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「シンジ君を・・・シンジ君を返してよ!」
ケイジに響くミサトの悲痛な声。
初号機のすぐそばの通路で、消えてしまった彼のプラグスーツを抱きしめながらミサトは泣き崩れていた。
中空に固定されたエントリープラグからは大量のLCLが零れ落ちている。
その状況は、サルベージが失敗したという現実を誰にでも容易に理解させた。
誰もが、シンジの生還をあきらめかけていたその時・・・
ドサッ!
初号機の胸部付近から聞こえてきたのは鈍い音。
ミサトには一瞬それが何なのか理解出来なかったが、
思わず目線を向けたその方向には一糸纏わぬ1人の人間が横たわっていた。
「シンジく・・・・・・・・え?誰?」
シンジの名を呼ぶ途中でミサトは思わず言葉を止めた。
というよりは止まってしまったという方が正確か。
彼女の眼に映るのはシンジの姿ではなく・・・まったくの別人。
華奢な雰囲気はそのままだが、身体が大人のサイズであり・・・どう見ても性別まで変わっている。
謎の女性は意識を取り戻したらしく、ゆっくり起き上がりキョロキョロと辺りを見回していたが、
どうやらミサトの存在に気付いたらしい。
安心した表情を浮かべている。
「え・・・え~と・・・・・」
彼女に見つめられてミサトは言葉につまってしまった。
知らない女性が自分の方を見ている・・・。
ミサトとしてもリアクションのしようが無いのだが、とりあえず愛想笑いで返す他に方法は無い。
「ミサトさん・・・。すみません、なんか色々ご迷惑かけちゃったみたいで・・・」
「あ~・・・はい。はい。うん。」
知らない女性にいきなり自分の名前・・・しかも「さん付け」で呼ばれ、思わず生返事で返してしまうミサト。
まるでワケが分からない。ミサトの頭の中は完全にパニクってしまっている。
それでも、必死に状況を整理しようとしていたその時・・・
「ユイィィィィィィッーーーー!」
突然、ケイジの入り口から1人の男性が駆け寄ってきた。
いや、駆け寄ってきたというよりは全力疾走に近い。
ゼーハーゼーハー息を切らせながら、何かを叫びながら走ってきたようだ。
黒っぽい服装のその男はミサトには眼もくれず、一直線に謎の女性へと向かっていき
人目もはばからず彼は謎の女性を強く抱きしめた。そして・・・
「ユイ・・・!ついに戻ってきたのだな!この時を・・・ただひたすら待ち続けていた!」
と、その男性は涙を流しながら叫んでいる。
「あの~・・・碇司令?」
彼の尋常ならざるその様子に、少々引きながらも出来るだけ冷静に話しかけようとするミサト。
眼の前の碇司令は確実にいつもの碇司令ではない。様子が違うといったレベルをはるかに超えている。
「ユイ、大丈夫だったか?何かおかしなところは無いか?」
当の本人は、完全にミサトの存在など忘れているらしい。
「止めてよ!父さん!止めてってば!」
一方、碇司令がユイと呼ぶその女性も必死に彼を振りほどこうともがいている。
だが、彼は彼女を抱きしめたその手をまるで放そうとしない。
「そうか、記憶が混乱しているのだな?
何年もEVAに乗っていればそれも無理は無いだろう。ゆっくりと思い出せばいい・・・。
すまない・・・ユイ。シンジもお前と同じ様に行方不明になってしまった・・・だが、問題無い。すぐに・・・」
「何を言ってるんだよ、父さん!僕はシンジだよ!碇シンジ!」
その女性の叫びに言葉を失う碇司令。彼は完全に固まってしまった。
「・・・現在判明している点は以上です。」
と、現状の報告を終えるリツコ。
シンジのサルベージ後、ネルフ本部の一室で緊急対策会議が開かれていた。
対策の内容は、もちろんサルベージされたシンジについてである。
「で、では・・・、やはりあれはシンジなのだな?ユイがサルベージされたのではなく・・・」
碇司令は、机の前に両手を組んで座っているが、やはりいつもと違う。
ソワソワして落ち着きが無いのだ。
「はい。身体的な特徴などは碇ユイさんそのものですが、
その身体に宿った精神は間違いなくシンジ君のものとみて間違いありません。
彼女の現在の記憶もシンジ君のものです。」
「そうか・・・。」
リツコの報告を聞いた碇司令は心ここにあらずといった様子で、気の無い返答をしただけ。
先程からチラチラとシンジの方を見ては眼を逸らし・・・
まるっきり挙動不審なオッサンである。
「しかし、まさかユイ君の姿でサルベージされるとはな・・・。」
冬月副司令が誰に言うとも無く呟く。
彼ら2人の頬が赤く染まっているようにも見えるのは気のせいか。
「でも、困ったわね。このまま彼・・・あ、彼女か。
シンちゃんを学校に通わせるワケにもいかないし・・・
どうする、シンちゃん?この際だからお父さんと一緒に暮らしてみる?」
「え・・・?父さんと・・・ですか?いきなり言われても・・・それは・・・」
ミサトの突然の提案に、シンジは驚きの声をあげ返答に困ってしまった。
両膝の上においた手をモジモジさせて考え込んでしまっている。
ちなみに、今シンジが着ているのはネルフの制服。
EVAに取り込まれる以前に来ていた中学校の制服は、当然サイズが合わない。
かと言ってパジャマ姿というのも何なので、手近にあった服が貸し出された格好なのだが・・・
「お、お前の事は・・・かかか葛城君に一任してあ、ある。とりあえず、自宅で待機してしていろ。」
とは碇司令の発言。
完全に噛み噛みである。これでは威厳も何もあったものではない。
もっとも、息子の身に起きた異変から考えれば冷静でいられるはずも無いのだが・・・
碇司令はそれだけ言うと冬月副司令ととも退出していった。
「大丈夫よ、シンジ君。すぐに元に戻してあげるから。」
ふいにシンジに声がかけられた。声の主はリツコである。
彼女はシンジの肩に手を置き、にっこりと微笑んでいるがその眼はどう見ても笑っていない。
むしろ、あからさまに敵意すら感じられるが、当のシンジはそれには気付いてはいなかった。
「まぁ・・・これからの事はこれから考えるとして・・・とりあえず帰りましょうか。」
「・・・はい。」
ミサトの提案に頷くしかないシンジ。
自分の身体を見てもやはり現実とは思えない。
気が付いたら、女性の身体になっていたなんてありえない話である。
「シンジ君。これ、新しいあなたのIDカードよ。」
駐車場に向かう最中、ミサトがシンジにIDカードを差し出した。
受け取ったIDに記されている写真は以前の自分ではなく、サルベージされた後の今の姿。
こうして、現実的な話が出てくると、嫌でも自分の身に起きた事実を自覚させられてしまう。名前も碇シンジではなく・・・・
「生駒・・・ユイ・・・って、全然僕の名前じゃないんですけど・・・。」
「あのね・・・、今回の一件は碇司令の絶対命令で極秘って事になっちゃったのよ。
緘口令が布かれちゃってるって言えば分かりやすいかな?
つまり、サルベージに関わった人以外の人にあなたがシンジ君だって事を知られちゃ駄目ってワケ。
だからIDも名前も変えておかないと、どうにもならないのよ。」
と、さらりと言ってのけるミサトだが、その内容は明るい口調で話すものとは言いがたい。
当然、シンジとしても納得できるものではなく・・・
「困りますよ!いきなり名前を変えろだなんて・・・まるで犯罪者みたいじゃないですか!」
「ん~・・・、そこは仕方ないの。
サードチルドレンがエヴァに取り込まれた挙句にロストした、なんて事が知れ渡っちゃったら色々と都合が悪いのよ。
今のあなたがエヴァとシンクロ出来るかどうかは別としてね。
ま、大人の事情ってやつよ。シンちゃんも男の子なんだから我慢我慢!」
IDカードをシンジに渡し、その背中をバンバン叩きながらムリヤリ納得させようとするミサト。
大人の事情って・・・どんな事情なんだろう?それ以前に、こんな大声で話していて良いのかな?緘口令って言ってたような・・・
と、シンジはミサトの対応に心の中でツッコミを入れる。
「あ、そうそう。シンちゃん、私の親戚で部下って設定になってるから。絶対にボロ出しちゃ駄目よ?」
「設定って・・・」
ミサトからの要求に、もはやシンジは返す言葉すら思い浮かばない。家に帰る前からドッと疲れてしまった。
ネルフ本部からの帰り道、ミサトの提案で彼女らは近くのコンビニに寄る事となった。
ミサトいわく「冷蔵庫が空で何の準備も出来ないから。」らしい。
もっとも、冷蔵庫に材料があろうとミサトに料理を作らせるのは無謀である。
言うまでも無く、レトルトの方が十分マシなのだ。
「さ、食べたいものがあったら好きにえらんでちょうだいね~。」
「・・・はい。」
努めて明るく振舞うミサトに対し、シンジは浮かない顔をしている。
車の中でもほとんど会話が無かったくらいなのだから、それも仕方の無い話なのだが。
「あの・・・、ミサトさん。僕、このカッコのまま帰ってきちゃって良かったんですか?」
と、シンジが率直な疑問を口にした。
ネルフの制服姿でコンビニに滞在中の2人は、確かに人の眼を引いている。
ミサトはいつのもの事なので気にも留めていないが、一方のシンジは慣れていないため落ち着きが無い。
「だいじょぶだいじょぶ」と、ミサトは心配そうなシンジをよそに食料を適当にカゴに詰め込みレジへと行ってしまった。
それを見て、慌てて彼女の後を追うシンジ。と、その時、
「あ!ミサトさん!ご機嫌麗しゅう!」
「こんにちは!葛城三佐!」
背後から大きな声で挨拶をしてくる少年が2人。
「あら、あなた達、こんにちは~。」
返答するミサトの口調はいつも通りである。
声を聞いた時点でそれが誰なのかはすでに分かっていたらしい。
もっとも、それはシンジも同じなのだが。
「あれ?トウジにケンスケ・・・、もう学校終わったの?」
いつもの口調で彼らに尋ねるシンジだったが、当の2人はキョトンとして固まってしまった。
2人とも顔が真っ赤になってしまっている様に見えるのは気のせいか。
「あ、あ、あの・・・ど、どちらさんでいらっしゃいますか?」
トウジのリアクションに、シンジは今さらながら自分の今の状態を思い出す。
気がつけば、同じくらいだったはずの2人の背丈を大きく超えてしまっていた。
「葛城三佐の友人の方ですね?
僕は相田ケンスケ、相田ケンスケをよろしくお願いします!」
「待たんかい!ケンスケ!1人で抜け駆けなんてズルイやないか!」
なぜかお辞儀をして挨拶してくるケンスケと、そんな彼にいきり立つトウジ。
「おいおい、トウジはミサトさんが好きなんだろ?二股なんて男らしくないぞ。」
と、ケンスケは眼鏡のズレを手で直しながらおどけた調子で答える。
その一言が口火を切ってしまったのか、トウジとケンスケは方々勝手な事を言い始めた。
シンジが口を挟もうとしてもタイミングが掴めないくらい、少年2人は自己アピールに必死になってしまっている。
「勘違いしてるみたいだけど、僕は―――痛っ!」
と、途中まで言いかけたところで背中に鋭い痛みを感じ、否応無しに言葉が止まるシンジ。
ふと見ると、トウジやケンスケから見えないように、ミサトがシンジの背中をつねっていた。
ミサトはニコニコ笑っているが、その顔からは妙な迫力を醸しだしている。
それはまるで「話すなよ、このヤロウ。」と言わんばかりのものだ。
「どしたんです?何かあったんですか?」
とは、トウジ。シンジの発言が途中で止まったため不思議に思ったらしい。
「な、なんでもないよ。え~と・・・はじめまして、2人とも。」
しどろもどろになりながら一応の挨拶をするシンジ。
全然はじめましてでは無いのだが、今はこう言う以外に妙案は無い。
「じゃ、ミサトさんにべっぴんさん、ワシらはこの辺で失礼します~。」
「あ、ミサトさん。シンジによろしく伝えておいてください。みんな待ってるからって。それじゃ。」
言いたい事を言うと彼らはコンビニから出て行ってしまった。
2人をにこやかに見送った後、ミサトは肘でシンジの横腹を小突く。
「はぁ~・・・、シンジ君、いきなり心臓に悪い事は止めてよね~。
もし、バレちゃったりしたら始末書どころじゃすまないんだからさぁ。」
どうやら彼女は本気で焦っていたらしい。
ようやくホッとしたのか胸を撫で下ろしながらため息をついている。
「だって、ケンスケはともかくトウジはエヴァのパイロットじゃないですか。
トウジにも言っちゃ駄目なんですか?」
「そうよ。サルベージに関わった人以外は全員駄目なの。分かった?」
人に言われるままが処世術のシンジであるが、
今回は不承不承・・・言いたい事は山ほどあるが、とりあえず納得する事にした。が・・・
「あれ・・・?それじゃアスカや綾波も駄目なんですか?」
「そうよ。2人ともあの場に居なかったでしょ?」
そうか、アスカや綾波も駄目なんだ。と納得しかけてシンジは途中で重大な事実に気付く。
「ええ~っ!」
思わずコンビニ内で大声をあげてしまうシンジ。
トウジやケンスケ、レイならともかく、アスカはほぼ四六時中接している同居人である。
いくらなんでも、そんな相手にいつまでも隠し事が出来る程、自分が器用な人間だとは思っていない。
むしろ、十中八九、確実にバレる自信すらある。
「大丈夫よ。リツコが全力であなたを元に戻す方法を探してくれてるから。
少しの間の事だと思えばそんなに苦にならないでしょ?」
「すでに苦痛なんですけど・・・。」
元気付けようとしたミサトの言葉に対し、率直な感想を口にするシンジだったが、
彼女の声はミサトには届いていなかったようだ。
食料を詰め込んだカゴを手に、いそいそとレジへと行ってしまった。
2人はすでにミサトのマンションの玄関の前まで来ていた。
シンジにとっては久しぶりに見る我が家でもあるのだが・・・
「いい?シンちゃん。今のあなたは名前が違うんだから。それを忘れないようにね。」
「分かってます。それより早く入りましょうよ。」
両方の手に荷物を抱えたシンジだがかなり重そうな仕草をしている。
それもそのはずで、彼女が手にしている袋には両方ともビールがぎっしり詰められているのだ。
いくら大人の身体と言っても重いものは重いのである。
「たっだいま~。」
玄関のドアを開け中へと入るミサト。
そして、彼女と同じ様にただいまを言いつつ中へ入るシンジだったが・・・
(違うでしょ、シンちゃん!今のあなたはここへ来るのは初日なんだから!)
(す、すみません。ついいつものクセで・・・)
玄関でボソボソと言い合う2人組み。ミサトとしてもシンジの挙動が気が気でないらしい。
シンジの脇腹に肘打ちをお見舞いしながら念を押している。
分かりましたと何度も弁解するシンジだったが・・・すでに前科があるため、その返答にはあまり説得力が無い。
「お、おじゃまします・・・?」
一応のお客さんらしい挨拶をして中へと入るシンジ。
その口調はミサトの意見に納得し切れてない様でもある。
シンジがミサトの後を付いてダイニングルームまでやってくると、リビングでアスカがくつろいでいるのが見えた。
TVを見ている様だが、どうやらこちらの存在には気付いているらしい。
「ただいま~、アスカ。」
「はいはい。おかえりなさい。」
と、ミサトの声に対してもアスカは2人の方を見ずに手をヒラヒラさせながら返事しただけ。
一方のシンジはいつも通り、買ってきたビールを冷蔵庫へと詰め込み始めた。
カタン、カタンと冷蔵庫にビールを入れる音がダイニングルームに響く。
「あ~ら、最強無敵のシンジ様にそのような雑務をさせてしまって、申し訳ありませんわねぇ~。」
皮肉たっぷりなアスカの唐突な発言に驚き慌てるシンジとミサト。
TVを見ながらなのでシンジの方は見ていないが、アスカは今確実に今のシンジの事を「シンジ」と呼んだ。
いきなりバレてしまったのだろうか・・・?
「ちょっと、馬鹿シンジ!さっさとご飯の用意を・・・・・・・・・・誰?」
振り向きざまに怒鳴ろうとしたアスカだったが、見知らぬ人影にその顔がポカーンとしたものへと変わる。
どうやら、ミサトと一緒に帰って来たのはシンジだと思い込んでいたらしい。
「あ、えーと・・・、こちらは生駒ユイさん。最近ネルフに入った新人さんなのよ。」
ややぎごちない口調でシンジを紹介するミサト。
ほら、挨拶!と肘打ちしながら、シンジに挨拶するよう促している。
「い、生駒ユイです。はじめまして、アスカ・・・さん?」
こちらもぎごちない口調のシンジ。
一方のミサトは、これから先が思いやられると頭を抱えて困り果てている。
「で、その生駒さんがどうして家の冷蔵庫をいじくってるワケ?」
冷ややかな目線でミサトに尋ねるアスカ。
明らかに他人行儀なのだが・・・実際、今のシンジは外見が他人なため仕方が無い。
ミサトとほぼ同年代の女性が自分の家の冷蔵庫の整理をしているのだ。アスカの反応も当然と言える。
「あのね、彼女、私の遠い親戚でもあるんだけど、これからしばらく家に同居する事になったから。」
「ええ~!嫌よ、私!」
ミサトの言葉にあからさまな嫌悪感を示すアスカ。
こういう裏表の無さは彼女の長所でもあるのだが・・・シンジの胸中は複雑である。
「まぁまぁ。そんな事より早速食事にしましょうか。ほら、ちゃんと買ってきたし。」
と、ミサトは手にしていたビニール袋をアスカにアピールしている。
中にはコンビニ弁当が詰められているのだが・・・
「いらない。」
それだけ言うとアスカは自室へと行ってしまった。
先程、ご飯の催促をしていたのだから、お腹がすいていないはずはないのだが・・・
見ず知らずの人間がいきなり尋ねて・・・しかも同居という話になったのだから、アスカとしても面白くないのだろう。
「困ったわね~・・・。」
正直、ミサトもこうなる事を予期していなかったワケでもない。
シンジにはネルフ本部に泊まって貰うという選択肢もあった事にはあったのだが・・・
今回の一件はほとんどのネルフ所員に対しても極秘なため、シンジを1人で本部に置いておくというのは少々不安が残るのだ。
また、諜報部に対しても同様の措置を執っているため、いつも通りシンジへの監視をつける事も不可能。
今のシンジはあくまで通常のネルフ所員の内の1人でしかないのだ。
「それじゃ・・・僕も部屋へ戻りますね。」
心底疲れているのか、シンジは自分の部屋へ戻ろうとする。しかし
「ちょっと待った。」
と、立ち去ろうとする彼女の肩をむんずと掴むミサト。
いきなり止められ、シンジが怪訝そうな顔で振り向くと・・・
「シンちゃん、さっき言ったでしょ?あなたはここへくるのは初めてなんだって。
とりあえず、今日のところはリビングで休んでちょうだい。」
ミサトの言う事ももっともである。
いくら中身がシンジとは言え、いきなり彼女がシンジの部屋で休むというのは不自然である。
シンジを引き止めたミサトの声にもあまり覇気は無く、やはり疲れている様だ。
もっとも、肉体的にどうこうというワケでもなく、単に気疲れしているだけなのだろうが。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて。」
ミサトはそういうと自室へと行ってしまった。
何事かとシンジがとりあえず待っていると、すぐに戻ってきた。
ふと見ると、彼女は洋服らしきものを手にしている。
「ほら、いつまでもそんなカッコじゃ落ち着かないでしょ。とりあえずコレ着てなさい。」
と、ミサトは手にしていた洋服をシンジに渡す。広げてみるとそれは普通のTシャツとホットパンツ。
あ、そういえば・・・と、改めて自分の状況を思い出すシンジ。
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