坊の岬沖海戦 前

 

 

 

 

「次は、昭和20年4月に行われた帝国海軍水上部隊による戦いの説明です。」

「まだ、そういう話があんの?」

「・・・これが最期になりますから。もう少しお付き合い下さい。」

「そーいう台詞、前にも何度か聞いたような気がするけど。」

「気のせいでしょう。多分、最期の空母決戦の時の事かと思いますが・・・」

「いよいよ最期の戦いか・・・。」

「でも、もうロクな船は残ってないんじゃないの?空母だって散々沈められちゃってるし。」

「そういえば、そんな話あったっけ。」

爆弾対策して魚雷当たって沈んだりとか、
逃げてる途中に潜水艦に沈められたりとか色々あったものねぇ〜。」

「なんか言葉にトゲがある言い方だな。」

「フン。ファーストの海軍賛美が気に入らないだけよ。
散々長々と船の説明聞かされてて、あんなオチじゃ笑うに笑えないでしょうが。」

「別にオチをつけたつもりはありませんが・・・」

「あったりまえでしょ!爆弾の対策してますなんて言っておいて魚雷で沈没なんて笑い話にもなってないでしょうが!」

「爆弾で爆沈した蒼龍さんはスルーでつか?」

「るさいっ!あんたの話は聞いてない!」

「酷い〜・゚・(ノД`)・゚・」

「昭和20年も4月になると、帝国海軍の戦力はかなり減少していました。
少し前に説明した比島沖海戦での損耗は無視できないほどの大損害だったのです。」

「そういえば、空母ってもう無いんだもんね。」

「・・・いえ、空母ならありますよ。単に乗せる飛行機が準備できないだけです。
日本はミッドウェーの教訓を踏まえて空母の増産に力を入れていたのです。」

 


雲龍型空母 葛城

 

「・・・この雲竜型空母は飛龍の設計を流用して作られました。
搭載機数は大型空母には及びませんが、これまでの戦いの教訓が生かされた様々な工夫が施されています。」

「日本にこんな船あったの?」

「?」

「あの・・・日本ってどうしても大艦巨砲主義のイメージがあるから。」

「各人のイメージは解りませんが・・・日本が空母の増産に務めていたのは事実です。
既存の艦船を改造してまで空母を増やそうとしていたのですから、そこまで現実が見えてなかったわけではありません。」

「でも、こんな空母使ってたなんて話聞いてないんだけど・・・」

「雲龍は昭和20年12月の輸送任務中、敵潜水艦の攻撃により撃沈されています。
有名でないのは海戦に投入されなかったからではないかと・・・」

「なによ、もう沈められちゃってんの?」

「・・・アメリカ軍の潜水艦によって沈められた船の一つが雲龍だったというだけの話です。
駆逐艦が足りない状況ではどうしようもありません。」

「そういえば、何度かそんな話が出てきたな。」

「と言うと、葛城さんも沈んじゃったんですか?」

「同型艦の天城はアメリカ軍の攻撃により転覆してしまいましたが、
葛城は戦後まで動ける状態で生き延びる事が出来たので、戦後に復員船としても使用されています。」

「へぇ〜、さすがはミサトさんですねぇ。どっかの誰かさんとは大違いでつ。」

「うるさいわよ。大体なんでミサトが出てくんのよ。」

「だって、大人のおねーたまって感じじゃないですか。とてもリツコさんと同年代とは思えませんでつ。」

「あんた・・・リツコの実験材料にされても知らないわよ。」

「今回の海戦では日本空母の出番はありません。何度も言いますが乗せる航空機の準備が出来ていないのです。」

「あんな役立たず作ってるからよ。」

「役立たずって?」

「大和に決まってるでしょ。あんな無駄な船あったって何の役にも立ってないでしょうが。」

「・・・今回、戦線に投入されるのはその大和です。無駄な船などと言われるのは心外ですね。」

「今さら、戦艦なんか持ち出してどうすんのよ。」

「当時の帝国海軍にはあまり手段は残されていないのです。
日本が世界に誇る巨大戦艦である大和を使い沖縄周辺の敵艦隊を叩く・・・無謀かもしれませんが他に方法はありません。
ちなみに、作戦立案は先任参謀である神重徳大佐が行いました。」

「誰それ?」

「神重徳大佐は第一次ソロモン海戦や比島沖海戦での作戦立案にも関わった人物です。」

「第なんとかって・・・なんだっけ?」

「第一次ソロモンと言えば・・・水上艦艇による奇襲でアメリカ軍に打撃を与えた海戦だろう。少しくらい覚えろ。」

「え〜、そんな難しいのいちいち覚えらんないよ〜。」

「ね〜。」

「当初、特攻機による攻撃は決定していましたが、水上部隊による攻撃は未定でした。
水上部隊による攻撃が決定したのは御前会議での出来事だったとか・・・」

「ふ〜ん・・・」

「今回の作戦で沖縄に突入する艦艇は大和一隻、護衛として第二水雷戦隊が付く事になりました。編成は次の通りです。」

 

第二艦隊

第一遊撃部隊

大和(戦艦)

第二水雷戦隊
矢矧(軽巡洋艦)
第十七駆逐隊
磯風・雪風・浜風(駆逐艦)
第二十一駆逐隊
朝霜・初霜・霞(駆逐艦)
第四十一駆逐隊
冬月・涼月(駆逐艦)

 

「今回の作戦に使う船って、もしかしてこれだけ?」

「・・・そうです。」

「ものの見事に空母がいないな。」

「ファースト、アンタ空母が大事空母が大事って言ってたじゃん。なんで付けないのよ。」

「乗せる戦闘機も搭乗員も居ません。燃料事情も最悪なので余裕が無いのです。」

「そんなに酷いのか?」

「この時期に日本に備蓄されていた石油資源は34万トンほどだったと言われています。
一口に石油と言っても種類は様々ですから、軍事行動もかなり制限されていたと言って良いでしょう。」

「34万トンって言われても・・・多いのか少ないのか解らないんだけど。」

「・・・今回の作戦に使用される艦艇が少なかったのは
使用可能な艦艇が上記のものだけしか無かったからではなく、燃料事情の要素が大きいのです。
いくら艦艇が少なくなったとは言え、高速戦艦である榛名や北号作戦で使用された航空戦艦の伊勢・日向もあります。
もっとも、3月中旬にアメリカ軍の空襲も受けているので、他の艦艇に供給する燃料があっても出撃できたかどうかは微妙ですが・・・
どちらにしろ、燃料が準備出来なければ戦艦もただの浮砲台でしかありません。」

「燃料事情も危機的状況だったのだな・・・。」

「・・・そうです。今回出撃する第二艦隊の艦艇に供給される燃料も片道分とされていました。」

「ちょっと待ちなさいよ!片道じゃ死ねって言ってるようなモンじゃない!」

「ご心配無く。現場の給油担当者の判断で
出撃する全ての艦艇に往復出来るだけの燃料が供給されています。」

「へ〜。良い人がいるんじゃん♪」

「でも、現場の人がそんな勝手な事しちゃって良いんですか?」

「アンタにしては珍しくまともな意見ね。」

「・・・供給された燃料は、帳簿上カラとなった燃料タンクからかき集めたものです。
ですから、軍事上は何も問題ありません。」

「ふ〜ん・・・。」

「さて、実際の作戦行動の説明に移る前に今回投入される艦艇について説明します。
こちらが今回の主力となる戦艦大和です。写真そのものは公試時のものと思われますが・・・」

 


戦艦大和

 

「さらば〜地球よ〜♪」

「チャチャチャチャ〜♪」

「旅出〜つ船はぁ〜♪」

「デデデデ〜♪」

「宇宙〜戦艦〜」

「あまりにも有名な大和ですが、この艦はあまりにも不運な・・・」

「綾波さん、酷いです!人がせっかく良い気分で歌ってたのに!」

「そ〜だそ〜だ!」

「あんたら・・・」

「・・・私は大和の説明をこれまで極力控えてきたのです。少しくらい趣味に走らせて下さい。」

「少しくらいってをい。」

「これまで何のために大和の説明を省いてきたと思っているのですか?
私は何度も楽しみは後にとっておくものと言ってきたはず・・・今がその時なのです。
さて、大和の要目は次の通りになっています。」

 


戦艦大和(初期型)

大和・要目(昭和20年当時)

基準排水量             64000トン
公試排水量             69100トン
満載排水量             72809トン
全長                    263m
水長線                   256m
垂線間長                 244m
最大幅                  38.9m
喫水線幅                36.9m
深さ                  18.915m
平均喫水                10.58m

主機     艦政本部式蒸気タービン4基
主缶          ロ式艦本式専燃×12

軸馬力                15万馬力
軸数                    4軸
回転数           255回転(毎分)
蒸気圧          25kg/平方センチ
蒸気温度                 325℃
速力                  27ノット
後続距離        7200海里(16ノット)
燃料搭載量             6300トン

主砲       46cm3連装砲塔3基9門
副砲       15.5cm3連装砲塔2基6門
高角砲       12.7cm2連装12基24門
機銃        25mm3連装52基126門
              25mm単装6基6門
              13mm連装2基4門

搭載機          零式三座水偵×6
射出機          呉式二号五型×2
電探               二号一型×2
                  二号二型×2
                  一号三型×2
探照灯      九六式160cm探照灯×4

 

「こりゃまた・・・随分豪快に趣味に走ったな。」

「そうでしょうか?」

「あったりまえでしょ!なんであんたはスペック厨みたいな事やってんのよ!」

「ただ、私は基本として大和の性能の基礎を述べただけですが・・・」

「どこが基礎なのよ!おもいっきりマニアックでしょうが!」

「ワシントン海軍軍縮条約により主力艦の保有数を
米英の7割に制限されてしまった日本は、量の劣勢を質で補うという個艦優秀主義で戦力を補完しようとしました。
もっとも、大和の建造計画はワシントン海軍軍縮条約廃棄を前提に進められたので
大和にとっての条約そのものはただのキッカケなんですけどね。」

「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」

「ねぇ、何がなんだかよく解らないんだけど・・・」

「気にする事無いわよ。ファーストが趣味で喋ってるだけなんだから。」

「大和の建造計画は1936年から始められました。
大和はそれまで日本か築いてきた造船技術の粋が集められた艦であると言って過言ではありません。
それまでの主力艦でもあった長門とも建造時期が離れているので、開戦当時はまさに最新鋭艦だったのです。
特徴の一つが最重要防御区画であるバイタルパートの存在です。」

「パイタンスープ?」

「つまらないってば。大体、共通点がほとんど無いでしょうが。」

「なんとなく似てません?」

「似てない!」

「それで、バイタルパートとは?」

「戦艦も元々は船体の外部に装甲を施す事で防御力を高めていました。
しかし、大和型でその様な方法を採用すると、ただでさえ重いのにさらに重量が増してしまいます。
そこで、絶対に守らなければならない弾薬庫や機関室、缶室等の重要区画の周囲を重装甲で防御する事にしたのです。
上面200mm、側面410mm、前後面300mmのVH鋼板という特に対弾性の高い鋼板で防御されました。
ちなみに、他の部分は比較的軽装甲で済まされています。」

「よく解らないんだけど・・・。全部ガッチガチに固くしちゃえば良いんじゃないの?」

「重くなれば速度も落ちますし燃費も悪くなります。それでなくても大和は巨大な艦ですから・・・」

「ふ〜ん、そんな話ばかりだね。」

「ファースト、あんた得意げにバイタルなんとかって言ってるけど・・・欠陥があったって知らないの?」

「何かあったんでつか?」

「まぁね。そのバイなんとかって部分は一応守られているんだけど、そういうのにありがちな盲点があるのよ。」

「そなの?」

「ええ、それが副砲の装甲。巡洋艦の主砲を流用してるから大した防御がされてないみたいなの。」

「それって・・・駄目な事なの?」

「そりゃね。そこに攻撃食らえば防御区画にまで被害が及ぶ可能性があるもの。
いくら重装甲で守ってても内側から爆発しちゃえば何の意味も無いでしょ。いつかの装甲空母みたいに。」

「装甲空母って・・・随分強調するな。」

うるさいわね〜!ファーストがみたいな事ばかり言ってるから歯止めをかけてるだけよ!」

「・・・ふぅ。」

「な!なんなのよ、その溜め息は!」

「・・・確かに大和の副砲である三年式六○口径15.5センチ副砲の装甲防御は25mm程度です。
元々が巡洋艦の主砲なのですから、その辺りは仕方ありません
それに、装甲は薄くとも長砲身なので威力や命中率の点から考えればかなり優秀な砲塔なのです。
そこまで目くじらを立てる程の欠陥とは思えませんが。」

「ふむ・・・、ザクの弱点がモノアイだったと言う話と似たようなものか。」

「どーして、そういう方向に話を繋げんのよ。」

「そんな事言ったらEVAの弱点だって頭じゃないですか。弐号機の頭に加粒子砲当たったらイチコロでしょ?」

「だから、なんでそこで弐号機の話を出すのよ!」

「つまり、気にするほどの話では無いという事だろう。
そんな事を言い出したら、艦船の艦橋も十分弱点となりえるからな。」

「艦橋だけでは無く、煙突も弱点の一つです。
もちろん、大和にも対策は施されていますがそれでも爆弾を受けて良いと言う理由にはなりませんし
運が悪ければ煙突に爆弾が命中しても致命傷になるでしょう。」

「んな事聞いて無いっての。大体、弱点を増やして良い理由にはならないでしょうが。
大和ってののメインは主砲なんでしょ?役に立つかどうか解らない中途半端な副砲なんか積んで何がしたいのよ?」

「副砲の目的は、主砲で対処出来ない接近戦での応戦です。
もし、敵駆逐艦に接近戦に持ち込まれたら主砲でどう対処すると言うのですか?」

「接近戦って・・・何の為の主砲なのよ。近寄らせたら意味無いじゃん。」

想定外の事態が起きるのが戦場です。現に、第三次ソロモン海戦では想定外の近接戦闘が起きています。
それに、比島沖海戦時に護衛空母艦隊と遭遇した際、駆逐艦の一隻を大和が副砲で撃沈したとされています。
そういった事からも、万が一の事態を想定するのはごく自然な事だと思いますが。」

「じゃあ、副砲に爆弾命中して弾薬庫に引火したらどうする気よ?」

「それは確率があまりにも低すぎます。大体、爆弾が命中したとしても弾薬庫は艦の下部にあるのですよ?
そう簡単に引火するほど簡単な作りはしていません。」

「むぅ・・・」

「連戦連敗、いつも通りの玉砕乙であります(`・ω・´)ゝ」

「るさい!」

「さて、いつの間にか砲塔の話になっているみたいなので
大和の最大の特徴である九四式四五口径四六センチ主砲の説明に移ります。
主砲とも関連があるのですが、当時の戦艦の多くは対応防御の思想で建造されていました。」

「何それ?」

「自艦の主砲で砲撃されても耐えうる装甲防御を施すというものです。
先程話したワシントン海軍軍縮条約により、戦艦の主砲サイズは制限されました。
したがって、条約で決められたサイズ以上の主砲を作り、その主砲に耐えうる構造の戦艦を造れば
理論的にその戦艦に勝てる艦は存在しない事になります。」

「確かにな。」

「紆余曲折はあったものの、大和の主砲は四六センチと決定。海軍の最高機密とされ情報管理は徹底的に行われました。」

「そうなの?」

「前にそんな話してなかったか?」

「忘れちゃったわよ、そんな事。」

「でも、日本軍って情報管理ダメダメだったんじゃなかったっけ?」

「そういえば、作戦情報タダ漏れだったでつよ。」

「・・・どこまで本当かは解りませんが、
レイテで指揮を執った栗田中将ですら大和の主砲の正確なサイズを知らなかったと言われています。
アメリカ軍も大和の主砲の正確な数値を知ったのは戦後になってからとか・・・」

「へぇ〜、スゴイじゃん。」

「なんでその労力を別の方向に生かさないのよ・・・。ミッドウェーだって情報漏れまくってたくせに。」

「ですから、あれは意図的に流した可能性があると何度言えば・・・」

「だってそれ、あんたの妄想じゃん。」

「・・・状況証拠は提示したはずです。
それに大和の情報管理をそこまで徹底的に行えるなら、尚更ミッドウェーでの情報漏れが理解出来ません。」

「じゃあ、海軍なんたら事件は何なのよ?あれも意図的?」

「・・・海軍乙事件については弁護の仕様もないと言ったはずです。
不可抗力だったとは言え、不手際だった事に変わりはありませんから。」

「じゃあ、やっぱり情報管理が駄目だったって事じゃない。」

「個人の不手際を海軍全体の話にされても困ります・・・。
もちろん、海軍乙事件後の事件解明が不十分だった事は否めませんが。」

「さぁ、アスカさん!今でつよ!」

「はぁ?何が?」

「ですから、お得意の勝利宣言でつよ。」

「なんで、私がそんな事しなきゃなんないのよ!」

「だって〜。」

「だってもへったくれも無い!」

「じゃあ、今ので納得したって事か?」

「そういう訳じゃないけど・・・」

「反論が見つからないんですよね〜♪」

「るさいっ!」

「・・・図星か。」

「うるさいっつってるでしょうが!」

「話を続けますよ。大和の主砲である九四式四五口径四六センチ主砲ですが・・・」

「つーか、長い!」

「・・・何か?」

「またイチャモンでつか?」

「うるさい!そもそも、正式名称でいちいち主砲の名前を言わなくても解るわよ!主砲なら主砲って言えば良いじゃない!」

「精神的に不安定なのだな。」

「いつもの事ですけどね♪」

「やかましい!」

「・・・大和の主砲についてですが、主砲の目的は敵戦艦の撃破です。当然、それなりの性能が求められる事になります。」

 


九四式四五口径四六センチ主砲
(写真は建造中の武蔵)

 

「こちらが世界最大の主砲です。
砲身長20.7mの砲身から約1.4トンの砲弾を秒速780mで発射でき、最大射程は41852m。
砲の俯角角度は(+)45度(−)5度、装填は(+)3度の固定式、俯角速度は毎秒8度となっています。
前面650mm、上部270mm、側面250mm、後面190mmという重装甲で防御された主砲塔の重量は2760トン。
発射速度は1門につき1分間で約1.8発、20km先の400mm装甲を撃ち抜ける威力を誇ります。
旋回速度は180秒で一回転、つまり1秒で2度旋回する事が可能という事ですね。
弾丸や装薬の装填は機力で行われ、主砲の動力のほとんどは水圧が用いられています。」

「エヘヘ・・・」

「綾波さん!同志エルピー・プルがさっぱり解らないと申しております!
何度、解りやすい説明をキボンヌと言えば解って頂けるのですか!」

「をい、ファーストのヲタ話に拍車をかけそうな事言うんじゃないわよ。」

「大和の主砲の砲身長はそれほど長くはありません。
一説によると五○口径にしたかったものの、砲身の製造技術が追いつかずにやむなく四五口径にしたとされています。
しかし、それでも大和の主砲が世界最大であった事に変わりはありません。」

「・・・いわんこっちゃない。」

「ちなみに、俯角角度とは砲身を傾けられる角度の事です。
つまり上方に向けられる最大角度が45度、下方には5度まで下げられるという事になります。」

「じゃあ、装填とかってのは?」

「主砲に砲弾を装填出来る角度が(+)3度という事です。
例えば、(+)20度の角度で砲撃したとしても、次弾装填するには(+)3度の角度まで戻さなければならないのです。
主砲砲撃の映像などで砲撃した後で砲身が交互に上下しているのを見た事はありませんか?」

「ありませんかっていわれてもなぁ。」

「ビーム兵装主体のこの時代ではな・・・。」

「第二次大戦当時の映像を見る機会がありましたら、注視してみてください。
艦にもよりますが主砲砲撃の際にはそういった動きが多く散見できますから。
あれは、別に格好良いからやっているという訳ではないのです。」

「格好良いって・・・」

「・・・誰もそんな事思わないわよ。」

「防御の数値についてはかなりの重装甲だと認識していただければ差し支えはありません。
主砲塔の重量は駆逐艦一隻分に相当します。」

「総統も相当冗談がお上手だ。ガハハハハハ!

「あんた、いきなり何を言い出すのよ。」

「知りませんか?結構有名なギャグですよ。」

「・・・・・。」

「あ、すみません。話のコシを折ってしまって。」

「滅多な事言わない方が良いよ〜。もしかしたら床に黒い穴が空いて吸い込まれちゃうかもしれないし。」

「((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル 」

「ガミラスに下品な男は必要ない。」

「・・・何の話してんのよ。」

「・・・主砲の装填速度ですが、これはそれほど早いというものではありません。
日本の戦艦としては遅くありませんが、アメリカの戦艦と比較すればやや劣っていますから。」

「あら、世界最大とか言っておきながらアメリカの戦艦に負けてんの?」

「・・・砲身長でも負けています。
アメリカ新型戦艦アイオワには、サイズこそ大和の46cmには及ばないものの50口径16インチの砲身を持つ戦艦を建造しています。
砲身の長さは砲弾初速や命中精度にも作用しますから、実際に撃ち合った場合
大和とアイオワのどちらに軍配が上がるかは正直解りません。」

「なによ、その曖昧な答えは。」

「・・・実際に両艦による砲撃戦を行っていない以上、何をどう考えても推測にしかなりません。
ですから、どちらが勝つか解らないと言ったまでです。
もちろん、戦艦が1対1で撃ち合うと言うのは現実的ではないので駆逐艦や巡洋艦の存在も考慮する必要があります。
さらに付け加えるなら、制空権の概念も出てきますから・・・」

「待った待った!誰もそんな事まで聞いてないでしょ!」

「綾波さん、好奇心で聞くんでつけど・・・」

「何でしょう?」

「綾波さんが知ってる戦艦の中で一番強いのって何なんですか?」

「あんた、何言ってんの?」

「・・・どんな戦艦にも適材適所というものがあります。
大和には大和のアイオワにはアイオワのビスマルクにはビスマルクの・・・それが戦艦です。強い弱いの概念などありません。」

「あんたも何言ってんのよ?年式とか考えたら強い弱いはあるでしょうが。」

「質問が悪かったですね。
子供が遊びで話す『スタローンとジャン・クロード・バンダムはどっちが強い?』そのレベルでお願いします。」

「・・・やはり大和でしょう。ですが手に余ります。」

「だからワケ分からないっつってるでしょうが。もしかして何かのネタ?」

「ヤマトかぁ〜、名前は強そうだけどね〜♪」

「・・・プルも脱線に拍車をかけさせるんじゃないわよ。」

「何の話かよく解らんが・・・手に余るとはどういう事だ?」

「言葉そのままです。日本が運用するには少々難しい艦だったと・・・
確かに、大和には当時の日本が持つ造船技術の粋が集められ不沈艦を目指して建造されました。
大和一隻の建造費用は当時の金額で約1億4千万円、国家予算の3%ほどと言われています。」

「よく解らないんだけど・・・」

「大和の建造が始まった当時の世界にとって
戦艦とは戦術兵器であると当時に戦略兵器でもあったのです。
その戦略価値は後年の核兵器に相当すると言っても決して過言ではありません。
それに、先程も申しましたが大和の建造には莫大な国力が投入されているのです。
当然の事ながら、兵器として使えなくては意味がありませんから様々な事態が想定された設計がなされています。」

「で、なんで手に余るんだ?イマイチわからないんだが。」

「例えば、大和の重量です。巨大な戦艦ですからそれだけ燃料を消費します。
しかし、日本の燃料事情はどうにかまかなえていた程度であって余裕があったわけではありません。
ある作戦において、アメリカであれば同クラスの戦艦を動員出来たとしても日本では厳しいというパターンは多々あります。
一言で言うなら、大和は使いどころが難しい戦艦だったという事ですね。」

「それ、単なる艦隊保全主義だったんじゃないの?」

「ですから、艦隊保全の何が悪かったのかと小一時間・・・」

「まぁ、アメリカの様に何隻も戦艦が補充できる訳ではないからな。
大和を戦略兵器と考えるのなら、保全に傾くのも解らん話では無い。」

「また、艦としては最新技術が注ぎ込まれていても日本の国力の低さという点が解消されているわけではありません。
国力の問題が顕著に現れてくるのが電装系装備品等の不備です。」

「何が何だかよく解らないんだけど・・・」

「例えば、日本軍の開発したレーダー・・・電探とも言いますが、
開発は遅れていたものの、性能的には決して使えないという物ではありませんでした。」

「そうなの?日本のレーダーってヘボかったんじゃなかったっけ?」

「では、何故日本の電探が不評であるのか考えた事はありますか?」

「んな事、考えた事なんかないわよ。」

「・・・ふぅ。」

「だから、ムカつくから止めなさいっつってるでしょ!」

「・・・日本の電探の評価が低いのは、性能の問題ではなく
性能維持という要素がクリア出来なかった事が原因であると推察されます。」

「ほえ?」

「つまり、性能的には使える電探だったとしても明日になったらどうなるか解らない・・・。
機械的に不安定な面が大きかったという事です。しかも、これは国力の問題によるところが大きいのです。」

「また国力?」

「さっぱり話がわかりませんねぇ〜。」

「ホントホント♪」

「電探に限らず当時の電子兵装には真空管が使われていました。
話は少し変わりますが・・・以前、VT信管の説明したのを覚えていますか?」

「なんだっけ?」

「VT信管・・・近接作動信管の事だ。アメリカがその国力を生かして導入した新兵器との事だったはずだが・・・」

「それがどうしたんだ?」

「VT信管をなぜ日本軍が造れなかったか・・・その理由を簡単に説明したのは覚えていますか?」

「え〜と・・・」

「真空管の性能不足では無かったか?確か、日本には空気の入った真空管もあったとか聞いたな。」

空気が入ったって、それじゃ真空管じゃないでしょうが・・・。」

「そういう事です。真空管は電探にも使用されていますから
真空管の性能が安定しなければ電探の性能も安定しないという事になります。
逆から言えば、真空管やその他の電装系がしっかりしていれば日本の電探と言えど使えないとまでは言い切れないのです。」

「だから国力が問題だったと言う事か。」

「・・・そうです。海軍でも真空管の重要性に気付いていて、戦前から精度の高い真空管を集めていたと言われています。
しかし、戦争が始まると集めた真空管もすぐに底をついてしまい電装系の安定性の悪さに悩まされたとか・・・
また、一つの装備に使う真空管も出来るだけ少なく設計するように命じられていたため
贅沢に真空管を使えるアメリカと比べると性能的にも劣ってしまうのです。」

「駄目じゃん。」

「・・・ですが、こればかりはどうしようもありません。
問題は真空管だけではなく電線やコンセント、スイッチ等の作りもあまり良い物ではありませんでした。
被服電線などもアメリカとは比べ物にならないほど簡素な作りでしたし・・・」

「そんなんで、よくアメリカと戦う気になったもんね。」

「・・・戦争勃発の100年前が江戸時代だった事を考慮してください。
多少無理はあったものの、僅か一世紀で世界の列強と肩を並べるという快挙を成し遂げたのです。
本家でも言われている事ですが、ハッキリ言って日本は異常ですよ。」

「思い込んだら一直線ってのは・・・ドイツと似たようなモンか?」

「そうですね。日本人は目標達成までは全力で猛進しますが、
目標達成すると途端に成長が止まってしまうとも言われていますけど・・・まぁ、お国柄と言う事で。」

「お国柄で話を終わらせるんじゃないっての。」

「・・・話を戻しますが、以前武蔵の射撃方位盤が主砲斉射の影響で壊れたという話をしたと思います。
しかし、事前の訓練でそういった支障が出ていない事や大和に関して同様の故障が発生していない事を考慮すると
単純に電装系のトラブルであると推察されます。
そういったトラブルを克服出来るだけの国力が無く、自由自在に運用できるだけの余裕も無かった・・・。
これが、大和が日本の手に余ったという意見の根拠です。」

「じゃあ、なんでそんな余計な戦艦造ってんのよ?」

「・・・必要だったからです。」

「あ〜もう!話が噛みあわないわね〜!手に余るような戦艦造ってどーすんのかって聞いてんの!」

「・・・大和完成以前に主力戦艦とされていた長門・陸奥の2隻は大正時代に建造された戦艦です。
時代に対応しながら改装するにしても限界があります。
他国が新戦艦の建造を行う事を考慮すると、時期的に新型戦艦はどうしても必要だったのです。
ですから、史実で大和が造られた事実を否定する理由はどこにもありません。」

「まぁな。いつの時代でも、ある兵器に対抗するには相手と同等の兵器を持たなければならんからな。」

「だから、空母をたくさん造ったほうが良いって言ってるでしょうに。」

「1936年当時では航空機の発達もそれほどではありませんでした。
航空機の本格的な発展は戦争開始後と言っても良いでしょう。
旧来の価値観から脱却するというのは口で言うほど簡単なものでは無いのです。」

「それ、あんたが大艦巨砲主義万歳だからじゃないの?」

「では、簡単な例え話で説明しましょう。」

「なんか、久しぶりだね。そーいうの。」

「そういえばそうでつねぇ。」

「で、例えって何だ?」

「・・・21世紀初頭、ミサイル迎撃には対空ミサイルを使用する事が主流だった時代・・・
迎撃にレーザーを使おうという試みが始められました。あなた方が国防に携わる人物だったと仮定して・・・
今進められているミサイル防衛を放棄してまで、レーザー開発に予算をつぎ込めますか?」

「つぎ込めますかって・・・いきなり言われても困っちゃうけど。」

「その計画が成功する見込みはどれくらいなのだ?」

「・・・今後の開発次第です。成功するかもしれませんが、何かしら欠陥が発生する事も否定出来ません。
成功したとしても、期待されるほどの効果が上がるかどうかは実行してみなければわかりません。」

「なら、既存の防衛体勢を継続した方が良いだろう。国防を預かるのなら尚更危険な橋を渡るべきでは無い。」

「で、それが大和と何のカンケーあんのよ?」

「つまり、大和を造らず空母を増産しろと言うのを先程の例え話に当てはめると
対空ミサイル防衛の予算を削ってレーザー開発に力を入れるという事です。
少々強引ですが、本質的にはそういう事です。」

「ちょっと!なんで話がそういう事になんのよ!空母とレーザーじゃ全然話が違うでしょうが!」

「・・・同じです。当時、空母は補助兵力としか考えられていませんでした。
1936年当時では航空機の性能もそれほど高かった訳ではありません。
それこそ、沖縄特攻で使用された九六式艦爆の様な複葉機がメインで使用されていた時代です。」

「よく解らないんだけど・・・どーいう事?」

「大和を造らず空母と艦載機を造ったほうが良かったなどというのは完全な後知恵という事です。
それ以上でもそれ以下でもありません。」

「でも、空母は実戦に投入されてたり結構開発が進んでたじゃん。」

「基本は一緒です。問題なのは、発展途上の未知の技術を国防の基本とするか否か・・・
以前にも話しましたが、空母を大量に建造したアメリカでも戦艦への依存心は決して低くありませんでした。
人の常識というのは1〜2年であっさり変えられるほど簡単なものではないのです。」

「む・・・」

「アスカさん、玉砕を重ねた今の心境を一言!」

「るさい!鬱陶しいマスコミみたいな事を言うんじゃないわよ!」

「解っていただけたようなので、大和に関する説明を続けます。」

「をい、まだ続けるんかい・・・。」

「当然です。まだ説明し足りない事は山ほどありますから。」

「お前、いつもより生き生きしている気がするが・・・気のせいか?」

「・・・気のせいでしょう。副砲については先程話しましたので、次は電探について簡単に説明します。」

「電探って・・・レーダーでしょ?」

「そうです。完成当初は大和にレーダーは搭載されていませんでしたが、
戦争中にも改装は幾度か行われ、数基の電探が設置されました。
ついでと言ってはなんですが、敵航空機に対処するため舷側の副砲を撤去して代わりに対空兵装の強化が行われています。
よく知られているタイプの大和は、改装後の対空砲がハリネズミの様に付けられたタイプでしょう。」

「写真は無いの?」

「米軍機が撮った写真はあります。比島沖海戦での写真です。」

 


比島沖海戦で回避運動を行う大和型戦艦

 

「これって大和?武蔵?」

「・・・機銃の配置から考慮すると、おそらく武蔵ではないかと思いますが・・・確定ではありません。」

「なによ、そのいい加減さは。」

「アスカさんほど適当じゃありませんから良いんじゃないですか?」

「誰が適当なのよ!」

「だって、いつも綾波さんに反論されて終わりじゃないですか。」

「む・・・、それはしょうがないでしょうが。」

プ(w

「うるさいって言ってるでしょ!」

「電探についてですが、昭和20年頃になるとそれなりに精度が上がってきています。
対空見張り用の二号一型、水上見張り用の二号二型、地上用の対空見張り用一号三型が搭載されています。
比島沖海戦後のブルネイで、弾薬補給作業中に敵爆撃機の襲撃を受けた際にちゃんと敵爆撃機隊を探知。
敵が上空に現る前にきちんと弾薬を艦内に収納する事が出来ました。」

「よく分からんが・・・一つ間違えれば大惨事だったな。」

「そうよねぇ。いつぞやの空母でそんな事があったものね〜。」

「蒼龍さんが爆沈したんでつよね?」

「うるさい!」

「なんで自分で墓穴掘ってるんだ?この嬢ちゃんは。」

「・・・私に聞くな。分かる訳が無かろう。」

「あんたらもうるさい!」

「後、大和型戦艦と他の戦艦の違いを挙げるとすればバルバスバウが採用されているという点です。」

「バル・・・なに?」

「そういえば、空母大鳳の説明の時にそういった名前を聞いた気がするが・・・」

「それは、エンクローズドバウの事かと・・・」

「そうか・・・。」

「マシュマー様、豪快に間違えちゃってんじゃん。」

「スペースノイドの我々は地上用の兵装にはあまり詳しくないからな。ましてや、かなり昔の兵装だ。」

「あ〜、マシュマー様言い訳してる〜♪」

「騎士にあるまじき行為ですねぇ。
いい加減な態度だとハマーン様に言い付けて騎士資格剥奪をキボンヌしちゃいますよ?」

「ええ〜い、黙れ!」

「・・・大鳳にもバルバスバウは採用されています。
ですから、マシュマーさんの意見もそれほど間違っているわけではありません。」

「え、そなの?」

「・・・結果論ですけどね。
大鳳にバルバスバウが採用されている事は説明していませんから、ただの偶然だと思いますが。」

「フォローしてるんだか追い討ちかけてんだか分からんな。」

「まぁ、気にするな。終わり良ければ全て良しだ。」

「今さらだけど・・・、あんたも随分いい加減な性格してんのね。」

「フッ、筆頭が何をおっしゃるやら┐(´ー`)┌」

「誰が筆頭なのよ、誰が!」

「・・・話を続けますよ?忘れられても困りますし。」

「何の話の途中なんだっけ?」

「・・・バルバスバウです。これは艦首形状の種類の一つです。比較として次の図をご覧下さい。」

 

   
バルバスバウ                  クリッパー型

 

「また、なんつー絵を使ってんのよ。」

「丁寧に書いたところで誰も気に止めませんから同じ事ですよ。気にすることではありません。」

「で、これはなんだ?」

「左が大和型戦艦やその他一部の艦船に採用されたバルパスバウ。
右は従来の戦艦等に採用されていたクリッパー型と言われる艦首形状です。」

「ねぇねぇ、これって何がちがうの?」

「大和の話になりますが水槽試験で比較した結果、
バルパスバウだと最大速力27ノット時に8.2%の馬力減少が認められたのです。
また、大和型戦艦のバルバスバウ内部は水中聴音機設置区画とされました。
これは現在のバウソナーにも相当するもので、この設計は斬新な思想だったと言えます。」

「ホントかしら?」

「じゃあ、別のクリなんとかは駄目なの?」

「・・・駄目という訳ではありません。
日本がクリッパー型の艦首を採用していたのは日本軍が開発していた秘密兵器・一号機雷とも関連があるのです。」

「また、難しい話が出てきましたねぇ。」

「一号機雷についての説明は省きますが、日本軍として自ら敷設した機雷に引っかかるわけにはいきません。
そのために考え出されたのがクリッパー型という艦首形状なのです。」

「それ、違うわよ。クリッパー型は凌波性を高めるのが目的ってなってんだけど。」

「そうなんですか?」

「そうなんですかって・・・豪快に間違えてどうすんのよ。
こっちの資料だと、一号機雷対策はスプーンバウだって書いてあるわよ。」

「それでは修正しておきましょう。」

 

   
バルバスバウ                  スプーンバウ

 

「それではって・・・をい。誤情報流しといてその態度は何なのよ?」

「間違えていた点については弁解の余地はありません。申し訳ありませんでした。」

「やったー。綾波さんには謝罪と賠償を(ry」

「そんな事を言われても困りますが・・・」

「いや、素で返されても困っちゃうんでつけど・・・」

「まぁ、良いけど・・・。で、大和でいきなり艦首の形を変えちゃって平気なわけ?」

「肝心の一号機雷が本当に秘密兵器になってしまったので問題はありません。」

「は?」

「どういう事?」

「つまり、一号機雷はほとんど使用されなかったという事です。ですから秘密兵器と・・・」

「ちょっと!秘密兵器って言ったら少しは役に立つのかな?って思うのが普通でしょ!
そんなつまらないオチじゃ笑えないっての!」

「別に、オチをつけたつもりはありませんが・・・」

「あったりまえよ!なんでいつもそーいうくだらないオチをつけんのよ!」

「くだらない玉砕よりはマシでつ。」

「うるっさいわね〜!」

「ところでバルバスバウとは使えたのか?」

「馬力減少に繋がったという事は、機関に与える負担を軽減しながら性能を維持できたという事です。
後年の艦船にバルバスバウが広く採用されている点から考えても、大和には先進性があったと言えます。」

「なんで、そこまで大和を持ち上げるのかしら。気がしれないわよ。」

「・・・事実をそのまま述べているだけです。」

「どーだか。」

「で、説明は終わりなのか?」

「そうですね。後は大和は従来の日本の戦艦に比べて小回りが効いたという事くらいでしょうか。」

「小回り?」

「い〜ぬ〜の〜こまわりさん♪」

「それはお巡りさんよ!くだらない事ばっかり言ってんじゃないっての!」

「怒鳴られちゃった〜、ウワ〜ン・゚・(ノД`)・゚・」

「大和型戦艦の舵は従来の取り付け位置とは大きく変えられていました。
艦の操舵にもコツがあり、舵を切りすぎると同一方向に回転してしまうという癖があったと言われています。」

「ふ〜ん・・・」

「また、大和型戦艦に搭載できる偵察機も従来の戦艦より多く設計されています。
後部には専用の格納庫もあり・・・国家予算の3%が投入された戦略兵器は伊達ではないという事ですね。」

「そりゃそーでしょ。冷暖房完備で大和ホテルなんていわれてるくらいだもの。
ホント、何の為に作ったのか判らなくなるわね〜。」

「なんか、言葉の端々に嫌味入ってないか?」

「むしろワザとかと。」

「あんたら、うるさいわよ!」

「・・・冷暖房完備がいけませんか?逆に、空調設備の整わない戦艦でまともな判断が下せるとでも?
いくら戦艦といっても扱うのは人間、快適な方が任務も円滑にこなせると思いますが。」

「そーいう事を言ってるんじゃないの。
トラックに引き篭もって冷暖房完備じゃ文句言われても仕方ないでしょうが。」

「大和は使いどころの難しい兵器だったと何と言えば・・・」

「トラック・・・あ、地名だっけか。」

「何を自問自答している?」

「ん〜、別になんでもない。その名前聞いたの久しぶりだったから思い出してただけ。」

「大体、新造戦艦がトラックに引き篭もってて、大事な艦砲射撃を旧式戦艦に任せてるから任務失敗すんのよ。
使いどころが難しいとか言って、使わなきゃ何の意味もないでしょうが。」

「・・・第三次ソロモン海戦の事ですか?あの時のアメリカ艦隊との戦いは突発的なものです。
元々の任務が高速戦艦で十分だったのですから、大和をわざわざ動かす理由にはなりません。
また、動員された戦艦が大和だったとしても史実同様の至近戦では、大和と言えど大規模な損害を被る可能性は十二分にあります。」

「ヤマトなのに?」

「バイタルパートで艦そのものの沈没は免れても、損傷を受ければ航行に支障をきたす恐れはあります。
ヘンダーソン飛行場砲撃は任務完遂後迅速に撤退しなければ、翌朝には敵航空機の追撃を受けます。
大和と言えど、損傷次第では自沈に追い込まれていたとしても不思議はありません。」

「まぁ・・・そうだろうな。大和と言えど海に浮かぶ船だ。沈まない訳は無い。」

「戦争中期は、大規模な海戦が起こらなかったため自ずと出番も少なかったのですが
ビアク島支援からマリアナ沖に至る戦いでは大和・武蔵の2隻とも戦いを前提として出撃しています。
マリアナでは、作戦そのものが第一段階でつまづいてしまったため出番がありませんでしたが、
大和・武蔵は前衛として残敵掃討による戦果拡充を任務としていました。
使いどころが難しかったとは言え、完全に機会を逃していた訳ではないのです。
大和が活躍出来なかったのは時代に見放されていたとしか言い様がありません。」

「・・・・・。」

「何か反論出るんでつかねぇ〜(・∀・)ニヤニヤ」

「るさい!」

「冷暖房完備で思い出しましたが、大和は冷蔵庫も大きく設計されていたそうです。」

「冷蔵庫?」

「さすが大和ホテルでつな。」

「冷蔵庫が大きいのは、砲弾の劣化を防ぐ為にも大きな冷蔵庫が必要だったからです。
別に、快適性のみを求めて大きくした訳ではありません。」

「そういえばさ、大和はホテルだけど武蔵も武蔵ホテルって言われてたの?」

「武蔵の場合は武蔵御殿と言われていました。どちらにしても揶揄されていた事に変わりはありませんが・・・」

「それにしても大和一隻の説明で随分話題が続くもんだな。」

「ホント、いい加減飽きないものなのかしら。」

「・・・飽きません。ところで、大和に関してまだ話していない事は何かありましたっけ?」

「んなの分かる訳ないでしょうが。あんたじゃあるまいし。」

「ラムネ製造機が搭載されていたというのは別に大和に限った話ではありませんし・・・・
それでは大和についてはここで止めておきます。思い出したら追加で説明を補足していくという事で。」

「ラムネ?なんでそんなの積んでるの?」

軍艦での作業というのは重労働ですからね。
甘いものというのは疲れもとってくれますから、そういった意味でも必要だったのでしょう。
長い航海での楽しみはどうしても食べることくらいになってしまいますから。」

「ふ〜ん・・・ラビアンローズでパフェが食べられるのと似たようなモンかな。」

「それは少し違う気がするが・・・」

「で、ようやくヲタな説明は終わりなわけ?」

「・・・次は大和護衛の任に就いた第二水雷戦隊の艦艇について説明していきます。」

「をい・・・。」

「こちらが大和護衛の水雷戦隊旗艦である矢矧です。」

 


軽巡洋艦 矢矧

 

「矢矧は水雷戦隊や潜水戦隊の旗艦として運用する事を目的として建造されました。
優れた通信能力と防空力の高さによる活躍が期待されましたが、
この矢矧が戦線に投入されたのは戦争中期・・・
もはや、水雷戦が行える戦況ではなく活躍できる戦場など、もはやありませんでした。
しかし、南太平洋での戦力の損耗から艦船の需要は高まっており、
ネームシップである阿賀野の代わりに第10戦隊旗艦として編入、実戦投入されました。

「ふ〜ん・・・。」

「で、この船がどうしたの?」

「いえ、ただ水雷戦隊旗艦であるというだけの話です。
電探も二号二型、一号三型が装備されていますし、防空火力も上がっています。」

「一号とか二号って・・・何が違うのかよく分からないんだけど。」

「一号は地上設置用、二号は艦載型、三号は艦載射撃用、四号は地上射撃用・・・
他にもまだ種類はあるようですが、あまり関係無いので止めておきます。」

「どーせ、知らないだけじゃないの?」

「否定はしません。」

「をい。」

「でも、どうして地上用のレーダーなのに船に積んでるの?」

「地上用と言っても一号三型は移動も容易な電探でした。
性能的にも申し分なかったので、艦船へ積極的に搭載を進めていたとの事です。」

「また、やっつけ仕事をしてるって訳ね。」

「あるものでどうにかしなければならないのです。試行錯誤の賜物と言ってください。
さて、他は全て駆逐艦になるわけですが・・・駆逐艦についての説明はどうしましょうか?」

「とたんにやる気が無くなってるわね。あんた、極端過ぎ。」

「・・・そうは言われましても、駆逐艦8隻のうち
冬月・涼月の2隻は以前説明した秋月級駆逐艦なので説明が重複してしまいますし・・・」

「冬月センセーでつか?」

「なんでその人の名前が出てくんのよ。」

「また恥をかかせおって。」

「うるさいわよ。あれは馬鹿シンジが悪いんだから。」

「じゃあ、他のは?」

雪風・磯風・浜風の3隻は戦争初期から戦線に投入されました。
この駆逐艦の種類である陽炎型は条約後に造られ、駆逐艦の傑作として評価はかなり高いです。」

「そうなのか?」

「この3隻は開戦から現在まで続く激戦を生き抜いてきた歴戦艦です。
以前にも話しましたが、戦前の過酷な訓練と実戦経験・・・
この時の乗員の練度はいずれ劣らずかなりのものだったのです。」

「そういえば、月月火水木金金だっけ?」

「金曜から月曜にループなんて、酷い話ですねぇ。」

「・・・まぁ、国の安全を預かる仕事ですからね。」

「他の駆逐艦はどうなのだ?」

夕雲型駆逐艦の朝霜は戦争中期に戦線に投入された、比較的新しい駆逐艦でした。
主砲が高射砲としても使えるようにしてあったり、船体を伸ばし速力を増加させているなどの工夫が施されています。
朝潮型駆逐艦の霞は、先程話した陽炎型の原型となった駆逐艦です。
機動部隊に随伴できる駆逐艦としてかなり重宝されました。
初春型駆逐艦の初霜は小型の船体に重武装を施したため、性能的にやや問題がありました。
旧式艦でもあったため、機動部隊へ随伴する事もありませんでした。」

新旧入り混じった編成だという事か・・・。」

「・・・そうですね。」

「あんた、興味の無い説明はトコトン手を抜くのね。」

「もしなんでしたら、きちんと説明しますが?」

「別に良いっての!これ以上ヲタな話されちゃたまんないわよ!」

「まぁ、随分趣味に走ってたみたいだからなぁ。」

「ホントホント♪」

「第二艦隊の艦船についての説明はこんなところでしょうか・・・。次は具体的な作戦の推移について解説していきます。」

 

 

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