想されたとか・・・」
「戦いとは駆け引きなのだよ!」
「陰険マ・クベ大佐キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」
「余計なトコで口を挟むんじゃないわよ・・・。」
「でもよ、本土決戦してたとして本当に100万人も犠牲になるもんかねぇ。いくら防衛戦って言ったって無理が無いか?」
「実際には犠牲者20〜30万人くらいで、試算の話も誇張されていたんじゃないか?という話もありますが・・・
それでも、アメリカ軍に本土決戦を躊躇させるには十分過ぎる数字です。
そして、その判断基準の元となったのは各戦線で連合国軍に見せつけた日本軍の奮戦でしょう。
そう言った意味で、例え戦闘の結果が全滅であったとしても彼らの奮戦は無駄では無かったと言えるのです。
もちろん、特攻隊として散華された方々も同様ですね。」
「ふむ・・・。」
「でも、特攻隊の攻撃のせいでアメリカ軍が本土決戦を躊躇したなんて話は聞いた事無いんだけど。」
「・・・あなたは厨ですか?」
「な、なによそれ!」
「私は特攻隊だけでアメリカ軍が躊躇したなんて言っていません。
開戦以降、各地で行われた日本軍の奮戦によってアメリカ軍が侵攻を躊躇したと言っているんです。
実際に日本軍の攻撃によりアメリカ軍は損害を受けているのですから、それらを考慮して試算は出されているはずです。
そうして出された予想結果が本土を攻めればアメリカと言えどタダでは済まないというものなのですから・・・
だからこそ、特攻も含めた一連の日本軍の戦闘行為は無駄では無かったと結論付けたのです。何か問題でも?」
「む・・・」
「また、反撃食らってるな。」
「右舷に雷跡100!回避出来ませ・・・うわぁ〜!」
「るさい!」
「・・・また、アメリカが日本との講和を考慮し始めた背景にはソ連の動きがあります。」
「ソ連って北の国でしょ?」
「話は聞かせてもらったぞ!ガラッ(AA略」
「お前ら全員シベリヤ送りだ〜!(AA略」
「それ、さっきやった・・・。」
「で、ソ連とやらがどうかしたのか?」
「・・・日ソ中立条約を破棄し、ソ連軍が満州に侵攻を開始したのです。
支那方面や南方に多くの戦力を抽出していた日本軍ではソ連軍には対抗できませんでした。
また、アメリカにとってもソ連の行動は国益の観点から考えて、とても容認できるものではありません。
ここに来て、ようやく講和の機会が訪れたと言えます。」
「条約破棄か・・・、とんでもない話だな。」
「・・・そうでもありません。相手はあのソ連ですし今更と言った感じですね。
もっとも、当時の方々がソ連の実態を知っているわけはありませんから、まさに青天の霹靂だったでしょうけど・・・」
「ノー天気ねぇ。」
「アメリカですらソ連の実態に気づいていなかったのですから、当時の日本にそこまで求めるのは酷かと・・・」
「それで話を終わらせるんじゃないわよ。満州に居た日本人だって犠牲が多かったって話でしょうが。」
「そうなの?」
「そーよ。それに満州の日本軍だって日本人を見捨てて逃げたって話もあるし。」
「うわ!さすが悪名高い帝国陸軍でつねぇ。」
「住民と一緒に行動すれば戦闘に巻き込んだと言い、別々に行動すれば見捨てたと言い・・・一体、どうすれば良いんですか?」
「んな事言ったって、見捨てたって事に代わりは無いでしょうが。」
「このソ連軍の侵攻により、満州に在留していた邦人の方々が少なからず犠牲になってしまいました。
そういった点は否定するつもりはありません。」
「で、アンタの事だからまた擁護すんでしょ?」
「・・・誤解を解いていると言って頂きたいものです。
陸軍についてはさほど詳しくありませんが、各所で死力を尽くして戦った部隊もあったそうです。
しかし、圧倒的な物量の差はどうにもなりません。」
「そんな話ばっかだな。」
「そこで、満州の守備隊は国境付近での防衛を諦め、後方の都市に退避し防備を固めることにしたのです。
これはイレギュラーな出来事などではなく、あらかじめ規定されていた作戦通りに行われた軍事行動です。
もちろん、国境付近の防衛は叶いませんでしたし満州奥地まで出向いていた邦人の方々が犠牲となったのも事実です。
ですが、陸軍の防衛策により多くの方々が救われたのもまた事実なんです。」
「話が難しくてよく解らないなぁ・・・。」
「ホントホント。まるっきり素人お断りじゃないですか。」
「・・・いつも通り、完璧な選択肢が無いというだけの話です。
元を正せば侵攻したソ連に非があるのは明白なのに・・・どうして日本軍ばかり中傷されるのか理解出来ません。」
「ところで、コテンパンに論破されてしまったアスカさんは反論しないんですか?」
「誰がコテンパンよ!私はファーストの意見を聞いてる途中だっての!」
「・・・では、何か意見がありましたら伺います。」
「へ?え〜と・・・」
「プ(w」
「るっさいわね〜!」
「・・・刻々と悪化する戦況は日本を追い詰めていました。
昭和20年7月中旬にポツダム宣言が日本政府に提示されましたが、日本政府はポツダム宣言を黙殺。
その後、日本に原爆が投下されるという流れになっています。」
「なんで、黙殺してんのよ。どー考えても判断ミスでしょうが。」
「国体の保持・・・つまり天皇制の維持が保障されているかどうか不明だったからです。
国体の保持というのは日本が日本であることの証に他なりませんから、とても重要な要素なのです。
原爆投下後、アメリカとの交渉でどうやら国体は保持されるらしいという点が確認されたので
大日本帝国政府はポツダム宣言受諾の意向を固め・・・最終的には天皇陛下の御聖断により決定しました。」
「らしいって・・・をい。」
「ポツダム宣言には日本国政府の降伏を求める旨は記入されていません。
天皇制や日本政府の存続に関しては日本国民の意思に委ねられるという事になっていますからね。
これが、当時の日本が連合国から引き出せた最大限の譲歩だったかと推察されます。
仮にルーズベルト大統領が生きていたのなら、国体の保持に関する譲歩すら無かったかと・・・恐ろしい話ですね。」
「確かに、無条件降伏厨だからなぁ。」
「厨って・・・。」
「否定出来ますか?彼の言動から考えて・・・国家の無条件降伏に固執しすぎていた感は否めないと思いますが。」
「そりゃ・・・そうかもしんないけど。」
「ところで、戦争は終わったんですか?」
「終戦の日としては国内に玉音放送が流された8月15日が有名ですが、日本が降伏文書に調印したのは9月2日です。
その時が今回の大戦の終結した日と考えて良いでしょうね。8月15日以降も戦闘は続いていましたから。」
「そうなの?」
「日本軍は停戦に向けて行動を始めましたが、
ソ連はアレな国なので停戦に応じず、既成事実を作ってしまえと言わんばかりに侵攻を続けていました。」
「アレな国って・・・」
「現に、満州や樺太などでは8月15日が過ぎても戦闘が続けられています。
ソ連軍に制圧された街の邦人がどうなったかは言うまでも無いでしょう。ソ連軍の基本は略奪ですから。
また、シベリアに抑留された日本兵の方々も決して少なくはありません。
連合国に正義など無いことは明白なのですが、これ以上説明するのは腹立だしいのでこの辺りで止めておきます。」
「で、やっと説明終わりってワケね?」
「・・・いいえ。まだです。
8月15日の玉音放送が流れた日・・・、沖縄への特攻作戦を行っていた第五航空艦隊で特攻の準備が整えられていました。」
「特攻・・・戦争終わったのに?」
「この日、出撃した部隊の中に第五航空艦隊司令の宇垣纏中将も居ました。
彼は自らの責任で彗星艦爆5機を準備、沖縄方面へ最後の特攻を行おうとしていたのです。」
「指揮官自ら特攻か・・・。」
「ですが、彼は航空機の操縦は出来ません。したがって、少なくとも他に一名が特攻に参加する事になります。
もっとも、隊員の強い要望により彗星5機で出撃の予定のはずが11機での出撃に変更されてますけどね。」
「まさか、停戦してんのに出撃したとか言わないわよね?」
「・・・出撃しました。途中で3機が不時着しましたが残り8機が敵艦隊に突入しています。
彼らの特攻は停戦後の行為の為、宇垣中将は二階級特進も無く靖国に祀られているかどうかも解りません。
また、将来ある若者が停戦後に特攻で十数名無くなったというのも事実です。」
「な、何やってんのよ!停戦後に特攻って・・・しかも道連れじゃない!」
「確かに。連合艦隊司令長官の小沢中将閣下も
宇垣中将特攻の報を受け『若い者を道連れにするな、自決なら1人でやれ。』という趣旨の事を言ったとか・・・。
この特攻に関しては私はどうとも言えません。」
「あら、擁護しないの?」
「・・・宇垣中将の気持ちとしてはわからなくはありませんが・・・、
命令が届いてなかったとは言え、停戦後に死ななくてもいい若者の命が失われてしまったのは事実ですからね。
隊員達も自ら志願したとは言え・・・難しい話です、本当に。」
「イマイチ、歯切れ悪いわね。」
「また、海軍で特攻作戦が行われる発端を作った大西中将は玉音放送が行われた翌日に割腹で自決されています。
しかも介錯の無い状態で数時間にわたって苦しみぬいて逝かれたとか・・・本当に指揮官というのは大変なものだと思います。」
「自決って・・・死んじゃったの?」
「・・・そうです。こちらが大西中将の遺書の内容です。」
特攻隊の英霊に日す 善く戦ひたり深謝す
最後の勝利を信じつつ肉弾として 散華せり
然れ共其の信念は遂に達成し得ざるに到れり
吾死を以て旧部下の英霊と其の 遺族に謝せんとす
次に一般青少年に告ぐ
我が死にして軽挙は利敵行為なるを思ひ
聖旨に副ひ 奉り自重忍苦するの誡ともならば幸なり
隠忍するとも日本人たるの矜持を失ふ勿れ
諸子は国の宝なり 平時に処し猶克く特攻精神を堅持し
日本民族の福祉と世界人類の為 最善を尽くせよ
「で?」
「・・・彼の遺書を見てどう考えるかは各人の判断に任せます。
知っておいて頂きたいのは、特攻隊を指揮する立場にあった宇垣中将が特攻、大西中将が自決したという事実だけです。
その行為が良かったのか悪かったのかはここでは言及しません。」
「大西さんも死んじゃったんだ・・・。」
「じゃあ、栗田さんはどうなったんでつか?」
「なんで、ここでその人が出てくんのよ?」
「ほら、色々と有名じゃないですか。だからでつ♪」
「栗田中将は海軍兵学校の校長としてそのまま終戦を迎えています。
そういえば・・・情報源としては不確実ですが終戦日に前後して、ある話がありますね。」
「何それ?」
「戦争の終わりが決まったとは言え、そう簡単に承服できないのが人の心・・・
特に若い方々には終戦という事実が納得できず戦争を続けようとする動きも一部でありました。」
「戦争中止・・・馬鹿なっ!」
「・・・誰の台詞なのよ。」
「先ほど紹介した呉でも、他の地域と同様に戦争を継続しようとする動きがありました。
ですが、実際問題として戦争継続は難しい状況です。そんな最中、玉音放送を信じず徹底抗戦を声高に主張する将兵達に対し
『後ろにある屑鉄を見てよく考えろ!』と、彼らを一喝したという話があるのです。
ちなみに、後ろの屑鉄とは先の空襲で大破・着底した伊勢や榛名、天城などの連合艦隊の艦船の事を指します。」
「呉か・・・。そういえば、かなりの損害を受けていたのだったな。」
「ところで、一喝って誰がしたんだ?」
「・・・ですから、栗田中将です。」
「え?栗田さん、そんな事言ってたの?」
「ネットで拾った話なので、その内容が事実かどうかは解りません。ですが、中々興味深い話だったので紹介しました。
作り話にしても、その内容に整合性が取れていたので・・・私は信じたいと思います。」
「おいおい、信じる信じないの話じゃないでしょうが・・・。」
「栗田中将とやらは色々と揶揄されている様だが、前線で戦っていた軍人である事に代わりは無いからな。
本当に無能であれば指揮官として人の上に立つことなど出来ん。」
「栗田さん、ちょっとカコ(・∀・)イイかも♪」
「・・・その話がホントならね。」
「・・・この戦争を生き抜いた帝国海軍の残存艦艇の多くが復員船として使用されました。
また、船があっても人がいなければ動きませんから、乗組員の多くは戦後も復員船の操艦任務に就いています。
戦争が終了したとは言え、周辺海域には機雷が放置されているなど依然危険な状況でしたが、彼らは任務を立派に遂行したのです。」
「そういえば、葛城さんも復員船になったんですよね〜♪」
「へ〜、アンタにしてはよく覚えてるわね。」
「空母・葛城は復員船の中でもかなり大型船だったため、復員した方々に与える安堵感というのも、かなり大きかったとか・・・
空母としては活躍出来ませんでしたが、日本のために働いた事実に代わりはありません。」
「ミサトさん(;´Д`)…ハァハァ」
「何、考えてんのよ・・・。」
「復員船としての任務を終えた駆逐艦以下の各艦は賠償艦として各国に引き渡されました。
特に有名なのは駆逐艦・雪風の話ですね。」
「有名って何が?」
「雪風は戦後中華民国に賠償艦として引き取られる事になりました。
その時、雪風の乗組員は船体の隅々まで整備し、部品も一つ一つ磨き上げ見苦しくない状態で引き渡したそうなのです。
視察に訪れた連合軍の将校も、その様を賞賛したとか・・・」
「立つ鳥、後を濁さずってヤツか?」
「そんなところでしょうね。この話は雪風に限らず他の艦艇でも散見されたとか・・・
他の軍艦の多くは解体されたり防波堤として再利用されたりしていますが、戦艦・長門と軽巡洋艦・酒匂には別の任務が待っていました。」
「なにそれ?」
「アメリカ軍がビキニ環礁で行う原水爆実験の標的艦として使用される事となったのです。
1946年7月、長門と酒匂は標的艦としてその生涯を終えました。」
「うわ・・・。」
「うるっさいわね〜!」
「酒匂は矢矧と同型の新鋭艦でしたが、核兵器に耐える事は出来ず24時間に亘って炎上を続けた後に沈没・・・
長門も引き続き行われた実験により同じく沈没していますが、周囲のアメリカ艦船が沈んでいく中
同艦は実験後も4〜5日の間頑強に浮き続け最後は誰にも看取られること無く海中に没していったそうです。
ちなみに、こちらが大和に移揚するまで連合艦隊旗艦を務め、また海軍の象徴として国民にも慕われた長門です。」
戦艦・長門
(大正9年当時)
「大正・・・?年号が違うようだが?」
「これは完成当時の長門・・・原爆実験に使われる20年以上昔の姿です。
竣工後も幾度かの大規模な改修が施されているので昭和20年当時とは大分姿が変わっています。
年式的には竣工から相当の期間が経過している艦ですが・・・すぐに沈まなかったのは基本設計が優れていたからなのでしょうね。」
「なんか、我等の意地を見たか!って感じだね〜♪」
「カリウス軍曹、そんなに好きなのか?」
「だって、なんかいかにもって感じが良いじゃん♪」
「ところで、戦争の話はもう終わりか?」
「・・・そうですね。この戦争により日本は多大な被害を受けました。人的にも物的にも・・・です。」
「ほんと、何のために戦争したのか解らなくなるわね〜。」
「・・・その台詞はアメリカにお願いします。
アメリカはこの戦争に勝利することは出来ましたが彼らが得たものなど何もないのですから。
一方の日本は当初の戦略目標であった日本という国家の存続は果たしています。
戦術的には敗退という結果でしたが、戦略目標を果たしたという点において日本はその目的を達成したと言えるでしょう。」
「なにそれ?難しくてよく解らないんだけど。」
「戦争と言うのは戦いに勝つことも大事ですが、それ以上に戦略目標の達成がより重要なのです。
極論から言ってしまえば戦略目標さえ果たせれば、戦術的な敗北というのはその敗北自体あまり重要では無くなってしまうのです。」
「・・・アンタ、まさか日本は戦争に勝ったとか言わないわよね?」
「・・・まさか。どう考えても戦術的な敗北は否定出来ません。
しかし、条件付きで講和を結べたという点で、日本はその目的を果たせたという事を理解しておくべきです。
国家存亡の危機という、真珠湾直前の破滅的状況からはどうにか逃れる事が出来ているのですからね。」
「そりゃ、そうかもしんないけど・・・なら最初から戦争なんかしなけりゃ良かったじゃん。」
「・・・・・。」
「な、なによ。」
「・・・もういいです。説明するのも疲れました。」
「なによそれ!」
「見放しキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!」
「ついに呆れられたか・・・。」
「るさい!」
「戦争をしなければ、日本の石油備蓄は1〜2年程度で尽きていました。
ルーズベルト大統領が枢軸国の無条件降伏に拘っていたのは再三説明した通り・・・事態の好転は1945年4月まで待たねばなりません。
しかし、当時の状況では1945年8月に講和を結べた世界情勢となるまで日本が持ちこたえるのはまず不可能です。
そうなれば、日本はアメリカに戦わずして屈していた可能性だってあったと容易に推察できませんか?
その選択が史実より良い条件での敗北である保障はどこにも無いのです。
また、容易に敗北する事で日本が列強の植民地となっていた可能性も全くの零では無いのですよ?」
「む・・・」
「もう止めとけ・・・これ以上サンドバッグになりたくないだろ?」
「アスカさんではヤツらに勝てない・・・!」
「るさいわよ!」
「日本が戦争を行った副次効果として、列強の植民地支配を終わらせたという点もありますが・・・それはそれで別の話です。
また、連合国と講和を結べた背景には多くの日本人の尽力があった事も忘れてはなりません。
先人達があの戦争を戦い、生き抜いたからこそ今の日本が存在するのです。どう言葉を変えようと、この事実は変わりません。」
「だからって、アンタみたいに旧日本軍万歳なのもどーかと思うけど。」
「国や軍の方針や戦術の細かい部分に間違いが無かった訳ではありませんが、日本はこうして今も存続しています。
もちろん、失敗した点についてはきちんと学習しておく必要がありますが、
負けたから先の戦争や当時の先人達を全否定するという単純な思考には陥って頂きたくないものです。
彼らの失敗から学び、これからの日本に生かすことが最も重要だと思うのですが・・・いかがでしょうか?」
「・・・異議は無い。失敗を繰り返している様では本当に愚者になってしまうからな。」
「マシュマー様が言っても説得力ないよ♪」
「ええ〜い、うるさい!」
「ファースト、あんたエラソーな事言ってるけど・・・教訓ってたとえばどんなよ?」
「・・・色々ありますが、一番重要なのは国際的な孤立を避ける事ですね。
それには、日本という国の舵取りを誤ってはならないという前提が必要になります。
今の日本は選挙によって国民の代表を選ぶ民主国家ですので、国政に興味を持ち、きちんと選挙に行き投票を行う事が重要です。
後は売国奴や敵の工作活動に惑わされないだけの知識を持つ・・・そんなところでしょうか。」
「なんか・・・地味だね。」
「・・・地味ですが重要なんです。戦争に勝つには戦略的に勝利しておかなければなりません。
戦略的な勝利とは事前の準備段階で勝てる体制を整えておく事・・・これには軍事だけではなく政治も絡んできます。
軍事で戦略的不利に陥らない為には、戦争以前の政治の段階で有利な立ち位置を抑えておく事・・・これが最も重要な点です。
そして、日本の政治で最も影響力が大きいのは選挙以外のなにものでもありません。
・・・意外に思われるかもしれませんが、選挙というのは国家の存亡にも関わるとても大事な国政の一端なのです。」
「なんか、大げさすぎない?」
「・・・誇張ではありません。
戦前の失敗は政治腐敗と売国奴の暗躍、報道機関の煽りと国民の熱狂にあります。
先の戦争と同じ失敗を繰り返さない為にはその辺りの事実をきちんと認識しておく必要があります。
同じ事の繰り返しでは先人達にも申し訳が立ちませんし、同じ失敗を繰り返す愚は犯したくありませんからね。」
「いつも同じことを繰り返してるアスカさんには難しかったんですよ。ね〜♪」
「ね〜♪じゃない!ファーストのいう事くらい解るわよ!」
「・・・まぁ、先の戦争の意義についてはこんなところでしょう。」
戦いにこそ負けたが日本は国家の存続という
戦略目標は立派に果たした。
「確かに戦略目標は果たしてっけど、戦術的に見ればかなり微妙じゃないか?」
「・・・否定はしませんが、もともとの国力差から考えれば仕方の無い話です。
少数のザクUの部隊でジェガンの大部隊に勝てると思いますか?
パイロットの技量も考慮しなければなりませんが、普通に考えて無理な話ですし・・・日本のおかれた状況も大体そんな感じなんです。」
「確かに、圧倒的な兵力差は決定的な戦力の差となりえるからな。」
「どーでも良いけど、これで今度こそ終わりよね?」
「いいえ。まだあります。これまでほとんど話してこなかった題材があります。
それを説明するには、話は開戦当初まで遡り・・・」
「ちょっとちょっと!アンタはいつまで続けるつもりよ!」
ウイィィィン(ドアの開閉音)
「ふぅ、やっと見つけたわ。」
「ミサト!いきなりどうしたの?」
「宇宙怪獣の太陽系への接近が確認されたの。各機体のパイロットは今後は警戒待機になる予定よ。
宇宙怪獣の兵力は圧倒的、報告だと敵が7分で宇宙が3分って話だから。相当な数だと見て間違いないわ。」
「で、何で作戦部長のあんたが直々にこんなトコへ?」
「使徒のアンタ達もここに居るって聞いたからよ。
パイロットはともかく、アンタ達はまだこの艦にはそんなに馴染んでないでしょうからね。ま、監督も兼ねてってトコかしら。
どう?やっぱりまだ慣れてなかったりする?」
「そーなんですよ。シャイな私は中々皆さんの輪に入れなくて・・・」
「どの口で言うのよ。」
「・・・話のコシを折るようだが、貴女は誰だ?」
「ミサトさんじゃん。知らないの?」
「私はこの艦に乗って間もないからな。連邦側の主要幹部の情報は得ていたが、
使徒を撃退していたネルフの作戦部長である葛城三佐がこの様な女性だったとは・・・。」
「マシュマー様、気が多すぎ。」
「だ、誰がだ!私はハマーン様に仕える騎士だ、気が多いとかそういう問題では無い!」
「あらぁ〜、それじゃもしかして女性蔑視ってヤツかなぁ?」
「そうでは無い。事前の情報と実態があまりにも違いすぎていたのでな・・・。少し驚いただけだ。」
「ん〜、まぁ良いわ。それは置いといて、そこの使徒二人組。アンタ達には今すぐブリタイ艦に向かってもらうわ。」
「へ?」
「私たちがですか?」
「そーいえば、アンタ達って使徒だったんだっけ。すっかり忘れてたわ。」
「さすがにもう慣れちゃったしね。」
「そんなに褒められるとテレちゃいますねぇ。」
「褒めてない褒めてない。」
「でも、なんでゼントラーディの船に行かにゃならねーんだ?」
「ゼントラーディの技術で元の大きさに戻してもらわないと戦えないでしょ?
いつ敵が来てもおかしくない状況だから、万全の体制で備えておく必要があるのよ。」
「りょ〜かい。んじゃ行くか。」
「そ〜ですね。では、皆様ごきげんよう。」
「ひし形。アンタ、ミサトの前だからって猫かぶってんじゃないわよ。」
「ごきげんよう。アスカさん。性格が乱れていてよ?」
「うるさい!ワケ判らないネタは止めなさいよ!」
「いいから行くぞ。時間も無いだろーし。」
「は〜い♪」
「マシュマー様、こちらに居られましたか。」
「ゴットン?お前がなぜ葛城三佐に同行している?」
「ん、彼も私と一緒でアンタ達を探してたって訳。」
「そうか・・・、それで何の用だ?」
「ですから、宇宙怪獣の襲撃に備えての待機命令をお伝えに上がりました。
小隊編成、ならびに搭乗MSであるザクVカスタムの準備も整っております。」
「判った、すぐに向かう。」
「エルピー・プル、お前はマシュマー様の小隊の二番機だ。一緒に来てもらおう。」
「え〜!あたし、ジュドーと一緒が良い〜!」
「ヤツの小隊はもう満杯だ。駄々をこねるんじゃない。」
「ぶ〜・・・。」
「私の小隊には他に誰が加わるのだ?」
「彼女の妹であるプルツーです。投入出来る機体の都合上、3機で最前線を受け持つ事になっております。」
「そーなんだ・・・、プルツーが一緒ならまぁ良いかな。」
「ゴットン、お前も待機任務に就け。MSの操縦は出来るのだろう?」
「え?じ、自分が・・・でありますか?」
「当然だ。葛城三佐の話では敵は相当数に上るらしいからな。
決戦に臨むのなら、持てる兵力は出来るだけつぎ込まなければなるまい。余剰MSならあるのだろう?」
「そーねぇ・・・。そういえば、鹵獲したザクTなら残ってたかも。」
「そういう事だ。ゴットン、お前は最後列で構わんから出撃に備えろ。」
「しかし、自分の本分はあくまで巡洋艦エンドラによる後方支援でありまして・・・」
「これは上官命令だ。拒否は許さん。」
「・・・はっ、了解しました!ゴットン・ゴー、これより待機任務に就きます!」
「うむ、その意気だ。いかに旧式とは言えザクTも貴重な戦力・・・1人1殺の覚悟で戦いに臨むのだ、良いな?」
「マシュマー様、宇宙怪獣相手に1人1殺じゃ間に合わないんじゃないですか?」
「ええ〜い、四の五の抜かすな!要は心構えの問題だ!
ハマーン様の理想成就を阻むモノは全力で叩かなければならん。これは我々の責務なのだぞ!」
「も、申し訳ありません!」
「では、我々はこれで失礼する。」
「んじゃ、またね〜♪」
「みんな、行っちゃったね・・・。」
「そーね。なんか騒がしいだけだったけど。」
「洞木さん、あなたはみんなと一緒に避難してちょうだい。これから戦闘になるかもしれないから。」
「分かりました。それじゃアスカ、綾波さんも・・・気をつけてね。」
「大丈夫よ。宇宙怪獣程度に負けるわけないもの。」
「うん。それじゃ。」
「で、私らの編成は?やっぱりEVAで小隊組むの?」
「ん〜、今回はそれは無いわ。
ほら、初号機はS2機関搭載しちゃったから最前線に行ってもらっても問題は無いし、シンちゃんもちゃんと立ち直ったから大丈夫よ。
甲児君や竜馬君たちと組ませてあげれば心配は無いでしょうしね。」
「そりゃまぁ・・・、前に比べたらちょっとはマシになったものね。」
「レイは今回、マクロスの直援に回ってもらうわ。
宇宙怪獣がどこから来るのか判らないし、アンビリカルケーブルで移動の制限も出来ちゃうものね。」
「・・・了解しました。」
「じゃあ、私は?」
「え、アスカ?
アスカはその・・・ね。今回はちょっと休んでてもらおうかなって・・・もちろん待機はしていてもらうけど。」
「へ?なにそれ?」
「その、つまり・・・お留守番。」
「留守番!?イヤよ、そんなの!」
「だって、しょうがないのよ。初号機は最前線に送っちゃうからシンちゃんとのユニゾン攻撃は無理だし・・・
他の部隊に配置しても、どうしてもアンビリカルケーブルがネックになっちゃってるし。
かと言って、直援任務ってのも性に合わないでしょ?レイと一緒に戦いたい?」
「イヤ!なんでこんな軍ヲタの人形女と一緒に戦わなきゃなんないのよ!」
「・・・私は軍ヲタじゃない。」
「るさい!厨のくせに!」
「・・・何の事だかよく解らないけど、そーいうワケだから。
レイ、早速準備してちょうだい。あなたの小隊の他のメンバーとも打ち合わせしなくちゃならないし。」
「・・・了解。」
「ミサト・・・、私は?」
「あ・・・、アスカはまだゆっくりしててもらっても大丈夫よ。必要な時には連絡するから。
もし退屈だったら、ボルテスチームのメンバーとかカツ君とかと一緒に待機しててもらっても良いし。」
「イヤ!なんで私が万年二軍の連中と一緒に居なきゃなんないのよ!」
「ま、適当に暇つぶしてて。後でちゃんと連絡するから。それじゃね〜。」
「・・・さよなら。」
「ちょっと・・・、ミサト!ファースト!」
ウイィィィン(ドアの開閉音)
「・・・・・。」
ウイィィィン(ドアの開閉音)
「おや、どうかしたんですか?ずいぶん難しい顔をしてますけど。」
「うるっさいわね〜!あんたには関係無いでしょ。第一、何しに来たのよ?」
「用が無ければ来ちゃいけないんですか?
皆さんどこかへ行ってしまってお暇でしょう。せっかくですから、私が話し相手になってあげますよ。」
(・・・こんな性格してたっけ?)
「あなたも大変みたいですね。大勢相手に孤軍奮闘。
反論すればあっさり切り返される・・・火病のひとつでもしたくなるというものです。私にも経験がありますから。」
「・・・なんか、いかにも見てたかの様に言うじゃない。」
「ほっほっほ、僭越ながら一部始終は拝見させていただきました。」
「・・・ドコでよ。」
「まぁまぁ。そういう細かい話は置いといて・・・せっかくなんだからお話しましょうよ。」
「んな事言われても、別にあんたと話す事は無いし・・・」
「そうですね・・・。
昔々あるところに不幸な少女が居ました。彼女は意地の悪い継母や義妹たちに囲まれて、散々こき使われていました。」
「それ・・・、シンデレラじゃないの?それに話って言ったっておとぎ話じゃない。
こういう場合の話ってそーいう事じゃないでしょうが。」
「ある日、お城で舞踏会が開かれることになりました。
意地の悪い継母や義妹は舞踏会に出かけることが出来ましたが、その少女には着ていくドレスすらありません。
いつもどおり家事をこなしていると・・・」
「で、魔法使いが出てくるってんでしょ?」
「木を切り倒すつもりが、誤って斧を湖に落としてしまいました。」
「はい?なんか話が混ざってない?なんでシンデレラが木を切り倒すのよ?」
「すると湖から女神様が出てきました。女神様は言います。」
『ゴボゴボゴボ、ここで問題です。あなたが落とした斧は次のうちどれ?』
ゲッタートマホーク
バスタートマホーク
スマッシュホーク
「・・・あのさぁ。」
「はい?」
「話がくだらなさすぎるんだけど。」
「酷い!どうしてそんな事を言うんですか!
アスカさんが1人で寂しそうにしていたから、ちょっとでも気を紛らわせて貰えたらいいな♪と思って一生懸命考えたのに!」
「・・・あんたに同情されるなんて、私もヤキが回ったのかしら。」
「メェ〜♪」
「それはヤギ!つまらないボケはやめなさいっての!」
「・・・アスカさん、私達は境遇が似ているんですよ?
ボケかツッコミかの違いはあっても、基本的にはやられ役・・・悲しいと思いませんか?」
「別に・・・私はあの人形女に負けたつもりは無いわよ。」
「そんなアスカさんに朗報です!こちらをご覧ください♪」
大空のサウラビ
「へ・・・なにそれ?」
「先の大戦時に活躍した朝鮮人パイロットのお話ですよ。一見の価値はありますよ?
これをもってすれば、アスカさんは次の講義での勝利者間違いなしです。」
「なんか、眉唾モノな気がするんだけど・・・」
「信じるものは救われます。とにかく一読してみてください。」
「ふ〜ん・・・。ま、見てみるわ。」
「ねぇ・・・」
「なんでしょう?」
「これ、ネタじゃないの?」
「酷い!どうしてそういう事を言うんですか!せっかくいい題材を見つけてきてあげたのに!」
「いや、だって、そうとしか思えないし・・・
大体、東風とか言う戦闘機の上昇限度が740mってのはどういう事よ?
しかも戦闘機なのにエンジン七基搭載って・・・ギガントじゃあるまいし、どー考えても使い道が無いじゃない。」
「・・・アスカさん、その発言はネットへの挑戦ですよ?」
「は?」
「ネットの海は広大です。確かにその中には嘘とも呼べる情報も転がっています。
ですが、中にはキラリと光る情報だってあるんです。ネットの情報だからと言って必ずしも全部が全部嘘とは限りません。
必要なのは嘘を嘘と見抜くことが出来る基礎知識なんですよ。」
「いや、だから話そのものが変だって・・・」
「アスカさん!そういう細かい事はどうでも良いんです!
あなたは勝ちたくないんですか!嘘でも何でも勝てばよかろうなのです!嘘を付いたら突き通す!
たとえ嘘でも百万回繰り返せば真実になるんです!第一、その程度の捏造は実際に行われているじゃないですか!」
「実際に行われてるってをい・・・。」
「まぁ、いろいろあるじゃないですか。色々と・・・ふふふ♪」
「じゃあ、聞くけどさ。このネタでファーストに勝てんの?」
「それはやってみなければ判りません。何事も挑戦です。」
「をい!それじゃ負けますって言ってるようなモンじゃない!」
「やれやれ、困った人ですねぇ。
ああ言えばこう言う・・・あなたにはケンチャナヨ精神が足りませんよ?
あなたは地獄に落ちた場合、蜘蛛の糸が垂らされてもこんな糸で登れるか!と逆ギレするタイプですね♪」
「るさい!大体、いつからアンタはそういう性格になったのよ?」
「はぁ・・・いつからと言われましても、生まれてからずっとこんな性格ですが?」
「嘘つくんじゃないっての。ずいぶん前に出てきた時と言動が全然違うでしょうが。」
「私は今回、始めてここに来たのですがそれが何か?」
「へ・・・?なにワケの判らない事を言ってんのよ。」
「ワケが判らないのはこっちです。
私がここに来たのはついさっきって言ってるじゃないですか。あんまりしつこいと怒りますよ、プンプン!」
「だって、あんたシャクティでしょ?」
「酷い!誰がシャクティですか!」
「え?違うの?」
「いくら褐色肌が珍しいからって、何でもかんでもシャクティなんて酷すぎます!
クローディアさんとマーベットさんと私が一列に並んだら、アスカさんには誰が誰だか判らなくなるんだわ!
肌の色が同じだからって見分けがつかないなんてあんまりです!鬼!悪魔!白人はこれだから・・・」
「勘違いしてたのは謝るけど・・・今の時代に白だの黒だの肌の色は関係ないでしょうが。
それに、クローディアさんやマーベットさんとはさすがに見分けつくっての。」
「シクシク、ウリは傷付いたニダ。アスカさんには謝罪と賠償を請求するニダ・・・。」
「止めなさいっての。じゃあ、アンタ一体誰よ?」
「リューシアナッサ・アンピトリーテと申します。以後、お見知りおきを。」
「・・・・・。」
「?」
(・・・そんな名前の人、うちらの部隊にいたっけ?
正直、ロンド・ベル隊ってこの時期になると人の数が多すぎてイマイチ覚えきれないのよね〜・・・。)
「どうかしましたか?」
「ううん、なんでもないわ。」
「それでは、アスカさんにあなた自身の問題点を指摘してさしあげましょう。」
「問題点?」
「そうです。アスカさんの敗因は簡単です。
自分から相手の土俵に乗って議論しているから負けてしまうのです。」
「む、だって・・・それはしょうがないでしょ。」
「正面突破というのも中々良い心がけですけど、勝つためなら手段を選んではいけませんよ。
相手を自分のペースに引き込まなければ議論で勝つのは不可能です。
そういった意味で最良の教材はMMRでしょうね。あのキバヤシ極大電波スパイラルに勝てる人なんかいませんから。」
「キバヤシ極大電波スパイラルって・・・論説の上にトンデモ仮説を立てて、
それを検証しようとしても、次の瞬間には新しいトンデモ仮説が積み上がってそれが無限に続くってアレ?」
「そうですよ。その手段を持ってすれば綾波さんを論破する事は十二分に可能でしょう。」
「それ論破とかじゃなくて電波過ぎて相手にされないだけじゃないの?」
「しかし、結果的に相手を黙らせる事は可能です。今更何をためらうんですか?
さぁ、アスカさんもレッツトライ!」
「するかーっ!あんた、私を電波にしたいワケ?」
「もう、本当にワガママさんですねぇ。それでは最後の切り札を伝授してあげましょう。」
「をいをい、別に頼んでないっての。」
「つれない事を言わないでください。これを持ってすれば綾波さんに必ず勝てると言うのに・・・
ま、知りたくないのなら無理にとは言いませんけど。」
「それ、ホント?」
「インディアン、嘘つかな〜い♪」
「インディアンって・・・をい。
まぁ、一応聞くだけ聞いておくわ。あんまり期待してないけど・・・」
「では、教えてあげましょう。その秘策と言うのはですね・・・」
プルルルル(携帯の呼び出し音)
「おや、どうやら急用が出来てしまったようです。私も忙しい身なので、これで失礼しますね。」
「え、ちょっと!ここまで引っ張っておいてそのオチは無いでしょ!」
「ウリは雲の様に気ままに生きる主義なんです。今更とめても無駄ですよ♪」
「待ちなさいよ!いくらなんでも中途半端過ぎるでしょうが!」
「ウリは雲!ウリはウリの意志で動く!ざまあみたかラオウ!!
ウリは最後の最後まで雲のリューシーニダ!!」
「ラオウって誰よ・・・って、ちょっと待ちなさいっての!」
「残念でした。機会があったらまたお会いしましょう。アニョンヒ、ケセヨ〜♪」
ウイィィィン(ドアの開閉音)
(なんだったのよ。あの人・・・。)