第拾壱話 静止した闇の中で
第拾壱話「静止した闇の中で」
レイ「シンちゃん、どうしよう…」
シンジ「何?」
レイ「ついにあたしんち、電気止められちゃったよう…」
シンジ「…へ?」
アスカ「…アンタ、バカァ?」
事はそんな簡単な問題じゃなかった。
第三新東京市の主要区画の電力が、根こそぎダウンしてしまったのだ。
レイ「よかったー、てっきり電気料金の未払いのせいかと」
シンジ「その辺はまた今度じっくり話合うとして、とりあえず本部に行こうよ」
が、本部施設もゲートから何からすべてダウン。
チルドレンズはマニュアル片手に、非常ルートを自力で突破することに。
シンジ「こんな時ばっかり!男扱いするんだもんなあー!!」
ぎっちらぎっちら手動で重たい金属のドアをあけるシンジと、
レイ「フレー!フレー!シ・ン・ちゃん!」
両手に扇子で応援するレイ。
アスカ「こんな時ばっかり準備が万全な奴よね…」
バカ二人の必死な姿を、あきれて眺めるアスカ。
「お母ちゃんのためやらえんやこーらー!」
「なんで綾波はそんな古い歌知ってるのー??」
「絆だからあー!」
「誰とのおー!?」
「葛城三佐あー!!」
「納得うー!!」
コンクリで封鎖された区画を、どこからともなく調達してきた軍手、つるはし、安全帽のフル装備で、
粉砕突貫しまくるレイとシンジ。
「目的のためには手段を選ばない、いわゆる独善者よねえ」
もちろん手伝わないアスカ。
と、そこに遠くから聞こえてくる使徒襲来の報。
アスカ「やばいじゃない、どうすんのよ!」
そんなアスカに、黙ってドカチン三点セットを突き出す、目の据わったシンジとレイ。
で、やっとの思いで本部施設到着。
リツコ「よくきたわねアンタた…ち」
日本一の日雇い労働者三名が鼻をすする姿に、いささかヒく赤木博士。
エヴァンゲリオン各機は人力によるエントリーが開始、非常用電池による出撃。
肝心の使徒は、強力な溶解液で直接本部への進入を図ろうとする厄介な奴。
バッテリー残量は三分そこそこだったが、「今回一番働いてない!」という、レイの主張により、
顔に縦線いれまくりのアスカがディフェンス、シンジがオフェンス、レイがバックアップとなり…
アスカ「Gehen!!」
パレットライフルの一斉射により、使徒殲滅。
アスカ「ほら、この方が安心するじゃない」
電力の復旧と共に、あるべき姿を取り戻す第三新東京市。
一方、
レイ「人は古来より闇を恐れ、闇を削って生きてきたわ…」
妙にテンションの低いレイ。
シンジ「綾波のところの電気が戻るの、何日後なの?」
レイ「たぶん、あと3日は駄目みたい…」
シンジ「ミサトさんに頼んであげるから、きょうはうちにきなよ…」
レイ「ありがとう…シンちゃん優しい…」
シンジ「つ・い・で・に、無駄遣いの無くし方、節約のし方、家計簿の付け方、その他もろもの、
みーっちり叩き込んであげるから、覚悟してよね??」
かつて見たこともないシンジの鬼気迫る笑顔にドン引きするが、いまさら行かないとは言えないレイ。
よく考えたら、ミサトにアスカと、生活無能力者二名を抱えて文化的な生活を送らせているシンジの手腕と
その気苦労は察してあまりあるなあと、すこしだけホロリともしちゃったりして。
アスカ「ところでアタシって、無視されるのすっごい嫌いだって知ってた?」
二人揃って小高い丘の上、赤鬼さんによるアイアンクローの刑。
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