第拾八話 命の選択を

 

 

翌日 学校にて

「お、綾波か・・・。知っとんのやろ、ワシの事・・・」

「ん、まぁね。これでも一応、関係者みたいなもんだから。」

学校の屋上で妙な取り合わせとなっているのはトウジとレイである。
屋上で物思いに耽っていたトウジと、シンジを探してさまよっていたレイが偶然出会った格好なのだが・・・

「そっか。惣流も知っとるようやしな・・・、知らんのはシンジだけか。」

「え〜と・・・、う〜ん・・・。エヴァのパイロットってあんまり人にオススメは出来ないけどさ。
ほら、こんなあたしだってどうにかやってけてるんだから、鈴原君ならすぐに慣れると思うよ。ウン。」

トウジにいつもの三馬鹿トリオの時の陽気さが無いと感じたレイは
両手をぶんぶん振りながらフォローにもなっていない様なフォローをしてみる。しかし・・・

「そやなぁ・・・」

一方のトウジは話を聞いているのか聞いていないのか、うわの空と言った感じだ。
会話もすぐに止まってしまい長い沈黙が続く・・・。

「なぁ・・・、初めてエヴァに乗った時ってどんな感じやった?」

「え?」

唐突なトウジの問いにレイは言葉に詰まる。
だが、エヴァに乗る事が当たり前になってしまった彼女に聞いたところで、あまり参考になる答えが返ってくる事も無いだろう。
実際のところ、レイ自身そんな事はすっかり忘れてしまっている。

「え〜とね・・・、LCLの味が結構しょっぱかった・・・かな?」

「ははは、綾波らしいな。そっか・・・、それくらいならなんとかなりそうやな。」

必死に考えて出てきた答えがアレでは、トウジとしても苦笑いする他無い。

「あのさ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ?
使徒と戦うのは確かに怖いんだけど、ネルフの人達がみんなバックアップしてくれるし・・・それにエヴァの中って意外と安全だし。
訓練とかも大変だけど、慣れちゃえばなんて事は無いしさ。」

「ああ・・・。」

トウジは気の無い返事で返す。いつものトウジはどこへやらであるが、それは無理も無い話だ。

「え〜と・・・じゃ、あたしもう行くから。
あのさ、1人で悩んだりとかしちゃダメだよ?シンちゃんじゃないんだからさ。
あたしでよければいつでも相談に乗るよ?」

「ああ・・・。ありがとな。」

気の無い返事ばかりのトウジだが、最後は一応礼らしきものを返す。
顔には笑みも浮かべているが・・・やはり、いつもの元気は感じられない。

 

その日の帰り道、夕暮れの公園のベンチに2人の少女が座って何やら話をしている。
その見覚えのある姿に気付き、そ〜っと近づくもう1人の少女。

「こんなとこでどーしたの?2人とも!」

2人の肩をポンと叩き、いつもの明るい口調で声をかけるレイ。

「あ・・・!」

「な、ファースト!」

レイに声をかけられビックリした表情のヒカリとアスカ。どうやら声をかけられるまで全く気付いていなかった様である。

「アンタってデリカシー無いわね〜。大事な話してんだから空気くらい読みなさいっての。」

悪態を付いたのは当然アスカであるが、当のアスカにデリカシーがあるかどうかは疑問である。
しかし、彼女のそんな態度にもすっかり慣れっこになってしまっているレイにとっては、嫌味の1つや2つなど何処吹く風だ。

「大事な話ならあたしも混ぜて〜!あたしだけハブるなんて酷いよ〜!あたし達って友達だよね!ね!ね!」

瞳を涙で潤ませながらヒカリの両手をガッチリと掴むレイ。
確かに3人は仲の良い友達同士なのだが、今回の件に限って言えば話が違っていた。
トウジに密かに思いを寄せるヒカリは今日、2人きりで話をしていたレイとトウジを目撃しており
トウジが好きなのはレイなのではないかと内心心配していたのである。
当然、当の2人にはそんな感情など微塵も無いのだが・・・

「ファーストからも言ってやってよ。アンタってあの熱血バカの事なんかなんとも思ってないって。」

「え?何が?」

ついさっきまでアスカとヒカリが話していたのはヒカリの恋の話でありトウジの話でもある。
今日のレイの行動も多少関連があるのだが、途中から会話に参加した上に心当たりがまるで無いレイにしてみれば
いきなりそんな事を言われたところで分かるわけが無い。

「あの・・・、綾波さんって、鈴原の事・・・」

「あ〜、だいじょぶだいじょぶ!今日話してたのはそういう話じゃないし、好きとかそういう話でもないからさ!」

ヒカリの言葉に状況を理解したのか、握ったヒカリの両手をブンブン振りながら否定するレイ。
何が大丈夫なのかは分からないが、レイに嘘を付いているというような素振りは微塵も無い。
そんな様子に安心したのかヒカリはホッとため息をついた。

「ファースト、アンタも考えて。どうすればヒカリと熱血バカがラブラブになれるか。」

今日の議題はまさにそれであった。
ちなみに、レイに聞いてくるという事は、現時点では何も妙案が浮かんでいないという事を意味している。

「鈴原君ってお昼ごはんはいつもパンとかじゃない。
だから、手作りのお弁当とかを作ってあげると喜ぶんじゃないかな?」

「へぇ〜、アンタにしてはまぁまぁの意見ね。」

即答するレイにちょっと感心するアスカ。

「お弁当かぁ・・・、鈴原、喜んでくれるかな・・・?」

「だいじょーぶ!お弁当を作ってもらって嫌な人なんていないよ。そういうのってやっぱり嬉しいもん。
あ、そーだ!あたしもシンちゃんにお弁当作ってもらおうかな〜。」

逡巡するヒカリの背中を強く押す様に力強く語るレイ。良いことを思いついたといわんばかりにニコニコと笑顔を浮かべている。
食べる事が絡むと頭の回転が良くなるのだろうか。

「ほとんど毎日、朝晩食事に来るに飽き足らず、今度は弁当まで要求する気かい。」

アスカの言うとおり、レイは最近葛城宅に入り浸り気味である。
朝晩ちゃんと食事をして自宅で爆睡・・・健康的には違いないが、やはりどこか人とズレている。
最近、葛城宅の炊飯機がひとまわり大きなものに変えられた事とレイの行動は決して無関係では無いだろう。

「シンちゃんなら優しいからきっと作ってくれるもん。じゃ、家に帰ったら頼んどこっと。」

「帰ったら、じゃないだろ。アンタの家じゃないんだから。」

呆れながらもツッコミを入れるアスカ。意外と律儀なのかつっこまずにはいられない性質なだけなのか・・・

 

その日の夜 葛城宅にて

思い思いの場所でそれぞれくつろいでいるが、いつになく会話の少ない3人のチルドレン。
いつもならレイが率先して喋りまくるのだが、今日はさほどでもない。
かと言って元気が無いわけでもなく、食事時にはしっかりどんぶり5杯をたいらげていた。
ちなみにペンペンはアスカの隣で大の字になっている。

「あのさ、3号機って誰が乗るのかな・・・?」

ボソリとシンジが誰に聞くとも無く呟いた。

「え?まだ聞いてないの?」

反応したのはアスカである。なんで知らないの?と言わんばかりの表情だ。
だが、シンジに教えるわけでもなく知らん振りを決め込んでしまった。

「あの・・・、綾波は何か―――」

「ふぃ〜、良い湯だったな。」

シンジの問いを遮る様に引き戸を開けてリビングに入ってきたのは加持である。
彼は出張中のミサトの代わりに保護者役として葛城宅に来ていたのだ。
いつもと違う、妙に不自然な雰囲気を見て取った加持の提案により、その日は早めに就寝することとなった。

 

葛城宅に泊まる事にしたレイを嫌々ながらも自分の部屋に入れたアスカ。
電灯を消したものの、月明かりのせいか部屋の中も真っ暗というわけではない。

「アンタさ、なんで3号機のパイロットの事をシンジに言わなかったの?」

ベッドに横になりながらも寝付けずにいたアスカは、床に敷いた布団に寝ているはずのレイにふと尋ねてみた。
アスカの疑問ももっともである。
いつものレイなら、トウジの事も普通に喋ってしまっていてもおかしくは無いのに、
今日はエヴァに関わる事は話さなかった・・・と言うよりは意図的に避けていた感すらあったからだ。

「だって・・・、なんか言いにくかったんだもん。鈴原君もまだ、シンちゃんには言ってないっぽいし・・・。
こういうのって、あたしが言うような事じゃないと思うんだよね・・・。」

床に敷かれた布団の上で、天井から垂れ下がった電灯のヒモをぼーっと見つめながら答えるレイ。
いつもの元気はどこへやらと言ってもいいくらい神妙な面持ちだ。

「そうなの・・・、アンタってシンジの事と食べる事しか頭に無いのかと思ったけど、意外と色々考えてんのね。」

「意外は余計!そういうアスカこそ、どうしてシンちゃんに教えなかったわけ?」

レイに言われて初めて気付く。なんで言わなかったんだろう・・・と。
なんとなく教える気がなかったのか、起動実験が終わればどちらにしろ分かる話だから、いちいち言う必要が無いと思ったからなのか・・・
アスカ自身にもよく分かっていないが、とりあえず言う気にはなれなかったというだけの話である。

「知らないわよ、そんなの。それより明日も学校なんだから早く寝なさいよ。」

自分から話しかけておいて早く寝なさいは無いだろう。しかし・・・

「す〜・・・す〜・・・」

アスカに言われるまでも無く、レイはすでに就寝してしまっていた。
直後、この状況が面白くないアスカが寝ているレイに踵落としを決めたのは言うまでも無い。

 

翌日 学校にて

「ヒカリ〜、お弁当食べよ〜!」

アスカに呼ばれ、やってきたヒカリの手にはいつもの弁当箱の他に、少し大きめの弁当箱があった。

「あれ?どうしたの、そのお弁当。ヒカリってそんなに食べるんだっけ?」

「バカ言うんじゃないわよ。底無し胃袋のアンタと一緒にすんじゃないっての。」

ボケるレイに思わずツッコミを入れるアスカ。
いつもの事とは言え、生半可な芸人など足元にも及ばないほどの絶妙なタイミングである。

「あ、これね。鈴原に渡そうと思ったんだけど・・・渡しそびれちゃって・・・。」

弁当を渡せなかったと言うわりにヒカリの表情は明るい。何か良い事でもあったのだろうか。
レイやアスカにそれを知る術は無いのだが・・・

「綾波さん、これも食べる?このままだとダメになっちゃ―――」

トウジに渡せなかった弁当を見せながら、途中まで言いかけてヒカリは言葉を止めた。
なぜなら、彼女の眼に不自然な物体が確認されたからである。レイの座っている机の上に置かれた巨大な長方形の包み・・・

「どうしたの?早く食べようよ。」

レイはその物体に手を伸ばすと、丁寧に包みを解いていく。出てきたのは銀色に輝く金属の塊・・・

「あ、あの・・・それって・・・」

ちょっと引きつつもレイに尋ねるヒカリ。
嬉しそうにレイが手にしているその金属の塊は、弁当箱と言うにはあまりに大きすぎた。
大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎた。
それは正にドカ弁だった。

「フフフ〜!これね、シンちゃんが作ってくれたんだ〜!」

一方のレイはこれまた清々しいほどの笑顔を浮かべている。
ドカ弁のフタを開けるとそこには丁寧に詰められた弁当の姿が。確かに、こんなに美味しそうな弁当なら誰もが口にしたいと言うだろう。
その桁違いの量を考えなくて良いのなら・・・だが。

「いっただっきま〜す!」

箸を手に持ち両手を合わせていただきますを言うレイ。
一方、アスカとヒカリもやや気後れしつつ、いただきますを言い食事を始める。

「タコさん、タコさん、ウインナぁー♪
あ〜、美味しい〜!やっぱりシンちゃんって料理上手〜!」

作詞作曲・綾波レイであろう妙な歌を織り交ぜつつ、レイは嬉しそうに弁当を頬張る。
アンタ、肉嫌いじゃなかったのかよ・・・と、心の中でツッコミを入れつつ、嬉しそうなレイを横目に食事をするアスカ。
ヒカリはヒカリでレイの食べっぷりに圧倒されているようだ。

「ごちそうさま〜!」

あれだけの量がありながら、わずかな時間でレイは弁当を完食してしまった。
ヒカリが一応、トウジのために作った弁当も勧めてみると・・・

「ごちそうさま撤回!いただきま〜す!」

再び食事を始めるレイ。なんとも美味しそうに弁当を食べている。
まだ食うのかよ・・・と、半ば呆れつつ、食事を終え弁当箱を包んでいるアスカ。
ヒカリはただ、レイの食べっぷりに圧倒されるばかりである。

「ごちそうさまでした!あ〜、美味しかった〜!」

本当に満足そうに食事を終えたレイ。ポンポンとお腹を叩く様は年頃の少女の姿からはかけ離れている。
先に食事を終えていたアスカとヒカリは楽しくお喋りの最中。のんびりとした時間が流れていたその時・・・
PiPiPiPiPi・・・突然レイの携帯が鳴りだした。

 

その日の夕刻 野辺山にて

EVA3号機の起動実験が行われていた松代で爆発事故が発生。
状況は不明ながら、非情召集を受けた3人のチルドレンはそれぞれEVAで出撃していた。
迎撃予定地点は田園風景が広がる野辺山・・・すでに日も落ち始め夕暮れとなっている。

「松代で事故!?それじゃミサトさん達は・・・!」

「なにぐずぐず言ってんのよ!そんなのあたしらが心配したってなんにもならないでしょ!」

ミサト達の安否が分からず慌てるシンジに叱咤するアスカ。
確かに彼女の言うとおり、今の彼らが心配したところでどうにかなるものでもない。
でも、ミサトが不在で誰が指揮を執るのか・・・誰に言うとも無く率直な疑問を口にするシンジ。

「今は碇司令が直接指揮を執ってるみたい。だからきっと大丈夫だよ。」

「父さんが・・・!?」

安心させようとしたレイの言葉だったが、シンジは思わず驚きの声を上げる。
なぜなら、碇司令が直接彼らの指揮を執るような事はこれまで全くといって良いほど無かったからである。
程なくして彼らの眼にも目標とされる移動物体が見えてきた。だが・・・

「まさか・・・使徒!これが使徒ですか・・・?」

目標を確認したシンジが思わず碇司令に聞き返す。
夕日を背にゆっくりと近づいてくるその姿はEVAそのものだったからだ。

「そうだ。目標だ。」

碇司令は必要な事だけを返答するにとどめる。

「目標って・・・これはEVAじゃないか・・・!やっぱり子供が乗ってるのかな・・・?同い年の・・・」

その口調からシンジはEVA3号機に誰が乗っているのかをまだ知らない様だ。
いい加減、アスカが3号機パイロットの事を教えようとしたその時・・・

「キャアアアッ!」

次の瞬間聞こえてきたのはアスカの悲鳴と衝撃音。シンジやレイが呼びかけてもアスカからの返事は無い。
ネルフ本部からの通信によると弐号機はすでに戦闘不能となってしまったらしい。幸いにもアスカは無事脱出に成功した様だが・・・

「レイ、近接戦闘は避け目標を足止めしろ。今、初号機を回す。」  

「りょ・・了解です!」

碇司令からの直接命令に出来るだけ大きな声で返事をするレイ。
今回の目標はアスカの弐号機をあっさり倒してしまうほどの相手である。元よりレイは近接戦闘が得意というわけではない。
今となっては、距離をとって敵を足止めしつつ、シンジの初号機と共同で目標を叩くしか無いだろう。

「来た・・・!」

ズシン・・・ズシン・・・と、目標の足音が徐々に大きくなってきた。
レイの零号機は山の影に隠れており、近づいてくるEVA3号機の視界からはちょうど死角となっているはずだ。
目標にはまだ気付かれていないようで、そのまま零号機のそばを通り過ぎようとしている。
一方、パレットライフルを構え、EVA3号機の背後に照準を合わせるレイの零号機。
目標はまだ零号機の存在には気付いていないらしい。攻撃を加えるのなら今が絶好の機会だろう。だが・・・

(彼、やっぱり乗ってる・・・!足止めしなきゃ・・・、でも・・・)

気持ちとは裏腹にレイの手は凍りついたように動かない。
零号機の現在の兵装はパレットライフル・・・これは精密射撃を要求される兵装では無い。
使徒相手ならば何も問題は無いのだが、今回の目標は人が乗っているEVA3号機である。
もし少しでも弾道が逸れ、万が一にもエントリープラグに弾が当たってしまえば中のパイロットは当然無事では済まない。
自らの射撃能力に自信が無いわけでもないのだが、もし当たってしまったら・・・?そう考えると、どうしても撃つ事が出来なかったのだ。

「・・・え!」

時間にすれば一秒にも満たないわずかな時間、レイが躊躇した次の瞬間・・・
突如EVA3号機はEVA本来の構造からは考えられない動きを始めた。
腕や身体を反り返らせ、いきなり空中に飛び上がったEVA3号機は一瞬にしてレイの視界から消えてしまう。そして・・・

「わっ!」

レイを襲う突然の衝撃。
飛び上がったEVA3号機にいつの間にか背後を取られ、状況も分からないままレイの零号機は地面に押さえつけられてしまった。
なんとか振りほどこうとするもののEVA3号機の力は凄まじく、零号機は立ち上がる事すら出来ない。
圧倒的優位な立場にある目標は、自身の腕から粘液状の液体を零号機の左腕に流し込み始めた。
神経接続されているため、レイの左腕にも耐え難い苦痛が襲い掛かる。

「きゃあっ!」

突然のさらなる痛みに思わず悲鳴をあげるレイ。
その痛みの原因は、吹き飛ばされ宙を舞う零号機の左腕にあった・・・。
これは本部からの操作によるもので、使徒からの侵食を防ぐ処置としてこの時に執りえる最善の方法であった。
しかし、神経接続をカットしていない状態で吹き飛ばすという事は同様の衝撃をパイロットが伴うという事を意味している。
動きを止めた零号機を確認したEVA3号機は攻撃を止め、ゆっくりとした動きで初号機の方向へと進んでいく。

「このままじゃシンちゃんが・・・うぅっ!」

後を追おうと零号機を動かそうとするレイだったが、先程の左腕部切断によるダメージは想像以上だった。
緩慢な動きの目標相手ですら距離が離れていく・・・。

 

その後、EVA3号機はダミーシステムにより制御された初号機によって完全に破壊された。
攻撃の停止を懇願するシンジの叫びは無視され、完全に目標が沈黙するまで完膚なきまでに・・・
これはEVA3号機との戦闘を拒否するシンジに見切りをつけた碇司令が試作中のダミーシステムの実用に踏み切った格好だった。
しkっし、目標の破壊には成功したもののその代償も大きかった・・・。
野辺山の街も少なからず損害を受け、EVA3号機だったモノのパーツや血液があたりに散乱している。
日も完全に落ち、暗闇に包まれた田園地帯に佇む初号機・・・。

「シンジ君・・・ごめんなさい。私・・・あなたに大事な事伝えなきゃならなかったのに・・・ゴメンね・・・ゴメンね・・・。」

ようやく繋がったミサトからの通信・・・それは何度も何度も繰り返されるシンジへの謝罪の言葉だった。
そのミサトからの通信は回収を待つレイの零号機にも聞こえてくる。
人を殺してしまったと嗚咽するシンジとひたすら謝り続けるミサトとのやりとりに、レイはかける言葉がまるで見つからない。
そんな中、ようやく発見されたEVA3号機パイロットの姿が初号機のコクピットに映し出される・・・。

「トウジ・・・?・・・・・・・・・・・・・・うわあああああぁっ!」

初号機に握りつぶされたエントリープラグの中で生き延びられるはずも無く、すでに息絶えていたフォースチルドレン・・・
トウジの無残な姿を目の当たりにしたシンジの絶叫がいつまでも続いていた。

 

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