ブーゲンビル島沖海戦 後

 

 

 

 

「偽善的・・・」

「暴力的よりはいいんじゃないですか?」

「うるさいっての!」

「ホントに食ってかかるのが好きだな。」

「違うわよ!ファーストの態度が気に入らないだけ!この調子じゃ、日本人なら誰を持ち出しても否定しないわよ、きっと!」

「それは誤解だと思います。特に嫌いな人はいませんけど(゚Д゚)ゴルァ!!と思う事なら多々ありますから。
個人を特定はしませんが、共産主義者や売国奴等も好きにはなれない人種の一つですね。」

「・・・だそうだ。」

「そーいうところが偽善的なのよ!何なのよ、その中途半端な態度は!」

「何といわれても・・・言葉の通りです。」

「あ〜、もう!イライラするわね〜!何で、言いたい事をハッキリ言わないのよ!」

「確かに、控えめな表現をしている部分はありますが・・・」

「ん、そうだったのか?」

「ほら、見なさい!そういう優等生っぷりが気に入らないのよ!
私は、あんたが腹の底に秘めてる事を正直に話してくれればそれでいーの!」

「だれかさんも、口を開かなければ可愛いんですけどねぇ。」

「あんたには言ってないっつってるでしょうが!」

「ん〜、そろそろお腹すいてきちゃったな〜。」

「お願いだから口を挟まないで・・・」

「・・・やはり、ハワイ攻略戦を見てみたかったというのはありますね。
太平洋の要衝ハワイは要塞化されていたと言いますが、その要塞に対し連合艦隊はどのような戦術を用意するのか・・・。
長期戦になれば劣勢は免れませんから、短期でどう挑むのか・・・考えれば考えるほど興味が沸いてきます。」

「待ちなさいよ!何で脱線すんのよ!」

「・・・言いたい事を言っているだけです。
ハワイ全体の正確な情報は分からないのですが、ワイキキビーチには主砲である14インチ砲が2門
同型式の7インチ副砲が2門、他にも臼砲や高角砲が装備されていたようです。
それに対し、どの様に戦うか・・・想像のしがいがあると思いませんか?」

「ストップストップ!待ちなさいっつってんでしょ!」

「どうしました?」

「どうしたじゃないわよ!あんた、人の話聞いてんの?」

「・・・だから、言いたいことをそのまま口に出しているだけです。
ハワイ攻略に空母は必要ですから、やはりミッドウェーでの作戦中止は問題が無かった判断であると言えますね。
惜しむべくは・・・」

「もういいわよ!」

「それにしても、なんでこの嬢ちゃんはムキになってんだ?」

「こういう事でしょ。」

綾波さんのイメージを悪くする

自身の人気が上がって(・∀・)ウマー

めでたく一軍入り

「なるほど。」

「納得するんじゃない!」

「・・・話が脱線しすぎましたね。そろそろ戻しましょう。」

「・・・何の話してたんだっけ?」

「あたしも忘れちゃった〜。」

「そら忘れるわな。」

「・・・昭和18年11月5日、
敵機動部隊と陸軍航空隊によりラバウルが大損害を受けたところまでです。
また、進出した栗田艦隊はトラックへの退却が決定・・・と、こんなところでしょうか。」

「まぁ、そんなものだろう。」

「日本軍がボコボコにやられちゃったってトコまでよね。で、この後はどうなるの?」

「どうすると思います?」

「はい?」

「ですから、どう反撃するか?という話です。皆さんならどうします?」

「加粒子砲で長々距離射撃でつ!」

「プルツーとオールレンジ攻撃かな〜♪」

「・・・・・。」

「ほれ、そういう風に脱線するから・・・」

「そーよ。そういう事ばかり言ってるから話が終わんないのよ。」

「意外と真面目だな。」

「意外は余計!私はいつでも真面目だっての!」

「人の振り見て我が振り直せ・・・。」

「るさい!」

「すっかりいつも通りだね〜。」

「あの、何か意見はありますか・・・?」

「ん〜、反撃って言われても・・・どこに攻撃するのか分からないんだけど。」

「・・・それもそうですね。攻撃目標は大きく分けて3つあると思って下さい。」

1.ニューギニア方面の敵飛行場
2.タロキナ周辺の輸送船群
3.敵機動部隊追撃

「これだけなんですか?」

「大まかに分けると大体そんな感じかと・・・。」

「ふむ、やはりセオリー通り機動部隊を叩いた方が良いだろうな。
せっかく出てきたのだから、撃破出来るのならそうしておいた方が良いだろう。」

「そう?今さら空母にこだわってもしょーがない気がするけど。」

週一空母だもんね。」

「・・・だが、他を攻撃したとしてもそれほどの戦果が見込めるとは思えん。同じリスクを背負うのなら空母だろう。」

「まぁねぇ・・・、飛行場相手なら位置も分かっているからある程度警戒出来るだろうが、空母は動き回るからなぁ。」

「・・・なんで私の意見にはそこまで反対すんのよ。」

「別にお前の意見だから反対しているつもりは無いが・・・?」

「どちらかと言えば、アスカさんが突っかかってるイメージですなぁ。」

「フンだ・・・。」

「・・・攻撃を受けた日本軍はすぐさま索敵機を飛ばしました。
目標はラバウルを空襲した航空機を飛ばしたであろう敵機動部隊です。」

「すご〜い!マシュマー様、当たってるじゃん!」

「当然の結果だ。」

「なら、なんでロンド・ベルに負けちゃったの?」

「何を言い出す?元々、お前達と我々とは物量差がありすぎるというのを忘れるな。」

「あんたも、自分らが負けたの物量のせいにしてんの?ファーストと言ってる事がやたら被ると思ったらどうりで・・・」

「・・・・・。」

「何を言うか!物量だけならまだ良い・・・我々にとっては精神コマンドとやらの存在が一番問題なのだぞ!」

「それって・・・何か駄目なの?」

「・・・少し説明してやろう。
我々の攻撃はただでさえ命中率が低く設定されているというのに、
精神コマンドとやらで集中ひらめきを使われれば目も当てられなくなる。
・・・あまつさえ気合や熱血、さらには魂だと?」

「そりゃま、使えるんだから使わないともったいないし・・・」

なんなんだ、この差は!我々はただの人身供与か!
貴様等に撃破された連中にも意地や思想、大儀があるのだ!こんな・・・こんな寄せ集めの集団如きに・・・」

「まぁ、そんな事言ってもしょーがねぇって。
生身の人間に勝てない使徒なんてレッテル貼られる俺にくらべりゃマシだって。」

「例え志半ばで力尽きようと、その死は決して無意味なものではありません。
後世にその意思を伝えれば良いのですから・・・」

「何、ガトーみたいな事言ってんのよ。」

「・・・さて、話を続けたいと思います。
ラバウルから飛び立った偵察機の内の1機がラバウルの南東230浬付近に
十数隻からなる機動部隊を発見したと言う報告が入りました。」

「へ〜、よく見つかったな。」

「つーか、見つける事すら出来なかったらそれこそ駄目でしょ。」

「偵察機からの報告を受け、15:15に攻撃隊が出撃しました。攻撃隊の編成は次の通りです。」

九七艦攻×14

「これだけ?」

「その様です。もちろん、偵察に飛び立った機体を除いてですが。
出撃から1時間以上経った16:40頃、攻撃隊より先行していた偵察機から敵空母発見の報告が入りました。」

「ふむ、しっかり仕事をしているようだな。」

「・・・この時受けた報告は、以前受けたものと敵の位置が大きく違っていました。
攻撃隊は別働隊と判断、新たに報告を受けた艦隊に対して攻撃を開始したのです。」

「零戦とかの護衛っていないんでしょ?そんなんで大丈夫なの?」

「・・・日がすでに落ちていたので敵迎撃機の心配は要らないでしょう。
そもそも、距離と時間的な要因を考えたからこそ護衛機を付けなかったのでしょうからね。」

「単に、護衛に付けられるだけの零戦が居なかったのかもしれんがな。」

「で、戦果は?」

「次の通りになっています。」

大型空母(轟沈)
中型空母(撃沈)
大型巡洋艦×2(撃沈)
駆逐艦×2(撃沈)

「さて、攻撃を終えた日本軍ですが━━━」

「ちょっと待った待った!何食わぬ顔して話を進めんじゃないわよ!」

「どしたの?」

「どうしたもこうしたも無いでしょ。少しは疑問に思いなさいよ。どう考えてもその戦果はおかしいでしょうに。」

「口を挟まなくても、そのうち説明してくれますよ。少しくらい静かに聞いてても良いんじゃないですか?」

「甘いわよ!あの日本軍万歳ファーストの事だもの。
私らがツッコミ入れなかったらそのまま話を進める気なんだから!」

 

 

「鏡よ鏡、この世界で一番美しいのはだあれ?」

「お妃様、それは綾波姫でございます。」

「キーッ、くやしぃぃぃっ!」

ドゴッ(殴打音)

「フフフ、こうなったらこの毒リンゴで亡き者にしてくれる・・・。ヒョッヒョッヒョ。」

「こうして、お妃は老婆へと姿を変え・・・」

 

 

「・・・で、あんたら何やってんの?」

「それって・・・白雪姫だっけ?」

「そうですそうです。アスカさんの心境を遠まわしに説明しようと思いまして・・・」

「もしかして、私がお妃ってんじゃないでしょうね?」

「何をおっしゃるやら。ここまでお妃の性格にドンピシャな人は、アスカさん以外にいるわけないじゃないですか。」

あんたら〜!

「そういえば・・・私達、文化祭で白雪姫の劇やってたわよね。」

「あれ?そうなんですか?」

「ん〜、確かにそんな事もあったわね。その時は私が姫の役だったけど・・・」

「マジか?」

「・・・信じられん。」

「2人して、似たようなリアクションすんじゃないわよ!
私が白雪姫の役をやって何が悪いのよ!むしろトーゼンでしょうが!」

「・・・・・。」

「王子は誰がやったんです?」

「碇君よ。照れてたけど結構頑張ってたわよね。」

「ふ〜ん、そーいうのって結構楽しそうだね〜。」

「で、お前さんは誰の役だったんだ?」

「・・・木。」

「は、木・・・?」

「木・・・樹木です。」

「へ〜、なんか意外だね。」

「にしても、馬鹿シンジが大事なシーンでとちるからせっかくの劇が台無しになっちゃったのよね〜。
せっかくの私の晴れ舞台だってのに。」

「そんな、碇君だって頑張ってたんだし・・・」

「甘いわよ!頑張ったって結果が伴わなきゃしょーがないの!
そもそも、劇の途中で自分の役を忘れるなんて言語道断よ!」

「・・・でも、その部分が一番お客さんが笑ってた。」

「るさい!」

「脱線しすぎですねぇ。」

「うんうん。」

「・・・すみません。」

「つーか、キッカケを作ったのはあんたらでしょ。したり顔でツッコミ入れんじゃないわよ。」

「戦果の話がどこをどうやったら白雪姫になるのかさっぱり分からん。」

「まぁ・・・いつもの事だ。」

「話を戻しますが・・・、先ほどの戦果は大本営によるもので国民に向け大々的に報じられた内容です。」

「どーりで。出撃したのが14機なのに戦果が6隻なんてどう考えてもおかしいっての。」

「実際の戦果はどうだったのだ?」

「・・・次の通りです。」

戦車揚陸艇・魚雷艇等3隻に攻撃
戦果は上記の艦艇の内一隻を撃沈

「どういう事?」

「・・・攻撃隊が攻撃を加えたのは、ラバウルを空襲した機動部隊ではありませんでした。
夜間により、戦果の確認が困難だった事も誤認の原因です。」

「つーか、どう考えても空母撃沈だなんて戦果はおかしいでしょ。なんで正確な情報を国民に流さないのよ。」

「戦果を誇張するのは、よくある話ですから・・・。」

「よくある話で済ませるんじゃ無いわよ!」

「では、無意味に正確な戦果を流し国民の不満を煽るのが正しい選択とでも?
戦争遂行するにあたって、不利な情報を流したところで何の意味もありません。」

「確かに・・・一理ある。」

「て事は・・・戦争を続ける為なら嘘をついても良いって言うの?あんたは。」

「・・・そう受け取って貰っても差し支えはありません。」

「な、なんてこと言い出すのよ、あんたは!」

「・・・何かいけませんか?昭和18年当時の日本にとってはそれくらいしか方法が無いと思いますが。」

「エヘへ・・・、さっぱり分からないんだけど。」

「日本は元々、長期戦を考慮していませんでした。
かの山本大将ですら一年は戦えるがその後は分からないと言っていたくらいです。
そもそも、日本とアメリカの国力を考えれば長期戦のプランなど考えるだけ無駄なのです。」

「だからって、アンタの妄想のハワイなんたらの短期決戦で講和が結べるとは限らないでしょ。」

「当然です。そんな事で講和が結べれば苦労はありません。」

「をい・・・。」

「しかし、一番見込みのある選択肢だとは思います。
講和を結べる可能性が短期決戦1%・長期戦0%とするなら、少しでも可能性の高い選択肢を選ぶのが筋です。」

「つーか、短期決戦1%てのの根拠は何なのよ?」

「・・・分かりやすいと思って。何なら0%でも良いですよ。」

「はぁ?」

「・・・長期戦に夢も希望も無いと理解していただければ問題はありません。
同じ零でも選ぶなら短期決戦と言うだけの話ですから。
もっとも、これはただの私見なので必ず正しい意見と言うわけでもありません。」

「頭がこんがらがってきちゃった・・・。」

「おお、同志エルピー・プル!おいたわしや・・・」

「で、それと大本営発表と何の関係があんのよ?」

「・・・短期決戦に失敗した以上、残る手段は自ずと限られてきます。
すなわち、終戦までの時を延ばす以外に方法はありません。
ひたすら戦争を長引かせて、世界情勢が変わるのを期待するくらいしか方法は無いでしょうね。」

「え〜と・・・、運任せでつか?」

「そう考えていただければ問題は無いかと。」

「おいおい・・・、ついには運任せかい。」

「ですから、そういった苦情はペテン師大統領にお願いします。
軍相手ではなく、国家に対し無条件降伏を求めてくるなんて・・・何を考えているのか本当に理解に苦しみます。
それに、講和を結ぼうにも日本とアメリカを仲裁してくれる国すら無いのが当時の現状です。」

「余計に分からないんだけど・・・」

「・・・そうですね。当時の日本には、講和を結ぼうにもアテが無かったと言う事だけ覚えておいて下さい。」

「そうなの?」

「日本は戦争後期にソ連に仲裁を頼もうとしていたくらいです。
停戦するにも打つ手が無かったというのが正確なところでしょう。」

「ソ連に仲裁・・・そりゃ無茶だろ。」

「ああ、正気とは思えん。」

「当時はソ連の正確な内情がつかめていなかった状況ですから仕方ありません。
アメリカ大統領ですら、騙されていたくらいですから・・・」

「で、大本営発表を擁護すんのとどういう関係があんのよ?」

「これまで説明した日本の状況を考えていただければ分かるはずですが・・・。とりあえず、箇条書きで。」

1.短期決戦に失敗
2.アメリカに講和の意思は無い
3.仲裁してくれる国も無い

「で?」

「この状況で戦争を終わらせる方法を何か思いつきますか?
言っておきますが、日本の無条件降伏という選択肢は除外ですよ。」

「・・・そうだな。無条件降伏など、負け犬以外の何者でもない。
国家の安全を預かるものとしては選ぶ事など出来ない選択肢だ。」

「なんで駄目なのか分からないんだけど・・・」

「・・・以前に説明しなかったか?それに、少し考えれば分かる事だと思うが。」

「わかんな〜い!」

「だからな。国家の無条件降伏となると、国の全てを敵国に委ねる事になるのだ。
無論、法も秩序も旧来のものは意味を成さなくなる。
極端な話シベリア送りにされても文句は言えないのだぞ。生きてゆく保障を全て失う事になるのだ。
それも、国に所属する人間全てだ。・・・そんな注文を承服出来るか?」

「ん〜・・・どうなんだろ?」

「考えるまでもありませんよ。簡単な選択です。」

多数の国民を守る為に戦う
運を天に任せて降伏

「どちらを選ぶかというだけの話・・・どちらが良いかは考えるまでも無いでしょう。」

「ホントにそれだけしか選択肢が無いの?あんた、極端な事しか言ってないように思えるんだけど・・・」

「なら、極端ではない意見をお願いします。この際ですから、日本国内の不協和音は無いものと考えます。」

「どういうこった?」

「・・・無条件降伏と言わないまでも、
連合国側が過酷な要求を突きつけてくれば日本国内では意見が分かれるでしょう。
降伏するか徹底抗戦か・・・そういった面倒な話は除外し、
無条件降伏でなければ日本は降伏するという仮定で話を進めるだけです。」

「話についていけませんなぁ。」

「ほんとほんと。」

「そんな条件でも、早期に停戦する方法は無いでしょうね。無理です。」

「む・・・。」

「玉砕ばかりですねぇ。」

「るさい!」

「・・・と言う訳で、残された手段は徹底抗戦になる訳です。
もちろん、講和の可能性を探り続ける必要はありますが当分は戦争を続けるしかないわけです。
そんな状況で、重要になるのが日本国内の世論です。」

「なにそれ?」

「以前話しましたが、戦争遂行には国民の協力が必要です。国力の劣る日本ですから尚更重要になります。」

「まさか、国民の協力を得るために大本営発表で騙しても良いって言うワケ?」

「平たく言うとそうなりますね。」

「何なのよ、その根性の悪さは!」

「・・・あまり褒められた手段とは言えませんが、苦渋の選択というものです。
それに、日本が劣勢と言う事が国内に知れ渡れば日本国内の共産主義者に塩を送る事にも繋がりますから。」

「ふむふむ・・・。」

「だからって嘘はまずいでしょ、嘘は!」

「・・・戦果の誇張など、よくある話だと言ってるじゃないですか。
こういった事はどの国も変わりませんって。気にする必要は無いんです。」

「それって、赤信号みんなで渡れば恐くないってヤツでつか?」

「微妙に違う気もしますが・・・」

「それにしても、随分話が脱線したな。」

「あれ?何の話してたんだっけ?」

「ラバウル空襲後に行われた日本軍の攻撃についてまでです。
ちなみにこの戦いは第一次ブーゲンビル島沖航空戦と名づけられています。」

どーでも良い様な船を日本軍が攻撃したって話だったわよね。」

「まぁ、魚雷艇とかだからなぁ。」

「ところで日本軍って損害あったの?」

「まさか。んな、しょーもない敵相手にやられてたらそれこそ打つ手なしでしょ。」

「・・・未帰還機は4機でした。」

「何、やってんのよ・・・。」

「夜ですから・・・。当時の夜間飛行は大変ですし、
航法ミスで帰れない事もあればエンジン不調でも帰れなくなります。ある程度は仕方ありません。」

「そーやって、仕方ないで済ませんじゃないって。」

「・・・撃墜ではなく未帰還なのですからその原因特定は無理です。」

「それで、この後はどうなるんだ?」

「この後、ろ号作戦は11月11日まで続けられます。もっとも、ラバウルを巡る攻防戦はその後も続くのですが・・・。」

「それもそうだろうな。空母から上げた航空隊もまだ残っているだろうし。」

「真面目な話が続くといまいち話に入れませんねぇ。」

「ホントホント。」

「別に無理して首を突っ込まなくても良いけど・・・」

「フッ、筆頭が何を仰るやら┐(´ー`)┌」

誰が何の筆頭よ!

「・・・それでは次です。次は11月8日になります。」

「まだ続くの?」

「そうですよ。前回までの説明では第一次ブーゲンビル島沖航空戦が終わったに過ぎません。」

「第一次って事は・・・第二次第三次って続くわけ?」

「そうです。」

「と言うと・・・また長くなるんでつか?」

「・・・そうでもありません。各戦闘そのものは大規模なものではありませんから。
その気になれば、説明はすぐに終わりますよ。」

「その口ぶりだと、今までは手を抜いていたって事になんない?」

「・・・ご想像にお任せします。」

「つーか、あんたさぁ、正確な情報を伝えるがどうたらとか言って結構抜けてるわよ。」

「?」

「ほら、あんたよく言ってるでしょ。日本軍はレーダーの配備が遅れてたって。」

「そうですが・・・それが何か?」

「アンタ・・・もしかして、日本の空母にもレーダーが積まれてたってこと知らないんじゃないの?
南太平洋海戦の時に、日本の空母も実際にレーダー積んで運用してんのよ。」

「そうなのか?」

「そ。ファーストは何も言ってなかったけどね。実際、そのレーダーもそれなりには役に立ってたって話だし。」

「へ〜、そうなんだ。」

「日本軍は南太平洋海戦の時に電探を活用していたんですか・・・。」

「何、あんたホントに知らなかったの?」

「・・・はい。」

「あら〜?日本軍万歳の割には知識が追いついていないのね〜。」

「やっぱり、アスカさんはお妃とかいじめっ子の類でつね。」

「んだな。」

「うるっさいわね〜!」

「・・・真偽の程はあとで確認しておきますが、貴重な情報ありがとうございます。」

「え、なんであんたが礼を言うのよ?」

「南太平洋海戦と言えばまだ戦争初期。
その時期に電探を搭載していたということは、帝国海軍は電探を軽視していなかった事のなによりの証になります。」

「え?まぁ・・・そうなるわね。」

「・・・良かった。やはり日本軍は先の見えない軍隊では無かったのですね。」

「をい、何でそこまで話が飛躍すんのよ?」

「時代に恵まれていなかったにせよ、
大日本帝国は力を入れるその方向性が多少違っていただけの話・・・。
つくづく、国力の差が恨めしく思えてきますね。」

「・・・仕方の無い話だ。国力の劣る国が大国に勝てたと言う話はほとんど無いからな。」

「・・・・・。」

「アスカさん。」

「何よ?」

「敵に塩を送っちゃいましたね♪」

「なにがよ!」

「だって、そうじゃないですか?黙ってれば、日本軍はレーダー開発に先見の明が無かったって責められたのに。」

「む・・・」

「やれやれ、これだから短絡的な方は困ります。
戦術目標と戦略目標の違いすら分かっていない・・・これでは、日本軍を笑えませんでつよ?」

「うるさい!ワケの分からない事を言うんじゃないわよ!」

「ワケが分からないのはあなたですよ、アスカさん。」

綾波さんイジメ・戦術目標
日本軍咎め・戦略目標

「こうすれば分かりやすいでしょ?これだからダブルスコアで人気投票負けてる人は困るんでつ。」

「うるさいうるさい!人気投票の話は何の関係もないでしょうが!」

「ね〜、なに話してんの?」

「え〜、まぁ今も昔も人は変わらないという事を話していただけですよ。」

「そーやって、適当な事を次から次へと言うんじゃない!話に脈絡が無いでしょうが!」

「だって、アスカさんはアメリカ人でしょ?
一般的なアメリカ人みたいに、アスカさんがいいかげん・テキトー・大雑把なのは分かりきった事ですが・・・」

「あんた、アメリカ人を何だと思ってんのよ!」

「・・・そろそろ、本題に戻ってよろしいですか?」

「あ、すいませんでした。どうぞどうぞ。」

「お前ら、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

「てっきり、いがみ合ってるものと思っていたが・・・」

「いえいえ、私とアスカさんがお似合いのカップルだと言うのは始めから決まってる事ですから♪」

「勝手に話を作るんじゃない!」

「死海文書にも書いてありますよ?」

「だから、勝手に話を作るなって言ってるでしょうが!」

「・・・続けます。11月8日、ラバウルの基地航空部隊は早朝から広範囲に亘り索敵を行っていました。
06:00にはタロキナ沖に連合国軍の輸送船団を発見したのです。」

「タロキナってドコだっけ?」

「もう忘れたのか?散々地図で見ているはずだが・・・」

「あんまり前だったから、忘れちゃうって。」

「ま、そりゃそうよね。」

「そうですね。では、もう一度・・・」

「敵は輸送船×8、巡洋艦×4、駆逐艦×7の大部隊です。一方の日本軍の攻撃隊は次の通りです。」

基地航空隊・零戦×31
第一航空戦隊・零戦×40
第一航空戦隊・艦爆×26

「全部あわせると・・・100機近くだな。随分な動員をかけてんだな。」

「攻撃は飛行機だけなの?」

「何がだ?」

「ほら、いつもは艦隊とかも出してるじゃん。今回はいないのかな〜って思ってさ。」

「栗田艦隊はすでにトラックへ引き返していますので・・・航空隊のみです。」

「で?いつもの事だから大した戦果は無さそうだけど・・・」

「・・・敵艦隊上空にはアメリカ軍の護衛戦闘機隊が付いていました。
以前話に出したP-38やF6F、それ以外にもP-39やF4Uという戦闘機がいたようですが、あまり重要では無いので省略します。」

「ちょっと、重要じゃないってどういう事よ?」

「P-39なんてあまり有名じゃありませんし、
F4Uは戦闘機としては優秀でも艦載機としては欠陥有りなので、どうだろうと言った感じですし・・・。説明は必要ですか?」

「F4Uの説明がイマイチ分からんが・・・どういう事だ?」

「ホントにわけが分からないものね。」

「・・・そうですね。艦載機というのはある程度の制約があると言うのは以前に話しましたっけ?」

「零戦の話をしていた頃に、そんな話を聞いた気がするが・・・」

「あんまり覚えてないけど・・・」

「ファースト、自分で話した事くらい覚えておきなさいよ。」

「艦載機に求められる最大の点は、機動力でも頑強さでもありません。
空母での運用のしやすさにあります。・・・ここまではよろしいですか?」

「・・・・・。」

「どうしました?」

「あんた、自分の発言に疑問を持たない?」

「・・・私は常に自分の説明には疑問を投げかけています。
どこか間違ってはいないだろうか?と。
なるべく多くの情報を整合し正確な情報に基づく結論を述べているつもりではいますが・・・
主観が入ってしまうのも否定は出来ません。何か不備や間違いがあれば、指摘していただけると助かります。」

「いや、そういう事では無くてな・・・。」

「なんつったら良いかな。」

「私はあんまり詳しくないけど・・・」

「さっきから艦載機って話に出ますけど・・・」

「それ、空母に載せる飛行機の事でしょ?」

「はい、そうですけど・・・それが何か?」

「まだ気付かないの?」

「?」

ドン臭いわね〜!さっきアンタが言っていた事よ!
艦載機ってのに求められるのが空母での運用のしやすさって。自分でそう言っていてヘンに思わないの?」

「・・・変どころか至極当然の事かと思いますが。」

「だ〜か〜ら!それは当たり前の事でしょ!
空母に積む飛行機なんだから、空母で使いやすい飛行機作らなきゃ意味はないでしょうが!」

「いくら、俺らが当時の兵器に疎いっつってもそんくらいは見当つくしな。」

「・・・その通りだ。」

「・・・・・。」

「あんた・・・私らの事バカにしてるでしょ!」

 

 

「え〜ん、ドラ○も〜ん、レイにイジめられたよ〜。」

「よ〜し、こうなったら━━━」

テレレテッテテ〜(例の効果音)

「タケ○プター!」

「あれ?そんな道具でどうするの?」

「これを頭につけてスイッチを入れれば、その回転トルクで空を飛ぶどころか確実に首がもげ━━━」

 

 

やめんかーっ!

「う〜ん、いけずぅ〜。」

「うるさいっ!」

「あの・・・それで何か?」

「つまりだ。至極当然である内容の説明を、何故行ったのか?という事だ。
いくら基本に忠実とは言え、少々くどい様な気がしてな。」

「・・・こちらの写真をご覧下さい。」


ヴォートF4Uコルセア
高速時の旋回性や最高速度でF6Fを凌ぐ性能を誇る戦闘機。
武装・12.7mm機銃×6 60kg爆弾等

「この飛行機がどうしたの?」

「このF4UはF4Fに継ぐ次期主力艦上戦闘機として作られました。
プロペラの大型化に伴い逆ガル翼を採用するなど、新たな構想に基づき設計された機体なのです。」

「分からない女ね〜!それと、あんたの説明と何の関係があんのよ!」

「このF4Uは前述のF6Fよりも早く完成していました。
にもかかわらず、性能の劣るF6Fが艦上戦闘機として採用されている・・・何か気付きませんか?」

「もしや、それが艦上機としての欠陥とやらか?」

「・・・そうです。」

「どういうこった?」

「・・・F4Uは戦闘機としては優れた機体です。
しかし、その形状により視界不良が生じ空母への着艦が困難になってしまっているのです。
また、低速時の安定性に難がある事も空母への着艦を困難にさせた理由の一つです。」

「よく分からないんだけど・・・」

「・・・簡単に言うなら、F4Uは空母への着艦が命がけな機体だったと言えますね。
主力艦上戦闘機の座をF6Fに譲る事になったのも、ある意味当然でしょう。
着艦に失敗すれば、自分だけでは無く空母や他の艦載機、大勢の乗組員にも危険が及びますから。」

「で、何が言いたいのよ?」

「・・・艦上戦闘機で大事なのは、空母での運用のしやすさ。
いくら性能が高くても空母で運用できなければ何の意味も無いわけですから、
そう言った意味ではF4Uは艦上機として失敗作であるとも言えます。
空母での運用を除外するなら、陸上機とほとんど変わりませんから。」

「ちょっと、アメリカの飛行機だからってそこまで言う?」

「・・・F4Uは陸上で運用するには性能的に申し分ありませんし、慣れ次第では空母での運用も可能です。
しかし、必要とする時に本来の目的が達成出来なかった以上、そういった評価が妥当かと思います。」

「そんなにその飛行機が嫌いなのか?」

「・・・いいえ、特に嫌いという事はありませんよ。」

「・・・そーかしら。言葉の端々から鬼畜米英的な表現がにじみ出てる気がするけど。」

「・・・ご想像にお任せします。
さて、アメリカ軍もF4Uを艦上機として運用するのは危険だと判断したわけですが、
F4Uが失敗した時のバックアップとして作られていたのが前述のF6Fです。」

「バックアップ?」

「平たく言うなら、いざという時の保険ですね。
F6FがF4Uに比べ、取り立てて際立った特徴が見当たらないのも、
あくまで保険の為の機体だから冒険できなかったとも言えるでしょう。・・・これはあくまで私見ですが。」

「可も無く不可も無くというヤツか・・・。」

「予備でも性能良いからな。」

「艦上戦闘機の予備を開発する余裕があるなんて羨ましい限りです。」

「それはしょうがないでしょ。元々が違うんだから。」

「やはり、こういった部分にも国力差が出てくるのですね。
F4Uが艦上機として使えないとしても、その生産数は零戦を軽く超えています。
それにF6Fを足せば一体どれほどになるのか・・・考えるのも嫌になります。」

「大変でつねぇ。」

「ほんとほんと。」

「何を呑気な・・・私には日本軍の有様がとても他人事に思えん。」

「ネオジオンみたいに、負けちゃってきてるしね〜。」

「どんな例えだ!」

「・・・思い切り話が逸れてしまいました。そろそろ本筋に戻したいと思います。」

「思いっきり説明が中途半端じゃない。結局、あんたは何が言いたかったのよ?」

「日本軍にとって、この戦争がいかに勝ち目の無い戦いだったかを分かっていただければそれで十分です。
少しくらいの小細工や後知恵ではどうにもならないくらいの差があった事を分かっていただければ・・・」

「だそうでつよ、アスカさん♪」

「うるっさいわね〜!]

「・・・タロキナ周辺の輸送船団に攻撃を加えた日本軍ですが、戦果は輸送船2隻に命中弾を与えただけでした。」

「それだけか?」

「・・・そうです。一方の日本軍の損害はこちらになっています。」

零戦×5
艦爆×10

「それほどでもないような気がするけど・・・」

「・・・日本軍にとっては痛手です。
一度の出撃での損害がそれほどでなくても、積み重なればその損害は無視できるものではありません。
それに、アメリカ軍に与えた戦果も微々たるものなので、敵の侵攻を遅らせるにも至っていません。
結果的に、この戦闘は戦略的にも敗北と言えます。」

「踏んだり蹴ったりですねぇ。」

「この戦いの戦果は日本国内に報じられました。いつも通り誇張されてはいますが・・・。」

「大本営ってやつだな。」

「ま〜た、嘘ついてるって事よね。」

「・・・・・。」

「・・・真実を知る事が常に正しいとは限らん。」

「はぁ?」

「お前達ネルフの連中とて情報操作の一つや二つしているだろう。
それと同じだ。余計な情報を流す事で混乱が生まれたらどうする?」

「んな、お偉いさんがやってる情報操作の事を私に言われても困るって。」

「・・・日本にとっては当面、戦争遂行以外に道が無い。
本来ならそうなる以前に、道をいくつも残しておくのが最良なのだが・・・今さら言ったところでどうにもならん。」

「・・・・・。」

「どうした?」

「え、マシュマー様が珍しくまともな事言ってるから・・・」

「急に鳥肌が立ってしまいまして。」

「どういう意味だ!」

「・・・次です。同日の10:20、別の偵察機が別の艦隊を発見しました。」

軽巡×3、駆逐艦×4

「日本軍は夜間攻撃の計画を立て、直ちに実行に移しました。」

「やるだけ無駄な気がするけど。」

「・・・それを言ったら、この戦争そのものが無意味以外のなにものでもありません。
与えられた手駒でどうにかする以外にないのです。」

「悲惨だな・・・。」

「日本軍の編成は次の通りです。」

接触隊・艦攻×6
第一航空戦隊・艦攻×9
基地航空隊・陸攻×12

「おそろしく数が少ないな。」

「合計しても30機いってないもんね・・・。」

「・・・日本軍は予定通り日暮れに攻撃を開始しました。
軽巡バーミンガムを沈没寸前まで追い詰めたものの、止めをさせないまま海戦は終わりました。」

「もう終わりなんですか?」

「はい。これに対する日本軍の損害は次の通りです。」

九七艦攻×4
一式陸攻×5

「上記では一式陸攻となってますが、もしかしたら九六陸攻が混じっているかもしれません。
詳細な資料が無いのでこのあたりは保留にしておきますね。」

「をい・・・。」

「・・・少々説明が長くなってしまいましたが11月8日分の内容はこれで終わりです。」

「つっかれた〜、ほんとうに長かったよね〜。」

「次はろ号作戦の最終日11月11日の海戦になります。
今回の作戦で最も大規模な戦闘が行われた海戦でもあります。」

「つーかさぁ、これまで20機以上も損害だしてんのに、
戦果が輸送船×2、軽巡×1損傷だけってのは、全然釣り合い取れてないわよね。」

「仕方あるまい・・・。劣勢の戦力ではな。」

「そーやってあんたも日本軍庇ってるけど、結果だけ見たらどう考えてもおかしいって思わない?
そもそも、このろ号作戦って全然評価されてないわよ。」

「・・・他人がどう思おうとかまいません。」

「マトリックスネタキタ━━━(゚∀゚)━━━!!」

「キタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!  」

「ネタなの・・・それ?」

「・・・確かにろ号作戦は戦果を上げていません。
しかし、ラバウルの航空戦力ではどうしようもなかったのです。
ラバウル維持を考えるなら、空母所属の航空隊の基地運用も止むを得なかったのです。」

「さっさと退かないからそうなんのよ。」

「ラバウルの喪失はトラックの危機に繋がる。
あちらを立てればこちらが立たぬ・・・まともな選択肢など無いのだろう。」

「トラックトラック言うけど、そこってそんなに大事なの?」

「・・・何を今さら。広大な太平洋の中
ソロモンを含めた南方に睨みを効かせられる良い位置にあるのがトラック諸島なのですよ。
それに、艦隊が停泊する場所としても適していますし、飛行場も作ってありますし・・・」

「で、何が言いたいのよ?」

「・・・敵の攻撃にさらされてトラック放棄という事態になっては全てが無駄になってしまいます。
それに、日本がトラックを失えば次はサイパンを狙ってくるでしょう。そうなれば日本は本当にアウトですから。」

「それこそ、何を今さらって感じですよ。日本の負けなんてやる前から分かってた事じゃないですか。」

「それは・・・そうですが。」

「身も蓋も無い言い方だわな。ま、確かにその通りだが。」

「・・・脱線するのも何なので、次に進めます。先ほど少し触れましたが、次は11月11日の戦闘になります。」

「戦闘って呼べる戦いになるなら良いけどね〜。」

「・・・・・。」

「あら、癇に障ったかしら?」

「いじめっ子〜♪」

「外野うるさい!」

「・・・説明を続けます。11日の戦闘で先制攻撃を仕掛けたのはアメリカ軍でした。」

「そういえば、前んときもアメリカ軍が空襲したんだっけ。」

「空母サラトガと軽空母プリンストンからなる機動部隊だな。日本軍はそいつらを葬る事は出来てなかったが・・・」

「脳内妄想なら倒してましたよ?」

「・・・脳内でも倒していません。倒したと言うのは単なる情報操作ですから。」

「単なる情報操作って・・・」

「ところでさ。次も前のサラトガとかで攻めてくんの?」

「・・・次は違います。アメリカ軍の指揮官ハルゼー大将は現地の兵力が不足している事から兵力の増強を行いました。」

「増強って・・・?」

「・・・さしずめ、艦隊の戦力アップってトコだろうな。
ラバウルを攻めるのには直接上陸はまだ無理だろうから、攻めるとなれば船か飛行機くらいのもんだな。」

「飛行機か船・・・と言うと、空母の増派というのが妥当な線だろうな。
確か、新たな空母を大量生産していたのだろう?」

「・・・そうです。こちらがその空母になっています。」

 


エセックス型 正規空母
戦争中期に太平洋戦線に投入された正規空母。

「こんなのを戦争中にどんどん作っちゃうんでしょ?凄いね〜。」

「大戦中に竣工したのは17隻です。だいたい月1〜2隻の割合で竣工してましたからね。
・・・考えるだけで恐ろしい話です。ちなみに、一部の空母は戦前に起工されています。」

「戦前・・・と言うと、真珠湾以前か?」

「・・・そうなりますね。」

「なんだ、アメリカも空母をたくさん作ろうとしてたんじゃん。」

「その言い方は正確ではありません。
アメリカは空母をたくさん造ろうとしていたのではなく戦艦も空母もたくさん造ったが正解です。
建造の方針も、戦艦優先が少し空母優先に傾いた程度ですから・・・日本もアメリカもさほど違いはありませんよ。」

「違いが無いって・・・あんた、そこまで日本が空母に先見の明があったって事にしたいわけ?」

「したいも何も、それが事実ですが何か?」

「何かじゃないわよ!」

「ん?また何か始まるのか?」

「サキエルさん、そういうのは生暖かい目で見守るのが吉ですよん♪」

「それじゃ、あたしもしばらくROMってよ〜。」

「ROMってるって・・・」

「空母を主体とした奇襲を行い、その有用性を知らしめたのは間違いなく日本です。
真珠湾でのあれだけの戦果が無ければ、アメリカは以降も戦艦にこだわっていたのかもしれないのですよ?」

「仮定で話を進めんじゃ無いわよ。」

「仮定ではありません。アメリカは日本の戦艦群に対抗する為、
大和に匹敵する戦艦を6隻も建造しているのです。
そして、大和を遥かに超えるモンタナ級という大戦艦すら計画し発注していました。
戦艦を信頼を置いていたのは日本だけではなく、他の国も同様だったのです。」

「6隻?4隻の間違いでしょ。」

「建造に着手したのは6隻です。もっとも、内2隻は建造中止になっていますが・・・」

「で、それが空母の話と何の関係があんのよ?」

「アイオワ級が4隻で建造中止となったのも、
モンタナ級が計画だけで終わったのも他に優先すべき船があったからこその話・・・。
アメリカの優先順位の判断基準に、日本軍が見せつけた空母の有用性が無関係であるとは思えません。」

「でも、日本はアメリカに比べてダメコンがヘボかったって話じゃない。
先見の明があんのになんでそんな基礎的なことで負けてんのよ?」

論点ずらしキタ━━(゚∀゚)━━!!!!

うるさい!

「・・・空母のダメージコントロールについては後にします。今はまだその時ではありません。」

「説明を後回しにしまくって・・・忘れても知らないわよ。」

「論点ずらして勝利宣言する人に言われたくないでつ。」

「うるさいってば!」

「話は終わったのか?」

「・・・ええ。」

「なんだ、また返り討ちじゃんか。」

「うるさいって言ってるでしょ!次は負けないんだから!」

「て事は、今回は負けを認めたんですね?」

「あんたらしつこい!人を思いやる優しさってもんが無いわけ?」

「いや、思いやりも何も・・・」

「・・・とりあえず、話を進めます。
ハルゼー大将が呼び寄せたモンゴメリー少将率いる機動部隊の編成は次の通りです。」

正規空母×2、軽空母×1、駆逐艦×9

「あまり多いようには思えんが・・・」

「・・・上記の艦隊に加えて、以前ラバウルへの空襲を行った
シャーマン少将率いるサラトガとプリンストンの機動部隊も次の戦闘に投入する予定でした。」

「あれ?さっきはサラトガの部隊じゃないって言ってなかった?」

「シャーマン隊の航空隊は悪天候により出撃を断念しています。
ですから、実際に攻撃を敢行したのは新たに呼び寄せた部隊だけという事になります。」

「屁理屈にしか聞こえないけど・・・。」

「モンゴメリー少将率いる機動部隊はラバウルから160浬の位置に到達
3空母から185機からなる攻撃隊を発進させました。」

「天候が日本に味方したとも言えるが・・・それでも敵は200近くか。」

「しかも、敵はこれから増える一方ときてる・・・不利すぎだろ。」

「11月11日06:58、ラバウルに空襲警報が発令され、日本軍は直ちに迎撃の零戦108機を上空に上げました。」

「今回はちゃんと対応してんだね。」

「今回って?」

「え?前にアメリカ軍が来た時って、気づかなくてボコボコにされちゃったんだよね?」

「・・・そうです。」

「ごめんなさい。随分前の話だったから・・・」

誰かさんがすぐ脱線させるから・・・」

「うるわいわよ。」

「八つ当たりの歴史がまた一ページ・・・」

「うるさいっつってるでしょうが!」

「・・・アメリカ軍の攻撃隊は港の艦船等に攻撃を加えました。
以前とは違い奇襲は免れているので、日本軍艦艇の多くは港外に退避しています。
それでも、アメリカ軍の攻撃は激しく多数が損害を受けてしまいました。内容は次の通りです。」

日本軍
駆逐艦・涼波(沈没)
駆逐艦・長波(大破)
駆逐艦・浦風(中破)
駆逐艦・若月(中破)
軽巡洋艦・阿賀野(大破)
零戦×11

「酷いものだな。」

「一方のアメリカ軍の損害は次の通りです。」

アメリカ軍
航空機(機種不明)×7

「たったそれだけ?」

「・・・そうです。」

「なんか、いよいよって感じがするが・・・」

「迎撃に上がってたのに、零戦隊の方が多く撃ち落されちゃったんじゃね・・・。」

「技術格差が大きくなり始めたのが原因でしょう。むしろ、零戦でよく頑張っていると言った方が正解ですよ・・・。」

「どんな状況でも擁護は忘れないのね。」

「・・・対戦闘機戦に限定するなら、バルキリーでドッゴーラを落とせと言っているようなものです。」

「どういう事?」

「バルキリーは機動性が高いが装甲は紙同然だ。
逆に、ドッゴーラは装甲がかなり高い・・・つまり、バルキリーでドッゴーラを落とすには腕が要求されるという事だ。」

「例えがワケわかんないんだけど。」

「・・・零戦の真髄は機動性にあります。
確かに零戦は重武装と言えますが、どんなに重武装でも当たらなければどうという事は無いのです。
それにF6Fは防御に優れた戦闘機なのでちょっとやそっとでは落ちませんから。
もちろん零戦で戦えない事はありませんが・・・性能的に格上の相手と戦うには自ずと技術が必要とされるのです。」

「それ、遠まわしに日本軍の技量が足りないって言ってるように聞こえるんだけど。」

「・・・当たらずとも遠からずです。
当時の機動部隊所属搭乗員の技量が特別低いとは思いませんよ。
もっとも、真珠湾やセイロン島を戦った戦争初期の練度と言う程では無いでしょうけど。」

「そういえば、ロンド・ベル隊に配属されているバルキリー小隊・・・スカル小隊とか言ったか?」

「いきなり何よ?」

「バルキリーは確かに手強い相手だったが・・・1人たいした事の無い奴がいないか?」

「そんなヤシいたっけ?」

「かきざきぃぃぃぃ〜!」

「なに叫んでんのよ・・・。」

「バルキリーは確かに強敵だが、攻撃が当たりさえすれば恐れる事は無い。
つまりパイロットの腕が悪ければ大した事は無いのだ。一撃で葬り去る事が出来るのだからな。」

「で?」

「技量次第で強敵にも雑兵にもなる機体・・・同じ事が零戦にも言えるとは思わんか?」

「ムリヤリ過ぎる気がするけど・・・。」

「マシュマーさん、あなたはなんて事を言うのですか!柿崎さんが大した事無いなんて思い違いも甚だしい!」

「そ〜だそ〜だ!」

「で、あんたらはあんたらで何が言いたいのよ?」

「良いですか?柿崎さんは確かに集中を覚えませんから扱いやすいとは言えません。
しかし、2回行動可能になるレベルはあのアムロ大尉より早いのです。
使い方次第では決して使えない方ではありません。」

「・・・ふむ。」

「ロンド・ベル隊で使えないパイロットを挙げるとすればただ1人
カツ・コ○ヤシさんを除いて他にはいないと言えます。彼はブッちぎりなんですよ?」

「そうなの?」

「プルさんは知らないかもしれませんが、彼はアスカさんを遥かに超えるポテンシャルを秘めているのです。
これから懇切丁寧に説明して差し上げます。」

「私を比較に出すんじゃ無いわよ!」

「カツ・コバ○シさん・・・彼の人生は壮絶そのものでした・・・。」

1.無断出撃でガンダムを壊す
2.捕虜(サラ)に騙され彼女を逃がす。
3.サラを殺害(本人の意思に関わらず)
4.戦闘中よそ見により隕石に激突
5.そのまま撃墜され生涯を終える

「うわ・・・」

「これは・・・なんと表現すれば良いのだ?」

「分かっていただけましたか?彼に比べたら柿崎さんは遥かに技量が高い人員なのです。」

「カツってこんなに酷かったの・・・?」

「単独でボアザン円盤にすら苦戦する時点でお払い箱確定・・・」

「あんた、何言ってんのよ?」

「マシュマーさん、アナタには発言の撤回を要求します!」

「むぅ・・・。」

「あやまれ!柿崎さんにあやまれ!」

「・・・すまん、柿崎とやら。」

「よかったよかった、柿崎さんの名誉を挽回する事が出来て何よりです。」

「ね〜♪」

「ねぇ、柿崎って人の名誉は保ってても、カツはボロクソに言ってるじゃない。そんなんで良いの?」

「私は事実を述べただけですが何か?」

「いや、私に言われても困るけど・・・」

「・・・話に区切りが付いたようなので、次に移ります。
ラバウルの空襲警報は08:00に解除されました。そして、今度は日本軍の攻撃となります。」

「攻撃って?」

「言うまでも無く、敵機動部隊への反撃です。
日本軍は偵察機を飛ばしており、この時点ですでにモンゴメリー隊の位置は確認されていました。」

「ふ〜ん、やる事はやってんだね。」

「ま、仮にも軍隊だからな。」

「日本軍は攻撃隊を編成し10:00に出撃させました。編成は次の通りです。」

零戦×33
九九艦爆×20
九七艦攻×14
彗星艦爆×4

「数的にはそれなりか。」

「しかし、アメリカ軍はレーダーにより日本軍の来襲を察知しており、迎撃の態勢を整えていました。
日本軍に戦果は無く・・・被害ばかりが続出してしまったのです。」

零戦×2
九九艦爆×17
九七艦攻×14
彗星艦爆×2

「ちょっとちょっと・・・何よコレ?」

「・・・日本軍の損害ですが何か?」

「被害が多すぎじゃない。何やってんのよ?」

「え〜と・・・零戦の被害はあんまり無いけど、艦爆と艦攻はほとんど全滅なんだね。」

「燦々たる結果だな・・・。」

「広範囲を索敵できるレーダーとCICを活用した迎撃システムの確立・・・
そして、アメリカ軍が今作戦で初めて投入してきた新兵器の威力が大きかったものと思われます。」

「新兵器?」

「てゆーか、CICって何?」

「Command Information Centerの略・・・戦闘指揮所という意味の様です。
アメリカ軍は極高周波無線電話を使い、CICの指示を受けながら最適な状況で日本軍の迎撃を行えたのです。」

「へ〜、凄いんだね〜。」

「一方の日本軍が無線電話を活用し始めたのは大戦末期です・・・。
技術力の差と言うのは恐ろしいものです。」

「最近は技術・物量の差という話が多いな。」

「それはファーストの思い込みでしょ。つーか新兵器って何よ?」

「近接信管・・・通称VT信管と呼ばれるものです。」

「VT・・・何だって?」

「VT信管です。これまでの信管と違い、VT信管の内蔵された砲弾の近くを航空機が通ると
その瞬間を検出して自動的に爆発するという恐るべき兵器なのです。」


VT信管

「・・・発射されたVT信管内臓の砲弾は、発射のときの衝撃で作動開始します。
そして電波を発信しながら飛び続け・・・対象から跳ね返ってきた電波を感知します。
自らの発する電波と受信した電波の周波数の差が零となった時・・・つまり敵に近付いた時に爆発するのです。」

「どうでもいいんだけどさ・・・あんた間違えてるわよ?」

「?」

「あんた、この作戦で初めて投入されたって言ってたけど・・・1943年1月のガダルカナルで使われてたって話よ。」

「・・・・・。」

「何とか言ってみなさいよ。」

「・・・まぁ、それはそれで良いとして話を進めたいと思います。」

「誤魔化したわね。」

「しょっちゅう間違えてるアスカさんに比べたら可愛いものですけどねぇ。」

「うるわいわよ!」

「しかし、VT信管とやらはそれほど有効だったのか?」

「その様です。年を追う事に生産数が増加していますから。これはアメリカで無ければ出来ない芸当です。」

「アメリカじゃないと無理って・・・何よそれ。」

「日本の工業力では、VT信管の実用化は無理です。
大体日本には空気の入った真空管があったという話もあるくらいです。
精密さを要求されるVT信管を量産すると言うのは夢のまた夢でしょうね。」

「空気の入った真空管ってをい・・・。」

「なんか頭の痛くなる話ばかりだな。」

「ほんと・・・難しい単語ばかりで全然分からないもん。」

「・・・それにアメリカ軍は戦前から莫大な予算と人員を掛けてVT信管の研究開発を行っています。
こうなっては、日本に太刀打ちなど出来ません。」

「・・・少し良いか?」

「何でしょう?」

「日本とやらに勝つ算段・・・いや、まともに戦う手段はあるのか?」

「どゆこと?」

「・・・話を聞いていると、アメリカ軍の攻撃は効果的になりつつあるのに対し
日本軍は有効な攻撃すら出来なくなりつつある。これではもはや・・・」

「劣勢の戦力、各個の機体性能ですら差が開きつつあり・・・
レーダー等の性能でも同様に不利。正直、私には何も思い浮かびません。」

「やれやれ、悲惨ですねぇ。戦う相手が悪かった様ですねぇ。クスクス。」

「あんたはどっちの味方なのよ・・・。」

「・・・日本軍のろ号作戦は11月11日をもって終了しました。
進出させた機動部隊所属の航空機173機の内、残ったのは3分の1にも満たない僅か52機
人的被害は181名にも上ります・・・。結論から言えば、ろ号作戦は失敗に終わったのです。」

「言わんこっちゃない。」

「日本軍は十月中旬から大量に進出させた水上部隊のほとんどをトラックへと帰還させました。
作戦中に受けた二度にわたる空襲の結果を考えれば当然とも言えます。」

「返しちゃったって・・・この後どうすんの?」

「・・・ラバウル周辺の戦闘はラバウル基地に所属する航空隊が継続する事になりました。
ですが、戦力差を考えればその戦いは悲壮そのものです。
この後、11月中旬から12月初頭までの間に数度に亘り日本軍による攻撃が行われました。
その戦いの中で軽巡一隻を損傷、輸送駆逐艦一隻を撃沈しましたが、それ以外は戦果らしい戦果はありません。」

「戦果が無いと言っても・・・侵攻するアメリカ軍に対する対応はどうなっているのだ?」

「連合軍の上陸を受けているブーゲンビル島のブインは終戦まで抵抗を続けます。
また、ラバウルも一応の自給体制は整っており連合軍の激しい空襲は受けますが終戦まで陥落はしませんでした。」

「陥落しなかったって?日本は負けちゃったのに?」

「アメリカ軍はラバウルを無力化させた後は放っておいたのです。制圧するリスクを考えれば当然とも言えます。
補足になりますが、ろ号作戦後にもブーゲンビル島に対する輸送・撤収作戦が行われていました。
セントジョージ岬沖海戦と呼ばれるものですが、日本軍の惨敗に終わりました。
かつては得意としていた夜戦でもアメリカ軍のレーダー射撃の前には苦戦を強いられざるを得なかったのです。」

「得意の夜戦でも勝てんか・・・。」

「そうなったらもう戦争する意味は無いわよね。無駄以外の何者で無いじゃない。」

「・・・それでも、国家の無条件降伏だけは避けなければなりません。
アメリカの大統領がもう少しまともな人ならば可能性はあったのでしょうが・・・いえ、無理ですね。
今さら言っても意味の無い事です。」

「で、この後はどうなんの?」

「大規模な海戦が行われるのは昭和19年6月になります。
もちろん、それ以前にも数多くの戦いは繰り広げられてますけどね。」

「まさか、それを一個一個説明していくつもりじゃないでしょうね。」

「ご心配なく・・・。無意味に長くならないように調整はするつもりです。」

「その割には話が伸びてばっかりよね〜。」

「ほんとほんと。」

「ね〜♪」

「るさい!つーか、脱線の原因を作ってんのはあんたでしょ!」

「人の振り見て我が振り直せ・・・。」

「うるさいっつってるでしょ!」

 

 

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